2012-11-08

古来から「風神」を祀る風の神社『龍田大社』@三郷町

古来から「風神」を祀る風の神社『龍田大社』@三郷町

生駒郡三郷町にある、風の神さま「風神」を祀る古社『龍田大社』へお詣りしてきました。古くは名神大社、明治時代は官幣大社と、広瀬神社の水神と並び称された大社でした。手筒花火を使う夏の例祭「風鎮大祭」が有名ですが、普段はのんびりとしたお社です、


夏の例祭「風鎮大祭」が有名な旧官幣大社

生駒郡三郷町にある『龍田大社』は、崇神天皇の御代(紀元前です)に創建されたとされる古社です。927年の「延喜式神名帳」では名神大社、二十二社の一社とされ、明治期には官幣大社に列していました。古くから「風」を司る風神を祀っていることでも知られています。


古来、龍田大社は歴代の朝廷からも深く信仰された由緒ある神社で、天御柱命(志那都比古神)と国御柱命(志那都比売神)をおまつりしています。
祭神は別名を龍田神・龍田風神ともいい、社伝によると、崇神天皇の御代に凶作が続いたとき、夢でこの風神のお告げをうけて創建されたということです。
延喜の制では名神大社に列し、古くから五穀豊穣・航海安全に霊験ありとして崇敬を集めています。旧社格は最高の官幣大社。
今も毎年行われる風鎮祭は、天武天皇(675年)に始まると伝えられる由緒を持っています。


また、紅葉の名所「龍田川」沿いに建つことから、この地を詠んだ和歌は百人一首にもとられています。

●ちはやぶる 神世も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは(在原業平 17番)
●嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり(能因法師 69番)


現在の龍田大社は、毎年7月の第1日曜日に行われる例祭「風鎮大祭(ふうちんたいさい)」(このサイトが詳しいです)が知られています。これは風の神様の神事であり、素手で持った手筒花火から5メートルもの火柱が上がる勇壮なもの。動画がアップされていましたのでぜひご覧ください。


【YouTube動画】2011年・龍田大社・風鎮大祭(奈良県三郷町)

※ 2014/07/15 追記

2014年、ようやく「風鎮大祭」を拝見できました!夜まで激しい雨が降り続いていたので、最後の奉納花火しか観られませんでしたが、間近で大迫力でした。

なお、斑鳩町には「龍田神社」(Wikipedia)があります。法隆寺の鎮守として創建され、明治時代以降は龍田大社の摂社となっていましたが、大正時代には独立しています。名前も創建時期も御祭神も似ていますが、別の神社ですのでお間違い無く。


龍田大社@三郷町-01

三郷町にある古社『龍田大社』。旧社格は最高の「官幣大社」に列しており、鳥居の脇の石碑にもその旨が記してありました。この時期は、七五三シーズンでお参りの方の姿もちらほらと。紅葉には半月ほど早かったようです。広い無料駐車場もありますので、車でもお参りしやすいですね

龍田大社@三郷町-02
鳥居から拝殿までは広々としています。夏の大祭「風鎮大祭」の際には、ここも人があふれるのでしょう


主祭神は「天御柱大神」と「国御柱大神」です

龍田大社の主祭神は、「天御柱大神」(あめのみはしらのおおかみ。別名は志那都比古神)と、「国御柱大神」(くにのみはしらのおおかみ。別名は志那都比売神)の2柱。摂社には、神武天皇の即位前にまで遡るこの土地の氏神「龍田比古命」(たつたひこのみこと)と「龍田比売命」(たつたひめのみこと)が祀られています。

いずれも大気・生気・風力などを司る神様とされていて、古くから「風の神社」として尊崇されていました。

残念ながら本殿までは距離があるため、その様子はよく見えませんが、二千年以上も続く古社らしい雰囲気は充分に感じられるでしょう。


龍田大社@三郷町-03

龍田大社の「拝殿」

龍田大社@三郷町-04
拝殿はいつの時代のものかは分かりませんが、舞台作りで折上げ格天井の美しいものでした。奥の正面に見えるのは「祝詞殿」で、そのさらに奥に「本殿」があります。祝詞殿の両脇には5つの摂社末社が祀られています

龍田大社@三郷町-05
拝殿の吊り灯籠は木製でした

龍田大社@三郷町-06
拝殿脇からの眺め。手前に見える末社3社は、上座から天照大御神と住吉大神、枚岡大神と春日大神、高望王のお妃が。奥側の摂社2社には、上座から龍田比売命と龍田比古命が祀られています。遠目にしか見られないのが残念ですね

