2010-10-22

石造のお地蔵様「石仏龕」を祀る『十輪院』@奈良町

石造のお地蔵様「石仏龕」を祀る『十輪院』@奈良町

奈良市高畑を歩いた途中で、十輪院町の『十輪院』へお参りしてきました。それほど大きなお寺ではありませんが、落ち着いた雰囲気の「本堂(国宝)」と、ご本尊の石造のお地蔵様を祀る「石仏龕」など、見どころの多い面白いお寺でした。


元正天皇の勅願のお寺です

奈良市十輪院町にある『十輪院(山号:雨宝山)』は、寺伝では元正天皇(715-724年)の勅願寺とされ、右大臣・吉備真備の長男である「朝野宿禰魚養(あさのすくねなかい)」の開基とも伝えられています。元興寺の旧境内の南東の隅に位置し、当初は元興寺の一子院だったようです。

鎌倉時代に記された無住法師の『沙石集』(1283)では、十輪院の御本尊である、石造地蔵菩薩が「霊験あらたなる地蔵」として取り上げられています。このご本尊は石仏で、仏像を収めるお厨子と「龕(がん)」とともに、「石仏龕(せきぶつがん)」として重要文化財に登録されています。

戦前に日本に滞在した著名なドイツの建築家ブルーノ・タウトは、著作『忘れられた日本』の中で、「一般に外国人は、官庁発行の案内書やベデカーなどに賞賛せられているような事物に、東洋文化の源泉を求めようとする。しかし奈良に来たら、まず小規模ではあるが非常に古い簡素優美な十輪院を訪ねて静かにその美を観照し、また近傍の素朴な街路などを心ゆくまで味わうがよい。」と述べているそうです。

また、今なお独特の活動をしていて、奈良町のビルの中に『十輪院 仏教相談センター(紹介記事)』をオープンさせていたり、ご住職が会長を務める「南都二十六会」が中心となって、奈良のキャラクター『なーむくん』を誕生させたりしました。


「護摩堂」には重文の不動明王像が

奈良町の真ん中の『十輪院』。それほど規模は大きくありませんが、落ち着くお庭と、素晴らしい文化財があるお寺です。

この日は、平城遷都1300年祭の一環として、「護摩堂」が特別公開されていました(通常は毎月8のつく日だけの開扉です)。こちらには、平安時代後期の「不動明王及び二童子像(重文)」が祀られており、護摩行によって煤けたお姿がとても素晴らしいものでした。

また、本堂の隣には江戸時代の建築となる「御影堂」が。その裏手には十輪院を開いた朝野宿禰魚養(あさのすくねなかい)のお墓「魚養塚(うおかいづか)」があります。いずれもそれほど派手なものではありませんが、忘れずに見ておきましょう。


十輪院@奈良町-01

奈良市十輪院町に建つ『十輪院』。奈良町の真ん中にありながら、境内には美しいお庭が広がっていますし、国宝の「本堂」などの見どころも多いお寺さんです。この「南門」は鎌倉時代の四脚門で、重要文化財に登録されています

十輪院@奈良町-03
門をくぐってすぐのところにある入山受付。なーむくんグッズがたくさん置いてあるのが特徴です

十輪院@奈良町-04
平城遷都1300年祭の関連で、毎月8のつく日だけ開扉される「護摩堂」が特別公開されていました。平安時代後期の「不動明王及び二童子像(重文)」が祀られています。堂内で護摩行を行うため、仏さまはいい具合に煤けていて、より穏やかな表情に見えました

十輪院@奈良町-08
本堂の脇に建つ「御影堂」。1650年の建築で奈良県指定文化財となっています。土台はコンクリート製になっていて、地下部分は「霊廟」となっています

十輪院@奈良町-10
御影堂の裏手には「魚養塚(うおかいづか)」があります。分かりやすい看板が出ていました

十輪院@奈良町-11
十輪院の「魚養塚(うおかいづか)」。十輪院の開基「朝野宿禰魚養(あさのすくねなかい)」の墳墓です。遣唐使・吉備真備の息子で、日本最初の書道家とされる人物なのだとか。内部は見えませんが、方形古墳状になっていて、北側に横穴式の小さな石室があり、如来坐像が彫ってあるそうです


国宝の本堂の奥には石のお地蔵様が

十輪院の「本堂(国宝)」は、天井の高さは2.2mと低く、仏堂というよりは貴族の住宅建築のような、やや簡素に見える造りとなっています。もとは、本堂奥に安置された「石仏龕」を拝むための礼堂として建てられたものなのだとか。

そんな木造の国宝建築物の奥には、十輪院のご本尊である石造のお地蔵様がいらっしゃいます。同じく石造のお厨子「龕(がん)」とともに、「石仏龕(せきぶつがん)」として重要文化財に登録されているもので、中央には地蔵菩薩が、左右に釈迦如来と弥勒菩薩が浮き彫りになっています。また、地蔵菩薩の周囲には、仁王・聖観音・不動明王・十王・四天王・五輪塔などが彫られています。

