2009-05-19

斬新な魅力もタップリ『霊山寺』@奈良市<前編>

バラのお寺『霊山寺』@奈良市

春の「バラ」のシーズンがやって来たということで、富雄にある『霊山寺(りょうせんじ)』にお邪魔してきました。

みうらじゅん氏・いとうせいこう氏の「見仏記」などで見ていたお寺でしたが、古い歴史を感じさせる要素と、斬新で驚くような要素が交じり合った、とても面白いお寺でした!


「霊山寺」の縁起とは

奈良市の富雄にある『霊山寺』(りょうせんじ。「りょうぜんじ」「れいざんじ」とも読みます)。

遣隋使で有名な小野妹子の息子・小野富人が壬申の乱に関与したため、この地に蟄居し、修行中に薬師如来を感得。「鼻高仙人」と称しました。734年、聖武天皇は、行基菩薩にこの地に大堂の建立を勅命。インドバラモン僧「菩提僊那」が来日し、寺の名称を「霊山寺」として落慶しました。

平安時代、弘法大師が訪れた際に、この山に強い龍神様がいることに気づき、奥の院に「大辯財天女尊(弁天さん)」として祀られることに。それまで法相宗だった同寺は、弘法大師の真言宗との2宗兼学の寺となりました。

幾多の戦乱からは被害を免れてきましたが、明治維新の廃仏毀釈により、伽藍の規模は半減、200体以上の仏像が焼却されてしまいました。

今では、先代住職の戦争体験から、平和を願って1957年に開園された、1,200坪の「薔薇庭園」が有名となり、春と秋には、200種2,000株の薔薇が見られます。


敷地に、バラ園・温泉・ゴルフ練習場!

富雄にある『霊山寺』はやや変わったお寺で、境内には何箇所にも鳥居があり、「薬師の湯」という入浴施設や、ゴルフ練習場まであります。広大な霊園を展開していたりと、新要素を積極的に取り入れた、奈良のお寺にしてはやや風変わりなお寺です。

境内を歩いてみると、いたるところに、歴史を感じさせる落ち着いた要素と、新たに取り入れられた要素が混ざり合い、独特な雰囲気が感じられます。


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-01

奈良市の富雄にある、霊山寺真言宗の大本山『霊山寺』。200種2000株のバラ庭園があることでも有名です。いきなり鳥居をくぐりますし、敷地内には温泉とゴルフ練習場まである、ちょっと変わったお寺ですね

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-02
広大な霊山寺の境内マップ。霊園から奥之院まで、とにかく広大!ロールプレイングゲームに出てきそうなマップですね!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-03
境内を歩くと、緑がいっぱい!それなりに高低差もあり、木々の間からこぼれる光がきれいです

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-04
斜面に見える、木の根と苔のコンビネーションもなかなか渋いですね。気軽に山寺の雰囲気を味あわせてくれます


国宝の「本堂」は簡素で力強く

霊山寺の「本堂(国宝)」は、鎌倉時代に再建された、シンプルで力強いタイプのもの。ご本尊の「薬師如来像(重文)」と、脇侍の「日光・月光菩薩立像(重文)」は、ともに秘仏で、同じ厨子に入っています。

お堂自体はとても雰囲気のあるものでしたし、小さめな十二神将像などもいらっしゃるのですが、やや距離があるためよく見えず、仏像が見たい私たちにとっては、ちょっと心残りでした。ご本尊はまたご開帳の機会もあるでしょうから、タイミングを見計らってまたお邪魔したいと思います。


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-05

霊山寺の「本堂(国宝)」前。石段を上がると、すぐに灯篭と新緑が目に飛び込んできました

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-06
霊山寺の「本堂(国宝)」は、1283年の再建。ご本尊の薬師如来像と、脇侍の日光・月光菩薩は、「春日厨子(重文)」内に安置されている秘仏です。鎌倉時代の建築物らしく、簡素で力強い作りでした

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-07
本堂の正面部分。「西国薬師四十九霊場」と「仏塔古寺十八尊霊場」に名を連ねています。お堂に入る前には、パウダータイプの「塗香」を手に塗って清めてなければいけません

