2012-05-20

裾をつまんだ神像風地蔵菩薩がおわす『融念寺』@斑鳩町

裾をつまんだ神像風地蔵菩薩がおわす『融念寺』@斑鳩町

斑鳩町神南にある融通念仏宗のお寺『融念寺』へいお参りしてきました。こちらには、右手で裾をつまんでいるという、珍しい表現の「地蔵菩薩立像(重文)」がいらっしゃいます。表情も独特で、神社に祀られる「神像」風。平安時代の素晴らしい仏さまでした!


神奈備・三室山から移ってきた仏さまたち

斑鳩町神南にある、融通念仏宗の寺院『融念寺(ゆうねんじ)』。神南の集落にひっそりとあるお寺ですが、まだ新しい収蔵庫「恵宝殿」には、平安時代の2体の古仏「地蔵菩薩立像」「聖観音立像」(ともに国の重要文化財)が祀られています。

融念寺の由緒は不明な点も多いようですが、この付近は竜田川と大和川が合流する地点にあり、紅葉や桜の名所として古い歌にも詠まれた「三室山」があります。

「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは(在原業平)」
「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の にしきなりけり(能因法師)」

標高82mのなだらかな山ですが、古くは「神南山」と呼ばれる神奈備で、かつて、この山の近くに「神南寺」という寺が存在していました。現在、融念寺・恵宝殿が建つ場所には、この神南寺から移築された三室堂があったと記録に残っており、この2体の仏さまも同時に移されたものと考えられているそうです。一時は奈良国立博物館に寄託されていた時期もありましたが、今では本来の土地に戻ってきています。

以前ご紹介した、『仏像写真ギャラリー飛鳥園』さんの出版物「斑鳩の古寺」にも、その歴史や仏さまのお姿などがしっかりと掲載されていました。

お寺へ伺ってみると、とても静かな住宅街にある小さなお寺という印象で、失礼ながら、とてもそんな古仏が伝わっているとは思えないくらいでした。なお、融念寺の拝観には事前予約が必要です。


融念寺@斑鳩町-01

斑鳩町神南にある、融通念仏宗の寺院『融念寺』。静かな場所にひっそりと建つお寺です。私は、融通念仏宗のお寺には初めてお参りしましたが、外見上はそれほど大きな違いはないようでした

融念寺@斑鳩町-02
真新しい収蔵庫「恵宝殿」。ここに平安時代の古仏2体「地蔵菩薩立像」「聖観音立像」(重文)が祀られています。それほど大きな建物ではありませんので、貴重な仏さまと間近で向き合えます

融念寺@斑鳩町-03
境内にあった説明看板。写真がやや薄れていますが、文字ははっきりと読み取れます


衣紋をつまむ右手。神秘的な表情の地蔵尊

融念寺・恵宝殿に祀られている2体の仏さまのうち、より興味深いのは「地蔵菩薩立像(重文)」でしょう。



地蔵菩薩立像
重要文化財(明治39年9月6日指定) 像高156.1cm

僧形をあらわし、左手に宝珠を載せ、右手で衣の端を持ち上げ、蓮台上に立つ。両手先、持物は後補。ヒノキの一木造で、内刳もない。
すらりとした印象を与える美しい像である。衣の端を取る表現は極めて珍しく、お顔は細面で奥行きが深く、鼻筋が通り異国的である。
全体を一木から彫りだす構造や、渦文を交えた翻波式衣紋を刻み、衣の端を波打たせて質感を表現する点等から考えて、平安時代初期(9世紀)の造像と考えられる。

説明看板より


平安時代初期(9世紀ごろ)の作で、右手が衣の端をつまんでいます!このような表現をしている仏像は珍しいですね。今にも動き出しそうな表現として、足先で変化をつけたりするケースは多いのですが、手でも動きが感じられます。手で印を結ぶのではなく、あえてこうしたことが重要だったのでしょう。写真集などでは右手と衣の関係がよく見えませんが、実際に間近で拝見して、とても繊細に造られていることが分かりました。

