2010-09-07

濃密な仏像空間になった『なら仏像館』@奈良国立博物館

濃密な仏像空間になった『なら仏像館』@奈良国立博物館

2010年7月に本館が「なら仏像館」へとリニューアルされた『奈良国立博物館』へ行ってきました。素晴らしい仏像の数々に圧倒されるだけではなく、一部の所蔵品は「写真撮影可能」なため、時間をかけてじっくりと楽しんできました。


※ 2012/01/10 追記

残念ながら、2011年12月28日より、なら仏像館での写真撮影は禁止となってしまいました。

なら仏像館の展示室における写真撮影について

 これまで、なら仏像館では、館蔵の仏像に限ってはお客様による撮影のご希望に添ってまいりましたが、それが却って多くの方々の鑑賞の妨げになる場合が少なくありませんでした。今後はお客様ご自身の目と心で仏像と向き合っていただくことを願い、展示室における撮影はすべてご遠慮いただくことにいたしました。なら仏像館がさらに素晴らしい仏像との出会いの場になりますようこれからも努めてまいりますので、何とぞご了承くださいますようお願い申し上げます。

なら仏像館は通路もそれほど広くありませんので、写真撮影によるトラブルもあったんでしょう。詳しい事情は分かりませんが残念ですね。以下、以前の記事をそのまま掲載しておきますが、規則が変更になってしまいましたので、写真撮影に関する部分はご参考程度にお読みください。


リニューアルして展示内容もパワーアップ

収蔵品「約1,400件」という規模を誇る『奈良国立博物館』。この日は、なら仏像館(旧本館)では、リニューアルを記念した特別展「至宝の仏像」が、東新館では「仏像修理100年」が行われていました。

平日ということもありますが、毎年大変な入場者数を記録する「正倉院展」のような混雑はなく、のんびりと仏像の魅力を楽しめる素晴らしい内容でした。ただし、私たちはペース配分を間違えて、なら仏像館に2時間半も長居してしまったため、新館の特別展は駆け足で見て回りましたので、記事内では触れません。


奈良国立博物館@奈良市-02

奈良国立博物館の展示内容を示すポスター。なら仏像館(旧本館)では、リニューアルを記念した特別展「至宝の仏像」が、東新館では「仏像修理100年」が開催されていました。奈良国立博物館では、毎年開催される「正倉院展」が有名ですが、普段から渋い企画展示を行っています

奈良国立博物館@奈良市-01
奈良公園にある『奈良国立博物館』。新館と本館に分かれていて、この日は東新館で特別展「仏像修理100年」を開催していました。時間が足りなくなってしまって駆け足でまわったため、ゆっくり観られなかったのが残念。本館前には、拝観者用の無料コインロッカーもありますので、まずはここに荷物を置くのもいいでしょう

奈良国立博物館@奈良市-03
本館と新館の共通チケット。素晴らしいデザインですね。大人は通常1,000円ですが、せんとくんクーポンで100円割引になりました。平常展のみであれば、500円のところを250円で入館できます。お持ちの方は忘れずに持参してください(2010年末まで)


国宝・重文の仏像がズラリ!まさに圧巻!

奈良国立博物館の「本館」は、2010年7月に「なら仏像館」としてリニューアルされました。奈良国立博物館が所蔵している仏像に加えて、各寺院から寄託されている仏像も展示されていて、まさに圧巻ですね。

展示内容は、その時期によって入れ替わりますが、この日に拝見した仏さまから、特に印象に残った方たちを挙げておきます。


●奈良・元興寺 薬師如来立像 像高164.5cm 平安時代
江戸時代には、元興寺の五重塔に安置されていた仏像。肩幅が広く、どっしりと重厚な体躯で、翻波式衣文の表現が美しい仏さま

●兵庫・浄土寺 阿弥陀如来立像(裸形像) 像高226.5cm 鎌倉時代
快慶作。珍しい裸の阿弥陀さまで、布製の服を着て、来迎会の際に台車に乗せて動かされていたのだとか

●奈良・東大寺 弥勒如来坐像 像高39.0cm 平安時代
「試みの大仏」として有名な像。表情が穏やかでユニーク。頭部が大きいため、身を乗り出してくるように感じられる面白い仏さまです

●奈良・新薬師寺 十一面観音菩薩立像 像高197.0cm 平安時代
保存状態が素晴らしく、板光背・台座・鮮やかな色彩まで残っています。室生寺・金堂の十一面観音像に似た、美しい観音さまでした

●奈良・東大寺 誕生釈迦仏立像及灌仏盤 像高47.5cm 奈良時代
お釈迦様の誕生日4月8日の「仏生会」に使用される誕生仏。小像が多い誕生仏の中では異例の大きさ。穏やかな表情で「天上天下唯我独尊」の声が聞こえてくるようでした

この他にも、滋賀・長命寺の地蔵菩薩立像、京都・海住山寺の四天王立像など、素晴らしい仏像がズラリと立ち並び、本当に時間を忘れてしまいました。

さらに、特別展「至宝の仏像」の主役である、東大寺・法華堂の金剛力士像(脱活乾漆造 奈良時代 像高:阿形306.0cm、吽形326.4cm)も見事でした!

