2009-11-16

「ラストサムライ」の大寺院『圓教寺』@兵庫県姫路市

「ラストサムライ」の大寺院『圓教寺』@兵庫県姫路市

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、兵庫県姫路市にある大寺院『圓教寺』へ行ってきました。

姫路市まで来るのは生まれて初めてでしたが、圓教寺は本当に素晴しい山寺でした。境内はハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地にも使用されており、確かに見覚えのある伽藍もあって、面白かったです!


「西の比叡山」と呼ばれる大寺院

兵庫県姫路市にある、西国三十三所の第二十七番札所『圓教寺(えんぎょうじ)』は、山号を「書寫山(しょしゃざん)」といいます。名前の表記には「書写山 円教寺」という仮名遣いを用いることもあります。

圓教寺は、標高371mの書写山の頂上に位置し、西国三十三所の中でも最も西に位置する寺院です。天台宗の別格本山であり、比叡山・大山とともに天台宗の「三大道場」とされ、「西の比叡山」と呼ばれるほどの大寺院です。

圓教寺の創建は、966年のこと。比叡山で学んだ後、九州の山中で修行して法華経を極めた「性空上人」によって開基されました。性空上人は910年生まれで、地位や名誉を求めない方だったそうです。天皇から上洛を請われた際にもそれを断り、和泉式部が書写山を訪れて面会を求めた際にもそれを果たせず、「暗きより 暗き道にぞ入りぬべき 遥かに照らせ 山の端の月」と詠みました。

西国三十三所の中興の祖である「花山法皇」との縁も深く、19歳で出家した直後に性空上人のもとを訪れ、深く帰依するようになりました。花山法皇は、西国巡礼の際に性空上人らを伴っていた、そんな伝承も残されているそうです。

また、2003年公開のハリウッド映画「ラスト サムライ」の主なロケ地になっており、ファンの方はすぐにお分かりになるでしょう。さらに、NHK大河ドラマ「武蔵」の撮影もここで行われたそうです。


「書写山ロープウェイ」で山頂へ

兵庫県姫路市にある『圓教寺』は、標高371mの書写山の頂上に位置するため、山麓に車を停めて(駐車料は無料)、まずは「書写山ロープウェイ」に乗って山頂を目指します。

乗車時間はわずか4分ほどですが、紅葉シーズンとご本尊の特別御開帳が重なっていたため、定員70名ほどの大きなゴンドラが満員に近くなるほど、たくさんの参拝客の方が乗車していました。


圓教寺@兵庫県姫路市-01

西国三十三所の二十七番札所の「圓教寺」の境内地図。ロープウェイで上った先に、広大な境内が広がっています。トータルで1時間ほどは歩きますので、歩きやすい格好で挑みましょう

圓教寺@兵庫県姫路市-02
「書写山ロープウェイ」のゴンドラ。定員が70人ほどの大きさで、15分おきに運行しています。乗車時間はわずか4分ほどで、料金は片道500円、往復なら900円(小人は半額)。景色もなかなか迫力がありました


まず15分ほどの山道を上ります

ロープウェイを降りると、そこから「西国三十三観音道」と名付けられた山道を上ることになります。最初の建物である「摩尼殿」までは15分ほどで到着しますので、それほど厳しい道のりではありませんが、脚力に自信の無い方は時間に余裕を見ておいた方がいいでしょう。

参道の脇には、西国三十三所のご本尊を模した銅像が並んでいますし、途中からは播磨灘が見渡せるスポットもありました。


圓教寺@兵庫県姫路市-03

ロープウェイを降りると、「西国三十三観音道」と名付けられた参道を歩きます(摩尼殿まで15分ほど)。別料金ですが、バスで上ることも出来ますので、脚力に自信が無い方はそれを利用するといいでしょう

圓教寺@兵庫県姫路市-04
「西国三十三観音道」の両脇には、西国三十三所の各札所のご本尊を模した像が並んでいます。そのスタート地点にいらっしゃるのが、この日に特別公開されていた、圓教寺の秘仏ご本尊「六臂如意輪観世音菩薩」さんでした

圓教寺@兵庫県姫路市-05
参道を歩いてしばらくすると現れる「仁王門」。仁王像は江戸初期のものとのことですが、格子の向こう側にいらっしゃるためよく見えませんでした。紅葉はピークに近い状態でした!

