2009-11-23

山の辺の道に建つ弘法大師の古刹『長岳寺』@天理市

山の辺の道に建つ弘法大師の古刹『長岳寺』@天理市

日本最古の街道「山の辺の道」に建つ古刹『長岳寺』へ行ってきました。この一帯は、卑弥呼の墓とされる「箸墓古墳」などとも近いため、これからますます注目を浴びるエリアでしょう。


弘法大師が開基の「花の寺」

奈良県天理市にある『長岳寺(ちょうがくじ)』は、山号を「釜ノ口山」といいます。創建は824年、淳和天皇の勅願により、弘法大師空海が大和神社の神宮寺として開基しました。

大和十三佛霊場」の第四番札所(普賢菩薩)であり、「関西花の寺二十五ヵ所」の第十九番霊場にもなっています。大門からはツツジの参道が伸び、四季折々に桜・アジサイ・カキツバタなどが咲き、ゴールデンウィーク前後には、約1,000株もの平戸ツツジが見頃を迎えます。

長岳寺は、国道169号線から少しだけ山側に入った地点、日本最古の街道とされる「山の辺の道」の中間地点ほどの位置にあります。

すぐ近くには、天理市トレイルセンター(ブログ内記事)の他、崇神天皇陵・景行天皇陵(ブログ内記事)などもあり、古代史ファンやハイカーの方で常に賑わっています。

この日は、毎年10月23日~11月30日に行われている長岳寺仏画展「極楽地獄図」の期間中だったため、たくさんの参拝客の姿が見えました。


長岳寺@天理市-01

奈良県天理市にある「長岳寺」。日本最古の街道「山の辺の道」の半ばほどにある古刹です。この日は、狩野山楽筆の「大地獄絵」の御開帳もあり、たくさんの参拝客の方の姿が見えました

長岳寺@天理市-02
長岳寺の境内図。面積は1,200坪とかなり広いのですが、畑や山が含まれていたりするため、拝観する場所はそれほど多くありません。最盛期には48もの塔頭が立ち並んでいたそうです

長岳寺@天理市-03
長岳寺の参道では、お近くの農家の方によって、季節ごとの農作物が販売されています。この日は奈良らしく「富有柿」でしたが、春に来た時には掘りたてのタケノコが並んでいたこともありました


寝殿造りの落ち着いた建物「庫裏(重文)」

拝観受付を済ませると、すぐ左手に見えてくるのが「庫裏(重文)」です。盛時の長岳寺では48の塔頭が立ち並んでいたそうですが、その中で唯一現存しているものなんだとか。室町時代の寝殿造りの様式を伝える建物で、小さなお庭もとても優雅でした。

こちらでは、本場の「そうめん(@700円)」もいただけます。こちらでは、最も素麺の味が良くなりコシが出るとされる、2年ものの「古(ひね)」を使用しているそうですので、山の辺の道の散策途中に、お参りしながらそうめんを食べるのもいいですね。


長岳寺@天理市-05

拝観受付窓口のすぐ裏手にある「庫裏(重文)」。旧地蔵院・旧地蔵院念仏堂。48の塔頭のうち、唯一残されたもので、江戸時代の建築ながら、室町時代の書院造りの様式を伝える建物です

長岳寺@天理市-06
長岳寺の「庫裏(旧地蔵院)」の様子。正面に見えるのが、4頭の象に乗った普賢菩薩像が祀られた「延命堂(重文)」です。見事なお庭もあり、とても優雅な雰囲気の感じられる建物でした

長岳寺@天理市-09
庫裏にある「延命堂(重文)」には、4頭の象に乗り18臂ほどもある、美しい「普賢延命菩薩像」がいらっしゃいました(大和十三仏巡りの第四番霊場です)。このお堂は旧地蔵院というくらいですから、ご本尊はお地蔵かと思いましたが、どんな事情があったのでしょうか?

長岳寺@天理市-08
長岳寺「庫裏」のお庭。それほど広くありませんが、手入れの行き届いた美しいお庭です。お寺に住み着いているらしい猫が、飛び石の上を軽やかにジャンプしている姿も見られました!

長岳寺@天理市-07
「庫裏(旧地蔵院)」に飾ってあった絵。詳しいことは分かりませんが、さすがに立派なものをお持ちです!

