貴重な寺宝が並ぶ待望の展示施設『東大寺ミュージアム』
2011年10月、ついにオープンした『東大寺ミュージアム』。初日から出かけて来ましたが、本当に素晴らしい展示施設になっていました。さすがに混雑していたものの、開館記念特別展「奈良時代の東大寺」は、感動的な内容でした。
東大寺の複合施設がついにオープン!
2011年10月10日、東大寺の膨大な寺宝を展示する『東大寺ミュージアム』を含む、東大寺の教学・歴史・文化の発信基地となる「東大寺総合文化センター」がオープンしました。場所は、東大寺・南大門のすぐ近くで、旧東大寺学園の跡地です。
グランドオープンの企画展は、東大寺ミュージアム開館記念特別展「奈良時代の東大寺」(2012年1月14日まで)。修理中の法華堂の諸仏や、奈良国立博物館へ寄託されていた貴重な宝物が集まった、とても華々しい内容となりました!
奈良市の東大寺境内に10日オープンする「東大寺ミュージアム」の内部が3日、報道陣に公開された。開館記念の特別展では、修理中の法華堂(国宝)の本尊・不空羂索(ふくうけんさく)観音像と脇侍(きょうじ)の日光・月光(がっこう)両菩薩像の国宝3体をはじめ、今年度中は国宝12件、重要文化財24件を含む延べ60件が展示される。免震装置を備えた展示室は約600平方メートル。国宝3体を展示する第2室は、白壁に朱塗りの柱、格子状の天井や欄干を設置して法華堂の内陣をイメージし、祈りの空間をつくり出した。
オープン当日は、30分ほどの待ち時間が発生したそうですが、比較的スムーズに拝観できたようです。私たちも十分に楽しんできました。
2011年10月、東大寺の展示施設『東大寺ミュージアム』が誕生しました。所在地は、南大門をくぐってすぐ左手、大仏殿へ向かう途中にあります。ミュージアムを中心として、図書館・収蔵庫・寺史研究所・華厳学研究所・金鐘会館が入った複合施設となっています
東大寺ミュージアム前の参道沿いには、チケット販売ブースが設置されました。ただし、ここで販売されるのは「大仏殿・東大寺ミュージアム共通割引券」のみ。別々に購入すると千円のところを800円で入場できます。どちらか片方でいいという方は、ここではなく、それぞれの建物の販売窓口で購入しましょう
この日が記念すべきグランドオープン日ということで、南大門のところにも告知の看板が設置されていました。記念すべき最初の展示は「特別展 奈良時代の東大寺」。修理中の東大寺・法華堂のご本尊である不空羂索観音立像(国宝)を中心に、素晴らしい寺宝が揃いました
オープン直前の様子。数百人の行列ができて、最後尾は南大門まで届いたほどでした!初日は一部で入場制限が行われて、30分ほどの待ち時間も発生したようです。しかし、3連休の最終日と考えると、比較的のんびり拝観できたと思います
東大寺ミュージアムの入り口は、建物に向かって左手(人が多すぎて写真はありません)。建物右手は、東大寺図書館や研究所などの入口があります。東大寺図書館の様子も見てみたかったのですが、一日遅れて11日オープンとのことでしたので、この日は拝見できませんでした
不空羂索観音さまなどの仏像が至近距離に
東大寺ミュージアムの館内に入ってみると、館内は全体的に薄暗くなっていて、展示品がLED照明でライトアップされています。仏さまや宝物とはガラス越しに拝するものがほとんどですが、光が反射しづらい特殊なガラスが採用されているとのことで、ガラスの存在はほとんど気になりませんでした。
メインとなる第2室では、中央に法華堂(三月堂)のご本尊である「不空羂索観音立像(国宝)」が、その両脇に日光・月光菩薩立像(国宝)がいらっしゃいます。ここも大きな4枚のガラスで囲われていますが、ちょうど中央でガラスが合わさるため、正面に立った際にやや気になりました。
この第2室は、高い天井はお堂のような造りになっていて、東大寺の僧侶の方々が、1日2回の勤行を行うのだとか。私たちも拝見できましたが、読経の際にはガラス戸が開かれますので、タイミングが合えば拝見できますね。
個人的には、「仏さまは博物館のガラス越しに見るのではなく、お堂で拝したい」と思っていますが、この東大寺ミュージアムも興福寺の国宝館も、最新型の設備だけに、素晴らしい展示となっています。ガラス越しとはいえ、貴重な国宝の不空羂索観音さまたちを2mほどの至近距離から拝めるのですから、これは嬉しい限りですね。
東大寺ミュージアム開館記念特別展「奈良時代の東大寺」(2012年1月14日まで)のチラシと展示期間などの案内。期間中に展示入れ替えなども行われ、国宝12件、重要文化財24件、奈良県指定文化財1件など、計60件が展示されます。「奈良時代の」というテーマでこれだけの宝物が集められるのですから、さすがは東大寺です!