法華堂にいらっしゃった時は、御本尊の不空羂索観音像の手前両脇を固めていましたが、やはり巨像ぞろいだった法華堂では、単体としての迫力は薄れてしまっていました。改めてライトアップされた姿を間近で拝見すると、彩色は色鮮やかに残されていますし、その美しさと大きさがよりリアルに感じられます。法華堂の密集度も良かったのですが、それとはまた違った魅力が感じられます。

また、なら仏像館は、建物自体が1894年完成の煉瓦造りの重厚な欧風建築で、「旧帝国奈良博物館本館」として重文指定されているほどの存在感ですので、ちょっとした扉や天井部分の作りなども本当に美しいのです。リニューアルに伴ってスポット照明を導入し、より見やすくなっています。全てガラス越しの拝観になるのはちょっと残念ですが(興福寺・国宝館のようなオープン展示がベストでしょう)、歴史を感じさせる建物のため、お堂で見るのとはまた違った雰囲気が味わえます。


奈良国立博物館@奈良市-04

奈良国立博物館の本館は、新たに「なら仏像館」としてリニューアルされ、国内最大規模の仏像展示を行っています。建物は、1894年完成の煉瓦造りの重厚な欧風建築で、「旧帝国奈良博物館本館」として重要文化財に指定されています


一部の仏像に限り「写真撮影可能」です

そして、これはまだご存じない方も多いかと思いますが、なら仏像館では、一部の仏像に限り写真撮影が可能です。

大まかに言えば、写真撮影が禁止されているものは他の寺院からの寄託のもので「写真撮影禁止」の表示があります。写真撮影可能なものは、奈良国立博物館と文化庁所蔵のもので、写真撮影禁止の表示がありません。

また、「フラッシュ・三脚は使用禁止」「携帯電話・ビデオは撮影禁止」などの条件がありますので、写真撮影を希望する方は、必ず携帯電話ではなくカメラを持参しましょう(事前にフラッシュオフの設定方法を覚えておいてください!)。撮影した写真は、営利目的ではない個人利用の範囲内であれば、インターネットにアップすることも可能だそうです。

他の方のブログなどを拝見すると、入館の際に写真撮影の許可を申し出て氏名などを記入、渡された腕章を身につけて撮影する、とあります。しかし、この日は名前の記入もなく、腕章も渡されないまま、簡単に説明を受けただけで撮影許可をいただけました。後から電話で確認してみたところ、「まだ試行錯誤の段階で、方法は完全には統一されていない」とのことでした。

いずれにしても、余計なトラブルを招かないように、まずは入館の際に「写真撮影をしたいのですが」と申し出てみた方が良さそうです。簡単な説明をしていただけますし、腕章などが渡されるかもしれませんので、係の方の指示に従ってください。


奈良国立博物館@奈良市-05

入館受付で見られる、写真撮影の注意事項。要約すると「写真撮影禁止の表示のものは撮影禁止」「フラッシュ・三脚は使用禁止」「携帯電話・ビデオは撮影禁止」「他の方の迷惑にならないこと」「記念撮影は禁止」など。まずは係の方に写真撮影したいと申し出てみてください


なら仏像館で撮影した仏像写真の一部

なら仏像館で撮影した写真の一部をアップしておきます。

ゆうに100種類を超える仏像や仮面などが展示されており、写真撮影可能な奈良国立博物館と文化庁所蔵のものは20数種類でした(五大明王像や十二神将像はまとめて1種類と数えました)。熱中して他の方の迷惑にならないよう、注意しながら撮影をお楽しみください!

なお、奈良国立博物館のホームページの「名品ギャラリー」から所蔵品の画像付きリストが見られますし、「収蔵品データベース」からは検索もできます。ここに画像が掲載されているものは、奈良国立博物館の所蔵品と思われますので、タイミングがあえば写真撮影できる可能性がありそうです。


奈良国立博物館@奈良市-06

如意輪観音菩薩坐像(重要文化財・木造・平安時代)。丹後の海中から発見されたという伝承を持つ、凛々しい表情が特徴的な如意輪さま

奈良国立博物館@奈良市-07
観音菩薩立像(重要文化財・木造・平安時代)。もとは奈良市法蓮町の瑞景寺に安置されていた観音さま

奈良国立博物館@奈良市-08
観音菩薩立像(木造・平安時代)。京都府亀岡市の大宮神社境内の仏堂に安置されていた観音さま

奈良国立博物館@奈良市-09
如来立像(銅造・朝鮮半島・8~9世紀)。小さな銅造の如来像

奈良国立博物館@奈良市-10
如来三尊像(石造・唐・703年頃)。現在32点の存在が知られる宝慶寺石仏群の一点

奈良国立博物館@奈良市-11
菩薩半跏像(木造・鎌倉時代)。南都の古代彫刻を参考にした形跡があり、もともと奈良周辺にあった像と推測されています

奈良国立博物館@奈良市-12
愛染明王坐像(重要文化財・木造・鎌倉時代)。台座や光背までほぼ作成当初のもの。1256年作で、兵火で焼失した東大寺大仏殿の焼け残りの柱材を使用しています

