2008-05-09

「救世観音」特別公開+αの『法隆寺』@斑鳩町

法隆寺(夢殿)

連休も終わり、奈良の観光地も少しずつ空いてきた頃かと思い、春の秘宝展などを開催中の『法隆寺』へ行ってきました。相変らずものすごい宝物の宝庫で、とっても楽しかったのですが・・・、ものすごい修学旅行生の数!こんな面でも法隆寺はスゴイです!


イベント満載の法隆寺へ!

この日の法隆寺は色んなイベントが目白押し。

・「夢殿」の本尊「救世観音」の特別公開期
・春の「法隆寺秘宝展」が開催中
・「金堂」内部は修復中のため、拝観不可で残念・・・
・と思ったら、秋にしか公開しない大講堂北側の「上御堂」が開いていて、金堂のご本尊「釈迦三尊像」も近くで見られる!

結果的に嬉しいことずくめだったのですが、連休明けの平日ということもあって、ものすごい数の修学旅行生!一つの集団が過ぎ去るのを待っていても、次から次へと新手がやってくるので、さすがに落ち着いて観てまわるような雰囲気ではありませんでせした・・・。

まぁ、奈良の文化財の素晴しさを知ってもらうため仕方ないことなんですが、つい最近見た「奈良への修学旅行生が激減している」なんてニュースが信じられないくらいの盛況ぶりでした。一昔前はもっとスゴかったんでしょうね。


法隆寺-01

斑鳩にある世界遺産『法隆寺』。これまでにも何度も来ていますが、この日は、春の「法隆寺秘宝展」と「夢殿の特別公開」を見にきました

法隆寺-02
連休明けの平日(金曜日)ということもあって、法隆寺クラスのお寺には大量の修学旅行生が!この時期にあまり大きな寺院へ行くのはオススメしません・・・


救世観音は・・・よく見えません!

まずは、秘仏「救世観音(国宝)」が祀られている「夢殿(国宝)」のある東院伽藍方面から。

夢殿は739年の建築で、平安・鎌倉期に大修理が行われているそうです。有名な八角円堂で、聖徳太子を偲ぶため、かつての住居があった斑鳩宮の跡地に建設されました。その周囲を「廻廊」と礼堂、絵殿・舎利殿で取り囲んであり、木製の格子窓(連子窓(れんじまど)といいます)の連続が美しく、とても静かな趣のある一角です。

夢殿の本尊の特別公開は、春と秋に各1ヶ月ずつ。絶対秘仏であった救世観音(正確には観音菩薩立像)を、1884年にフェノロサと岡倉天心が開いて・・・というストーリが有名です。ぜひ一度は自分の目で見てみたいと思っていたのですが、実際に目の前にした救世観音像は、厨子がジャストサイズですし、お堂全体がかなり薄暗いため、正直、ほとんど見えませんでした・・・。

しかし、長い間、完全な秘仏として扱われてきただけあって、7世紀の木造仏だというのに金箔もキレイに残っていて、神々しさと威厳は十分に伝わってきます。聖徳太子の生前にその姿を模して彫られたものだと言い伝えられていますが、写実的に造られたものよりも、ゴージャスでいいですね。

細かいところまではよく見えませんが、すでに書籍などで何度も拝見していますので、「もっと詳しく見たい!」と思えるくらいの距離感がちょうどいいのかもしれませんね(笑)

なお、夢殿には、聖観音菩薩像(平安時代)・行信僧都像(奈良時代)なども祀られていますので、お見逃し無く!


法隆寺(夢殿)-01

まずは東院伽藍方面へ向かいます。画像は、夢殿前の「四脚門(重文)」。秘仏「救世観音(国宝)」の特別公開中ということもあって、次から次へと観光客が押し寄せてきていました

法隆寺(夢殿)-02
夢殿の手水屋。大宝蔵院に展示してあった、金堂の天蓋の鳳凰をモチーフにしたものだと思われます。おかしな言い方ですが、どことなく近未来的です。龍じゃなくて鳳凰が水を出す、というのが面白いですね

法隆寺(夢殿)-03
法隆寺「夢殿(国宝)」。聖徳太子の住居だった斑鳩宮跡地に建設された、回廊に囲まれた八角円堂です。中には秘仏「救世観音像(国宝)」が祀られており、春と秋の特別公開の間だけ拝見できます

法隆寺(夢殿)-04
夢殿の鴟尾(しび)と鬼瓦。時代の重さと優雅さを感じさせてくれる、美しいものでした

法隆寺(夢殿)-05
受付脇に貼ってあった「観音菩薩立像(救世観音)」のパネル。聖徳太子の等身大の木像で、現在も春・秋のわずかな期間しか公開されていません。実際に見てみると、お堂の中が暗すぎたり、厨子がジャストサイズだったりして、あまりよく見えないのが残念・・・