今回の展示のメインとなっている、法華堂(三月堂)のご本尊である「不空羂索観音立像(国宝)」。法華堂の修理中だからこそこんなに間近で拝見できましたし、美しい宝冠や光背も修理中のため、とてもシンプルな、男性的にも見えるお姿となっています。像高362cm、脱活乾漆造の巨像です。天平時代を代表する仏さまですね(画像は全て図録より)
両脇を固める「日光・月光菩薩立像(国宝)」。ともに像高は2m強の塑像です。以前の法華堂の仏像が密集した状態ではあまり注目していなかった方も、今回の展示でははっきりと拝見できるでしょう。一対の像ですが、服の衣紋の表現などが全く違うことが分かります。塑像では日本一美しい仏さまかもしれませんね
東大寺の歴史が伝わる素晴らしい展示でした
東大寺ミュージアム開館記念特別展「奈良時代の東大寺」を拝見して、そして後から図録を熟読した感想を簡単に記しておきます。ただし、私は仏像好きなので、そちらメインになりますのでご容赦ください。
●展示の規模自体はそれほど大きくありません。単純に比較できませんが、興福寺・国宝館の半分ほどといった印象でした。サッと手短に拝観するなら20分ほどで済むでしょうし、じっくりと観ていくと1時間くらいはすぐに過ぎていくと思います。
●さすがは東大寺の寺宝が集まっただけあって、展示内容は本当に豪華。入場してすぐに「誕生釈迦仏立像及び灌仏盤(国宝)」のガラスケースがあり、360度どこからでも見られます。この他、いわゆる「試みの大仏」さまや、鎌倉時代の「西大門勅額(重文)」(快慶作の可能性もあるとか)など、奈良博でもメイン扱いで展示されていた仏さまや宝物が、こちらへ移動してきたのですから、それは豪華です
●大仏殿前の八角燈籠についていた羽目板などというものが存在することにも驚きました!ふくよかな音声菩薩がレリーフされているもので、盗難にあって以降、別途収納されているのだとか。また、お水取り展などでも展示されるという、二月堂の絶対秘仏のご本尊の光背「二月堂本尊光背(重文)」が見られたのも嬉しかったですね。次に二月堂を仰ぎみた時に、イメージが大きく膨らみます!
●「不空羂索観音立像(国宝)」は、お堂の修理が終えたら法華堂に戻ります。一方、「日光・月光菩薩立像(国宝)」はこのままミュージアムで展示されますので、この三尊の並びで拝見できるのは、2012年1月までとなります。なお、また確定していない噂話ですが、不空羂索観音さまが戻られた後、空いたスペースには、現在修理中の塑像「弁財天立像(重文)」「吉祥天立像(重文)」がここに安置されるのではないかとのことです。
●私などにはただの古いお面にしか見えない「伎楽面」も、752年の大仏開眼会の際に使用されたもの!この他、東大寺の歴史を記す資料も豊富で、派手さはありませんがどれも面白いです。複製品でしたが、戒壇院周辺から出土した木簡の破片に、ただ「菩薩」と書いてあるなんて、個人的なツボでした(笑)
●「東大寺の歴史」というテーマですが、新発見の話題も豊富です。1907~1908年の大仏殿修理の際に、須弥壇から鎮壇具とともに見つかった、熟年男性の人の歯。これは聖武天皇のものである可能性も指摘されていますが、ちゃんと展示されていました。
●同じく大仏殿の須弥壇から見つかった刀は、2010年のX線調査で『国家珍宝帳』に「除物」として記載され、正倉院から持ち出された後に行方不明になっていた「金銀荘大刀」と判明しています。こちらは修理中のため、残念ながら写真展示でしたが、東大寺の歴史と今を実感できます。
ガラスケースで展示されていた小像たち。向かって左が「釈迦如来坐像及び多宝如来坐像」(文化財指定はなし)です。戒壇堂伝来のニ体一対の金銅仏で、奈良時代のもの。美しい文様は江戸時代に施されたとか。東大寺・戒壇堂の中央に置かれた多宝塔に安置されていたと考えられる、本当に貴重な仏さまです(右は「菩薩半跏像(重文)」)
「二月堂本尊光背」。二月堂のご本尊である、絶対秘仏の十一面観音さま(大観音)の光背ですが、江戸の火災の時に焼け出されたものの断片なのだそうです。決して拝することができない方だけに、ちょっとした感動でした。お水取りを拝見する時に、この姿を思い出すと思います
有名な戒壇堂・四天王像も以前は法華堂に?
