2010-01-18

インド渡来の巨大石仏!個性派寺院『壷阪寺』@高取町

インド渡来の巨大石仏!個性派寺院『壷阪寺』@高取町

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、六番札所『壷阪寺(南法華寺)』へ行ってきました。

壷阪寺では、特別に秘仏が公開されているワケではありませんが、眼病に霊験あらたかな異国風の顔立ちの御本尊「十一面千手観音菩薩像」とご結縁をいただいてきました。


「枕草子」にも登場する古刹です

西国三十三所観音霊場の第六番札所『壷阪寺』(正式には「南法華寺」。「壺阪寺」の字が当てられることもあります)。

壷阪寺の開基は703年、元興寺の弁基上人によって開かれたとされています。境内からは藤原時代の瓦が多数出土しており、元正天皇の祈願寺ともなっていました。南法華寺の名前は、京都の清水寺の「北法華寺」に対するもので、長谷寺とともに古くから観音霊場として栄えてきました。平安貴族たちも盛んに参拝し、清少納言の「枕草子」の中では「寺は壷坂、笠置、法輪・・・」と、霊験の寺の筆頭に挙げられています。

西国三十三所観音信仰の広がりとともに栄え、最盛期には、山内に三十六堂、六十余坊の大伽藍を配していましたが、戦国の動乱期にほとんどの堂宇を焼失していまします。その後、豊臣秀吉の弟秀長の家来である本多利久が高取城主となり、本多氏とその後の植村氏の庇護を受け、寺勢は復興していきました。

明治の初めには、盲目の夫「沢市」とその妻「お里」の夫婦の物語『壺坂霊験記』が作られ、人形浄瑠璃や歌舞伎・講談などで何度も上演されて、壷阪寺の名前はさらに広まりました。

現在は、様々な社会奉仕活動も行っており、日本初の養護盲老人ホーム「慈母園」を設立。インドでもハンセン病患者救済活動にも尽力し、境内にはインドから贈られた大石仏やレリーフなどが見られます。


奈良のお寺でも特に異彩を放ってます

壷阪寺というお寺は、良くも悪くも奈良の古刹とはかけ離れた印象を受けるお寺です。古くから何度も台風や火災にあっているため、古い建物は1497年の建立の「三重塔(重文)」や、室町時代建立の「礼堂(重文)」ほどです。

1998年から伽藍の整備工事が行われたため(仁王門の場所を移動するなどの大規模工事でした)、全体的な配置も変えられ、「多宝塔」「灌頂堂」などは21世紀に入ってからのものとなります。

さらに、インドでのハンセン病患者救済活動の繋がりから、境内にはインドで彫られた石造物が多数あります。

・1983年に開眼した、20mの「大観音石像」
・1986年に設置された、全長50mに及ぶレリーフ「大仏伝図」
・1992年に落慶した、高さ8.5m×幅12m×奥行11mの「大石堂」
・1999年に安置された、8mの「大涅槃石像」
・2007年に開眼した、10mの「大釈迦如来石像」

奈良のお寺の中でも、西国三十三所のお寺の中でもひときわ異彩を放っているのが壷阪寺だと言えるでしょう。


壷阪寺@高取町-01

奈良県高市郡高取町にある『壷阪寺』(南法華寺)。西国三十三所観音霊場の第六番札所です。境内は山間にあり、古い木造建築から巨大な石仏まで、さまざまな見どころがあり、かなり不思議な雰囲気です。良く言えば賑やかな、悪く言えば統一感の無い印象のお寺です

壷阪寺@高取町-02
高いところから見下ろした壷阪寺の全景。比較的新しい建物も多い中で、15mの「大釈迦如来石像」が目立ちます。この他にも2体の大きな石仏がいらっしゃる、奈良には珍しいタイプのお寺です

壷阪寺@高取町-03
手前が「多宝塔」で、奥が「灌頂堂」。多宝塔は、2002年に建てられたまだ新しいもの。御本尊は平安時代の大日如来さまで、この日はその姿を拝見することができました。灌頂堂は、壷阪寺開創1300年祭に初願、2005年に再建されたものです

壷阪寺@高取町-04
壷阪寺の灌頂堂の内部。御本尊は小さめの「十一面千手観音」さま。そして、向かって左手が、江戸時代前期の大名で、高取藩の初代藩主の「本多俊政公像」。右手が、太閤秀吉の弟で大和大納言と呼ばれた「豊臣秀長公像」。高取の地に相応しい像ですね