法隆寺(夢殿)-06
夢殿の南側にある「礼堂(重文)」。元は中門だったとか。夢殿を中心として、グルリと回廊が取り囲む形になっています

法隆寺(夢殿)-07
夢殿の廻廊(東側部分)。この柱は、有名なエンタシス(中央が膨らんだ柱)ではないようですね

法隆寺(夢殿)-08
夢殿の北側にある「絵殿・舎利殿(重文)」。内部は見られませんが、中央が馬道(めどう)のように空いた建物です。この奥手には「伝法院(国宝)」があります

法隆寺(夢殿)-09
地元の小学生たちの遠足も。奈良の子供達は学校行事としてお寺巡りがあるそうです。今なら「羨ましい!」と思いますが、小学生には難しいかもしれませんよね(笑)


釈迦三尊像を間近で見る幸せ!

夢殿の後は、法隆寺の西院伽藍へ。法隆寺らしい「五重塔(国宝)」や「金堂(国宝)」などが立ち並ぶ、法隆寺の中心部です。

この日は金堂が修復作業中のため、内部は拝観できませんでした。普通ならちょっと残念に思えますが、金堂のご本尊「釈迦三尊像(国宝)」などは、大講堂の北側にあり普段は開いていない「上御堂(かみのみどう)」へ移動して公開されていたのです!

普段の金堂は、懐中電灯で内部を照らしてようやく見えるような薄暗い空間のため、薬師三尊像がこんなに明るい場所で、間近に見られるチャンスはほぼ無いでしょう。また、上御堂は11月初めの短い期間しか公開されないもので、そのご本尊の「釈迦如来坐像(国宝)」と、脇侍の文殊・普賢菩薩像なども始めて見ることが出来ました。想像以上の金箔の残り方で、かなりいい体験をさせてもらえたと思います。

ちなみに、普段は金堂内にいらっしゃる他の仏像さんたちのうち、吉祥天・毘沙門天・増長天・持国天さんたちは、この日も開催されていた「法隆寺秘宝展」の方で拝見できました。別料金(@500円)を取られるのもちょっとシャクですが、普段は薄暗いお堂の中で遠目に観るだけの仏像が、明るいガラスケースの中に間近で見られるのですから、これも楽しかったです。

何よりも驚いたのは、普段はそれほど目立たない存在だった「吉祥天立像(国宝)」が、明るいところで改めてみてみると、模様もキレイに残っている、とても肉感的で美しい仏像だということでした。また、四天王像の2体は周囲をグルッと周って見られるようになっていて、コチラも珍しいですね。


法隆寺-03

法隆寺の西院伽藍方面へ。画像は仁王像を配した「中門(国宝)」。飛鳥時代の建立で、正面の柱間を「4間」と偶数で、門の真ん中に柱が来てしまう珍しいもの。柱は中央が膨らんだエンタシス形式です

法隆寺-04
法隆寺・中門の「阿形(重文)」。711年作の日本最古の金剛力士像で、雨風が当たる位置にあるため、これまでに何度も修復されてきました。後の時代には金剛力士像は南大門を守りますが、飛鳥時代には中門を守るのが通例だったそうです

法隆寺-05
法隆寺・中門の「吽形(重文)」。江戸時代の大修理の際に、頭・右腕以外の部分は木造に改造されてしまいました。天平期らしい力強さのある塑像で、何の囲いも無く、これだけ間近に見られるのは珍しいかもしれません

法隆寺-06
法隆寺「五重塔(国宝)」。実際の高さは約37mですが、塔の上に行くほど細身になっていて、より高く見えるような作りになっています。一番上の層と一番下の層では、一辺が半分程度でしかないのだそうです。内部には釈迦の入滅を表した「涅槃像土(国宝)」があります

法隆寺-07
西院伽藍内の灯籠。「廻廊(国宝)」の連子窓(れんじまど)からは、外に咲いている満開のツツジが見えました

法隆寺-08
西院伽藍の「廻廊(東側)」。柱の中央が太めになっているエンタシスの様子が少しだけ分かります

法隆寺-09
法隆寺「金堂(国宝)」と、背後に五重塔。この日は金堂の修復中で、内部は拝観できませんでしたが、中の諸仏たちは別の場所に移されて、いつもよりもハッキリと見ることができました!

