2013-12-01

怨霊と化した早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市

怨霊と化した早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市

奈良市西紀寺町に鎮座する『崇道天皇社(すどうてんのうしゃ)』。桓武天皇の実弟で、死後に怨霊と化したとされた「早良親王」の鎮魂のために創建された神社です。鎌倉時代に春日若宮の旧本殿を移築した「本殿」(重文)などが伝わっています。ひっそりとしたお社ですが、平安時代の人々を震え上がらせた怨霊を祀っていると考えると、また違った迫力がありました。


早良親王(=崇道天皇)が怨霊化した理由とは?

奈良市西紀寺町にある『崇道天皇社(すどうてんのうしゃ)』は、無実の罪で捉えられ、死後に怨霊となったとされる「崇道天皇」を祀るお社です。

崇道天皇とは、第49代・光仁天皇の皇子で、平城京からの遷都を行った「桓武天皇」(Wikipedia)の同母の弟「早良親王(さわらしんのう)」(Wikipedia)のこと。

母の身分が低かったため、幼いころに出家し、東大寺や大安寺で過ごしていたこともありました。このため、南都寺院の影響力の排除を狙って、平城京から長岡京への遷都を推進していた藤原種継の暗殺事件の首謀者として囚われ、皇太子の座も追われてしまいます。

長岡京市の「乙訓寺」(Wikipedia)に幽閉された後、淡路国へ配流となりますが、抗議のため絶食を続け、河内国高瀬橋(大阪府守口市の高瀬神社)の近くで憤死したとされています。

その後、桓武天皇の第1皇子(後の平城天皇)が発病したのを始め、妃や生母が病死、疫病が流行し洪水などの天変地異も相次ぐなど、凶事が続いたため、これらは早良親王の祟りであるとされました。

800年には、生前に即位していないにも関わらず「崇道天皇」という追称を与えられ、奈良市八嶋町の「崇道天皇陵」に改葬。その近くに、早良親王を祀る八嶋神社を、奈良町に崇道天皇社を作るなどして、鎮魂に努めました。

偉大な人物として知られる桓武天皇ですが、身近なライバルを排除してきたため、常に怨霊の恐怖に悩まされました。早良親王などは、同じ母から生まれた実の弟です。そんな人物が無実を訴えながら悶死したと聞けば、さぞ背筋が寒かったことでしょう。

また、全国にある「御霊神社」は、早良親王を始めとして、藤原広嗣・井上内親王・他戸親王・橘逸勢など、死後に怨霊化したと考えられた方たちの魂を鎮めるために建てられたお社です。菅原道真を祀る天満宮も同様の意味を持ちます。

ややオカルトめいてますが、当時の方にとっては、怨霊に鎮まってもらうことは大変なことだったのです。こうした事情は、『日本の怨霊』『怨霊になった天皇』などの本に詳しいですので、興味のある方は手にとってみてください。


東西に長い境内には、春日移しの「本殿」が

崇道天皇社は、奈良市の西紀寺町に鎮座しています。東西に長細い敷地になっていて、数軒お隣には、裸形の阿弥陀さまがおわす『璉珹寺(れんじょうじ)』(紹介記事)があります。

奥へ奥へと進むと、突き当り左手に、南面して拝殿が建っており、その裏手にかすかに「本殿」(重文)が見えます。春日大社の式年造営にともなって、若宮の旧本殿を移築したものです。

新薬師寺に隣接する『南都鏡神社』(紹介記事)なども、藤原広嗣の怨霊を鎮めるためのお社で、同様に春日大社の旧本殿を移築した「春日移し」ですが、そちらは江戸時代のもの。崇道天皇社は鎌倉時代(1586年の移築)のものがそのまま伝わっているのですから驚きです!


早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-01

静かな西紀寺町に鎮座する『崇道天皇社』。平安時代に怨霊と化し、人々を震え上がらせた「早良親王(さわらしんのう)」をお祀りする神社ですが、今はひっそり静かなものです

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-02
重要文化財 崇道天皇社本殿 桃山時代「この神社は、早良親王(崇道天皇)の御霊を鎮めるために806(大同元)年に創祀されたと伝えられています。本殿は一間社春日造・檜皮葺です。1623(元和9)年の棟札があることなどから、1586(天正14)年に春日大社若宮神社の本殿として建立されたものを1623年に移築したと考えられます。春日旧社殿の古い遺構として貴重です。」

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-03
山門の前。鳥居は西向き、境内は東西に細長く伸びます

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-04
山門をくぐったところ。鮮やかに晴れ渡った青空に、赤の鳥居が映えますね

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-05
境内にあったご由緒書き。本殿は、春日大社の式年造営にともない、若宮の旧本殿を1586年に移築したもの。奈良県内にいくつか残る、いわゆる「春日移し」のひとつです

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-07
長い参道を突き当たって左手、南向きに拝殿と本殿が建っています。それほど広くない境内に、立派な木が植わっていたりしますので、あまり見晴らしはよくありません

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-08
うっすらと見えるのが、崇道天皇社「本殿」(重文・旧国宝)です。春日造の一間社で、屋根は檜皮葺。春日若宮の旧本殿を移したものの中で、特に古いものだとか。ただ、背後にずっと隣接する「増尾商店 紀寺支店」さんの大きな看板が見えているのが、何とも無粋で残念です

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-06
参道の突き当りには、菅原道真公を祀る「天満宮」と、宇迦之御魂神(=稲荷神)を祀る「稲荷社」が並びます

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-11
稲荷社の前には、古いポンプとたくさんのキツネたちが

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-09
崇道天皇社の狛犬・阿形。二対の狛犬がみられました

早良親王を祀る『崇道天皇社』@奈良市-12
「崇道天皇社」と書かれた灯籠も迫力がありますね



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■崇道天皇社(すどうてんのうしゃ)

住所: 奈良県奈良市西紀寺町40
電話: 0742-23-3416
主祭神: 早良親王
創建: 806年
拝観料: 境内無料
駐車場: なし
アクセス: JR桜井線「京終駅」から徒歩10分ほど(JR奈良駅からは徒歩25分ほど)

※実際にお詣りしたのは「2013年9月29日」でした。


■参考にさせていただきました

早良親王 - Wikipedia
桓武天皇 - Wikipedia
崇道天皇社


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