2020-10-17

共著書『たずねる・わかる 聖徳太子』(淡交社)が発売中です

共著書『たずねる・わかる 聖徳太子』(淡交社)が発売中です

久々の著作となるムック本『たずねる・わかる 聖徳太子』が、京都の出版社・淡交社さんから発売になりました。2021年の「聖徳太子一四〇〇年遠忌」にあわせ、ゆかりの寺院や史跡、そして太子の伝説や信仰などをわかりやすく解説した一冊です。その内容と執筆の裏話などをご紹介します。


聖徳太子の生涯や伝説がわかる一冊

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-01

久々の著作となるムック本『たずねる・わかる 聖徳太子』が、京都の出版社・淡交社さんから発売になりました。

書名: 淡交ムック たずねる・わかる 聖徳太子
著者: 古谷正覚、千田稔、石川知彦、中村秀樹
出版社: 淡交社
定価: 1,650円(税込)
発売日: 2020年10月10日
判型: A4判 並製 120頁(カラー112頁)
ISBN:9784473021519

詳細: たずねる・わかる 聖徳太子 | 淡交社
※Amazonはこちら→ たずねる・わかる 聖徳太子 (淡交ムック) | Amazon

●聖徳太子一四〇〇年遠忌 ゆかりの寺院や史跡から見えてくる、わかる聖徳太子の生涯・伝説・信仰 ●古代から現代まで尊ばれ、親しまれるさまざまな聖徳太子像と太子信仰

2021年、日本文化の黎明期だった飛鳥時代の政治・外交、文化・芸術、宗教など幅広い分野において業績をのこし、没後も日本仏教に多くの影響を与え続けた聖徳太子の没後1400年を迎えます。そして聖徳太子御遺跡霊場ほか、太子ゆかりの寺院や各府県市町村では遠忌行事や様々なイベントが催され、太子の遺徳が偲ばれます。この節目にあたり、近畿地方を中心とした太子の寺社やゆかりの地を紹介。あわせて古代から現代に至るまで生み出されたさまざまな聖徳太子像や、太子の伝説・伝承、関連人物や日本仏教への影響などについて紹介します。

恐れ多いことに、共著者として古谷正覚さん(法隆寺管長代務者 ※10/22に正式に管長に就任されます)、千田稔さん(奈良県立図書情報館館長)、石川知彦さん(龍谷大学 龍谷ミュージアム副館長)と並んだ末席に名前がクレジットされています。

来年2021年は、聖徳太子の「一四〇〇年遠忌」に当たり、それに合わせての出版となりました。店頭でお見かけの際は、(前著ともども)ぜひ手にとってぱらぱらっと眺めてやってください。


『たずねる・わかる 聖徳太子』目次

●巻頭随筆「聖徳太子のこころと信仰」古谷正覚さん
●「聖徳太子の生涯」千田稔さん

●聖徳太子のゆかりの地を歩く
・【奈良県法隆寺エリア】法隆寺/中宮寺/法輪寺/法起寺/成福寺跡/龍田神社/山背大兄王の墓/藤ノ木古墳
・【飛鳥・吉野エリア】橘寺/飛鳥寺/向原寺/定林寺/金剛寺/世尊寺/日向寺/橿原市内の太子ゆかりの寺/小墾田宮候補地
・【斑鳩周辺エリア】平隆寺/達磨寺/朝護孫子寺/額安寺/大安寺/[コラム]学問道場「熊凝精舎」から大安寺まで/上之宮遺跡/海石榴市/土舞台/旗尾池/當麻寺/[コラム]太子道(筋違道)を歩く
・【大阪府】四天王寺/勝鬘院愛染堂/叡福寺/西方院法楽寺/道明寺/野中寺/西琳寺/大聖勝軍寺/物部守屋の墓・鏑矢塚・弓代塚/用明天皇陵・推古天皇陵/来目皇子の墓/殖栗神社
・【京都府】頂法寺/太秦/大酒神社/伝・秦河勝の墓/蛇塚古墳・天塚古墳/蘆山寺
・【滋賀県】西教寺/長命寺/瓦屋寺/石馬寺/百濟寺/観音正寺/長光寺/市神神社
・【兵庫県】中山寺/鶴林寺/斑鳩寺/聖徳太子の投げ石

●聖徳太子ゆかりの祭礼・行事
●[コラム] 太子と動物雪丸・黒駒
●さまざまな聖徳太子像
「聖徳太子の諸像」石川知彦さん、「漫画と聖徳太子」「街かどの聖徳太子」「キャラクターになった聖徳太子」
●聖徳太子の世界
「聖徳太子の伝承・伝説」「聖徳太子と日本の仏教 -彫刻・絵画作品から探る-」石川知彦さん、「十七条憲法とは」


