2009-11-16

平安の三重塔が残る播磨の古刹『一乗寺』兵庫県加西市

平安の三重塔が残る播磨の古刹『一乗寺』兵庫県加西市

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、兵庫県加西市にある『一乗寺』へ行ってきました。

今ではそれほど規模の大きなお寺ではありませんが、平安時代の古式の「三重塔(国宝)」も残り、秘仏のご本尊も白鳳時代のものと、播磨地方を代表する古刹の雰囲気が十分に味わえました。


法道仙人開基の播磨地方の古刹です

兵庫県加西市にある、西国三十三所の第二十六番札所『一乗寺(いちじょうじ)』は、山号を「法華山(ほっけざん)」といいます。

開基は、インドから紫雲に乗って飛来したとされる「法道仙人」です。仙術を駆使して鉢を里に飛ばし、里の人々からお布施を受けていたため「空鉢仙人」と呼ばれていました。

645年、瀬戸内海を航行中の租税の米俵を積んだ船にこの鉢が飛んできて、布施を請いました。船主がこれを断ると、空の鉢の後を追うように、米俵が次々に空を飛んでいったのだそうです(「信貴山縁起絵巻」と類似点が見られます)。こうした法力の逸話は天皇の耳にも入るようになり、649年、孝徳天皇の求めに応じて都へのぼり、見事に病気を平癒しました。これを喜んだ孝徳天皇は、650年、法道仙人のために仏殿を建立し、これが一乗寺となりました。

法道仙人が開基したとされる寺院は、兵庫県東部に集中しており、その数は60を超えるそうです。その原点となったのが一乗寺であり、この地域には古くから仏教文化が根付いていたことが伺えます。

中世以降、一乗寺は幾度かの火災に合い、現在の本堂は1628年の再建のもの。しかし、日本でも屈指の古塔となる、平安時代の「三重塔(国宝)」が残るなどこの地域を代表する古刹として、今でも幅広く信仰を集めています。


「宝物館」の拝観は注意が必要です

兵庫県加西市にある『一乗寺』は、それほど規模の大きなお寺ではありません。この日は、ご本尊「聖観世音菩薩像(重文)」の結縁御開帳だったため、次々と観光バスがやって来ており、西国三十三所の札所らしい賑わいをみせていました。

一乗寺の「宝物館」には、10幅に及ぶ、色鮮やかな絹本著色の「聖徳太子及天台高僧像(国宝)」などの寺宝が収蔵されていますが、宝物館の一般公開日は年に2日のみ。それ以外の日に拝観を希望する方は、事前申し込みが必要とのことですので、ご注意ください。


一乗寺@兵庫県加西市-01

兵庫県加西市にある西国三十三所の二十六番札所『一乗寺』。山間にひっそりと建つ古刹です。この日は秘仏のご本尊の特別御開帳日だったため、夕方になっても次から次へと観光バスが到着していました

一乗寺@兵庫県加西市-02
一乗寺には山門などはありません。左手に見える白壁の建物が「宝物館」。国宝の絵「聖徳太子及天台高僧像」などが所蔵されていますが、年2回の公開日以外は、拝観は事前予約が必要とのことでした


優美な姿の「三重塔」が見下ろせます

一乗寺の境内は、真っ直ぐ伸びた石段に脇に「常行堂」「三重塔(国宝)」「本堂(重文)」と続きます。三重塔が本堂から見下ろせる位置にあるのが面白いですね。

この三重塔は、1171年の建築で、古式豊かな美しいものでした。奈良県には同時代の塔はいくつか残されていますが、やはりそれと似た雰囲気が感じられます。本堂まで上ると、懸造の舞台部分から三重塔が見下ろせるのも面白いですね。相輪や屋根瓦や軒先、隅々まで美しい塔でした!


一乗寺@兵庫県加西市-03

石段を上っていくと、まず最初に見えてくるのが「常行堂(阿弥陀堂)」です。2層式の宝形造で、1868年に再建されたものです。常行堂とは、天台宗の「常行三昧の行」を行うために建てられたお堂のこと。姫路市の圓教寺にも同名のお堂がありました

一乗寺@兵庫県加西市-04
常行堂と、その少し上にある「三重塔(国宝)」。さらに少しだけ上ると「本堂(重文)」があります。真っ直ぐな石段の脇に建物が配置されたシンプルな伽藍でした

一乗寺@兵庫県加西市-05
一乗寺の石段はそれほど長くはありませんが、境内に入るとほぼ上りっぱなしのため、なかなかヘビーです。観光バスで到着した巡礼ツアーの皆さんも、だいぶ苦労してました

一乗寺@兵庫県加西市-06
国宝に指定されている一乗寺の「三重塔」。1171年の建築で、組物は三手先。奈良県内で見られるような、優美で落ち着いた雰囲気の塔でした

一乗寺@兵庫県加西市-07
一乗寺では、三重塔のさらに上に本堂があるため、上から見下ろすことができます。ここから見ると、最上層の屋根にいくほど小さくなっている(逓減が大きい)ことがよく分かります。クラシックで美しい姿ですね!


