2012-04-23

巨大な前方後円墳『メスリ山古墳』『茶臼山古墳』@桜井市

巨大な前方後円墳『メスリ山古墳』『茶臼山古墳』@桜井市

桜井市にある200メートル級の巨大な前方後円墳『メスリ山古墳』と『桜井茶臼山古墳』に行ってきました。日本有数の立派なお墓とはいえ、復元模型があるわけでもありませんので地味なところですが、そこは想像力で補って楽しみました!


一部が公園になった『メスリ山古墳』

桜井市高田にある、国史跡『メスリ山古墳』。

古墳時代前期の4世紀頃に築かれたもので、墳丘の全長は約230m。同じ桜井市にある「箸墓古墳」や「桜井茶臼山古墳」などの巨大な前方後円墳と同系列のもので、全国の同時期の古墳と比較しても最大級です。これだけの規模の古墳ですから、各地の政治集団の連合の頂点に立つ首長墓と考えられているそうです。

航空写真では後方部の一部が削られたように見えますが、ちゃんと前方後円墳であることが確認できます。


より大きな地図で 桜井市の巨大古墳 を表示


実際にメスリ山古墳へ行ってみると、北側が遊歩道のようになっていますが、前方後円墳の形にそって歩けるような道はありません。周囲の道も細く、車を停めるような場所も無さそうですので、お気をつけください。なお、メスリ山古墳の南側には「八坂神社(参考サイト)」という神社があり、そちら側からであれば古墳の頂上へ登れるようです。


メスリ山古墳@桜井市-01

メスリ山古墳へのアプローチ部分。北側は公園(短い遊歩道)になっています。すぐ近くまで民家が迫っていて、ただの丘に見えます

メスリ山古墳@桜井市-02
周囲にそってずっと歩けそうですが、きれいになっているのは北側のみ。一周して前方後円墳の独特な形をなぞることはできませんでした。残念!

メスリ山古墳@桜井市-03
東端の後円部の先端。南側の「八坂神社」側からは古墳の頂上まで行けるようです。いずれにしても駐車スペースはなさそうなので、車では行きづらいかもしれません


●阿部丘陵の南端に構築された西向き、二段築成の前方後円墳
●古墳時代前期の4世紀頃のもの
●墳丘は全長約230m(後円部径 約120m、前方部幅 約80m)
●後円部に比べて前方部が極端に低い(高さ21mと9m)
●周囲に濠は無い
●墳丘を三段にめぐり、前方部に向かう二列の円筒埴輪の列が見つかっている(高さ2m前後の巨大なものを含む)
●石室内は盗掘されていたが、鏡・車輪石・椅子型石製品・鉄剣・直刀などの副葬品が残っていた
●石室東側に小竪穴式石室があり、そこからも多数の副葬品が見つかった

このような特徴がありますが、やはり文字だけでは分かりづらいでしょう。

メスリ山古墳からは、高さ2m前後という巨大な筒型の「特殊円筒埴輪」が見つかっており、「奈良県立橿原考古学研究所附属博物館」に展示されています。しかし、現地にはその痕跡を示すようなものは何もありません。

想像をふくらませるためにも、まずは【橿考研付属博物館の秋期特別展「巨大埴輪とイワレの王墓」】というページを見ておくといいでしょう。今は静かな丘に過ぎませんが、この場所からすごいものが発掘されていることが理解できると思います!


メスリ山古墳@桜井市-04

メスリ山古墳の説明。西向き・二段築成の前方後円墳で、4世紀頃のもの。墳丘は全長約230mなどの説明があります

メスリ山古墳@桜井市-05
メスリ山古墳の北西に隣接した「コロコロ山古墳」。一辺30m、高さ3mの方墳です。説明看板が日焼けしてしまって、ほとんど詠みとれないのが残念です

メスリ山古墳@桜井市-06
コロコロ山古墳は石室内部が見られるようになっています。柵に囲まれているため内部には入れませんが、これだけ至近距離だとちょっと嬉しいですね


■メスリ山古墳

所在地: 奈良県桜井市高田
年代: 4世紀前半
形状: 前方後円墳
規模: 墳丘長 230~235m、後円部 径135~140m

■参考にさせていただきました!

メスリ山古墳 - Wikipedia
奈良県メスリ山古墳出土品 文化遺産オンライン
橿考研付属博物館の秋期特別展「巨大埴輪とイワレの王墓」
鳥見山登山とメスリ山古墳 いっしょに遊ぼ!!/ウェブリブログ
奈良の寺社: 八坂神社(桜井高田)


やや寂しい印象の『桜井茶臼山古墳』

桜井市外山にある、国史跡『桜井茶臼山古墳』。

古墳時代初期の3世紀末~4世紀初頭頃に築かれたもので、箸墓古墳に続く初期の古墳とされています。墳丘の全長は約200mで、その大きさや、石室全体に高価な「水銀朱」が塗られていたことなどから、首長クラスの墓であることは間違いないようです。