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-08
霊山寺の本堂前の線香台。シンプルなタイプで、山号の「鼻高山」の文字が見えます

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-09
本堂前には、袴腰(はかまごし)が付いた「鐘楼(重文)」が。それほど大きなものではありませんが、とても凛々しい雰囲気でした

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-10
霊山寺の手水舎その1。シンプルな龍がいる簡素なものでした

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-11
紅葉の季節でもないのに、赤く色づいた葉っぱ。その奥に見えるのは、「聖天堂」などの、新旧取り混ぜたお堂です

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-12
「経蔵」前付近の門と、新しい目の堂々たる布袋様。霊山寺の境内には、七福神に関連する像が多めでした


小ぶりで優しげな「三重塔」

本堂から少し離れた小高い丘の上には、総高17メートルと、やや小ぶりな「三重塔(重文)」が建っています。この内部にも、阿弥陀如来像がいらっしゃって、極彩色の壁画に囲まれているそうですが、こちらももちろん非公開。

三重塔自体も、優しい印象のある美しいものですが、すぐお隣の敷地にはゴルフ練習場があったりして、その対比の方が面白く感じました(笑)


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-13

「開山大師堂」などを過ぎて、少し坂道を上ると見えてくる「三重塔(重文)」。総高17メートルの小さな塔で、1283年頃の建立と推測されているそうです。それほど迫力は感じませんが、小ぶりで優しい雰囲気のある塔でした

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-14
三重塔の初層には、ご本尊の阿弥陀如来像と、巨勢金岡筆と伝わる極彩色の壁画が。五大明王像などを描いてあるそうです。非公開ですが、機会があったら拝見してみたいものですね


金の「黄金殿」、プラチナの「白金殿」!

ここまでが霊山寺の「クラシック」な部分で、ここからは「革新的」な部分へと移ります。

まず、大辯才天さんを祀る「辯天堂」がすごいんです!ここは一見普通のお堂に見えますが、手水舎などを見てみると、明らかに比較的新しく作られた、ちょっとずつモダンな感じの調度が揃っていました。

奈良のお寺では、あまり冒険的な施設などを見ることは少ないのですが、辯天堂の背後に建つ2つの最新のお堂がすごい!

片や、お堂を全て金箔押(!)にした「黄金殿」。片や、プラチナ箔押(!)の「白金殿」!鉄筋とガラスに守られたお堂は、もはやお堂にすら見えません。他のアングルから見ると、「崖の上に建った建築家がデザインした別荘」のようにすら見えますから、これはかなりのチャレンジだと思います!


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-15

霊山寺の「辯天堂」の手水舎。ここはなかなか最新設備が整ったお堂で、手水舎だってモダンデザインです。奈良ではあまり見られませんが、「今新しいお寺が建てられたらこうなるかも」という姿が見られて面白かったです

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-16
辯天堂の手水舎の龍たち。2匹の龍が絡み合い、口から水が落ちてきます。受ける石も変わっていて、アサガオの花のような形をしているんですよね。このタイプは初めて見ました!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-17
辯天堂前の線香台。本堂前のものと比べると、時代が下ったこともあり、明らかに華やかに、機能的になってきています

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-18
辯天堂の内部の様子。金箔をふんだんに使った、豪華絢爛な作りです。このお堂自体はそれほど新しいものではないのですが・・・

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-19
辯天堂の裏手には、何やら超近代的なお堂が!ものすごい違和感を感じさせてくれます!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-20
左手は、堂の内外を全て金箔押(!)にした「黄金殿」。大辯才天さんを祀っています。手前が、プラチナ箔押(!)の「白金殿」。大辯才天の霊感を受けた円照尼と、眷属・大龍神を祀っています。驚くほどの派手さでした!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-21
七福神像・・・と言いながらも、大辯才天さんは「黄金殿」の中にいらっしゃいますので、他の6体がこちらにいらっしゃいます。露払い的な役割を担っているのかもしれません