長岳寺@天理市-10
長岳寺の庫裏では、この地域のお寺らしく「そうめん」がいただけます(@700円)。山の辺の道散策を楽しむ途中で、お寺で三輪そうめんをいただくのもいいですね


創建当時から残る「楼門」

庫裏から数十メートルの位置に、弘法大師さんが長岳寺を創建した当時から残るとされる「楼門(重文)」が建っています。

それをくぐると、本堂よりも先に、大きめの放生池が目に飛び込んできます。この日は紅葉も終わりに近づいていましたが、それでもとても美しい眺めでした。池を泳ぐ鯉も、人の足音を聞くとガツガツと集まってくるワケではなく、どことなく優雅な泳ぎのように感じました(笑)


長岳寺@天理市-12

長岳寺の「楼門(重文)」。平安時代のもので、弘法大師が長岳寺を創建したころからの唯一の遺構とされ、日本最古なんだとか。上層部には鐘が吊るされていましたが、現在はありません

長岳寺@天理市-13
楼門をくぐると、すぐに大きな放生池が広がります。この日は、もう紅葉は終わりかけでしたが、それでも美しい眺めでした

長岳寺@天理市-14
放生池には色鮮やかな鯉たちが。人の気配がすると近寄ってきますが、ガツガツせずにゆったりと優雅に泳いでいました


玉眼を使用した日本最古の仏像です

長岳寺の「本堂」は、1783年の再建のもの。お堂の作りは簡素ですが、いかにも寺院建築らしい落ち着いた雰囲気です。

ご本尊は、1151年作の「阿弥陀三尊像(重文)」です。中尊は阿弥陀如来坐像、脇侍にそれぞれ半跏の観世音菩薩像・勢至菩薩像がいらっしゃいます。パンフレットには「堂々とした量感、写実的な表現は藤原時代にあって次の鎌倉時代の作風の先駆と云え、慶派に大きな影響を与えた。玉眼を使用した仏像としては日本最古である」とありました。

いずれもふくよかでゆったりした印象の仏さまで、三像とも光背が輪光(O型)で揃っているのも見事でした。

その脇を固める四天王ですが、長岳寺には多聞天・増長天(ともに重文)の二像がいらっしゃるのみです。いずれも鎌倉時代の仏像のような力強さと緻密さが感じられる、素晴しい仏さまでした。比較的、至近距離から拝見できるのも嬉しいですね。

また、この日特別公開されていた狩野山楽筆の「極楽地獄図」も、とても迫力がありました(毎年10月23日~11月30日のみ公開)。

全九幅からなり、縦4m・横11mにも及ぶ大パノラマです。裁きを行う閻魔さまたちの手前では、火や水などの様々な責め苦に合う人間たちが描かれています。向かって左手の二幅ほどには、救済に現れた仏さまの姿も描かれているのですが、どうやったら救われるのかのヒントは全く記されていません。きっと地獄から抜け出す条件は、かなりシビアなんでしょうね(笑)


長岳寺@天理市-15

長岳寺の「本堂」。1783年の再建で、阿弥陀三尊像、多聞天・増長天などを祀ります。仏さまとの距離が比較的近く、ゆったりと参拝できる静かなお堂でした

長岳寺@天理市-16
長岳寺の本堂に残る「血天井伝説」。足あとがクッキリと見えます。戦国時代に大和の豪族・十市氏が松永弾正に攻められた際、血だらけの武将が本堂にまで逃げ込んできたのだとか。その時の縁側の板を天井に張り替えた・・・という言い伝えが残されているのだそうです


ゆったりと散策できるお寺です

本堂から少し上がったところには、長岳寺の開基である弘法大師を祀った「大師堂」などがあります。また、私たちは行けませんでしたが、境内の周辺を一周する「八十八ヶ所道」などもありますので、お時間がある方はどうぞ。


長岳寺@天理市-18

本堂から少し高い位置にある、夕陽に照らされた「大師堂」。1645年の建築です。長岳寺の開基である弘法大師と、藤原時代作の不動明王が祀られています

長岳寺@天理市-19
大師堂の脇に立っている「ぼけよけ地蔵尊」。お地蔵さんの足元には、やや縮尺に違和感のあるおじいちゃん・おばあちゃんが立っています。水子供養の象ではよく見かける構図ですが、登場人物を変えるとちょっとギョッとしますね!

長岳寺@天理市-21
本堂から放生池を挟んだ位置に立つ「鐘堂」。看板には「一願成就の鐘」とあり、仏さまに願いを込めて一打してくださいとのこと。沢山の方が鐘を撞いていました

長岳寺@天理市-17
境内にあった、可愛らしいお不動さんの石仏。まんが日本昔ばなし風のルックスですね

長岳寺@天理市-20
夕陽・紅葉・燈籠

長岳寺@天理市-22
放生池越しに眺めた本堂

長岳寺@天理市-23
長岳寺の放生池と紅葉

長岳寺-ご朱印
長岳寺でいただいたご朱印です



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■長岳寺(釜ノ口山)

HP: http://www.chogakuji.or.jp/
住所: 奈良県天理市柳本町508
電話: 0743-66-1051
宗派: 高野山真言宗
本尊: 阿弥陀如来
創建: 824年
開基: 弘法大師、淳和天皇(勅願)
拝観料: 300円
拝観時間: 10:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR桜井線「柳本駅」下車、徒歩20分

※大和十三仏 第四番霊場
※関西花の寺 第十九番霊場






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