このような誌面になっています

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-02
巻頭には、古谷正覚さんの随筆『聖徳太子のこころと信仰』が。この時点では「法隆寺管長代務者」でしたが、発売直後の10月22日に管長に就任されるため、ある意味とても貴重です。続いて、千田稔さん(奈良県立図書情報館館長)の「聖徳太子の生涯」という文章が掲載されています

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-03
石川知彦さん(龍谷大学 龍谷ミュージアム副館長)は、「聖徳太子の諸像」「聖徳太子と日本の仏教 -彫刻・絵画作品から探る-」ページなどを執筆されました。お馴染みの旧1万円札の図像や、南無仏太子像・孝養像・摂政像など、絵画や像が分類されており、とても興味深い内容です

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-04
私が担当した「聖徳太子ゆかりの地」コーナー(写真は法隆寺のページ)。近畿二府四県にまたがる36箇寺で構成される「聖徳太子御遺跡霊場」を中心にご紹介しています。すでに廃寺となっている札所もありますが、御朱印をいただきながら霊場巡りに出かけるきっかけになればと思います。

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-06
また、巡礼に合わせて立ち寄れるような、聖徳太子と同時代の方たちのゆかりの地の紹介にも力を入れました。 宿敵となった物部守屋、太子を支えた秦河勝、弟の来目皇子や殖栗皇子、非業の死を遂げた山背大兄王、用明天皇や推古天皇など。それぞれお墓と伝わる場所へお参りするくらいしかできませんが、千四百年も前の方たちの気配が感じられるようですので、ぜひご参考にしてみてください

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-07
奈良県だけではなく、大阪・京都・滋賀・兵庫のお寺もご紹介しています。蘇我馬子の軍に聖徳太子が加わり、河内国渋川で物部守屋と戦った「丁未(ていび)の乱」の戦場跡に建つのが、大阪・八尾市の「大聖勝軍寺」です。近くに守屋のお墓などもあって、とても面白いエリアでした

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-08
兵庫からは「鶴林寺」のページをご紹介します。太子建立七大寺の一つと伝わる、播磨地方有数の古刹で、貴重な文化財を多数有することから「西の法隆寺」とも称されています。仏像好きな方には「あいたた観音」がおわすことで有名でしょう。太子信仰が広範に広まり、今なお厚く信仰されているのは、こういった寺院の存在が大きかったのでしょう

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-09
ちょっと変わったコーナーとしては「太子と動物」などもあります。聖徳太子の飼い犬・雪丸と愛馬・黒駒について、さまざまな伝承や現代の像などをご紹介しています。人の言葉を話したり、富士山をひとっ飛びに超えたり。どちらも逸話のスケールが大きいのです(笑)

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-10
また、個人的に楽しかったのは「漫画と聖徳太子」のページで、山岸凉子先生の『日出処の天子』、池田理代子先生の『聖徳太子』をご紹介できたことです。色々と難航してまるっとカットされる危機もありましたが、頑張って残していただきました。 私自身、『日出処の天子』は大好きですし、この作品から多大な影響を受けた方も少なくないでしょう。作品に登場する人物たちの名前もたくさん出てきますのでどうぞご期待ください

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-11
また、見開きで「十七条憲法とは」というページも掲載しています。その名前は有名ですが、どんな内容かご存じない方が多いでしょう。分かりやすく現代語訳も掲載していますので、ぜひご一読ください


取材画像より簡単にご紹介

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-12
「聖徳太子ゆかりの地」ご紹介のスタートは、もちろん斑鳩町・法隆寺です。取材中にも何度も足を運びましたが、あらためて「聖徳太子」という人物を縦軸に見ていくと、法要もお堂も仏像もこれまでとはまた違った発見がありました。太子の息遣いまで感じられそうな不思議な感覚でした

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-13
王寺町・達磨寺の三尊像。達磨大師の化身と出会ったとされる「片岡山飢人伝説」を今に伝えるお寺さんです。本堂には聖徳太子坐像、千手観音坐像、達磨坐像の3躯が並びます。境内には、太子の愛犬・雪丸の石像とお墓もありますよ!

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-14
大阪・四天王寺は、聖徳太子が建立した日本最初の官営のお寺です。五重塔・金堂・講堂と一直線に並ぶ「四天王寺式伽藍」にはるか先には、超高層ビル・あべのハルカスが見られます。古くてモダンな、本当に素敵なお寺さんですね

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-15
大阪府太子町・叡福寺は、聖徳太子の御廟である磯長廟をお護りするお寺さんです。太子自らがこの地を選び、妃と母とともに埋葬されています。太子を敬う空海や親鸞、日蓮なども参籠した記録が残されており、今も昔も太子信仰の中心となる場所です

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-16
同じく大阪府太子町には、太子の父・用明天皇、叔母・推古天皇など五つの天皇陵が点在し、梅の花になぞらえて「梅鉢御陵」とも呼ばれています。写真は推古天皇の御陵です。ぱっと開けた気持ちよさそうな場所で眠られています。太子町でぜひ御陵巡りをしてみてください!