壷阪寺@高取町-06
石段途中に通る「壷阪寺滋眼堂」の内部。天井に梵字、壁にはインド風の宗教画、この他にも寝大仏や釈迦誕生仏がいらっしゃったりと、小さいながら変わったお堂です

壷阪寺@高取町-07
重要文化財に指定されている「三重塔」。1497年の建立で、内陣には大日如来坐像・弘法大師像が安置されています。平城遷都1300年祭の関連で、2010年の春と秋の2回だけ、初めて初層が公開されることが決定しています!


目力が強い「十一面千手観音菩薩像」さん

ただでさえ見どころが多い壷阪寺ですが、珍しいことに、本堂内や仏さまの「写真撮影」を許可していただけるお寺です(お寺の方には確認してあります)。「礼堂(重文)」とそれに繋がっている「八角円堂」には、数十体の仏さまがいらっしゃいますので、それを拝見するだけではなく、写真に納めることができるのは嬉しいですね。

壷阪寺の御本尊である「十一面千手観音菩薩像」さんは、室町時代に再興された、ふくよかで異国的な顔立ちの仏さまです。眼病に霊験あらたかとされているためか、目鼻立ちがはっきりとしていて、目力がすごいんですよね。像高240cmと大きな像ですので、かなり迫力があります。

他にも、それほど時代が古いものではありませんが、夫婦観音さん・執金剛像・役行者像(彩色付き)など、面白い仏さまがいらっしゃいました。


壷阪寺@高取町-08

壷阪寺の「礼堂(禮堂)」。何度も焼失を繰り返し、現在の建物は室町時代のもの。この裏手には御本尊を祀る「八角円堂」が繋がって建っています。創建は703年で(現在は江戸時代のもの)、日本最古の八角堂だったのではないかという学説もあるのだとか

壷阪寺@高取町-09
壷阪寺は珍しい「堂内の写真撮影OK」というお寺ですので(お寺の方に確認してあります)、カメラ好きな方にはたまらないでしょう。ただし、文化財保護のためにフラッシュは焚かない、三脚などを立てて他の参拝者の邪魔をしないなどのマナーは守りましょう

壷阪寺@高取町-10
コチラが壷阪寺の御本尊「十一面千手観音菩薩像」。室町時代に再興された像高240cmの大きな像です。全体的にふくよかで堂々としていらっしゃいますが、やはり表情が独特。お顔立ちがはっきりとしているため、より異国風に見えます

壷阪寺@高取町-11
御本尊さまのすぐ近くにあった巨大な「独孤(どっこ)」に手を触れて、ご結縁をいただきました。西国三十三所結縁御開帳として、お身拭いをさせていただける期間もあります


沢市・お里の『壺坂霊験記』で有名です

古くから、壷阪寺の眼病に霊験あらたかとされているため、眼に関するお守り・目薬(高取町は薬の生産で有名です)などがあるだけではなく、珍しい「めがね供養」なども行ってくれるのです。眼に関する願い事なら全てカバーしていると言っていいでしょう。

これを有名にしたのが、明治時代に人形浄瑠璃として初演された『壺坂霊験記』です。簡単にあらすじだけご説明しておきます。

盲目の「沢市」は、その妻「お里」と仲睦まじく暮らしていたが、ある時から、お里が毎晩床を抜け出していくことに気づく。浮気かと問いただすと、お里は沢市の目が治るよう、三年間も欠かさず壷阪寺の観音さまにお祈りしていると告げる。

疑った自分を恥じた沢市は、ともに観音様にお参りすることにしたが、盲目の自分を責め、身を投げてしまった。それに気づいたお里も、後を追って身投げしてしまう。しかし、観音さまの霊験により奇跡が起こり、二人は助かり、沢市の目の病も治った。


壷阪寺には、沢市・お里の石像や石碑、そして二人が身を投げた「投身の谷」と呼ばれる谷もありますので、興味のある方はどうぞ!


壷阪寺@高取町-12

眼の病気に霊験あらたかとされる壷阪寺は、もちろん絵馬だって「め」の文字入りです(運のめが開くように)。眼のお守りなどはもちろん、薬の町「高取町」のお寺らしく、医薬品の目薬だって販売していますので、お土産にどうぞ!

