3体の平安仏が祀られた小さなお寺『南明寺』@奈良市郊外
奈良市郊外の、柳生の里にほど近い土地にある『南明寺』へお参りしてきました。普段は事前の拝観予約が必要なお寺ですが、この日は平城遷都1300年祭の特別ご開帳日。たくさんの方が参拝にきていました。
この地域の仏さまが集ったお堂です
平城遷都1300年祭の特別開帳が行われていた『南明寺』。奈良市郊外の369号線をずっと進み、柳生の里にほど近い阪原町にあります。
南明寺の創建については詳しいことは不明です。1585年に島左近が写したとされる「大和坂原由来記」には、天竺僧の恵智・恵僧の二人が、南都元興寺(飛鳥寺?)を創建の後、575年に同地槇山千坊を開き、千躰の仏像祀ったとあります。その中の一堂「室堂」が南明寺となったとされ、956年には信西入道(藤原通憲)が再興したとされています。
しかし、本堂自体は鎌倉時代中期~後期の建築で、1937年に行われた解体修理の際にも、移築された形跡もなく、発掘調査でも遺構などは発見されませんでした。また、本尊の薬師如来像なども含めた諸仏は10世紀末~11世紀のもので、本堂よりも古く、様式は一定していません。このことから、この地域の何らかの理由で退転した寺院の仏像を安置するために南明寺本堂が建てられたのではないかと考えられているそうです。
そんな南明寺は、現在は普段は無住のお寺になっていますので、通常時期の拝観には事前予約が必要ですのでご注意ください。この日は特別開帳ということもあり、ボランティアの方が常駐していて、たくさんの方がお参りにきていました。
奈良市郊外にある『南明寺』の本堂前。本堂のみが建つ小さなお寺ですが、薬師如来・釈迦如来・阿弥陀如来という平安時代の三体の仏さま、そして鎌倉時代に建てられた本堂が重要文化財に指定されています
南明寺に立てられた「祈りの回廊」の立て看板。ほとんど駐車スペースも無いお寺だけに、この日はやや離れた場所に臨時駐車場を用意するなどの臨戦態勢でした
平安時代の穏やかな表情の仏さまたち
南明寺のご本尊は、像高84.2cmの「薬師如来坐像(重文)」です。10世紀末~11世紀の作で、桂(かつら)材の一木造。光背がきれいに残っています。その周りには、70cm前後と小さめで、とってもユーモラスな表情の四天王像がお薬師様を守護しています。
両脇には、像高139cmの「阿弥陀如来坐像(重文)」と、144.5cmの「釈迦如来坐像(重文)」が。全ての像は、同じ仏師によって彫られたものではなく、南明寺の近辺にあったお寺から集まってきたものとのことですが、全て平安末期の作のため、どこか定朝様の影響が感じられます。彫りが浅めで、とっても穏やかな仏さまでした。
こんな山深い土地に、これだけの素晴らしい仏さまが遺されているんですから、やはり奈良はすごいところですね。平安時代の仏さまがお好きな方は、事前に拝観予約が必要となりますが、ぜひお参りに行ってみてください。
南明寺の「本堂(重文)」。5間の簡素な仏堂ですが、内部は大仏様のような古風さが感じられる、個性的な作りになっています。内陣には、ご本尊の「薬師如来坐像(重文)」を中心に、小さな四天王像、阿弥陀如来坐像・釈迦如来坐像と、平安時代の穏やかな仏さまが並びます。端には巨大な地蔵菩薩半跏像もいらっしゃいました
南明寺の案内看板。「本堂は鎌倉時代に建てられた一重寄棟造りで、力強く簡潔な様式を残しています。本堂には木造の釈迦如来(平安後期)、薬師如来(平安初期)、阿弥陀如来(平安後期)の座像三体を安置していますが、造像の手法はそれぞれ異なっています。寺の創立年代は不明ですが、周囲に多くの堂塔のある大寺であったようです。」
本堂の脇には十三重石塔が。右手に見えるのは新しい公衆トイレです
境内にはこんもりとした丘があります。特に説明もありませんでしたが、古墳に見えなくもないですね。丘の上は墓地になっていました
南明寺の周囲はこんなのどかな風景が広がっています。柳生の里と近いので、それと合わせてまわってみるといいでしょう
南明寺でいただいた御朱印です。ご本尊がお薬師さまですので「瑠璃光」と書かれているのだと思います
■南明寺(医王山)
HP: http://nanmyouji.seesaa.net/
住所: 奈良県奈良市阪原町1005
電話: 0742-93-0392
宗派: 真言宗御室派
本尊: 薬師如来坐像(重要文化財)
創建: 不明(平安時代末期~鎌倉時代ころ)
開基: 不明
拝観料: 300円
拝観時間: 9:00 - 16:00
駐車場: 無料
アクセス: JR・近鉄奈良駅から 柳生・邑地中村行バス「阪原」下車すぐ
※通常は、拝観には事前予約が必要です
※私たちがお参りしたのは「2010年11月14日」でした