大仏さまと天平の美仏の宝庫!

奈良の寺社観光ガイド【東大寺】

奈良の寺社観光ガイド【東大寺】

東大寺の歴史とは

南都六宗の一つ「華厳宗」の大本山『東大寺』は、728年に聖武天皇の皇太子を弔うために建てられた「金鍾山寺」が前身です。741年に「国分寺建立の詔」が発せられたことにより、翌年には大和国の国分寺と定められ、日本全国に建立させた国分寺の中心をなす「総国分寺」と位置づけられました。

743年、聖武天皇は「盧舎那仏造顕の詔」を発し、752年に盧舎那仏(奈良の大仏さま)の開眼供養会が行われました。この頃は大仏殿を中心に、東西に2つの七重塔(約100メートル)を構える大伽藍を誇りましたが、1181年の平重衡の兵火(南都焼討)、1567年の三好・松永の戦いの兵火により、大きな被害を受けます。大仏さまも開眼当初から残っているのは台座の一部のみ、大仏殿は規模を縮小して再建されています。

近代に入ると、明治維新の廃仏毀釈、廃藩置県による寺社領没収によって大きな危機を迎えましたが、見事に復興を遂げ、1998年には「古都奈良の文化財」として世界文化遺産にも登録されています。


運慶・快慶の仁王像が護る「南大門」

東大寺-南大門-01

東大寺巡りのスタートは、もちろん「南大門(国宝)」から。いつもたくさんの鹿と修学旅行生の姿が絶えない、賑やかな一角です。

現在の南大門は、1199年に復興されたもの。鎌倉時代に大仏殿を再建したりと、東大寺の再興の祖として知られている「俊乗坊重源」が伝えた「大仏様(だいぶつよう)」という建築様式を用いています。高さ25m以上の巨大な門ですが、天井板を貼らず、ずっと上まで見通すことができており、木材が連続する様子は目眩がしそうな大迫力です。

この南大門を護るのは、運慶・快慶作の「金剛力士立像(国宝)」。ともに高さ8.4mの巨大な像で、諸説ありますが、「阿形は快慶作」「吽形は定覚・湛慶作(運慶は製作総指揮)」と考えられているのだとか。

ちなみに、阿形のサイズは総重量6.8トン、部材総数3,115個。あれだけ大きな像を3千を超えるパーツに分け、たくさんの仏師による共同作業にすることで、わずか「69日」という短期間で作ったというのですから、改めて驚くべきことですね。金剛力士立像とは、金網越しですが、わずか数メートルの至近距離で見られますので、その力強い造形をじっくりとご覧ください。


東大寺-南大門-02

運慶・快慶作の「金剛力士立像(国宝)」で有名な「南大門(国宝)」。台風で倒壊した後、鎌倉時代に再建されたものです。軒先を支える組木(斗きょう)は、屋根を張り出すために前に6段せり出す「六手先」という珍しいもの

東大寺-南大門-03
東大寺・南大門は「大仏様」と呼ばれる、今はもうほとんど現存していない建築様式です。柱を貫通する水平材(貫・ぬき)が多用され、天井板を張らないのが特徴。下から見上げると目がくらむようです

東大寺-南大門(阿形)
有名な鎌倉時代の仏師、運慶と快慶が制作に携わったことで有名な「金剛力士立像」の阿形(あぎょう)。この画像は夜のライトアップの時に撮影したもので、昼間は金網に光が反射して、ここまでクリアに写らないかもしれません

東大寺-南大門(吽形)
「金剛力士立像」の吽形(うんぎょう)。口が閉じているのが吽形さんで、門の右側に立っていますが、これは通常の配置と左右逆。普通は正面を向いて立っているものですが、お互いに向い合っているのも珍しいところです


日本の中心におわす「奈良の大仏さま」!

東大寺-大仏殿-03

東大寺の、奈良のシンボルともいえるのが「奈良の大仏さん」でしょう。正式には「盧舎那仏像(るしゃなぶつぞう)」といい、752年の開眼ですが、あまりの重さに崩れてしまったり、大仏殿が焼け落ちて雨ざらしの時代があったりもしたそうです。何度も修復されているため、開眼当時から残っている部分はほとんどありません。

奈良の大仏さんのお住まいとなるのが、国宝の「金堂(大仏殿)」です。こちらも2度の火災から再建されたもので、創建当初は今よりもさらに大きかったのだそうです。

大仏殿では、どうしても奈良の大仏様に目が向きがちですが、その脇にいらっしゃる「虚空蔵菩薩」「如意輪観音」なども重要文化財に指定されていますので、お見逃しなく。

また、大仏さんの鼻の穴と同じサイズだと言われている穴があいた柱をくぐる「柱くぐり」も、古都・奈良に古くから伝わるエンターテイメントですから、ぜひチャレンジしてみてください。男性でも、肩を斜めにすれば十分にくぐり抜けられると思います。