龍田大社@三郷町-08
本殿脇には、白龍神社・龍田恵美須神社・三宝稲荷神社と末社が3社並びます。のぼりや鳥居が華やかですね

龍田大社@三郷町-09
白龍神社のご神体。水を好まれる神様なので、石に水をかけてお参りします。江戸末期に姿を見せた白蛇が、後に姿を消し、明治41年に大和国葛城郡にごり池に白龍として現れたことから、ここにお祀りするようになったとか。比較的近代の神様なんですね


鮮やかな「青赤黄白黒」の5色が目立ちます

龍田大社で驚いたのが、ご祈祷などを行う祈祷参集殿の天井や、境内のちょっとした柱などが「青赤黄白黒」の5色に塗られていたことです。

他の神社ではまず見かけない色使いなので不思議に思っていると、偶然、神社側の人らしき方(毒舌のおじいさんでした)にお話を伺えたのですが、黒は始まりで赤は命で…など、人間の一生を表しているのだとか。なるほど!


龍田大社@三郷町-10

拝殿の右手にある新しい建物は、ご祈祷などを行う「祈祷参集殿」です。手前に見える歌碑は、万葉集に収められた高橋虫麻呂の歌。桜が満開の季節に、花が風で散らないようにと龍田の風神さまに風祭りをしようと願った歌です

龍田大社@三郷町-12
この日の参集殿では、七五三のご祈祷などが行われていました。扁額に「風神」とあるのもさすがですね。ただ、気になるのは天井の色なんですが…

龍田大社@三郷町-13
龍田大社・祈祷参集殿の天井!青赤黄白黒の5色でまばゆいくらいです。何か云われがあるのかと、神社側の人らしき方にお話を伺ったところ、黒は始まりで赤は命で…というように、人間の一生を表す5色なんだそうです。この色使いはちょっとすごいですね!


万葉歌「島山を い行き巡れる 川沿ひの…」

龍田大社の境内にあった万葉歌碑は、難波宮から平城京へ帰ってきた宮廷歌人・高橋虫麻呂が詠んだ長歌が刻まれています。

島山を い行き巡れる 川沿ひの 周辺の道ゆ
昨日こそ 我が越え来しか 一夜のみ 寝たりしからに
峰の上の 桜の花は 瀧の瀬ゆ 散り落ちて流る
君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと
うち越えて 名に負へる社に 風祭りせな
高橋虫麻呂 万葉集 巻9-1751
島山を行き巡って流れる川沿いの、周辺の道を通って私が越えて来たのはほんの昨日のことであったが、たった一晩旅宿りしただけなのに、屋根の桜の花は滝の早瀬をひらひら散っては流れている。我が君が帰り道にご覧になるその日までは、山おろしの風など吹かせ給うなと、馬うちながらせっせと越えて行って、その名も高い風の神、龍田の社に風祭りをしよう。


古くから有名な龍田大社の風の神に、「満開の桜が散らしてしまう風を吹かせないようにお願いしよう」というような内容ですね。奈良街道の一つで、大阪と奈良をつなぐ「竜田越奈良街道」に鎮座するお社ですから、帰り道にお詣りしていこうというのも自然な行動だったのかもしれません。


龍田大社@三郷町-11

高橋虫麻呂の歌碑。こう解説文がついています。「難波宮から平城京に還って来る時の高橋虫麻呂の歌である。龍田の社は、風神を祭ることで古来有名であった。折しも桜花満開の時。そこで名高い龍田の神に花が風で散らないように風祭りをしようと願ったのである」


漫画風な狛犬、風神と書かれたご朱印など

龍田大社@三郷町-14
参道の右手に建つ龍田大社の社務所。立派な建物ですね。御朱印などもここでいただきます

龍田大社@三郷町-15
龍田大社の手水舎。シンプルですが、ここにもちゃんと注連縄が張ってあります

龍田大社@三郷町-17
龍田大社の狛犬「阿形」。ちょっと驚くくらいの漫画顔で、可愛らしいです!

龍田大社@三郷町-16
こちらは狛犬「吽形」。ちょっと潰れた感がいいですね

龍田大社@三郷町-18
参道の脇には、戦後に奉納された大砲と玉がありました。砲身に比べて明らかに玉が大きく、全く別々のもののようです(笑)

龍田大社@三郷町-19
龍田大社の御朱印。きっちりと端正な書ですね。「風神」の文字がありがたいです



大きな地図で見る


■龍田大社

HP: 参考サイト(三郷町ホームページ)
住所: 奈良県生駒郡三郷町立野南1-29-1
電話: 0745-73-1138
主祭神: 天御柱大神、国御柱大神
創建: 崇神天皇の時代(紀元前)
拝観料: 境内自由
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR大和路線「三郷駅」から徒歩8分ほど

※実際にお詣りしたのは「2012年11月4日」でした


■参考にさせていただきました!

龍田大社 - Wikipedia
玄松子の記憶 龍田大社
龍田大社 風鎮大祭 | 春日野奈良観光






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