
東洋古美術メインの美しい美術館『大和文華館』@奈良市
奈良市学園前の『大和文華館』。近鉄系の私立美術館で、東洋の古美術を中心に国宝4件・重要文化財31件などを収蔵しています。特別企画展「社寺の風景―宮曼荼羅から祭礼図へ―」を拝見しましたが、とても興味深かったです(2014年6月29日まで)。周辺の自然苑「文華苑」で美しいササユリの花なども観られました!
学園前の閑静な住宅街に位置する美術館
奈良市学園前の閑静な住宅街に位置する美術館『大和文華館(やまとぶんかかん)』(Wikipedia)。
近畿日本鉄道(近鉄)の五代目社長・種田虎雄氏は、「京都・奈良・伊勢といった歴史ある地域に鉄道を敷設している会社として、日本美術の素晴らしさを世界に向けて発信できる施設を沿線に作ること」を望み、後に初代館長となる美術史家・矢代幸雄氏へ収集を委託。1960年、近鉄の創立50周年を記念して開館しました。
東洋の古美術を中心に、国宝4件・重要文化財31件を含む、約2,000件を収蔵しています。
●室町時代の画家・雪村が描いた「呂洞賓図(りょどうひんず)」(重文)
●江戸時代前期に描かれた屏風絵「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」(国宝)
●女神が大きく描かれた南北朝時代の絵画「吉野子守明神像」
など、私のような美術初心者から観ても素晴らしい作品が多数あります(詳しくは「コレクション」ページから)。
また、学園前エリアには、近代日本の洋画・日本画を展示する『中野美術館』、日本画の上村松園・松篁・淳之画伯の作品を展示する『松伯美術館』も比較的近い距離にありますので、美術好きな方は合わせてどうぞ。
奈良市学園南にある美術館『大和文華館』。菅原池(蛙股池)をのぞむ高台にあり、高級住宅街の中に緑あふれる一角が広がっています。ここだけゆっったりとした時間が流れているかのようです
大和文華館の敷地のマップ。本館の展示室は口の字型の1室のみ。周囲は「文華苑」という自然苑となっていて、冬のロウバイやサザンカから、秋のスイフヨウ・ヒガンバナまで、15種類の花々が四季折々に観られます
外観は海鼠壁。内部も和のシックです
大和文華館の本館(設計は吉田五十八氏)は、桃山時代の城郭をイメージさせるような「海鼠壁(なまこかべ)」になっています。ゆるやかにカーブした小径を上がると、白砂上に和風の建物が浮かび上がってきて、美しさが際立っていました。
もちろん、なまこ壁そのままではなく、青く見える部分はタイルだったり、建物のガラス窓や金属だったりします。とても端正ですね。
館内は写真撮影できませんが(詳しくは「建物・文華苑」ページから)、規模は小さいながらもとても素晴らしかったです。
●通路の両脇には大きな障子がはまっていて、柔らかな光が差し込みます
●本館の中央は吹き抜けで、外光を取り入れると同時に美しい竹の庭に
●建物の南側からは菅原池が見渡せます
静かで落ち着く、素敵な空間でした。
正門をくぐり、ゆるやかな坂道を上がっていくと遠くに本館の建物が見えてきます
大和文華館の本館。なまこ壁のような雰囲気があり、白壁と白砂が調和して、とても美しいですね。残念ながらこの日は曇り空でしたが、快晴の青空の下で観たら、また一段と見事だと思います
横から。お城にある屋敷や御殿の建物のような雰囲気ですね
間近で見たところ。青い部分はタイルになっています。また、場所によってはそのまま奥に事務室のガラスが見えたりしますが、遠目にはほぼ均一に見えます
本館前には清浄な白砂が。奥に見えるしだれ桜「三春の瀧桜」は、春になると見事だとか。季節を変えて来たくなりますね
正門脇に建っている「文華ホール」。奈良ホテル本館の一部(旧ラウンジ)として、明治42年(1909年)に建てられたもの。奈良ホテルや東京駅・日本銀行本店などと同じ、辰野金吾氏の設計です。大和文華館開館25周年を記念してここに移築されたそうです
和洋折衷様式を得意とした辰野金吾氏だけに、入り口にはこんなステンドグラスがあります。機会があれば中へ入ってみたいですね!