東大寺-大仏殿-02

東大寺の「金堂(国宝)」。通称は「大仏殿」です。間口57.01m、高さ48.74mで、自由の女神像も収納できるサイズ。2度の火災から再建されたものですが、創建当初は、幅が88mもあったとされており、現在よりもさらに巨大でした

東大寺-大仏殿(八角灯籠)
金堂前の「八角灯籠(国宝)」。天平時代に作られたものですが、後に修理を繰り返しています。穏やかな表情で楽器を奏でる「音声菩薩」のレリーフがあります。燈籠全体が鋳造されており、この時代のものがここまで残っているのはすごいことなのです

東大寺-大仏殿-05
以前、近鉄奈良駅ビルの「なら奈良館」に展示してあった「大仏さんの左手実物大模型」。ガイドブックを置いてみたら、その巨大さが際立ちますね。ちなみに、手の平が150cm、指の長さは110cmだとか

東大寺-大仏殿-06
同じくなら奈良館にあった、東大寺・大仏殿の有名な柱の穴の実物大模型。大仏さんの鼻の穴と同じ大きさだ・・・と言われているものです(この柱の位置が鬼門に当たるため穴があけられたのだそうです)。穴の大きさは30cm×37cm、柱の直径120cm。大人でも普通の体系の方なら十分にくぐり抜けられる大きさです


大仏さまだけじゃない!天平美仏の宝庫

東大寺-法華堂-01

東大寺では大仏殿だけを見て引き返してしまう方も多いようですが、ぜひ他のお堂も拝観してください。素晴らしい仏像や建築物の宝庫です!

●「法華堂(三月堂)」は大規模な修復工事を終え、2013年5月から拝観を再開。ご本尊の「不空羂索観音立像(国宝)」を中心に、梵天・帝釈天・金剛力士(阿吽)・四天王像・執金剛紳(秘仏)の10躰が祀られています。とても濃密な空間で、奈良の仏像の素晴らしさが凝縮されたような場所です。

●2011年秋にオープンした「東大寺ミュージアム」では、法華堂に祀られていた日光月光菩薩・弁財天・吉祥天・地蔵菩薩・不動明王の6躰が安置されています。たくさんの寺宝が展示されています。

●「戒壇堂」では、法隆寺、当麻寺に次ぐ日本で3番目に古い「四天王立像(国宝)」がいらっしゃいます。素晴らしい空間に、素晴らしい仏さまがおわします。

●俊乗堂の「重源上人坐像(国宝)」、開山堂の「良弁僧正坐像(国宝)」、法華堂の「執金剛神立像(国宝)」、勧進所の「五刧思惟阿弥陀如来坐像(重文)」など、ある特定の日にしか一般公開されない仏さまもいらっしゃいますので、事前に日程を確認しておくといいでしょう。


東大寺-法華堂-02

東大寺の国宝建造物「法華堂(三月堂)」。740年頃の創建です。ご本尊は「不空羂索観音立像(国宝)」で、合計10躰もの仏像が立ち並びます。安置されている仏像も、建物もとても貴重なものです

東大寺-戒壇院
大仏殿の西側に建つ東大寺「戒壇堂」。奈良時代作の塑像「四天王立像(国宝)」がいらっしゃって、ニヒルな表情が魅力的。ファンの多い仏さまです。こちらはいつでも拝観可能です

東大寺-正倉院
大仏殿の裏手には、有名な東大寺「正倉院」があります。こちらは近くまで立ち寄ったりすることは出来ませんが、遠目からでも高床式の校倉造(あぜくらづくり)であることがはっきりと見て取れます。教科書に載っているような歴史的建造物の実物が見られるのですから、ぜひ立ち寄ってみてください


1200年を超える二月堂の「お水取り」

東大寺-二月堂-04

東大寺では、年間を通じて様々な法要が行われていますが、その中で最も有名なのが東大寺・二月堂で行われる「お水取り」でしょう(正式には修二会[しゅにえ]といいます)。その始まりは752年のことで、それ以来一度も欠かすことなく毎年行われている伝統的な儀式です。

東大寺・二月堂は舞台づくりの見事なお堂で(無料で上がれます)、ここから奈良盆地が一望できるいいスポットですが、普段はほとんど人気もなく静かなものです。しかし、3月1日より2週間にわたって行われるこのお水取りの期間だけは、何万人もの観客で賑わいます。

二月堂の舞台部分を、巨大な燃え盛る松明を持った僧侶が走り抜ける姿は、間近で見るととんでもない迫力とライブ感があります。この時期は周辺のホテルなども予約しづらくなるそうですので、ぜひお早めに!