奈良国立博物館@奈良市-13
五大明王像(木造・平安時代)。当初からの5体が揃った貴重な像。軍荼利明王が片足を跳ね上げているのが珍しい

奈良国立博物館@奈良市-15
如意輪観音菩薩坐像(木造・鎌倉時代)。もと大阪・四天王寺内の蔵華蔵院の本尊

奈良国立博物館@奈良市-16
薬師如来坐像(国宝・木造・平安時代)。台座までの大部分をカヤの一木から彫り出した国宝仏。もとは京都・東山の若王子社に安置されていたもの

奈良国立博物館@奈良市-17
十一面観世音菩薩立像(重要文化財・木造・奈良~平安時代)。白檀の檀像彫刻

奈良国立博物館@奈良市-18
毘沙門天立像(木造・鎌倉時代)。もとは京都・石清水八幡宮の宝塔院に安置されていた像

奈良国立博物館@奈良市-19
十二神将立像(木造・鎌倉時代)。もとは神奈川・太寧寺のもの

奈良国立博物館@奈良市-22
大将軍神坐像(木造・平安時代)。大将軍とは、陰陽道で東西南北の方位を司る神。3年ごとに方位を改め、十二年で一巡した

奈良国立博物館@奈良市-24
薬師如来坐像(重要文化財・銅造・奈良時代)。銅造でありながら、乾漆像を思わせる着衣の表現がなされている


地下のミュージアムショップも充実!

奈良国立博物館の地下には、東新館・西新館となら仏像館を結ぶ連絡通路「地下回廊」があります。

仏像模型やパネルを展示した学習コーナー、休憩コーナー、レストラン、ミュージアムショップなどがあり、博物館の入館者だけではなく、誰もが自由に出入できるようになっています。奈良散策の合間にちょっとした休憩するのもいいですので、奈良国立博物館を拝観しない方も、ぜひ立ち寄ってみてください。

ミュージアムショップでは、さすがに仏像関係の本の品揃えが充実しています。またオリジナルグッズも多数あり、比較的お手頃な値段の商品も多いですので、奈良のお土産を買うのにもいいですね。


奈良国立博物館@奈良市-25

奈良国立博物館の「地下回廊」。パネル展示などによって、分かりやすく仏像の魅力が解説されています。地下回廊にはミュージアムショップなども併設されており、博物館利用者だけではなく、誰もが無料で利用できます

奈良国立博物館@奈良市-26
仏像の「印(手の形)」を解説した立体パネル

奈良国立博物館@奈良市-28
レストランの向かいにあるミュージアムショップ。仏像関連の書籍の品揃えはさすがです。オリジナルグッズも充実していますので、奈良公園へ来た際にはお土産を探してみるのもいいですね

奈良国立博物館@奈良市-29
オリジナルのゆるいキャラクターが印刷されたクリアファイル

奈良国立博物館@奈良市-30
色んなキャラクターのスタンプ。ものすごい種類豊富で、仏像だけではなく、三鈷杵・銅鐸・正倉院の文様などがデザインされたものまでありました

奈良国立博物館@奈良市-31
仏像をあしらったキャタクラーTシャツも何種類もあります(2,900円~)

奈良国立博物館@奈良市-32
正倉院模様と奈良模様の蒔絵シール(450円)。琵琶柄のシールなんて他ではまず手に入らないでしょう!

奈良国立博物館@奈良市-33
ふすま地のしおりセット(3枚組420円)

奈良国立博物館@奈良市-34
正倉院シール(450円)

奈良国立博物館@奈良市-35
密教法具シリーズ(1,050円~)。意味もなく欲しくなります(笑)

奈良国立博物館@奈良市-36
オリジナルの「琵琶クリップ(840円)」!鹿の形のものはよく見かけるようになりましたが、まさか琵琶とは!



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■奈良国立博物館

HP: http://www.narahaku.go.jp/index.html
住所: 奈良県奈良市登大路町50番地
電話: 050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
休館日: 月曜日(休日の場合は翌日休み)
開館時間: 9:30 - 17:00
拝観料: 平常展 大人500円、大学生250円、高校生以下は無料(特別展の料金はその都度決定)
駐車場: 周辺の有料駐車場を利用
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から、市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ(近鉄奈良駅から徒歩約15分)

※休館日・開館時間については、必ず事前にホームページでご確認ください






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