2012-04-28

中村地区で守られる『子安地蔵』@安産寺(宇陀市室生区)

中村地区で守られる『子安地蔵』@安産寺(宇陀市室生区)

宇陀市室生区にある『安産寺』で、重要文化財に指定されている「子安地蔵」さまにお会いしました。このお地蔵さまは、中村自治会の皆さんの手によって管理されています。どっしりとした仏さまのお姿も素晴らしかったですし、世話役の方たちがそれを誇らしげに感じていらっしゃる姿も素晴らしかったです!


毎月9日が御開扉。それ以外は要事前予約

連休を使って、東京の仏像ファンの友人たちと、奈良の渋めの仏さま巡りをしてきました。

今回のメインテーマは「地蔵」。関東の濃い仏像ファン「...ストイックに仏像...」「念彼観音力」の運営者さんたちが企画してくれたルートに乗っからせていただきました。行動日程などはこちら(奈良京都滋賀の地蔵と観音を巡る旅 - Togetter)にまとまっていますが、本当に楽しいツアーでした!

そのスタートは、室生区三本松中村の『安産寺』に祀られている「子安地蔵」さまです。

こちらはご住職がいらっしゃらないお寺で、中村自治会の方々が管理しています。年に数回の御縁日の日と、毎月9日の御開扉の時にはお会いできますが、それ以外の日には事前に拝観予約が必要となります(0745-92-2001 室生地域事務所まで)。

安産寺の場所は、近鉄大阪線「三本松駅」から徒歩7分ほどの、やや小高くなった場所にあります。私たちは車で行ったため、駐車スペースに困りましたが(後述)、駅からそれほど遠くないので、電車を利用した方が安心かもしれません。

なお、地方の仏像に関する著作の多い、丸山尚一氏の『地方仏を歩く 第一巻(近畿編)』や『旅の仏たち―地方仏紀行〈3〉』には、ともに「三本松真堂」の地蔵菩薩立像として掲載されています。「安産寺」と検索しても情報が引っかからないケースがありますので、ご注意ください。

なお、この日私たちは、世話人のお一人、洞出(ほらで)さんのお話を伺ったのですが、もうこのお地蔵さまを愛していることがじんわりと伝わってくるようでした。地区で守ってきた仏さまに興味を持ってもらえることが誇らしげで、とても温かい気持ちになりました!こんな触れ合いがあるのも、地方の仏さまにお会いする醍醐味ですね。


安産寺@宇陀市室生区三本松-01

室生区三本松中村の安産寺へ向かう道。三本松駅から近くですし、いたるところに「子安地蔵菩薩参道」という表示があるので、徒歩であれば迷うこともないでしょう。車では、道幅がかなり狭いため、近くの「道の駅 宇陀路室生」から歩いた方が安全かもしれません

安産寺@宇陀市室生区三本松-02
のどかな近鉄大阪線。この少し先に三本松駅があります。左手に見える石垣の上に安産寺があります

安産寺@宇陀市室生区三本松-03
安産寺の建物。お寺になっていますが、地域の集会場も兼ねています。ご住職はおらず、中村地区の方々の手によって、大事に子安地蔵さまが守られています。普段はお堂は開いていませんので、御開扉の時に合わせてくるか、事前に電話で拝観予約のお願いをしておきましょう

安産寺@宇陀市室生区三本松-05
安産寺のお堂の中。この日は世話人のお一人、洞出さんのお世話になり、お茶までいただきながらお話を伺えました。正面の扉を開けると、お地蔵さまがいらっしゃる収蔵庫があります。左手は集会場のようなスペースです

安産寺@宇陀市室生区三本松-06
お堂の裏手の収蔵庫へのアプローチ。小さな地区には大仰にも感じられるほどの、とても立派な収蔵庫です。ここに重要文化財の「地蔵菩薩立像」がいらっしゃって、至近距離からじっくりと拝見できます


もとは室生寺金堂に。貞観彫刻の代表作です

安産寺の子安地蔵さまについて、お堂前にあった説明書きを引用しておきます。

本尊 地蔵菩薩立像 榧(かや)材 一木造 像高177.5cm 昭和15年10月 国宝に指定され、昭和25年8月 国指定重要文化財となる

安産寺(真堂)の本尊は、木造 地蔵菩薩立像で、作者は不明であるが、今から千百余年前の平安時代初期の作といわれている。また、沓(くつ)を履く地蔵菩薩としても珍しい。
尊顔は細く切れた目が優しさと慈悲に溢れ、身体は肩が張って十分な厚みがあり、重量感に富み、威容と風格をそなえている。

当初は彩色されていたが、現在では殆ど剥落し、また衣文線に沿って切金を施した痕跡も認められる。衣文は漣波式(れんぱしき)といわれるもので、幾重にも重なり、肩から腹部を経て股間に流れ落ち、裾に至って大きく反転している。その彫り口は繊細かつ大胆で鋭い。

これらの表現は、室生寺金堂の釈迦如来立像(国宝)と共通するところが多く、本像は「貞観(じょうがん)彫刻」の代表作の一つに数えられている。

当地ではこの地蔵菩薩を「子安地蔵」と呼び、子授け、安産の地蔵さんとして信仰が篤い。

境内の説明より


伺ったお話なども簡単に付け加えておきます。

●この像は、以前は室生寺の金堂に安置されており、釈迦如来立像(国宝)の脇侍だった(室生寺ホームページ「地蔵菩薩立像」)。今は別の円光背がついているが、室生寺にはこの地蔵菩薩のものと思われる板光背が残されている。元の板光背を背負った姿を実際に見た時には、「とても神々しかった」と感じたとか

