2008-03-15

快慶作7mの文殊菩薩!『安倍文殊院(前編)』!

安倍文殊院

知恵の仏様を祀り、学業のお祈りを捧げるところとして有名なのが、奈良県桜井市の『安倍文殊院』です。日本三文殊の第一霊場として、また平安時代の陰陽師「安倍晴明」の出生地としても知られています。

ここは合格祈願のお寺として有名なだけではなく、花を使ってその年の干支を巨大に描く「ジャンボ花絵」や、コスモスを使って簡単な迷路を作ったりと、個性派路線を進んでいることでも知られています。それが行き過ぎて、やや俗っぽい感もあるのですが、今回は安倍文殊院を丹念にめぐってみることにしました。

あまりに長くなりそうですので今回はその前編です。続きは「色んな願いを叶えます!『安倍文殊院(後編)』!」からどうぞ。


神社じゃなくてお寺です!

まずは簡単に安倍文殊院の歴史のおさらいから。

安倍文殊院とは、645年の大化の改新新政府の左大臣となった「安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)」が、安倍一族の氏寺として建立したお寺です。安倍一族とは、この先「天の原ふりさけ見れば春日なる・・・」の歌で有名な「安倍仲麻呂」や、平安時代の陰陽師として知られている「安倍晴明」を輩出する名門なのです。

その氏寺である安倍文殊院も、その昔は「安倍寺」と名乗っていて、法隆寺式の大伽藍を構える、壮大な規模の大寺院だったのだとか。その後、12世紀には「多武峰妙楽寺(現在の談山神社)」の僧兵に襲撃され、全山焼失。1563年には戦国武将・松永弾正の兵火に合うなどの歴史もあったそうです。

「日本三文殊」の第一霊場とされていて(他は「切戸文殊(京都府宮津市)」「亀岡文殊(山形県高畠町)」だそうです)、古くから庶民の間から信仰を集めていました。

また、現在では、完全な「祈祷寺」として運営されています。お寺でありながら、葬儀などは行わず、このためお墓も無ければ檀家も居ません。完全にご祈祷などによって成り立っているそうですから、これはある意味ではものすごい経営上手なのかもしれません。

正直なところ、今回、安倍文殊院に来る前は、私はこのお寺のことを「神社」だと思っていたくらいでした。それには色んな理由があって、

・絵馬があれだけ求められるのが神社っぽい
・安倍晴明というと神社のイメージが強い
・お狐さまを祀った神社がある記憶が強かった

などなど。恥ずかしながら、後になって始めてここがお寺だったことに気付いたのです。よく考えれば、ご本尊は文殊さまだし、「釈迦堂」とかあるし、すぐに分かりそうなものなんですが、思い込みって怖いですよね(笑)


現世利益を求めるのはいいんですが・・・

安倍文殊院の本堂の周りには、おびただしい数の絵馬が奉納されています。受験シーズンの真っ只中でしたから、その数も相当なもので、なかなか迫力のある図なのですが・・・、やっぱり本堂を囲むように大量の絵馬がぶら下げられている姿は、あまり美しいものじゃありません。

このお寺の全体に言えることなんですが、「○○をするならいくら」というようなカネに関する表示が多すぎて、ちょっとげんなりしてしまうのです。祈祷寺という性格上、仕方ない部分もあるのですが、やはり「現世利益を求める・与える」というニュアンスが強すぎて、どーも居心地が良くないんですよね。

しかし、またそんな文句を言いながら、改めてじっくりと建物などを見ていくと、なかなか壮大ないいものでした。相変らずちょっと雰囲気は落ち着きませんでしたが、それは今の時期は仕方ないと諦めるしかありません(笑)


安倍文殊院(本堂)-01

1665年建立の、安倍文殊院の「本堂」。入母屋造りの本瓦葺き。沢山の絵馬の後ろには舞台つきの「礼堂」があり、奥手にはご本尊を安置する「大収蔵庫」があります

安倍文殊院(本堂)-02
学問の祈祷寺だけに、この時期はもの凄い数の絵馬が奉納されていました。神社ならともかく、お寺でここまで絵馬がある風景というのはなかなか見られないかも

安倍文殊院(本堂)-03
本堂前にある「礼堂」。舞台のような形になっていますが、ここからの眺めがいいというワケでもありません。ますます神社っぽい感じがしますね

安倍文殊院(本堂)-04
安倍文殊院のお守り売場。商売っ気の強いお寺なので、バリエーションも豊富。「晴明公ストラップ」「魔除の護符」「ぼけ封じ枕敷き」などなど、どれもアリですね~


快慶作、7mの「騎獅文殊菩薩」!

しかし、今回のメインは本堂に祀られているご本尊にお会いすることです。文殊院ですから、もちろんご本尊は文殊さまで、快慶作の像高7m(日本一だとか)を越す半跏の「木造騎獅文殊菩薩(重文)」です!

