2011-05-01

南都仏師の大きな「大仏地蔵」のお寺『福智院』@奈良市

南都仏師の大きな「大仏地蔵」のお寺『福智院』@奈良市

奈良市福智院町にある『福智院』へお詣りしてきました。小さなお寺さんですが、本堂いっぱいの大きさで、凛々しく美しい「地蔵大佛」さんがいらっしゃる素晴らしい空間になっていました。


僧・玄昉が創建した古刹です

奈良市福智院町にある『福智院』は、聖武天皇が発願、736年に玄昉が創建した清水寺を前身とする古刹です。鎌倉時代に本尊の「地蔵菩薩坐像(重文)」が造立されたのにともなって現在地へ移転し、興福寺大乗院の地蔵堂として、南都の地蔵信仰の霊場になっていました。

国道169号線からも、高畠方面に向かう80号線からも少しずつ奥まっているため、なかなか目立ちづらいお寺です。奈良町から、十二神将像が有名な「新薬師寺」(当サイト内)へ向かう途中にあります。距離もほど近く、同じく地蔵信仰の中心だった「十輪院」(当サイト内)と合わせてお詣りするといいですね。

境内はそれほど広くなく、拝観できるのは1254年建立の「本堂(重文)」のみ。2階建ての重層建築に見えますが、屋根は飾りの意味が強い「裳腰(もこし)」で、天井の高い単層です。薄暗く古式ゆかしい建物の高さいっぱいに巨大なお地蔵さまがいらっしゃる姿は圧巻でした!

この日はここの奥さまにご説明をいただきましたが、お堂に入ってすぐに紅茶と飴ちゃんを勧めていただいて、ご本尊の前でいただく・・・という驚きの展開に!毎回こうしておもてなししているのかは分かりませんが、なかなか貴重な経験ですね。また、とても詳しく面白いお話を伺えますので、とても参考になりました!


福智院@奈良町-01

奈良市福智院町にある『福智院』。僧・玄昉の開基の古刹です。拝観できるのは本堂のみと、それほど規模の大きなお寺ではありません。残念ながら本堂(重文)のまともな写真がありませんが、二階建てに見えますが、裳腰がついた単層です。和様に天竺様を取り入れた重厚な雰囲気の建物でした

福智院@奈良町-05
境内にある「玄昉僧正顕彰碑」。福智院の前身は、聖武天皇が発願、736年に玄昉が創建した清水寺と、玄昉と縁のあるお寺です。橘諸兄政権の時に吉備真備とともに活躍しましたが、その後左遷されるなどの憂き目にあいました。玄昉の首塚と伝わる「頭塔」とともに、毎年6月18日には「玄昉忌」が催されています


※ 2011/05/11 追記

<追記>福智院@奈良町
すぐに福智院の近くへ行く機会があったので、「本堂(重文)」の写真を撮り直してきました。2階建てに見えますが、天井の高い単層で、この内部に大きなお地蔵さまがいらっしゃいます


巨大でユニーク!すごいお地蔵さまです

本堂に入ると、目の前には像高2.73m、台座から6.76mという、「地蔵大仏」と呼ばれるほど大きな「地蔵菩薩坐像(重文)」がいらっしゃいます。これほど大きなお地蔵さまの坐像はなかなか見られませんし、左手には宝珠を持っていて(右手には錫杖)、これが薬壷に見えて、一瞬、薬師如来像かと思ってしまいます。

このお地蔵さまは大きいだけではありません。南都仏師が手がけた鎌倉時代の仏さまらしく、切れ長の凛とした表情が印象的で(お顔の部分は最近修復なさったそうです)、大きな仏像にありがちなアンバランスさは全く感じられません。また、他では見られない珍しい特徴を兼ね備えた、とても面白いお地蔵さまでした。


●丈六(2.73m)の座像で、台座からの総高は6.76mもある巨像
●鎌倉時代作。1203年に発願され、1254年に開眼
●桧の寄木造りで、その上に漆を塗り彩色が施されていた
●坐禅のような「結跏趺坐」ではなく、右足を前に出した「安坐」に
●台座は、菩薩に多い「蓮華座(蓮の花が開いた形)」ではなく、法隆寺の仏像でよく見られるような、裾が台座に垂れ下がる「裳懸座(もかけざ)」に
●お地蔵さまなのに「光背」を背負っていること。