また、やわらかに目を閉じた表情は、とてもミステリアス。鼻筋が通っていて、異国風にも感じられますし、何よりも神社などに祀られる「神像」との共通点が感じられます。明日香村の橘寺に伝わる「伝日羅像」とほぼ同時代の作で、地蔵・高僧・神像のスタイルが交じり合ったかのような、不思議な魅力が感じられました。

また、近くで拝見することで、左肩から背後に連なる衣紋の美しさにも圧倒されました!まるでローマ時代の貴族の着こなしのような華やかさです。お堂で間近に拝したからこそ分かる魅力ですね。

ご住職もとても仏像に詳しい方で、色んなお話を伺えました。このお地蔵さまは、本で見る以上に素敵な方でしたので、ぜひ実際にお参りしてみて欲しいと思います!


融念寺@斑鳩町-04

融念寺の「地蔵菩薩立像(重文)」。画像はパンフレットより。右手が衣紋の裾をつまんでいるのが分かります。8頭身のスラリと美しいお地蔵さまですね

融念寺@斑鳩町-05
こちらは、飛鳥園さんの「斑鳩の古寺」より。とても不思議な表情です。この写真では分かりませんが、左肩から背後への衣紋の表現も素晴らしかったです!


穏やかな平安仏「聖観音菩薩立像」も

そしてもう一体、平安時代に造られた「聖観音菩薩立像(重文)」もいらっしゃいます。

聖観音菩薩立像 重要文化財(明治39年9月6日指定) 像高151.7cm

宝冠をかぶった通形の聖観音菩薩で、左手で蓮華(後補)をとり、右手は垂下させ、蓮華座の上に立つ。光背は舟形の拳身光。
ハリギリの一木造で、内刳もない。現在、各所に白土下地と彩色、漆箔が残るが、ほとんどは剥落する。光背は概ねヒノキ二枚板製。台座は反花(かえりばな)以下が後補で、当初の蓮弁部はハリギリ一材製。
丸顔に細い伏し目、小鼻の大きい鼻、突出した上唇を表し、体は胴を絞り腰以下に量感を与える。制作に関しては光背裏面の墨書銘より、僧行センが願主となって延久元年(1069)7月に完成したことがわかる。延久元年の作風は、顔の愛らしさ等に見ることができるが、総じて10世紀末頃の古様が残っている。

説明看板より


全体的に手が長めで、足は短め。十一面観音像のようなプロポーションです。古式な板光背を背にした姿は、室生寺の金堂の像に雰囲気が似ていました。とても穏やかな表情で、素敵な仏さまでした。


融念寺@斑鳩町-06

融念寺の「聖観音菩薩立像(重文)」。パンフレットに掲載されていた画像です。像高はお隣のお地蔵さまと近いですが、作風は全く違います。どんな因果でこの両尊像が並んで祀られることになったんでしょうね



大きな地図で見る


■神南 融念寺

HP: http://www.yuunenji.com/
住所: 奈良県生駒郡斑鳩町神南3-5-8
電話: 0745-75-5031
宗派: 融通念仏宗
本尊: 阿弥陀如来立像(重要文化財)
創建: 不明
拝観料: 一般 300円、中学生 200円、小学生 100円
拝観時間: 9:00-16:00(要事前予約)
駐車場: 無料
アクセス: JR「王寺駅」、近鉄「新王寺駅」から徒歩約20分

※実際にお参りさせていただいたのは、「2012年4月29日」でした。
※斑鳩町には、同じ「融念寺」(斑鳩町目安1丁目11-19)という名前のお寺さんがありますので、カーナビなどで検索する際にはお気をつけください。

■参拝について

お参りの際には、事前予約が必要です(0745-75-5031 まで)。いつでも拝観できる観光寺院ではありませんので、お寺の方のスケジュールに合わせるようにしましょう。


■参考にさせていただきました!

せきどよしおホームページ>仏像探訪記>融念寺の地蔵菩薩・観音菩薩像






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