法隆寺-10
金堂の軒を支える龍。金属のヒゲがあったりと、かなり装飾的で美しいものです

法隆寺-11
大講堂から見た金堂・五重塔・中門。それにしても、かなりの数の修学旅行生ですね。落ち着いてみていられません・・・

法隆寺-12
990年に造られた入母屋造りの「大講堂(国宝)」。925年に焼失し、今の位置に移築されたそうです。内部には平安時代作の「薬師三尊像(国宝)」と、「四天王像(重文)」が祀られています

法隆寺-13
修理中の金堂のご本尊「釈迦三尊像(国宝)」などは、大講堂の北側にある「上御堂(かみのみどう)」に移されて公開されていました。普段は公開されていないお堂ですし、釈迦三尊像が間近で見られるし、かなり嬉しいですね


聖徳太子ゆかりの品々が

西院伽藍の東側部分には、聖徳太子を祀った「聖霊院(国宝)」があります。本尊の「聖徳太子坐像(国宝)」は秘仏となっていて、年に数日しか拝見できませんが、鎌倉時代に建てられた、いかにもお堂らしい、とても厳かな印象の建物ですので、ぜひ内部に入って天井や格子扉なども見てみてください。

ちなみに、その場にいらっしゃったお坊さんに伺ったのですが、ご本尊が公開される「お会式(おえしき)」の際には、お供え物が山積みになってしまって、結局はご本尊の姿はほとんど見ることが出来ないのだそうです(笑)

その奥の「東室(国宝)」と、向かい側の「妻室(重文)」は、いずれも元は僧房だった建物で、かなり渋~いものです。あまりに地味なので、正直、見ていてそれほど面白いものでは・・・。

法隆寺-14
鏡池の向かいにある、国宝「聖霊院(しょうりょういん)」。1121年の改築の際に本尊「聖徳太子坐像(国宝)」の開眼供養が行われました。秘仏となっており、3月22日~24日の「お会式(おえしき)」の時にだけ公開されます

法隆寺-15
格子柄が美しい聖霊院。その後ろは「東室(国宝)」で、奈良時代の僧房の様子を今に伝える貴重な建築物なのだとか。残念ながら拝観することは出来ません

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聖霊院の隣に建っている「妻室(重文)」。平安時代の細長い建物で、コチラも元は僧房でした

法隆寺-17
聖霊院前にある手水屋。ここはペルシャ風の壷から麒麟のような首が伸びて水を落としています。変わった形ですね

法隆寺-18
妻室の隣にある「綱封蔵(国宝)」。高床式の倉庫です。その前には満開のツツジが咲き誇っていました


秘宝展と大宝蔵院、どちらもスゴイ!

この日は「法隆寺秘宝展」が開催されていました。今回のテーマは「斑鳩宮と東院伽藍」、特別展示「飛鳥・白鳳時代の至宝」。有名な玉虫厨子を現代の技術で復元したものと、現代の名匠が新しく作った「平成の玉虫厨子」の2パターンが展示されていたりと、かなりバラエティーに富んだ内容でした。

個人的には古い瓦とか巻物などにはあまり興味がないタチですが、貴重な仏像なども明るい場所で見ることができましたので、個人的には満足です。

また、常設展示の「大宝蔵院」の方は、相変らずの豪華さです!

「夢違観音」「百済観音」「九面観音」などなど、飛鳥時代前後の貴重な仏像がこれだけ見られるのは法隆寺以外にはあり得ないのですから、素晴しいですね。特に百済観音のスマート過ぎるフォルムは何度見ても驚かされますし、修学旅行生へのウケもバツグンでした(笑)

法隆寺-19
この日は春の「法隆寺秘宝展」が開催されていて(拝観料@500円)、普段は見られない貴重な宝物が沢山見られました。金堂の四天王像の周りをグルリと見られたのが嬉しかった!

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沢山の宝物を展示した「大宝蔵院」。国宝の夢違観音・百済観音・玉虫厨子など、貴重で有名な宝物が常設展示されていて、何度見てもため息が出るほどの豪華さです

法隆寺-21
法隆寺の軒瓦。紋にも色んなパターンがあって、見ていて楽しいものです

法隆寺-22
綱封蔵の前の水場に咲いていていたアヤメ。満開で花札の絵柄そのまんまでした!

法隆寺-ご朱印
法隆寺でいただいてきたご朱印です



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■法隆寺

HP: http://www.horyuji.or.jp/
住所: 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1の1
電話: 0745-75-2555
宗派: 聖徳宗総本山
本尊: 釈迦如来(重要文化財)
創建: 607年(伝)
開基: 推古天皇・聖徳太子
拝観料: 1,000円(西院伽藍内、大宝蔵院、東院伽藍内共通)
拝観時間: 8:00 - 17:00(冬期は16:30まで)
駐車場: 民間の有料駐車場あり(500円程度)
アクセス: JR「法隆寺駅」下車、徒歩20分

※南都七大寺の一つ
※春秋に行われる法隆寺の「夢殿本尊特別開扉」のスケジュールは「法隆寺の四季」ページでご確認ください(2009年は「4月11日」「10月22日-11月23日」です)






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