「そんな迫力のある一級の仏様を見逃すワケにはいかない!」と、今なら思うのですが、何せ拝観料が「700円(お菓子・抹茶付き)」とかなり高額で、これまで入ったことがありませんでした。

初めて対面した文殊さまは・・・、スゴイ迫力でしたね~。画像が少なくて伝わらないと思いますが、半跏の文殊さまが、巨大な獅子に乗っているのですが、その顔なんて驚くほどのサイズです!ここはもちろん撮影禁止ですし、やや堂内も薄暗いですから、ジックリと細部まで見られないのが残念ですね。

さらに、脇侍の「善財童子」「優填王(うてんのう)」「須菩提像」も快慶作。ただし、実際には、ご本尊の迫力に気おされてそれほど印象深くないというのがホンネです(笑)

安倍文殊院(本堂)-05
文殊院ですから、もちろんご本尊は文殊さま。しかも、鎌倉の名仏師・快慶作の像高7mを越す半跏の「木造騎獅文殊菩薩(重文)」です!でもお菓子付きとはいえ、700円という拝観料はなかなかヘビーです。。。。

安倍文殊院(本堂)-06
本堂に貼ってあった観光ポスター。向かって左手は「善財童子像(ぜんざいどうじ)」、右手はご本尊の「騎獅文殊菩薩」 。私は知りませんでしたが、善財童子さんもなかなかの有名仏なんですね

安倍文殊院(本堂)-07
「騎獅文殊菩薩」 のポスターから、頭部のアップ。宝冠の細工もかなり細かいですね。実物は像高7mの巨大な仏様ですが、薄暗いお堂の中で遠めから眺めるため、ここまで細かくは見えないのが残念です

安倍文殊院(本堂)-08
拝観料700円を払うと、まずはこの部屋に通されます。ここで「知恵のお抹茶」を頂いてからご本尊に対面できます。「拝観の後に出来ませんか?」とお願いしたのですが、丁寧にお断りされてしまいました(笑)

安倍文殊院(本堂)-09
知恵のお抹茶とらくがん1個を頂きました。甘い干菓子ですが、お抹茶と一緒に1個だけなら、まだそれなりに食べられます。ちなみに「8個入:700円」で販売されていて、地方発送もしているそうですよ

安倍文殊院(本堂)-10
隣室の弘法大師さまの像が祀ってある部屋。四国八十八ヶ所の砂が詰まった敷物があって、そこに立ってお祈りする「お砂踏み」というスタイルでした

安倍文殊院(本堂)-11
本堂を拝観した奥にある部屋。それぞれの干支にご本尊が決まっているそうで、そこにお参りしてくださいとのこと。ちなみに、酉年の私は不動明王さん。鶏と不動さんの組み合わせはちょっと意外です

安倍文殊院(本堂)-12
本堂奥の「釈迦堂」に祀られている「釈迦三尊像」。何と、奈良時代の作で、明治時代の神仏分離の時代に談山神社から移されてきたものなんだそうです。その両脇には、1体3万円の「ご分身奉納仏」が多数祀られています!


ハイテクな「全自動手水機(?)」も!

また、一般的にはどーでもいいポイントかもしれませんが、安倍文殊院は手水舎(ちょうずや)もなかなか凝ってました。人が近づくと自動的に水が出てくる(!)というハイテクシステムですので、ぜひ注目してみてください!

安倍文殊院(手水舎)-01
安倍文殊院の本堂前にある手水舎。一見、なかりベーシックですが、龍の造形も見事ですし、何よりも「センサー付き」で、人が近づくと自動的に水が出るシステムを導入しています!ハイテク手水舎ですね(笑)

安倍文殊院(手水舎)-02
手水舎の龍はかなりの迫力ですね。人が居ない時は水を放出していません。地球に優しいような、逆にエネルギーを浪費しているような・・・


シンメトリーが美しい「文殊院西古墳」

もう一点、今回改めて驚いたのが、「文殊院西古墳」でした。7世紀中頃のもので、被葬者は安倍倉梯麻呂。それほど規模の大きなものではありませんが、石の切り出し方とか、その積み上げ方とか、完全な左右対称のシンメトリーが美しいのです!玄室の天井は「約15平方メートル」の一枚岩を使用するなど、迫力も十分。

時代が違いますから、飛鳥の「石舞台古墳」などと比較してはいけませんが、こんな整った石室があることに驚かされ、ちょっと古墳に対するイメージが変わりました。

安倍文殊院(古墳)-01
安倍文殊院の境内にある「文殊院西古墳」。飛鳥時代のもので、大化改新の時に左大臣に登用された「安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)」とされています。非常に美しい古墳でした!

安倍文殊院(古墳)-02
「文殊院西古墳」内部の様子。現在は平安時代の「願掛け不動」が祀られています。それにしても、これだけ美しい石を揃えた玄室なんて、なかなか残っていないかもしれません。驚きました!

安倍文殊院(古墳)-03
白山神社の脇にある「東古墳(または閼伽井(あかい)古墳)」。内部からは知恵の水とされている「閼伽水(あかすい)」が湧き出ているそうです

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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。



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■安倍文殊院

HP: http://www.abemonjuin.or.jp/
住所: 奈良県桜井市安倍山
電話: 0744-43-0002
宗派: 華厳宗
本尊: 騎獅文殊菩薩(重要文化財)
創建: 7世紀中ごろ
開基: 安倍倉梯麻呂
拝観料: 境内は無料、本堂700円(菓子・抹茶付き)
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料(普通車500円)
アクセス: 国道165号線「阿部」交差点からすぐ

※「日本三文殊」の第一霊場です






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