石仏龕は至近距離で拝見できますが、石造ということもあるのか、どこか空気も冷んやりとしているように感じます。木造の仏さまとはまた違った、どこか素朴な印象を受けるのが面白いですね。

また十輪院の本堂には、小像ながら他にも仏さまが多数いらっしゃいます。珍しい五劫思惟阿弥陀仏坐像や、白鳳時代の誕生釈迦仏、顔の部分が象の2体が抱き合った姿の歓喜天像など、ぜひじっくりと拝見してみてください(仏さまの一部画像はこちらのページで公開されています)。


十輪院@奈良町-05

十輪院の「本堂(国宝)」。本堂奥に安置された「石仏龕」を拝むための礼堂として建てられたものです。天井の高さは2.2mと低く、仏堂というよりは貴族の住宅建築を思わせるような造りになっています

十輪院@奈良町-06
十輪院の本堂前は、上に跳ね上げる「蔀戸(しとみど)」になっています。また、天井部分が角材を並べたように見える垂木(たるき)を用いず、板張りとなっているのも特徴的。国宝の仏堂としては、最もシンプルなものかもしれません

十輪院@奈良町-07
十輪院の本堂を横から見たところ。向かって左手が本堂(もとの礼堂)で、右手のご本尊を祀る「石仏龕」の部分はそれに続いて建てられていることが分かります。もちろん、内部はしっかりとつながっています


お庭の「興福寺曼荼羅石」も必見です

十輪院の境内には、はす池を中心としたお庭があり、その周辺には様々な石造物があります。

興味のない方にはただの地味な石にしか見えないと思いますが、お寺好きな方であれば、ぜひ「興福寺曼荼羅石」はじっくりご覧ください。これは興福寺の諸堂に安置された仏さまや五重塔などを描いた曼荼羅で、石に彫ってあるのが面白いですね。これは鎌倉時代のもので、十輪院は一時は興福寺の末寺となっていた時期もあったそうですから、その時に作られたものなのかもしれません。

十輪院の境内は無料で散策できますので(本堂の拝観は有料です)、奈良町散策の途中にでも、ぜひ気軽にお参りしてください。


十輪院@奈良町-12

十輪院の境内には、はす池を囲む庭園があります。それほど広いものではありませんが、奈良町の真ん中にこんな緑があるのはいいですね。境内は無料で散策できますので(本堂の拝観は有料)、気軽に立ち寄ってみてください

十輪院@奈良町-13
十輪院の手水鉢。シンプルですが味がありますね

十輪院@奈良町-18
十輪院にある「興福寺曼荼羅石」。鎌倉時代のもので、奈良市指定文化財となっています。興福寺の諸仏と五重塔を刻んだ「画像石」で、曼荼羅としては鎌倉・室町時代に多数作られましたが、石造物としては唯一の遺構となるのだそうです

十輪院@奈良町-19
「興福寺曼荼羅石」の様子。一段目左から、北円堂・講堂・食堂。二段目が中金堂。三段目が西金堂・東金堂。。四段目が南円堂・中門と南大門・五重塔が描かれています。じっくりと見て、現在の姿を重ねると面白いです!再建中の中金堂の諸仏や、先日東金堂に戻ったばかりの正了知大将の姿なども描かれています

十輪院@奈良町-14
境内に祀られている「石造不動明王」。鎌倉時代のもので、もとは彩色してあったのだとか。立体感が感じられて、迫力のあるお姿です

十輪院@奈良町-15
こちらは立て札には「合掌観音 藤原時代」とありましたが、いただいた印刷物には「石造菩薩立像(鎌倉時代) 合掌形で目鼻立ちが明快。上下が分割されている。」とありました。いずれにしても、穏やかな表情の仏さまです。かなり背が高いので、地震の時に心配になりそうです

十輪院@奈良町-16
これは「愛染曼荼羅 鎌倉時代」。彫りが薄くなっていてほとんど判別できません

十輪院@奈良町-17
燈籠の奥に祀られている、向かって左が「伊勢大明神」、右が「春日大明神」。お社も石造です

十輪院@奈良町-20
鎌倉時代の十三重石塔。初層が極端に大きいのが面白いですね。上部の三層が失われているそうです

十輪院-ご朱印
十輪院でいただいたご朱印です。「石龕地蔵」という御朱印は、全国でもここだけかもしれませんね



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■十輪院

HP: http://www.jurin-in.com/
住所: 奈良県奈良市十輪院町27
電話: 0742-26-6635
宗派: 真言宗醍醐派
本尊: 地蔵菩薩(重要文化財)
創建: 不明(寺伝では715年ごろ)
開基: 元正天皇(勅願)、朝野魚養(伝)
拝観料: 境内自由、本堂拝観 400円
拝観時間: 9:00 - 16:30
駐車場: 無し
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩15分

※十輪院は、毎週月曜日は閉門日となっており、参拝できません










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