圓教寺@兵庫県姫路市-06
参道をだいぶ進んできたところにある「護法石(別名:弁慶のお手玉石)」。この石の上に乙天・若天の二人の童子が降り立ち寺門を守った、という言い伝えと、弁慶さんがこの石をお手玉にした、そんな言い伝えが残されているそうです


懸造の素晴しいお堂「摩尼殿」

札所観音を祀る「摩尼殿(まにでん)」は、懸造(舞台造)の見事な建物ですが、970年、性空上人自らが崖に立つ山桜に如意輪観音像を刻んだため、このようなお堂を建てた、との言い伝えが残されています。しかし、その像は1492年に焼失。現在は白木が美しい如意輪観音像(秘仏)が祀られています。


西国三十三所の札所観音「六臂如意輪観音坐像」を祀る「摩尼殿(まにでん)」は、懸造(舞台造)の見事な建物です。この日は紅葉もピークに近かったため、本当に美しい姿が見られました!

摩尼殿の建物自体は、1933年に再建されたもの。もともとは、970年、性空上人自らが崖に立つ山桜に如意輪観音像を刻んだため、その像を納めるためにこのようなお堂を建てた、との言い伝えが残されています。しかし、その像は1492年に焼失してしまいました。

この日は、特別御開帳日だったため、内陣まで入ることができましたが、内部は薄暗くて広々。その中央にいらっしゃる「六臂如意輪観音坐像」は、白木の木目が美しい上品な像でした。平安時代の作と思われる迫力のある「四天王像(重文)」に守られて、とてもいい雰囲気でしたね。

はめ込みのマンション(?)のようなお厨子の中にいらっしゃるのですが、お堂の中が薄暗いのに対し、仏さまはしっかりとスポットライトを浴びていらっしゃいました。すぐ間近で拝見できましたが、目線よりもわずかに高い位置にいらっしゃって、少しだけ見上げる感じもいいんですよね。

全て秘仏とされていますが、毎年1月18日に行われる「修正会(鬼追い会式)」には公開されているそうです。興味のある方はぜひどうぞ!


圓教寺@兵庫県姫路市-07

圓教寺の「摩尼殿」。懸造(舞台造)の豪快な建物です。お天気が今ひとつでしたが、紅葉がかなり進んでいて、本当に見事でした!

圓教寺@兵庫県姫路市-08
別の角度から。この紅葉がピークの時の写真が、圓教寺のポスターにも使用されていました。とても絵になる光景です

圓教寺@兵庫県姫路市-09
摩尼殿の下に建っている小さなお堂「三十三所堂」。西国三十三観音をまつるお堂で、それぞれの観音さまのミニチュア像が祀られていました

圓教寺@兵庫県姫路市-10
圓教寺の摩尼殿前の手水鉢。意外なほどシンプルでした

圓教寺@兵庫県姫路市-11
手水鉢の脇には、剣に巻きつく龍の像がありました。手を清めるものでも無いと思いますし、噴水的な役割なんでしょうか?

圓教寺@兵庫県姫路市-12
圓教寺の「摩尼殿」。970年創建のお堂で、1933年に再建されたものです。お堂の片側が崖に面した懸造になっています。重厚な美しい建物でした

圓教寺@兵庫県姫路市-13
摩尼殿の舞台部分を下から見たところ。他の懸造のお堂よりも、前に張り出している部分が長く、お堂の周囲の回廊部分はこれだけで支えられているようです。高所恐怖症の私には、ちょっと怖さを感じるような構造でした

圓教寺@兵庫県姫路市-14
摩尼殿の舞台部分からの眺め。見事な紅葉でした!

圓教寺@兵庫県姫路市-15
圓教寺「摩尼殿」の軒先の組物。三手先で、二重になった垂木が長く伸びている様子も美しいですね

圓教寺@兵庫県姫路市-16
摩尼殿の外陣部分の様子。この日は、年に一度しか開扉しない秘仏ご本尊の「六臂如意輪観世音菩薩」の特別公開であり、秋の観光シーズンにも重なったため、本当にたくさんの参拝客が押し寄せてきていました

圓教寺@兵庫県姫路市-17
摩尼殿の裏側の様子。幾何学的なパーツが連続する様子は、本当に美しいですね!この軒下を奥へと進んでいくと、大講堂・食堂・常行堂などが立ち並ぶ一角へとたどり着きます


コの字型に並ぶ大講堂・食堂・常行堂

摩尼殿の脇を抜けて、数分だけ林道を歩くと、圓教寺の修行の場である一角にたどり着きます。ここは「大講堂」「食堂」「常行堂」(全て重文。室町中期)が、コの字型に近接して並んでいる、ちょっと珍しい造りになっています。このコの字型の配置のことを「三之堂(みつのどう)」と呼ぶのだそうです。