●村に伝わる話では、宇陀川が増水した時、この仏さまが対岸に流れ着いた。安置する場所を求めて集落へと運んだが、にわかに足が進まなくなり、「あぁ、シンド(しんどいの意)」と腰を下ろしたら、仏像も動かなくなった。これを御託宣として、ここにお堂(真堂)を建てたのが安産寺の前身となった

●何年頃に流れ着いたかは不明。台風シーズンの「9月9日」にやって来たことから、毎月9日をご縁日として、開扉している

●昭和15年(1940年)、この仏像を見て「これはすごいものだ」と言い当てた者が現れ、奈良帝国博物館美術院で鑑定し、国宝に指定される(昭和25年に重文へ再指定)。貴重な文化財として奈良博物館へ2回ほど預けられたが、やはりこの地区に返して欲しい陳情。昭和53年、収蔵庫が完成し無事に中村地区へ戻る


安産寺@宇陀市室生区三本松-04

お堂の前にあった地蔵菩薩立像の説明。室生寺金堂の釈迦如来立像(国宝)との共通点が多く、貞観彫刻の代表作の一つに数えられている、とありました。この言葉は決して誇張ではなく、ゆったりとボリュームがある像容は、写真集で見るよりもはるかに素晴らしかったです!


穏やかな表情。上半身の量感が見事でした!

宝物庫では、このお地蔵さまを至近距離で拝見できますが、本当に素晴らしいお姿でした!目は切れ長で鼻は高く、とても凛々しい印象ですが、全体的に優しがが感じられます。耳たぶが長めなのも目立ちます。

造形的な特徴を挙げると、足元は沓(くつ)を履いていて、左手には宝珠を、地蔵尊に付き物の錫杖(しゃくじょう)を持たずに自然に垂らしています。また、袈裟も着ておらず、菩薩というよりも如来に近い特徴を備えています。しかし、もとから螺髪はなかったとか。

肩から胸にかけて、また太もものあたりに量感があり、全体的にどっしりと重厚に感じられます。衣紋は、一般的な翻波式ではなく、大きな波の間に小さな二つの波がある漣波式(れんぱしき)といわれるもの。いくえにも流れ落ちる左手の袖の表現が見事でした。やや後ろへなびいたようになっていて、自然な動きが感じられます。

また、もともと衣紋には切金が入っていたそうですが、今はほとんど判別できません。右の太ももあたりに三点ほど残っているそうですので、ぜひじっくりと探してみてください(私は見つけられませんでした)。

いつでもお会いできる仏さまではありませんので、なかなかチャンスは少ないと思いますが、仏さまのお姿はもちろん、地区の皆さんとの関わり方も含めて、ぜひお参りして体験してみて欲しいと思います。仏さまが地域に根ざしている様子は、今ではなかなか実感できません。ぜひ室生寺と合わせてどうぞ。


安産寺@宇陀市室生区三本松-07

お地蔵さまの写真撮影は不可なので、堂内に飾られていたお写真を撮影させていただきました。肩から胸にかけてのゆったりとしたボリューム感が素晴らしいですね!左手には宝珠を掲げていますが、錫杖は持たず袈裟も着ていない、如来的な造形ですね。光背がついていない写真が多いのですが、向かって右手のもののような円光背を背にしていらっしゃいます

安産寺@宇陀市室生区三本松-08
見づらいですが、全身写真など。太ももの量感、リズムのある衣紋の表現、左の袖からいくえにも流れる造形など、本当に見事ですね。以前は室生寺の金堂の脇侍だったと考えられている仏さまだけに、地方仏の粗野な印象など微塵もありません



より大きな地図で 安産寺 を表示


■安産寺

住所: 奈良県宇陀市室生区三本松中村2932
電話: 0745-92-2001(室生地域事務所)
宗派: 無宗派
本尊: 地蔵菩薩(重要文化財)
拝観料: 志納
拝観日: 御縁日の日のみ。それ以外は要事前予約
アクセス: 近鉄大阪線「三本松駅」から徒歩7分ほど


■御開帳について

年に数回、決まった日にご開扉となります。

●初開帳 1月24日 10:00-15:00
●御縁日法要 8月第4日曜 13:00-21:00(夜は盆踊りも)
●毎月9日 御開扉 毎月9日 10:00-12:00

これらの日以外でも、事前予約すればご本尊を拝観させていただけます。問い合わせは「室生地域事務所(0745-92-2001)」まで。


■拝観料について

拝観料金は決められておらず、「志納」となっています。迷うところですが、一人500円程度を目安とするといいでしょう。なお、お釣りの用意などは無いことが多いので、事前に小銭を用意しておくようにしましょう。


■駐車場について

安産寺の境内に駐車スペースがあるという情報も見かけますが、三本松駅方面からでは道が細くて車が通れません。安産寺の南西側の分岐を242号線へ入れば、お寺へ直接行ける可能性があります。

国道165号線沿い、三本松駅から徒歩5分ほどの距離に「道の駅 宇陀路室生」があります。そちらを利用した方が安全かもしれません。


■参考にさせていただきました!

安産寺(宇陀市)の子安地蔵  - 史跡・めぐり歩き - Yahoo!ブログ
せきどよしおホームページ>仏像探訪記>安産寺










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