後円部径に対して前方部幅が狭く(約110mと約60m)なっていること。これは初期の前方後円墳の特徴的な形なのだそうです。航空写真では、前方部に道路が通り、後方部の東側が削れているように見えますが、きれいに南北に向かった見事な姿が確認できます。



より大きな地図で 桜井市の巨大古墳 を表示


実際に現地へ行ってみると、周囲に駐車できるようなスペースが見当たらないどころか、細い道ばかりです。南側が165号線に接していますが、徒歩でようやく近づけるような細さですから、注意が必要ですね。


茶臼山古墳@桜井市-01

「桜井茶臼山古墳」へのアプローチ。民家の間の細い道の先に、色気のない鉄柵があり、そこから近づけます。「国史跡 桜井茶臼山古墳をご見学の皆様へ」という張り紙には、県の職員が定期的に巡回していること、異常があった場合の連絡先が掲載されていました。民家が迫っているとはいえ、人気がないので夜は怖いでしょうね

茶臼山古墳@桜井市-02
古墳の西側は少しだけ道っぽくなっていますが、周囲を一周できるような様子はありませんでした

茶臼山古墳@桜井市-04
ちょっとだけ広くなっています。この左手にはすぐ民家が建てられています。墳丘の一部には、無理やり登ったような跡も見られましたが、それが許されるのかどうなのかは分かりません

茶臼山古墳@桜井市-06
後円部からの眺め。畑の間のあぜ道のようなところを通ります


桜井茶臼山古墳の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。現地へ行ってもそのすごさが実感できないようなものばかりですので、しっかりと予習してから行くことが重要ですね(笑)

●三段築成の前方後円墳
●古墳時代前期の3世紀末~4世紀初頭(箸墓古墳に続くもの)
●墳丘は全長約200m(後円部径 約110m、前方部幅 約60m)。後円部径に対して前方部幅が狭い初期の形態
●後円部の頂には矩形壇がある
●段築面には葺石が施されており、墳丘に埴輪を使用した痕跡は無い
●石室全体に高価な「水銀朱(辰砂)」が塗られていた
●石室は盗掘されており、様々な鏡・勾玉・管玉・鉄剣などの武器類・玉杖が残されていた

茶臼山古墳@桜井市-03
説明看板「全長約207m、後円部径約110m、後円部高さ19m、前方部幅約61m、三段築成の前方後円墳で後円部径に対して前方部幅がせまい前期の形態を示しています。前方部前面には、今は失われたが丘陵が延びており、丘尾は切断による前方後円墳築造を考えさせる好状況を示し、古墳時代前期の前方後円墳のもっとも典型的なものとして、重要な遺跡です。」


■桜井茶臼山古墳

所在地: 奈良県桜井市外山
年代: 3世紀末~4世紀初頭
形状: 前方後円墳
規模: 墳丘長 200m、後円部 径110m

■参考にさせていただきました!

桜井茶臼山古墳 - Wikipedia
茶臼山古墳
桜井茶臼山古墳


古墳めぐりを楽しむには予習が重要です

今回、こうして桜井市の巨大古墳たちに行ってみようと思ったのは、図書館で『ヤマトの王墓―桜井茶臼山古墳・メスリ山古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)』という本を読んだからでした。

考古学系の本は、難解な用語も多くてとっつきづらいものですが、このシリーズは(当たり外れがありますが)比較的分かりやすいです。奈良県内であれば図書館で見つかると思いますので、興味のある方はどうぞ。


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千賀 久

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日本全国の古墳などを紹介する「遺跡を学ぶ」シリーズの一冊。ヒミコの墓とも目される「箸墓古墳」を含む纏向古墳群などから数キロ南に位置する、「桜井茶臼山古墳」(全長200m)と「メスリ山古墳」(全長224m)の巨大古墳たちを取り上げています。

この2つの巨大古墳ある場所は、古くは「磐余(いわれ)」と呼ばれた地域だと考えられています。箸墓古墳などとは違い、前方部の裾が広がったバチのような形ではなく、広がらない「鏡柄型」というような形状なのが特徴。また、「玉杖(飾りのついた杖)」というものが副葬品となっているのも面白いですし、メスリ山古墳では、他ではあまり見られない2mを超す巨大な円筒埴輪が見つかっているのも特徴です。

この一帯には、初期の大型古墳「箸墓古墳・西殿塚古墳・桜井茶臼山古墳・メスリ山古墳・行燈山古墳(崇神陵)・渋谷向山古墳(景行陵)」6基が密集しており、その形状などから、様々な説を導き出しています。もちろん、すぐに正解が判明するようなものではありませんが、単純に世代が移っていたただけではない、色んな想像が膨らみますね。

画像も多く、専門用語は出てきますが文章も平易ですから、古代の大和に興味がある方はぜひ手にとってみてください。順番で言うと、先に同シリーズの箸墓古墳( http://goo.gl/Hk8H1 )を読んでおくと分かりやすいと思います。


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