2008-03-21

秘仏「吉祥天女像」だけじゃない!『浄瑠璃寺』

浄瑠璃寺

春の秘仏の特別公開シーズンがやってきたので、この日は京都府木津川市にある『浄瑠璃寺』へ行ってきました(その流れで『岩船寺』にも行きました)。

今回のメインは、3月21日~5月20日の日程で公開されている「吉祥天女像(重文)」。初めてお目に掛かりましたが、写真集などで見た以上に美しい仏さまでした!


当尾の里は、素敵な仏像の宝庫!

この浄瑠璃寺の一帯は、「当尾の里」(とうの・とおの・とうのお)と呼ばれています。古くは奈良・興福寺の別所であり、その時代に無数の石仏が造られて、その多くが現存しています。かなり辺鄙なところにあるお寺ですが、ご本尊の「九体阿弥陀如来像(国宝)」は有名で、素晴しい仏像の宝庫です。

山門をくぐった瞬間は、やや地味目な地方のお寺のように見えるかもしれませんが、池の挟んで国宝建築物が向かい合う「浄土式庭園」を採用した、なかなか趣のあるお寺ですね。その創建時期には、739年に行基の開基とする説と、1047年に義明上人を開基とする2つの説があるそうですが、奈良時代以降の仏教建築の様式を感じさせてくれます。

浄瑠璃寺-01
浄瑠璃寺へ着く直前の景色。奈良との県境に近いかなりの田舎ですので、相当にのどかな風景が広がっています

浄瑠璃寺-02
京都府木津川市の『浄瑠璃寺(じょうるりじ)』。お寺の前の参道の脇には、馬酔木(あせび・あしび)や梅などが植わっており、雰囲気があります

浄瑠璃寺-03
本堂脇にある入堂受付。これもかなりクラシックな建物で、露天風呂の脱衣所みたいに見えないこともありません(笑)

浄瑠璃寺-04
入堂受付の裏側は、グッズ販売所になっています。なお、絵葉書や書籍などは本堂の片隅でも販売されています

浄瑠璃寺-06
浄瑠璃寺で販売されていた「オリジナル手ぬぐい」。奈良のお寺ではあまり見かけませんが、お土産物の選択肢にこんなものがあると、ちょっと嬉しいですね。柄も渋くていいです!


四天王像も不動三尊像もいいんです!

浄瑠璃寺の本堂は「九体阿弥陀堂(国宝)」。ここにはズラリと9体の阿弥陀さまが並ぶ「九体阿弥陀如来像(国宝)」が祀られています。

そんなに並べたらありがたみも薄れそうなものですが、これは平安時代に流行した「九品往生(くほんおうじょう)」という思想によるもの。当時はかなりの数の九体阿弥陀堂が造られた記録が残っていますが、現存するのはここ浄瑠璃寺のものだけなのだそうです。

浄瑠璃寺は九体阿弥陀如来を安置する寺として知られているが、創建当初の本尊は薬師如来であった。九体阿弥陀如来を安置する現・本堂の建立は創建から60年後の嘉承2年(1107年)のことであった。1つの堂に9体もの阿弥陀如来像を安置するという発想は「九品往生」(くほんおうじょう)思想に由来する。「九品往生」とは「観無量寿経」に説かれる思想で、極楽往生(人が現世から阿弥陀如来のいる西方極楽浄土へと生まれ変わる)のしかたには、仏の教えを正しく守る者から、極悪人まで9つの段階ないし種類があるという考えである。Wikipedia「浄瑠璃寺」より引用

堂内に入った瞬間に、9体の阿弥陀さまが並ぶ様子が見えるのですが、さすがにかなりの迫力ですね。1体ずつ細かく見ていってもお顔はそれぞれ違っていますし、見飽きないのですが・・・。できれば、本来のお参りの仕方だという、板扉を全て開け放って池の対岸から見ることが可能ならば、さらに美しいでしょう。

写真集などでは、ライトアップされた姿を遠目から眺めた画像も見かけますし、それがとても素晴しいのですが、実際にライトアップを公開することはないのだそうです。ちょっと残念ですね。


また、特別公開中の秘仏「吉祥天女像(重文)」も、想像以上の美しさでした。鎌倉時代の作と、やや時代が下るため彩色もよく残っていて、白い肌の色と華やかな文様のコントラストがキレイです。像高90cmとそれほど大きくはありませんが、とても肉感的で、指先の作りなども素晴しく、珍しい木製の首飾りもいいですね。何度も何度も往復して見たくなる、そんな魅力があります。

また、それ以外の仏像のラインナップも素晴しいんですよね。

・藤原時代の「四天王像(国宝)」。多聞天・広目天は博物館へ出張中のため、2体しか見られませんが、素晴しいですね。奈良時代の仏像から鎌倉仏師の時代への移行期に当たるのですが、その両者の良いところをミックスしたような、力強さと優しさを感じさせてくれます。

