「極楽浄土」が感じられる古刹『円成寺』
かなり夏の日差しが強くなってきて、お寺巡りも厳しい季節になってきましたが、この日は、あの大仏師「運慶」の若かりし頃(20代半ば~後半)作品を見に『円成寺』までドライブに出かけてきました。
奈良市街から柳生街道をわずか10km少々進んだだけなのですが、緑に囲まれたお寺は涼やか。山あいに佇む山岳寺院で、小じんまりとした古刹ですが、落ち着いた雰囲気が素晴しいですね!
庭園の池越しに眺める楼門が見事!
円成寺(えんじょうじ)は、奈良市街から柳生の里に向かう途中にある古刹で、山号を「忍辱山(にんにくせん)」といいます。
無料駐車場に車を停めて境内に入ると、いきなり名勝「浄土式庭園」が広がります。特に紅葉していたり花が咲き乱れていたり・・・ということも無かったのですが、池越しに見える「楼門(重文)」がとても美しく、まさに「極楽浄土」を感じさせてくれるような落ち着いた風景です。奈良のお寺では、このような風景は比較的少ないため、どことなく京都のお寺風のようにも見えました。
円成寺に来たのは初めてでしたが、紅葉の季節にはさぞ見事な眺めになるんでしょう。観光客もそれほど多くないため、ゆったりとお寺の雰囲気を楽しむには、最適かもしれません。
「忍辱山円成寺(にんにくせんえんじょうじ)」。奈良市街から柳生街道を10kmほど進んだ地点にある、静かな古刹です
浄土式庭園が広がり、その前にはポツリと小さな御茶屋さんが。中には入りませんでしたが、かなりの渋さです
名勝「浄土式庭園」。平安末期のもので、1975年頃に発掘調査や整備が行われたそうです。説明によると「浄土式と舟遊式を兼備した寝殿造系庭園」なんだとか
円成寺庭園の池越しに見える「楼門」。決して華やかさはありませんが、まさに「極楽浄土」を感じさせてくれるような、落ち着いた佇まいです。とても素晴しい眺めでした!
運慶の初期の作「大日如来坐像」
円成寺の境内は決して広くなく、すぐに全体が見渡せるくらいの規模。とても国宝の貴重な仏像が祀ってあるお寺とは思えないほどの、小さなお寺です。
しかし、1990年に再建された、まだ朱色が鮮やかな「多宝塔」の中には、運慶の20代の時の作品で、現存する中で最も早い時期に作られたという「大日如来坐像(国宝)」がいらっしゃるんですからスゴイですね。像高約1mの寄木造で、台座や光背まで、ほぼ制作当時のものが残っているのだそうです。
ガラス越しに拝まなければいけないのはやや残念ですが、距離はほんの数メートルほどで、お寺側で用意してくださっているガラスの反射よけメガネを使えば、かなりの至近距離から眺めることができるのです。像高は1mほどで、それほど大きな仏像ではありませんが、全体的に力強く均整が取れていて、かなり凛々しい印象の大日如来様でした。
贅沢を言えば、ガラス越しではなく、やや薄暗いお堂の中で拝みたかったとも思いますが、身近に感じられる存在なのかもしれません。
円成寺の境内の様子。決して広くはなく、本堂・楼門・多宝塔・護摩堂などがコンパクトにまとまっています
円成寺「多宝塔」。1990年に再建されたもので、運慶作の「大日如来坐像(国宝)」が祀られています
ガラス越しに拝見するため、乱反射対策としてこんな秘密兵器(?)が用意してありました!確かに、これを使うとよく見えるんです
重厚感のある「楼門」も必見です
浄土式庭園の池越しに見えた「楼門」も、間近で見てみると、かなり重厚感のある、素晴しい建築物でした。
京都にも近い位置にある円成寺は、応仁の乱(1466~1476年)の戦火によって多大な被害を受けましたが、この楼門は戦中の1468年に再建されたものです。山岳寺院らしい、落ち着いた「桧皮葺」で、組物も格式のある「三手先」に「花肘木」を使用しているなど、相当に凝った作りになっているのが分かります。
また、楼門から眺める庭園の眺めも涼やかで美しいのです。それほど目立つ建築物ではありませんが、細部までじっくり見ていても決して飽きることはありません。
池越しに見えていた「楼門(重文)」。1468年に再建されたもので、かなりの重厚感があります
組物は格式高い「三手先」。最下層部には「花肘木」を使用しています。本堂が比較的簡素な作りになっているのに比べて、かなりの様式美ですね
楼門から眺める浄土式庭園。現在、ここは出入りできなくなっているのが残念ですが、とても落ち着く風景ですね
ゆったりと「極楽浄土」気分を!
また、円成寺の1466年再建の「本堂(重文)」もなかなか変わった作りで面白かったですね。
・寺院建築には珍しい「舞台付寝殿造(正面両脇に舞台スペースがある)」
・入母屋造の「妻(屋根が三角に見えるところ)」側を正面にしていること
本堂内部の装飾もかなり豪華なものでしたが、内陣の柱に極彩色で描かれた「聖衆来迎二十五菩薩」が本当に見事でした!ところどころ色が落ちてきているのですが、それがまた雰囲気があるんです。
庭園部分でも同じことを思いましたが、本堂の内部でもやはり「極楽浄土」を感じられるような、とても素晴しいお寺でした。観光客でごった返すような立地でもありませんので、ゆったりとした雰囲気を味わいたい方は、ぜひお参りに来てみてください。かなりオススメです!
円成寺の「本堂(阿弥陀堂)」。1466年の建築で重要文化財に指定されています。全体的には寝殿造風で、入母屋造の妻入(屋根が三角に見える方向を正面にすること)は、仏堂建築には珍しいのだそうです。正面の両脇に舞台がついているのも珍しいですね
本堂の内部には、ご本尊の「阿弥陀如来坐像」と「四天王立像」が。それ以上に目を惹くのが、内陣の柱に極彩色で描かれた「聖衆来迎二十五菩薩」です。あまりの見事さに、かなり驚かされました!
本堂の軒は「平行垂木」。シンプルで現代的にも思える装飾です。この本堂は全体的に独特の作りになっていて、とても面白いですね
1228年築の国宝「春日堂・白山堂」。全国で最も古い春日造社殿なのだとか。とても小さなお社ですが、こんな国宝もあるんですね
円成寺のご朱印です。歪んでる・・・?
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■円成寺
住所: 奈良県奈良市忍辱山町1273
電話: 0742-93-0353
宗派: 真言宗御室派
本尊: 阿弥陀如来(重要文化財)
創建: (伝)756年、または1026年
開基: (伝)聖武・孝謙両天皇(勅願)、または命禅上人
拝観料: 400円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄「奈良駅」から、奈良交通バス「忍辱山」下車