2013-10-12

石舞台古墳に次ぐ大きさ!『牧野古墳』石室公開@広陵町

石舞台古墳に次ぐ大きさ!『牧野古墳』石室公開@広陵町

広陵町の『牧野古墳(ばくやこふん)』が、石舞台古墳に次ぐ大きな石室を持つ、古墳時代末期の巨大円墳です。石室内部は、普段は事前連絡をしないと拝見できませんが、この秋の土日祝は一般公開され、広陵町文化財ガイドの方の説明を聞きながら拝見できます。想像以上の大きさと面白さでした!


この秋の土日祝のみ、一般公開されています

広陵町から河合町の一帯には、大規模な古墳群「馬見古墳群」(Wikipedia)が広がり、「馬見丘陵公園」として整備されています(広陵町の「古墳」ページ)。


そんな馬見古墳群にあり、国の史跡に指定されている大型円墳が『牧野古墳(ばくやこふん)』です。

三段構築の円墳で、その直径は約48~60m、高さ13mという大きなもの。古墳時代末期(6世紀末ごろ)のもので、この頃はちょうど巨大な前方後円墳が築かれなくなった時期に当たります。そんな時期にこれだけ大きな円墳が築かれているのですから、当時の有力な人物が埋葬されたことは間違いありません。

また、牧野古墳の石室は、石舞台古墳に次ぐ大きさという立派なもの。普段は施錠されているため入れませんが(事前申し込みすれば拝見できます)、2013年の秋の週末に限って、広陵町文化財ガイドの方たちの説明を受けながら、石室内部を拝見できます!

牧野古墳の一帯は「牧野史跡公園」として整備保存されています。この辺りは自宅から近いので何度も通っていますが、実際に来るのは初めてでした。現地につくと、テントの下に広陵町文化財ガイドの方たちがいらっしゃって、資料をいただいて、すぐに牧野古墳の石室へと案内してくださいました。

『牧野古墳』石室公開@広陵町-01
「牧野古墳石室公開のお知らせ」のポスター。広陵町の図書館で偶然発見して驚きました!開催期間は「平成25年10月5日~11月24日」。土日祝の10時~15時まででしたら、いつでも文化財ガイドの方がいらっしゃいます。巨大な石室を拝見するチャンスですね

『牧野古墳』石室公開@広陵町-02
広陵町の「牧野史跡公園」へ行ってみると、文化財ガイドの皆さんがいらっしゃいます。私たちのレベルに合わせて説明してくれますし、お話も分かりやすくて楽しかったです。例えばお子さん連れなどでも気軽にお願いしてみるといいですね

『牧野古墳』石室公開@広陵町-03
現地にあった説明。いただいたパンフレットにほぼ同じ内容のものが掲載されていました

『牧野古墳』石室公開@広陵町-05
石段を登っていくと、牧野古墳の石室の入り口へたどり着きます。遠目からみるとただの丘にしか見えませんが、ちゃんと古墳なんですね。普段は石室内には入れませんが、入り口までは来れます


被葬者は敏達天皇の皇子・押坂彦人大兄皇子か?

史跡 牧野古墳

丘陵の南斜面に築かれた円墳で、径約55メートル、高さ13メートル、南面に横穴式石室が開口している。石室は巨大な花崗岩を使用して構築している。羨道は長さ10メートル、高さ2メートル、幅1.8メートル。玄室は長さ7.0メートル、幅3.3メートル、高さ4.5メートルに及ぶ。玄室内には刳抜(くりぬき)家形石棺があり、また組合石棺もあったが、完全に破壊されていた。石室内は盗掘されていたが、金銅装の馬具、武器、装身具、土器等の副葬品が多量に残されていた。

当古墳は馬見丘陵では数少ない横穴式石室を有する古墳として重要であるばかりでなく、県下でも最大級の巨大な横穴式石室として学術上きわめて貴重な古墳である。

なお被葬者は敏達天皇(538~585即位、572~585)の皇子、押坂彦人大兄王であろうとする説がある。

現地の説明より


この説明では分かりづらいですから、ガイドの方に教えていただいたこと、後から調べて知ったことなどの要点をまとめておきます。

●三段構築の円墳。直径は約48~60mという巨大さを誇っている。馬見丘陵には、前期~中期の古墳が多いが、牧野古墳だけが後期に作られたもの。

●敏達天皇の皇子・押坂彦人大兄皇子(おしさかひこひとおおえのおうじ)が埋葬されたと延喜式に記録されている「成相墓」(なりあいばか)の可能性が高い。この皇子は皇位継承の有力候補だったはずだが、詳しい人物像は分かっていないとか。

●延喜式の記録によると、成相墓の規模は「東西15町、南北20町」(3平方キロほど)という巨大なもの。仁徳天皇陵が「東西8町、南北8町」ですから、想像を絶する大きさです。墓守役が5戸もあったと記録されているそうです。

●蘇我馬子の墓とされる「石舞台古墳」が、長さ7.7m×幅3.5m×高さ4.7m。牧野古墳の玄室のサイズは、長さ7.0m×幅3.3m×高さ4.5mと、これに次ぐ大きさ。

●馬見丘陵の一帯は「豆山3里小石一つ無し」と言われたほど、石が少ない粘土質の土地だった。これだけの巨石を遠くからわざわざ運んできた。

●玄室に「刳抜(くりぬき)家形石棺」がある。一部は削られてしまってどこかへ転用されたようだ。手前にもう一つ石棺があったが、完全に破壊されて跡形もなくなっていた。

などなど。時代背景などを考えると、とにかくスケールの大きなお墓なのです。


『牧野古墳』石室公開@広陵町-06

石室の入り口にある説明書き。読んでいくとこの古墳の貴重さが分かります


天井が高い!巨石が積み重なって迫力あります

ガイドさんの後について牧野古墳の石室へ入ってみると、その大きさに圧倒されました!