ここはまさに映画「ラストサムライ」に登場していた場所ですね。映画の中の空気が凛と張り詰めたシーンがはっきりと思い出せるほど、とても印象的な光景でした。

中央にある「食堂(じきどう)」は、1階が写経道場に、2階が寺宝の展示館になっています(拝観料は無料でした)。

定朝作の大日如来像、豊臣秀吉が奉納した鶴に乗った観音さま「鶴上観音」、五体全て坐像の「五大明王像」などの面白い仏像や、全国に5つしか残っていない「弘法大師の手形」、長大で美しい絵巻「播州書写山縁起絵巻」など、大寺院らしい充実した展示内容でしたので、お忘れなくご覧ください。お堂の内部の雰囲気もとてもいいですよ!


圓教寺@兵庫県姫路市-18

右手から、圓教寺の「大講堂」「食堂」。この左手には「常行堂」が建ち、コの字型に並んでいます。ここは映画「ラストサムライ」のロケに使われ、劇中に頻繁に登場していたため、ご記憶の方も多いことでしょう

圓教寺@兵庫県姫路市-19
手前に建つのが「常行堂」。こんな至近距離でコの字型に並んだ伽藍は珍しいかもしれません。映画のロケ中はどんな雰囲気だったんでしょうね

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圓教寺の「常行堂(重文)」の様子。ひたすら阿弥陀仏と唱えながら本尊を回る「常行三昧」という修行をするための道場です。ご本尊は丈六の「阿弥陀如来坐像」で、コの字の外側からその姿を拝見することができます

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圓教寺の「大講堂(重文)」。室町中期の二層式の堂々とした建築物で、圓教寺の本堂にあたります。内部は外陣・内陣に分かれていて、内陣には、釈迦如来・文殊菩薩・普賢菩薩の「釈迦三尊像(重文)」が安置されていますが、残念ながらほとんど見えませんでした・・・

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圓教寺の「食堂(重文)」。1174年創建の、幅40mにもわたる長いお堂です。修行僧が寝食するためのものですが、現在は1階が写経道場、2階が寺宝の展示館になっています。ご本尊は、珍しい僧侶の風貌をした「僧形文殊菩薩像」でした

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食堂の2階部分から見た大講堂。仏像などの素晴しい展示物もあり、このように色んな角度からお堂を眺められたりと、本当に楽しめました!

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右手が食堂で、左手が常行堂。二つの建物が、わずか数cmの距離で軒先をする合わせるように並んでいます

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圓教寺の食堂の1階部分は「写経道場」になっています。短時間でできるようになっていて、多数の方が写経を行っていました。こんな眺めのいいところだと、気持ちいいでしょうね!


最奥にある「奥之院」もお忘れなく

さらに、常行堂の脇の道を進むと、金剛堂を経て「奥之院」と呼ばれる一角があります。「開山堂」「護法堂」「不動堂」「護法堂拝殿」などの建物がありますが、内陣の改修工事を行っているということを聞いていたことと、時間が無かったこともあり、この日はそちらまでは行きませんでした。

とにかく圓教寺の境内は広大ですので、しっかりと時間の余裕を持って参拝に行きましょう。見どころがたくさんありすぎて、時間がいくらあっても足りなくなってしまいます!


圓教寺@兵庫県姫路市-26

圓教寺の「奥之院」に建つ「開山堂」の軒下には、左甚五郎作と伝えられる力士の彫刻があり、そのうちの一人は重さに耐えかねて逃げ出した・・・という伝説が残されています。ただし、この日は開山堂が改修を行っていたため、奥之院までは行きませんでした

圓教寺-ご朱印
圓教寺でいただいたご朱印です。力強くて素晴しいですね!



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■圓教寺(書寫山)

HP: http://www.shosha.or.jp/
住所: 兵庫県姫路市書写2968
電話: 079-266-3327
宗派: 天台宗(別格本山)
本尊: 釈迦如来(重要文化財)
創建: 966年
開基: 性空上人
拝観料: 500円(入山志納金)
拝観時間: 8:00 - 17:00
駐車場: 無料。その代わりロープウェイ代金(大人往復900円)がかかります
アクセス: JR神戸線「姫路駅」から、神姫バス「書写駅(約25分)」へ。ロープウェイで「山上駅(約4分)」

※西国三十三所の第27番札所
※西国三十三所の札所観音は、摩尼殿の「如意輪観世音菩薩」です
※2009年4月より、入山志納金が「500円」に変更になりました(以前は300円)
※2009年4月より、開山堂の内陣の改修修理が行われています






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