白鳳の秘仏ご本尊が22年ぶりの開扉!

一乗寺の「本堂(重文)」は、懸造(舞台造)になっており、1628年の再建のもの。1999年から半解体大修理工事が行われ、2008年にようやく終了したばかりなのだそうです。

西国三十三所の札所観音ともなるご本尊は、白鳳時代作の「聖観世音菩薩像(重文)」。秘仏となっており、今回の御開帳が何と「22年ぶり」なのだとか!もちろん、内陣の特別拝観(料金@1,000円)をお願いして、ご本尊を間近で拝見させていただきました。

この「聖観音立像」は、像高72.7cmの白鳳時代作の金銅仏です。全体的に細身ですが、肩の部分がやや広めのなで肩で、ウエストにかけてほっそりと締まっていく感じですね。表情も穏やかで、いかにも白鳳時代の仏さまの雰囲気がありました。それほど細かな細工があるワケではありませんので、どことなくアフリカの彫刻を連想させるようなお姿でした。

お堂の内陣いっぱいに作られたお厨子も迫力がありましたし、周囲を固める(おそらく)二十八部衆たちも、古そうな方や後から追加されたような金ピカな方たちがいらっしゃって、とても華やかです。

ただし、ご本尊の脇侍の厨子が閉まったままで、拝見できなかったのが残念でした。お寺の方に伺ったところ、脇侍は不動明王と毘沙門天とのことですが、ご本尊の開扉に合わせてここも開いた方が自然なのではないかと思います。ちょっと消化不良でした。


一乗寺@兵庫県加西市-08

三重塔の前から本堂を見上げたところ。秘仏の白鳳時代作のご本尊「聖観世音菩薩像(重文)」との結縁御開帳のため、華やかに飾られています

一乗寺@兵庫県加西市-09
一乗寺の本堂前。650年に孝徳天皇の勅願により創建されましたが、何度も焼失と再建を繰り返し、現在のものは1628年の再建です。1999年から半解体大修理工事が行われ、2008年にようやく作業が終わったそうです

一乗寺@兵庫県加西市-10
一乗寺の「本堂(重文)」。懸造になっていて、目の前には三重塔が立つなど、素晴しい眺めでした

一乗寺@兵庫県加西市-11
本堂の外陣部分。内陣の特別拝観(料金@1,000円)では、白鳳時代の細身の金銅仏「聖観世音菩薩像(重文)」が間近で拝見できます。しかし、その脇侍の不動明王像・毘沙門天像は開扉されず・・・。正直なところ、少し消化不良でした


本堂周辺にも重要文化財が多数

一乗寺の本堂周辺には、これ以外にも「鐘楼」「護法堂」「妙見堂」「弁天堂」「石造五輪塔」など、国指定の重要文化財となっている建築物が多数存在しています。

この日はやや駆け足で周ったため、あまりじっくりと拝見している時間が無かったのが残念でした(奥手にある「開山堂」も見られませんでした)。全て見て周ってもそれほどの時間は掛からないと思いますので、ぜひじっくりと参拝してみてください。


一乗寺@兵庫県加西市-12

本堂脇に建つ「鐘楼(重文)」。1628年の建築で、袴腰が付いた美しいものでした。本堂からは吊られている梵鐘もしっかりと見えました

一乗寺@兵庫県加西市-14
本堂の裏手には、向かって右手から「妙見社」「弁財天社」「行者堂」と並んでいます。紅葉もピークでした

一乗寺@兵庫県加西市-15
こちらも本堂裏手に建つ「護法社」。この脇の道を進むと、開基の法道仙人を祀る「開山堂」があります(この日は行けませんでした)

一乗寺@兵庫県加西市-13
一乗寺の手水鉢。四角いシンプルなタイプです

一乗寺@兵庫県加西市-17
一乗寺では、ところどころ紅葉が真っ赤に色づいていました。もっと明るい時間帯に来ていたら、さらに見事だったと思います

一乗寺-ご朱印
一乗寺でいただいたご朱印です。素晴しい書でした!



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■一乗寺(法華山)

HP: http://www.saikoku33.gr.jp/26/index.htm
住所: 兵庫県加西市坂本町821-17
電話: 0790-48-2006(本坊)、0790-48-4000(納経所)
宗派: 天台宗
本尊: 聖観音
創建: 650年
開基: 法道仙人
拝観料: 400円
拝観時間: 8:00 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり(300円)
アクセス: 姫路駅から神姫バス一乗寺経由社行きで「一乗寺」下車(35分)

※西国三十三所の第26番札所
※秘仏御本尊の特別御開帳は「2009年11月末まで」です
※一乗寺「宝物館」は、毎年4月4日・11月5日の「定例宝物拝観日」に公開されます。それ以外の日には事前予約が必要とのこと(入館料は別途500円)






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