・鎌倉時代の「不動明王三尊像(重文)」。お不動さんもいいのですが、脇侍の優しい表情をした「こんがら童子」と、智恵の杖を持ち、どこか悪巧みでもしていそうな表情の「せいたか童子」がいいんです!童子系の仏像はあまり好みではありませんでしたが、この二人は本当にいい表情をしていると思いました。

博物館へ出張している仏像も多いのが残念ですが(馬頭観音像とか・・・)、じっくりと仏像の世界に浸るにはとてもいいところですね。

浄瑠璃寺-本堂-01
浄瑠璃寺の本堂「九体阿弥陀堂(国宝)」。藤原時代の建立で、九体阿弥陀如来像や、吉祥天女像、四天王像など、素晴しい仏像をゆったりと祀ってあります。かなり濃密な空間で、とても居心地が良かったですね

浄瑠璃寺-本堂-02
西方浄土の方向に阿弥陀様を祀り、その前には「宝池」を配置。池の対岸から拝むことを想定した設計となっているのだそうです。ちなみに九体の阿弥陀様に合わせて、板扉も9つになっています

浄瑠璃寺-本堂-03
宝池越しに眺めた「九体阿弥陀堂」。それほど大きな庭園ではありませんが、なかなか落ち着く雰囲気ですね

浄瑠璃寺-本堂-04
浄瑠璃寺のお土産の絵葉書の一部です。実際に見た時の迫力は全く伝わりませんので、ぜひお寺に足を運んで、間近でご覧ください!


薬師如来さまが東を守ります

「宝池」を中央に挟んで、九体阿弥陀堂の向かいに建つのが「三重塔(国宝)」です。ここには「薬師如来像(重文・秘仏)」が祀られていて、東方の浄土(浄瑠璃浄土)を守っていただいているのだとか。この日は薬師如来さまは見ることができませんでしたが、機会があればぜひ拝みたいものです。

この三重塔は、藤原時代のもので、京都一条大宮から移築されたものなのだとか。しかし、以前はどこの寺社にあったものだという記録は残されておらず、出自不明になっているのだそうです。宝池越しに見る姿も神々しいですが、近くで見てもさすがにキレイなものですね。組木の細工なども美しく、色んな角度から楽しめます。

浄瑠璃寺-三重塔-01
九体阿弥陀堂の前から見た「三重塔(国宝)』。「薬師如来像(重文)」を祀り、東方の浄土(浄瑠璃浄土)を守ってもらっているそうです

浄瑠璃寺-三重塔-02
浄瑠璃寺の三重塔は、藤原時代の建立。1178年に、京都一条大宮から移築されたもので、元はどこの寺院のものだったかは不明。薬師如来像は秘仏で、毎月8日・彼岸の中日・正月三ヶ日のみの公開です

浄瑠璃寺-三重塔-03
近くで組物を見ても、かなりの美しさですね。


石仏とお花も豊富です

この当尾地区は石仏が多い一帯として知られており、浄瑠璃寺の庭園の中でもいくつか見られました。また浄瑠璃寺から岩船寺へと向かう道沿い(1km程度だそうです)にも沢山の石仏が残されており、丁度いい散策コースになっているそうです。

また、桜の開花も近いような時期だったため、浄瑠璃寺周辺でも色んな花が咲き始めていました。

浄瑠璃寺-07
本堂脇の石仏らしきもの。石仏の多い当尾地区ですから、このようなものは様々な場所で見られるのかもしれません

浄瑠璃寺-08
浄瑠璃寺の庭園の片隅にあった、石仏なのか自然石なのか曖昧な一角。やっぱり石仏にはシダが似合いますね

浄瑠璃寺-09
浄瑠璃寺の参道脇に咲いていた「馬酔木」

浄瑠璃寺-10
本堂の脇のちょっとしたスペースには、ふきのとうがいけてありました

浄瑠璃寺-11
水仙と鐘楼

浄瑠璃寺-12
これは多分「敬翁桜(けいおうざくら)」

浄瑠璃寺-ご朱印
浄瑠璃寺でいただいたご朱印です。これは「九体仏」と書いてあるのかな?


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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。











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浄瑠璃寺

住所: 京都府木津川市加茂町西小札場40
電話: 0774-76-2390
宗派: 真言律宗
本尊: 九体阿弥陀如来像(国宝)、薬師如来像(重要文化財)
創建: 739年、または1047年
開基: 行基、または義明上人
拝観料: 300円
拝観時間: 9:00 - 17:00(12月~3月 10:00 - 16:00)
駐車場: 有料駐車場あり(300円)
アクセス: 奈良交通バス「浄瑠璃寺前」下車(JR大和路線「加茂駅」から15分、JR大和路線「奈良駅」・近鉄「奈良駅」から35分)

※「関西花の寺二十五霊場」の16番

※なお、所在地は京都府になりますが、奈良市内からの方が近いような場所にありますので、奈良のお寺として分類してあります

※浄瑠璃寺・岩船寺の情報なら、『週刊 原寸大 日本の仏像(8)「浄瑠璃寺 吉祥天と九体阿弥陀」』がオススメです。「580円」とお安いので、売り切れてしまう前にお近くの書店で探してみてください






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