大雑把な感想としては、やはり見慣れた石舞台古墳に近いと感じましたが、幅広かった地面の部分が天井へ近づくほど狭まっていく様子は、ちょっとした圧迫感を感じます。内側に倒していった方が安定は増すんでしょうね。こうした工法を用いていた専門集団が存在していたそうで、同じような規格の古墳をいくつか構築しているそうです。

また、古墳ですから当然のことですが、薄暗い石室の中に石棺があることによって、より埋葬施設としての存在感が増しますね。詳しい説明も伺えましたし、とてもいい体験をさせていただきました!


『牧野古墳』石室公開@広陵町-07

普段は閉ざされている横穴式石室への入り口も、この日は開かれています!

『牧野古墳』石室公開@広陵町-08
羨道から奥へ。中は照明などありませんので、外から差し込む光と、ガイドさんが持つ懐中電灯の灯りだけが頼りです。詳しく観察したい方はマイ懐中電灯を持参するといいかもしれません

『牧野古墳』石室公開@広陵町-09
牧野古墳の石室の内部(玄室部分)。ちゃんと石棺が遺されているのも驚きますが、天井が高いのにも驚きます!玄室のサイズは「長さ7.0m×幅3.3m×高さ4.5m」。上に行くに従って内側に寄っているのが分かります。こうすると安定するのだと思いますが、壁が迫ってきてちょっと怖いくらいでした

『牧野古墳』石室公開@広陵町-10
さらに上を観たところ。頭上にも巨石があり、さらに土に覆われていますから、石舞台古墳よりも圧迫感はあるかもしれません

『牧野古墳』石室公開@広陵町-12
フラッシュを焚かない状態でもこのくらい見えました。石棺に卒塔婆のようなものが立てかけてあるのが迫力ですね。広陵古文化会の方たちからのもので「馬見古墳群被葬者之霊菩提」とありました

『牧野古墳』石室公開@広陵町-13
遺された「刳抜家形石棺」(くりぬきいえがたせっかん)を裏側から見たところ。ずっと昔に盗掘された際に壊されただけではなく、石が少ないエリアだけに、削り取られてどこかへ転用されたとか

『牧野古墳』石室公開@広陵町-14
玄室の入り口部分の頭上にある石が、もっとも大きいのだとか。推定60トンほどあると考えられているそうです

『牧野古墳』石室公開@広陵町-15
玄室側から入り口を観たところ。石室側は真っ暗で、古墳は埋葬施設であることが伝わってくるようでした


石棺の底石を使用したベンチもあります

牧野古墳の一帯は「牧野史跡公園」として整備されていて、裏側には遊具なども設置してあります。円墳をぐるりと一周することもできますし、頂上の部分に上ることもできます。通りからは見えづらいですが、東側に無料駐車場がありますので、車の方はそちらを利用してください。

また、駐車場側には、「伝 文代山(ぶんじろやま)古墳石棺」の底石を利用したベンチなどもあります。ちょっとした橋として使用されているのは珍しくありませんが、ベンチとなるとなかなか見かけませんので、古墳好きな方はお見逃しなく!


『牧野古墳』石室公開@広陵町-16

牧野古墳の東側の駐車場。意外と広々としています。公園として整備されている古墳ですから、小さなお子さんが走り回っていたりします

『牧野古墳』石室公開@広陵町-17
「伝 文代山(ぶんじろやま)古墳石棺」の説明と、石棺の底石を利用したベンチ。こうして再利用される前は、池の吐水口の橋として使用されていたのだとか。古墳自体は馬見古墳群にある大型の方墳で、5世紀後半のものなのだそうです

『牧野古墳』石室公開@広陵町-18
牧野古墳の周りを一周することもできますし、円墳の頂上へのぼることもできます(恐れ多いので私は登りませんが)。地元のお子さんにとっては身近な遊び場ですから、いかにも奈良らしい有り様なのかもしれませんね



大きな地図で見る


■牧野古墳(ばくやこふん)

HP: 参考サイト(Wikipedia)
所在: 奈良県北葛城郡広陵町馬見北8丁目
電話: 0745-55-1001(広陵町 文化財保存センター)
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄大阪線「五位堂駅」から、奈良交通バス「馬見北1丁目」行きに乗車。「馬見北9丁目」バス停下車、徒歩3分(五位堂駅から徒歩30分ほど)

※実際に拝見したのは「2013年10月14日」でした
※この日は特別公開でしたが、事前申し込みをすれば普段から石室内を拝見できます。「史跡牧野古墳 石室内見学申込 | 広陵町」のページからお申込みください。


■参考にさせていただきました

馬見古墳群(うまみこふんぐん)を散策する「牧野古墳」
奈良県広陵町の牧野古墳とは! - 近畿地方の古墳巡り!


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