壷阪寺@高取町-14
また、壷阪寺の名前にかけて「思う壺おみくじ」なんてものもあります(壺の中から手づかみするだけですが)。また、「思う壺守」という、金銀の縁起の良さそうなお守りもありました

壷阪寺@高取町-15
壷阪寺の境内にある、盲目の夫「沢市」とその妻「お里」の石碑。このお話は『壺坂霊験記』といい、人形浄瑠璃や歌舞伎・講談などで何度も上演されたのだそうです。礼堂の裏手には「お里・沢市の像」もありますので、お好きな方はお見逃しなく


数ある天竺渡来の石造物は大迫力です!

さらに、壷阪寺の最大の特徴の「天竺渡来の石造物」たちも見どころでしょう。

2007年に開眼法要を行った「壷阪大仏」を筆頭に、10mクラスの石仏だけで3体いらっしゃいますし、全長50mのレリーフや巨大な大石堂などが立ち並んでいます。このほとんどが南インドの石彫師や石工が彫ったもので、見るからにインドテイストなんですよね。日本のお寺と言うよりも、タイ辺りのお寺の雰囲気すら感じてしまいます。

真新しい石仏はどこか有難味に欠けるような気もしてしまいますが、改めて見てみるととても美しいものなんですよね。好みは分かれるところだと思いますが、毛嫌いしたりせずに、ぜひ楽しんでみてください!


壷阪寺@高取町-16

壷阪寺の礼堂に向かって立つ、天竺渡来仏伝図レリーフ「釈迦一代記」。高さ3m、長さ50mの大きなもので、1987年に安置されました。南インドで延べ57,000人の石彫師の手で彫られた、大迫力のレリーフです

壷阪寺@高取町-17
レリーフ「釈迦一代記」の前には、仏足石の他、こんなレリーフなどが並んでいます。いかにも天竺招来という文様が美しいですね

壷阪寺@高取町-18
こちらは、2007年に開眼法要を行った天竺渡来「大釈迦如来石像(壷阪大仏)」。身の丈10mの巨大な石像です。御前立には十一面千手観音菩薩像・文殊菩薩石像・普賢菩薩石像の三尊が。獅子の表情なんてかなりいいですね!

壷阪寺@高取町-20
壷阪寺の「天竺渡来大石堂」の内部。総重量1,500トンに及ぶ大石堂で、奥は納骨室になっています。小さな石仏が連続する姿は迫力がありますね。インドと日本の仏教が融合したような、不思議な印象です

壷阪寺@高取町-21
一段小高い場所に立つ「天竺渡来大観音石像」。1983年の開眼で、高さは20mもあります!インドの延べ7万人の石工が作業に参加し、あまりに巨大過ぎるため66個のパーツに分割されて日本へやってきたのだとか!

壷阪寺@高取町-22
私が足元に立ってみたところ。とにかく圧倒的に大きいですね。遠目にも目立ちますが、近づいてみると、石の文様が美しいんです。大きな石の仏さまもとても素敵ですね

壷阪寺@高取町-23
壷阪寺の大観音石像の前には、全長8mの寝大仏「天竺渡来大涅槃石像」が!10m前後の大仏さんがここまで揃っているお寺は、他にはなかなか無いかもしれません。表面の仕上げが滑らかで見事ですので、ぜひじっくりと見てみてください

壷阪寺@高取町-24
壷阪寺には、四国八十八ヶ所霊場お砂踏みもあります。その前にお地蔵さんと灯篭がズラリと並ぶ姿が見事!色違いの毛糸の帽子を被って、本当に美しい光景でした

壷阪寺-ご朱印
壷阪寺でいただいたご朱印です。達筆!



より大きな地図で 壷阪寺(南法華寺) を表示


■壷阪寺(南法華寺)

HP: http://www.tsubosaka1300.or.jp/
住所: 奈良県高市郡高取町壷阪3番地
電話: 0744-52-2016
宗派: 真言宗
本尊: 十一面千手観音菩薩像
創建: 703年(大宝3年)
開基: 弁基上人
拝観料: 600円
拝観時間: 8:30 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり(普通車500円)
アクセス: 近鉄吉野線「壺阪山駅」より、奈良交通バス「壷坂寺前行き」で約10分、終点下車

※西国三十三ヶ所観音霊場の第六番札所
※眼病に霊験があるそうです






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