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-22
高台の上に建つ「黄金殿」と「白金殿」を見上げたところ。もうこれが仏教的なお堂であるとは、とても信じられません。新進気鋭の建築家の作品です・・・とでも言われた方が違和感がないくらいですね


新しい銅造仏「八体仏霊場」は・・・

そして、境内の入口近くに作られていた、比較的新しい銅造仏が並ぶ「八体仏霊場」も、なかなかの造形でした。

新しい仏像というのは、さすがに細かいところまでよく作りこんでありますし、現代人から見ても違和感無く受け入れられるデザインになっているものです。この八体の仏さまも、どれもとてもカッコイイ出来栄えなんですよね。

また、「干支それぞれに守護してくれる仏さまがいらっしゃる」というのは、他のお寺でよく見かけたりもしますが、パンフレットによると、どうやらここに「星座」の要素まで組み入れているのだそうです!

私も帰宅後に気づいたため、詳しくは聞いてこなかったのですが、西洋占星術的なものを取り込んでみたのか、陰陽道のような要素が登場するのか、かなり気になりますね(笑)。これもなかなかのチャレンジでしょう!


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-23

鳥居の横に、新し目の銅造仏が並ぶ「八体仏霊場」が。「十二支と星座を組み合わせて、生まれ年干支・生まれ日星座お守り本尊霊場として、八体の仏さまがご守護くださいます」とのことですが・・・、占星術まで取り入れるなんて斬新すぎます!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-24
ズラリと並んだ八体の仏様たち。向かって左から、阿弥陀如来・不動明王・大日如来・勢至菩薩・普賢菩薩・文殊菩薩・虚空蔵菩薩・千手観世音菩薩。それぞれに対応する干支があるのは知ってましたが、星座だとどうなるんでしょうね?

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-25
ここの仏さまたちもかっこいいのですが、水を噴き出す龍もなかなかの迫力です。やはり、今の技術でこの手の物を作ると、見栄えがしますよね


お寺の多角経営の成功例なのかも?

そして、先ほども書きましたが、霊山寺の境内には、入浴施設「薬師の湯」と、打ちっぱなし「霊山寺ゴルフ練習場」があります。さらに付け加えれば、お食事処「仙人亭」も営業していますし、ホームページでも紹介されている、バラのマークが目印のタクシー会社「霊山交通」も関連企業だと思われます!

うがった見方をすれば、「ばら園」を目当てに多数の参拝客がやって来るのも、経営手腕ですからね。こういうところこそ「近代経営のお寺」というのかもしれませんね!

なお、今回は時間の関係で見られませんでしたが、霊園の近くには地獄絵を描いた「地獄洞」などの施設もありますので、時間に余裕を持っての参拝をオススメします。


バラのお寺『霊山寺』@奈良市-26

こちらが、霊山寺の境内にある「薬師の湯」。小野妹子の息子「小野富人」からの歴史ある湯とのことです。ちなみに、入湯料は大人600円。お薬師さんのご利益があるお湯かもしれませんね!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-27
温泉だけではなく、ゴルフの練習場もあります!このすぐ脇には、重要文化財の三重塔があり、「最も文化財に近い打ちっぱなし」かもしれません!

バラのお寺『霊山寺』@-ご朱印
霊山寺でいただいたご朱印です。やや分厚めの朱印帳を購入したのですが、やや紙が黄色がかっていて、ちょっと後悔・・・


満開のバラの写真は次の記事で!

バラのお寺『霊山寺』@奈良市-28
この日は春の「バラ」シーズン真っ盛りでしたので、霊山寺「ばら園」もしっかりと見てきました。その様子は【2000株のバラが見事!『霊山寺』@奈良市<後編>】からご覧ください!



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■霊山寺(りょうせんじ)

HP: http://www.ryosenji.jp/
住所: 奈良県奈良市中町3879
電話: 0742-45-0081
宗派: 霊山寺真言宗
本尊: 薬師如来
創建: 736年
開基: 行基・菩提僊那
拝観料: 500円(バラの見頃の5~6月・10~11月は600円)
拝観時間: 9:00-16:30(本堂の公開は16:00まで)
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良線「富雄駅」より、奈良交通バス「霊山寺前」下車






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