また、私は今回の図録を読んで初めて知ったことですが、法華堂の修理に伴う調査結果から、私たちが知っている仏さまが乱立するような法華堂とは全く違った姿であったことがほぼ確実視されてきているのだそうです。
●法華堂のご本尊。巨大な脱活乾漆像「不空羂索観音立像(国宝)」
●法華堂で秘仏として祀られている「執金剛神立像(国宝)」
●法華堂から東大寺ミュージアムに安置されることになった「日光・月光菩薩立像(国宝)」
●東大寺・戒壇堂に祀られる、四天王像の最高傑作「四天王立像(国宝)」
不空羂索観音像を中心として、塑像7体が眷属としてご本尊を守護していたのだとか。いずれもサイズ・作風・技法が似ているため、その可能性が指摘されていましたが、法華堂の八角型の台にこれらを安置した形跡が見つかり、ほぼ確実のものとなったそうです。
以前の18体もの仏さまが密集する状態を見慣れてしまいましたが、戒壇堂の四天王像もこちらにいらっしゃったんですね!ぜひ同じ日に戒壇堂も拝観して、その当時の法華堂の様子を想像してみたいですね。
東大寺ミュージアムに合わせて、東大寺の諸堂を拝観するのはもちろん、興福寺「国宝館」(紹介記事)や、奈良国立博物館「なら仏像館」(紹介記事)と合わせて回るのもいいですね。楽しみ方がより一層広がったと思います。
東大寺クラスのお寺さんともなれば、貴重な宝物は多数所蔵しているでしょう。展示内容も次々に入れ替わるはずですので、本当に期待したいと思います。また、奈良博も仏像館も多数の所蔵品があるはずですから、東大寺の寺宝が空いたスペースがどのようになっているのか楽しみですね。
もちろんミュージアムショップも!
ミュージアムショップは、それほど大きなものではありませんので、奈良博ほどの迫力はありません。しかし、目移りする…とまではいきませんが、東大寺らしい贅沢なグッズもたくさん並んでいました。大混雑でしたので、のんびりしている余裕も無かったのですが、何点か購入してきました。
やはりメインは、海洋堂が製作したフィギュア「月光菩薩立像」「誕生釈迦仏」でしょう。サイズはそれぞれ20cm弱。ずっしりと重く、本当に素晴らしい出来栄えですね。定価3500円ですが、東大寺ミュージアムの開館記念として、千体限定で2000円で販売していました。定価販売に戻ると思いますが、フィギュア好き・仏像好きな方はぜひ!
向かって右手が、今回の特別展の図録(確か1500円)です。さすがに充実の内容で、じっくりと読むと展示意図が明確に伝わってきますし、またミュージアムにも行きたくなりますね。左手は、東大寺・阿弥陀堂にいらっしゃる秘仏・五劫思惟阿弥陀如来坐像のクリアファイル(350円)。裏面はシルエットになっていて、ポップな仏さまがポップにデザインされています!
海洋堂制作のフィギュア「月光菩薩立像」と「誕生釈迦仏」。東京で開催された「東大寺展」で始めてお目見えしたものですが、ようやく奈良でも購入できました!それぞれ20cm弱のサイズで、定価3500円のところを、東大寺ミュージアム開館記念で千体限定で2000円。嬉しいキャンペーンでした
実は頑張って「一番乗り」してました
余談になりますが、この日、東大寺ミュージアムのオープンは9時半でしたが、私は一番乗りを目指して6時半から並んでみました。お陰さまで見事にトップで入館できたのですが、色々と大変でした(笑)
折りたたみの椅子や温かいお茶、本などを用意して挑んだため、少し肌寒かったくらいで、体は平気でしたが、目立ってしまってなかなか恥ずかしいんですよね…。
しかし、その甲斐もあって、記念すべき第一号ということで、長老の森本公誠・東大寺総合文化センター総長から、記念に図録をプレゼントしていただけました!こんなことは一生に一度ですから、本当に嬉しかったです。新聞記者の方たちにお話を聞かれたりして、いい経験をさせていただきました!
東大寺ミュージアムのオープンは9時半。実はこの日、私は一番乗りするために、3時間も前の6時半から並んでみました!こんなことは初めてなので不安ですし、他の参拝客の方から「何やってんの?」という目で見られて恥ずかしかったのですが、無事に第一号になれました。朝の南大門前なんて、鹿しかいませんからね(笑)
当日、近鉄奈良駅などで配布された、朝日新聞さんの特別号外。一番乗りということで、記者さんに取材された私のコメントがここに掲載されたりしました。この他にも、ネットや新聞紙面でもコメントが紹介されたようです
■東大寺ミュージアム(東大寺総合文化センター)
HP: http://culturecenter.todaiji.or.jp/index.html
住所: 奈良県奈良市水門町100番地
電話: 0742-20-5511
拝観料金: 大人 500円、小学生以下 300円(大仏殿との共通割引券あり)
休館日: なし(展示替えなどでの臨時休館日あり)
開館時間: 9:30 - 17:00ごろ(大仏殿の閉門時間に準ずる)
駐車場: 有料駐車場を利用
※大仏殿の閉門時間は、11月~2月-16時半、3月-17時、4月~9月-17時半、10月-17時。
※奈良国立博物館で「正倉院展」の開催期間中は18時まで。同じく金土日祝は19時まで。
※3月1日~14日までの修二会行法期間中は19時まで
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