東大寺-二月堂-01

普段の東大寺・二月堂。お堂の周りの回廊部分には自由に上がることができます。お天気の良い日などはなかなか見事な眺めです。ちなみに、二月堂の御本尊は十一面観音様ですが、絶対秘仏のためお会いすることはできません

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二月堂前の通り。土壁が残る趣きのある一角です。東大寺の境内は広いため歩きまわるのも大変ですが、ぜひ時間をとって大仏殿の裏手なども散策してみてください


『なら燈花会』期間中はライトアップも

東大寺-ライトアップ-02

夏の奈良の恒例イベント『なら燈花会』の期間中の8月13日・14日の二日間は、東大寺の大仏殿では、夜間の無料拝観が行われます。これは8月15日の「万灯供養会」のプレイベントのようなものですが、拝観料無料ということもあり、たくさんの人が集まり、とても賑やかです!

この日は、大仏殿の正面にある「観相窓」が開放され、遠目からでも大仏さんのお顔が眺められます。年に数日しかないことですので、ぜひこの日に合わせて東大寺へ行ってみてください。

さらに、7月半ば~9月末までの期間は『ライトアッププロムナード・なら』というライトアップイベントも開催されています。東大寺の南大門や大仏殿はもちろん、奈良国立博物館本館、薬師寺なども見事にライトアップされます。なら燈花会の時のような大混雑はありませんので、三脚も使用できます。写真撮影を行いたい方は、この期間に行ってみるといいでしょう。夜のデートコースとしても最適でしょう。


東大寺-なら燈花会

『なら燈花会』の東大寺・大仏殿の無料開放の様子。夜に見る奈良の大仏さんや仁王像は、昼間とはまた印象が違って、幻想的に見えます。夜の仏さまの姿を見られる貴重なチャンスです

東大寺-ライトアップ-01
『ライトアッププロムナード・なら』の一枚。2ヶ月以上も開催されていますが、普段はガランとしていて、写真撮影が好きな方には最適でしょう。なら燈花会の期間を外せば、三脚を使用して落ち着いて撮影できます


早朝の東大寺はのんびりした鹿の楽園です!

早朝の東大寺-01

奈良の地元の方はもちろん、奈良へ宿泊する方もぜひ早起きして、朝の奈良公園・東大寺を歩いてみてください。

犬の散歩をしている方の姿を見かける程度で、いつもは賑わっている東大寺南大門の辺りも、全く人影は見当たらず、早起きした寝ぼけ眼の鹿たちが歩くのみ。まるで全ての人間が消えてしまって鹿だけが生き残ったかのような、とても不思議な感覚が味わえます。

いつもはがっついて鹿せんべいをねだってくる鹿たちも、朝はまだのんびりとしたもので、また違った表情が見られます。

早朝の東大寺-02
早起きなのは鹿だけではなく、もちろんお坊さんも早起きです。東大寺中門から大仏殿に向かってお祈りしているお坊さんの姿も見られました。いかにも奈良の朝の風情が感じられますね


東大寺の拝観・アクセスなど

  • 名称: 東大寺
  • HP: http://www.todaiji.or.jp/
  • 住所: 奈良県奈良市雑司町406-1
  • 電話: 0742-22-5511
  • 宗派: 華厳宗大本山
  • 本尊: 盧舎那仏(国宝)
  • 創建: 8世紀前半
  • 開基: 聖武天皇
  • 拝観料: 大仏殿:500円、三月堂(法華堂):500円、戒壇院:500円
  • 拝観時間: 11月~2月:8:00-16:30、3月:8:00-17:00、4月~9月:7:30-17:30、10月:7:30-17:00
  • アクセス: JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」から、市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車、徒歩5分(近鉄「奈良駅」から徒歩約20分)
  • 駐車場: 近隣に有料駐車場あり(奈良県営大仏前駐車場は1,000円)


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東大寺の主な年中行事

  • 02月03日 【節分】万灯明・星祭
  • 03月01日~3月15日 【修二会 本行】(お水取り)
  • 04月02日~4月15日 <1300年祭 特別御開帳>重源上人[俊乗]坐像・愛染明王坐像・阿弥陀如来立像など
  • 04月08日 【仏生会】(花祭り・甘茶かけ)
  • 05月02日 【最勝十講・聖武天皇御忌】
  • 07月05日 【俊乗忌】<秘仏御開帳>重源上人[俊乗]坐像・愛染明王坐像・阿弥陀如来立像など
  • 08月07日 【大仏さま お身拭い】
  • 08月15日 【万灯供養会】夜間参拝
  • 09月17日 【十七夜・十七夜盆踊り】
  • 10月05日 【転害会】<秘仏御開帳>五刧思惟阿弥陀如来坐像(勧進所 阿弥陀堂)
  • 12月16日 【良弁忌】<秘仏御開帳>重源上人[俊乗]坐像・愛染明王坐像・阿弥陀如来立像など

東大寺の年中行事一覧



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