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-17
京都では、秦氏の本拠地である太秦を中心に何件かご紹介しています。その中で個人的に最も衝撃的だったのが「蛇塚古墳」でした。秦氏の首長のものとみられるもので、住宅街の中に石舞台古墳クラスの規模のお墓があるのもすごいですし、周囲の家々がかつての前方後円墳の形に並んでいるのも面白いです(※書籍にも掲載していますが、あらためてブログでもご紹介する予定です)

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-18
兵庫県からは、中山寺・鶴林寺・斑鳩寺とご紹介しています。写真は、斑鳩寺と同じ太子町にある「投げ石」です。もともとは土地の境界を示す石だったものが、後に「土地の神から『山から石を投げてください。その範囲の土地を差し上げます』と提案された」と変化したのだとか。素朴な民話化しているのが面白いですね

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-19
奈良県内でも、これまで訪れる機会のなかったいろんなスポットを拝見しました。 写真は、桜井市・吉備池廃寺です。太子が造営した道場「熊凝精舎」は、百済大寺→高市大寺→大官大寺と、移転を繰り返し、現在の大安寺へと続きます。熊凝精舎の跡地は大和郡山市・額安寺と伝わっており、吉備池廃寺は百済大寺の跡であると考えられています。聖徳太子の遺志を継いだお寺の系譜も、誌面ではわかりやすくご紹介しています

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-20
こちらは、斑鳩寺・調子丸古墳です。調子丸は太子の従者として、太子の愛馬・黒駒のお世話などを担当していました。ここから100mほどの距離には、その黒駒のお墓と伝わる駒塚古墳もあり、死後も仲睦まじい感じがすごくいいです!

書籍『たずねる・わかる 聖徳太子』淡交社-21
誌面の関係で掲載できませんでしたが、漫画『日出処の天子』のファンとしては、作中で大活躍する「迹見赤檮(とみのいちい)」のお墓とされる大和郡山市・小泉大塚古墳にも注目してほしいです。コンビニの裏手にあるんですよ!こちらもあらためてブログでご紹介しますのでご期待ください!


<余談>執筆の裏話など

私はこれまで奈良県の社寺・観光・飲食店などをご紹介するブログ「奈良に住んでみました」を、10年以上にわたって運営してきました。

しかし、これまでは“聖徳太子”という巨人について、あえてあまり詳しく調べず、「いつかきっちりと向き合ってみよう」と、後々の楽しみ(または宿題)としてきたのです。

来年2021年が聖徳太子の「一四〇〇年遠忌」に当たる年となる今回、こういう形でがっつりと取り組むことができて、個人的には本当に楽しかったです。


とはいえ、コロナウィルス感染症の影響で、取材活動は大変でした。

この本の取材は、2019年11月から徐々に進めてきました。年が明けて2020年1月、本格的な取材活動を行おうと思っていた矢先、新型コロナウィルスが確認されました。

・1月30日 - WHOが世界的な緊急事態を宣言
・3月24日 - 東京五輪・パラリンピックの延期決定
・4月07日 - 7都道府県に緊急事態宣言
・4月16日 - 緊急事態宣言が全国に拡大
・5月25日 - 緊急事態宣言が全国で解除
特設サイト 新型コロナウイルス時系列ニュース|NHK

あるお寺さんは「こんな時こそ神仏にすがりたいのにお参りもしてもらえません」とおっしゃられるほどの非常事態でした。

個人的な話になりますが、私が普段から請け負っているライター仕事も、コロナ禍で開店休業状態に追い込まれてしまいました。毎日のように来ていた発注がぴたっと途絶えしまったのです。ウイルスの猛威がいつ終息するかもわからず、何の保証もないフリーランスのライターとしては、まさにお先真っ暗といえる状態でした。

しかし、私自身はこの本の原稿に集中して取り組むことができたため、精神状態は比較的穏やかでした。聖徳太子の足跡を追うように原稿を書き上げることが、コロナ終息への祈りのような雰囲気すらありました。この仕事がなかったら精神的にまいっていたかもしれません。

コロナウィルス感染症の影響で、2020年に予定されていたイベントなどが軒並み中止となってしまいましたが、2021年はきっともっと盛り上がると期待しています。


■書籍『淡交ムック たずねる・わかる 聖徳太子』

著者: 古谷正覚、千田稔、石川知彦、中村秀樹
出版社: 淡交社
定価: 1,650円(税込)
発売日: 2020年10月10日
判型: A4判 並製 120頁(カラー112頁)
ISBN:9784473021519

詳細: たずねる・わかる 聖徳太子 | 淡交社
※Amazonはこちら→ たずねる・わかる 聖徳太子 (淡交ムック) | Amazon


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