2013-07-05

藤原時代の仏さまがおわす山中のお寺『神童寺』@木津川市

藤原時代の仏さまがおわす山中のお寺『神童寺』@木津川市

奈良から程近い、木津川市の山中の『神童寺』。聖徳太子の創建とも、役行者が修行したとも伝わる古刹です。焼失と再建を繰り返してきたため、寺域はわずかですが、真っ白い不動明王像「波切白不動尊」や、天に向かって弓を引く「天弓愛染」など、平安時代中期~後期の貴重な仏さまがおわします。仏像好きな方はぜひお詣りしてみてください!


山号は「北吉野山」。金峯山寺ゆかりのお寺

京都南部の、奈良とも程近い木津川市の山中にある古刹『神童寺』(じんどうじ)。寺伝では、596年に聖徳太子が創建とも。675年に役行者がここで修行し、蔵王権現を作って祀ったとされており、吉野山の金峯山寺を中心とした山岳信仰が伝わり、修験者の信仰の拠点となったと考えられるそうです。山号も「北吉野山」と号しています。中世には、兵火による衰退と再建を幾度か繰り返し、現在は真言宗寺院なっています。

神童寺前の道は、古くから京都から伊勢へと続く「伊賀街道」でした。神童寺は一時は26ものお堂が立ち並んでいたこともあり、参拝客たちで賑わっていたそうです。現在でも、収蔵庫には数多くの藤原期の仏像が残されています。

しかし、現在は最寄りのJR棚倉駅から徒歩で40分もかかりますし、かなり道幅の狭い山中にあるためアクセスは良くありません。駐車場はありませんが、お寺の方に伺うと「山門の前に停めておいてください」とのことでした。小さな車であれば問題ありませんが、大きめの車だとかなり停めづらいと思いますので、お気をつけください。

なお、小さなお寺さんですから、拝観の際には事前に予約の電話を入れておくといいでしょう。


神童寺@京都府木津川市-01

京都府木津川市の山中に位置する『神童寺』。かなりアクセスの良くない場所にあるため、たどり着くのが大変です。山門の前は数段の短い石段があり、車はその前に停めさせていただきました。道幅も狭いのでお気をつけください


重文の「本堂」には、青い蔵王権現像が

神童寺の境内は、山門の正面に室町時代に再建された「本堂」(重文)、右手に庫裏があり、本堂上の高台に収蔵庫という配置となっています。

シンプルな本堂の中心には、ご本尊の「蔵王権現像」と前鬼・後鬼の三尊像が祀られています。こちらは役行者の作とも伝わっているそうですが、体の厚みが薄めであり、もっと後の平安時代ごろの作のようです。ご住職の解説を伺いながら拝見しましたが、とてもお詳しいですし、楽しい話しぶりでした。


神童寺@京都府木津川市-02

山門をくぐると、正面に「本堂」(重文)が建っています。室町時代に再建されたものだとか

神童寺@京都府木津川市-03
本堂を別角度から。作りはシンプルですね。この中に、ご本尊の「蔵王権現像」を中心として前鬼・後鬼像などが祀られています

神童寺@京都府木津川市-04
本堂脇には鎌倉時代の「十三重石塔」が残されています。ひっそりとしていて見落としやすいと思いますが、貴重なもののようですのでお忘れなく!


収蔵庫には、波切白不動尊や天弓愛染像も

本堂の脇にある石段を上がった高台に「収蔵庫」があり、藤原時代(平安時代の中~後期)の諸仏10体ほどが安置されています。こんな山奥のお寺で、しかも何度も兵火で焼失していたはずなのに、これだけの仏さまが伝わっているのは驚きですね。

いずれも藤原時代の一木造りで、阿弥陀如来坐像、愛染明王坐像、不動明王像、毘沙門天立像、日光・月光菩薩像(いずれも重文)、さらに、自然木を光背に活かした役行者像などが安置されています。

●不動明王像(像高162.1cm、平安時代、重文)
寺では「波切白不動尊」と呼ばれるとか。白いお不動さんというだけでも珍しいですが、髪型は弁髪ではなく螺髪型、光背は火焔型ではなく板光背と、何とも不思議なお姿です。滋賀・三井寺、京都・三千院などにおわす不動明王像と似ているとされるとか。キリッと表情が引き締まっていて、どこか幼さを感じされるお顔立ちです。

●愛染明王坐像(像高64.5cm、平安時代、重文)
天に向かって弓を射る形の「天弓愛染」とされるもの。この形で重要文化財に指定されているものは全国で3体しかないそうです。弓を引き絞る腕を含めた6本の腕はすべて細めで、憤怒の表情ながらも静的な印象です。面白い像ですね!

アクセスは楽ではありませんが、お会いするだけの価値のある、とても素晴らしい仏さまたちがいらっしゃいますので、ぜひお詣りしてみてください。


神童寺@京都府木津川市-05

本堂の左手にある石段を上がると、収蔵庫が現れます

神童寺@京都府木津川市-06
収蔵庫の前から本堂を見下ろしたところ。山中に民家が続いています。この高台の斜面には、少し前まで大きな木が植わっていたそうですが、台風などで倒れると本堂にまで被害が及ぶため、伐採したのだとか。色んな心配事があるんですね

神童寺@京都府木津川市-07
収蔵庫と護摩行を行うスペース。収蔵庫はそれほど大きなものではありませんが、藤原時代の作で、重要文化財に指定されている美しい仏さまなど、10体ほど安置されています

神童寺@京都府木津川市-09
ガイドブック「南山城の古寺」より。



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■神童寺

HP: 参考サイト(木津川市観光ガイド)
住所: 京都府木津川市山城町神童子不晴谷112
電話: 0774-86-2161
宗派: 真言宗智山派
本尊: 蔵王権現
創建: (伝)596年、(伝)675年
開基: (伝)聖徳太子、(伝)役行者
拝観料: 400円
拝観時間: 9:00 - 16:30
駐車場: なし(1台くらいなら門前に停められます)
アクセス: JR「棚倉駅」から徒歩約40分(駅からタクシーで10分ほど)

※お詣りの際には、事前にお電話で拝観予約を入れておきましょう。

※実際にお参りしたのは「2013年5月12日」でした。

※2014年4月より、南山城エリアの仏さまにスポットライトを当てた特別展「南山城の古寺巡礼」が京都国立博物館で開催されます。この企画自体とても楽しみですが、タイミングを誤るとお寺さんでお会いできない仏さまも登場すると思いますので、お気をつけください。


■参考にさせていただきました

神童寺/京都 │【仏像ワンダーランド】
京都寺社案内*神童寺
神童寺(じんどうじ)十三重石塔






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