特別企画展「社寺の風景―宮曼荼羅から祭礼図へ―」
この日、私たちは特別企画展「社寺の風景―宮曼荼羅から祭礼図へ―」を拝見しました(2014年6月29日まで)。
春日大社や石清水八幡宮社などの境内を描き、そこへ鎮座する神々の姿も登場させた「宮曼荼羅」。この企画展では、春日大社の「春日宮曼荼羅」が3点、さらに生駒山・笠置山などのものや、天理市・和爾下神社(治道社)を描いた「柿本宮曼茶羅図」(重文)など、さまざまなタイプのものが観られました。
中世末ごろからは、熊野・伊勢・富士などの信仰の場へ参詣する人々の賑いぶりを描く「参詣曼荼羅」が登場したり、神社で行われる特定行事を描く「祭礼図」なども制作されます。
豊臣秀吉七回忌に行われた祭典を描いた「豊国祭礼図」や、琵琶湖に浮かぶ竹生島に弁財天像を奉納する儀式を描いた「竹生島祭礼図」など、ユニークな絵画作品が多数展示されていました。伝岩佐又兵衛の作品が複数並んでいたりするのも面白かったです。
ちなみに、毎週土曜日14時からは、学芸員さんの解説を聞きながら展示品を観られる「列品解説」が行われます。私たちは偶然それに立ち会えたのですが、さすが分かりやすく明快な解説ぶりで、とても参考になりました。特別展の期間中は各種講座も開催されますので、拝聴してみるといいですね。
●特別企画展「社寺の風景―宮曼荼羅から祭礼図へ―」
HP: http://www.kintetsu.jp/yamato/exhibition/syaji.html
会期: 2014年5月23日(金)~6月29日(日)
観覧料: 一般 620円、高大学生 410円、小中学生 無料
館の所蔵品も常時展示ではありません
大和文華館では、テーマを決めた平常展を年6~7回、特定テーマで館内外の美術作品を展示する特別展を年1~2回開催しています(2014年度展覧会スケジュール)。通常展示のようなスペースはありませんので、館の所蔵品であっても、その年の企画内容によっては、まったく拝見できない場合もあるのです。
私は個人的に、雪村「呂洞賓図」(重文)が拝見したくて、係の方に確認してもらったのですが、本年度中に展示される予定は無いとのことでした。まめに企画展の内容をチェックしていくしかありませんね。
ちなみに、2014年度には、「特別企画展 富岡鉄斎と近代日本の中国趣味」(2014年8月22日~10月5日)、「特別展 酒井抱一 ―江戸情緒の精華―」(2014年10月11日~11月16日)といった展示も企画されています。楽しみですね!
好きすぎて思わず購入した「呂洞賓図手拭い」(税込864円)。大和文華館のミュージアムショップは、デザインのいいものが多く、物欲が刺激されます!
周囲の「文華苑」ではササユリが開花中
大和文華館の周辺の自然苑「文華苑」では、ロウバイ・ツバキ・ウメ・モクレン・シダレザクラ・ササユリ・アジサイ・スイフヨウ・ヒガンバナなど、15種類の四季折々の花々観られます
6月上旬は、ちょうど「笹百合(ササユリ)」の花が咲き始めていました。ササユリというと、桜井市・大神神社のものが有名ですが(紹介記事)、ここでも観られるんですね。
広いスペースにぽつりぽつりと咲いているため、とても気高く艶やかに感じました。簡単に写真だけご紹介しておきます。
■大和文華館
HP: http://www.kintetsu.jp/yamato/
住所: 奈良県奈良市学園南1-11-6
電話: 0742-45-0544
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日休)、展示替期間など
開館時間: 10:00 - 17:00
入館料: <平常展・特別企画展> 一般 620円・高大学生 410円・小中学生 無料、<特別展> 一般 930円・高大学生 720円・小中学生 無料
駐車場: 無料
アクセス: 近鉄奈良線「学園前駅」から徒歩7分
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