最もユニークなのは光背でしょう。大きさは5.05mと巨大で、化仏(小さな仏さま)がびっしりと並んでいます。地蔵尊がこのような光背を持つのは珍しく、現存している唯一のものなのだとか。

化仏の地蔵菩薩の小像は560躯あります。そして、それよりもわずかに大きな作りで、不空成就如来(=お釈迦さま)を頂点に、左右三躰ずつ六体の地蔵菩薩像(六地蔵)が並び、さらにその下には、左右一躯ずつ神職の姿をした冥官座像が並びます。堂内は薄暗くて、最初はよく見えないのですが、近づいてまじまじと見てみると、驚くことだらけですね。

さらに、光背に560躯、六地蔵と本尊を合わせると、計567躯のお地蔵さまがいらっしゃることになります。これは、お釈迦さまの入滅後、56億7千万年の後に下生すると云う弥勒菩薩の信仰に符合する数となるのだそうです!

そんな細かいところを感じながらお詣りしてもいいでしょうし、単純にその大きさに圧倒されてもいいですね。そのくらい美しくて迫力のある、そして魅力的なお地蔵さまでした。

なお、ご本尊の向かって右手奥には、箱根の個人の方が所蔵していた観音さまがいらっしゃいます。こちらは秘仏となるのですが、この日はお厨子の修復中ということで、しばらく拝見できる状態が続くそうです。この観音様を中尊にして、両脇には阿弥陀様2躯・・・という、なかなか不思議な(でも言われなければ気づかない)三尊像になっていますので、こちらもぜひご覧ください。


福智院@奈良町-13

福智院のご本尊「地蔵菩薩坐像(重文)」(パンフレットより)。像高2.73m、台座からの高さは6.76m。「地蔵大仏」と呼ばれるほどの巨大さです。お顔の部分はつい最近修復が入ったばかりで、さまざまな印刷物のものよりも綺麗に。色んな意味で桁外れのお地蔵さまでした


お庭には「ナラノヤエザクラ」が満開

この日は、生憎の雨模様でしたが、お庭には綺麗な花々が咲き乱れていて、とても美しい姿が見られました。

中でも、2本の「ナラノヤエザクラ」が見事でした。伊勢大輔が「いにしへの 奈良のみやこの 八重ざくら けふ九重に にほひぬるかな」と詠んだのはこの桜で、奈良県の県花、奈良市の市花にも指定されています。

福智院のナラノヤエザクラは、天然記念物に指定されている東大寺知足院のものの子孫にあたる株なのだとか。4月下旬ごろからと、遅めに見頃がきますので、そのタイミングで見に行くのもいいでしょう(境内は無料で入れます)。


福智院@奈良町-02

本堂の周りには、手入れの行き届いたお花が咲き乱れていました

福智院@奈良町-07
本堂脇のお庭。それほど広くはありませんが、きれいな花々が咲き誇っていました

福智院@奈良町-08
お地蔵さまの前に落ち牡丹

福智院@奈良町-03
お地蔵さまを祀るお寺だけに、小さなお地蔵さんがズラリ!

福智院@奈良町-04
門をくぐって左手にある小さなお道には「勝軍地蔵尊」が。地蔵信仰が道祖神と習合したもので、古くは四隅に祀られていたのだそうです。その脇に咲いているのはナラノヤエザクラ。天然記念物に指定されている東大寺知足院のものの子孫にあたる株なのだとか

福智院@奈良町-09
ナラノヤエザクラのアップ。儚げで美しい桜です。ゴールデンウィークに満開を迎える遅咲きの桜なんですね

福智院@奈良町-06
福智院の手水鉢。お地蔵さまが見守ってくれています

福智院@奈良町-ご朱印
福智院でいただいた御朱印です。「地蔵大佛 南都 福智院」とあります



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■福智院 (清冷山)

HP: http://www.fukuchiin-nanto.com/index.html
住所: 奈良県奈良市福智院町46
電話: 0742-22-1358
宗派: 真言律宗
本尊: 地蔵菩薩坐像(重要文化財)
創建: 736年(または1254年)
開基: 玄昉
拝観料: 400円
拝観時間: 9:00 - 16:30
駐車場: ごくわずか(公共交通機関を利用のこと)
アクセス: 近鉄奈良駅から奈良交通バス「天理方面」行きで6分、「福智院町」下車すぐ


■参考にさせていただきました!

福智院 - Wikipedia
ホーム>仏像探訪記>奈良県>福智院
玄昉 - Wikipedia










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