2015-07-22

修験道の聖地『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村

修験道の聖地『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村

黒滝村の山深くにある、修験道の聖地『鳳閣寺』。役行者が開山し、修験道中興の祖といわれる「聖宝理源大師」によって道場が開かれました地です。また、百貝岳の登山ルートの途中には、聖宝を祀った「理源大師廟塔」(国重文)が存在します。南北朝時代の名石工が作った美しい塔ですので、ぜひハイキングがてら訪ねてみてください。


険しい山道の先にある『鳳閣寺』

黒滝村鳥住、山深いに位置にある『鳳閣寺(ほうかくじ)』(Wikipedia)。

寺伝によると、678年、役行者が天皇の命により創建したとされています。895年、修験道中興の祖といわれ、京都・醍醐寺を開山した「聖宝理源大師」(Wikipedia)によって修験道場が開かれました。

1700年には醍醐寺三宝院に属し、修験道当山派を支配する「諸国総袈裟頭」の寺として栄えましたが、明治維新後の1872年の「修験道廃止令」によって衰退。1951年より、真言宗鳳閣寺派の本山として現在にいたります。

また、境内背後の山中には「聖宝の墓」と伝わる「理源大師廟塔」(重要文化財)があることでも知られています。

なお、この一帯は、奈良市内の地名「餅飯殿(もちいどの)」の発祥でもあります。

ここに棲みついた大蛇を退治するようにと勅命を受けた聖宝理源大師は、奈良に暮らしていた勇壮な先達「箱屋勘兵衛」とともに大蛇を退治しました。箱屋勘兵衛は、聖宝の好物である「餅飯」をたびたび持参したため、たわむれに「餅飯殿」と呼ばれるようになり、さらには勘兵衛の住むあたりが「餅飯殿町」と呼ばれるようになりました。


『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-01

『鳳閣寺』は、厳しい山岳修行を行う修験道の寺院だけに、山深い黒滝村のさらに険しい山中にあります。黒滝村役場から車で20分ちょっと、急な坂道を上った先に「鳥住春日神社」と「百貝ヶ岳野草園」があり、ここに車を停めて、さらに10分ほど急坂を歩きます

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-02
坂の途中からの眺め。延々に山並みが続きます。坂道はかなり急ですので、焦らずゆっくり歩きましょう

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-03
ゆっくり10分ほど歩くと、『鳳閣寺』の本堂などが見えてきます。本堂前には護摩行などを行う行場になっています。本堂の他は、社務所と小さなお社などがあります

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-05
本堂を脇から眺めたところ。標高860mの「百貝岳(ひゃっかいだけ)」(Wikipedia)の中腹に位置し、山頂への登山ルートになります。また、吉野山へ向かうコースもあり、シーズンにはハイカーの姿も多く見られるのでしょう

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-04
鳳閣寺の歴史を記した説明書き

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-06
鐘楼と、その向こうに見える建物が寺務所でしょう。この日はどなたもいらっしゃらないようで、セミの鳴き声だけが響いていました


百貝岳への登山ルートを進みます

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-07
鳳閣寺から「理源大師廟塔」(重文)に行けるルートがあります。どこだろうと探してみると、寺務所のすぐ脇、人さまのお宅の裏庭に入るような場所を通ります

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-08
鳳閣寺から「理源大師廟塔」(重文)までの距離は600mほど。百貝岳への登山道の途中にあります。しっかりと整備されていますし、ところどころに道案内もありますので、特に迷うようなこともないでしょう。歩きやすい靴は必須です

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-10
「理源大師廟塔」までは、大人の足なら15~20分ほどで到着できます。大きな倒木を乗り越えて進みましょう。なお、後から気づいたのですが、ここからさらに900mほど進むと、もう百貝岳の山頂だったようです。ちょうどいいハイキングコースになりますね


亀の頭を掘った美しい石塔『理源大師廟塔』

鳳閣寺の奥にある「理源大師廟塔」は、総高265cmを超える、花崗岩製の大型石塔で、国の重要文化財に指定されています。

作られたのは南北朝時代のこと。聖宝は909年にこの地で亡くなったという伝承もあるため、没後460年を記念し、ここに廟塔が建立されました。奉加僧(金品を寄進した僧侶)の数は18,023人にも及んだとのことで、たくさんの方の思いが形になったようです。

銘文には、作者は「薩摩権守行長」とされており、これは有名な「伊行末(いぎょうまつ、いのゆきすえ)の末裔、伊行石工の血脈を引く最後の人物・伊行長(いのゆきなが)のことだとか。この時代になると鎌倉時代のような豪放さは影を潜め、精緻で整った石造物が増えてくるそうです。

今から650年ほども昔に作られたものでありながら、細かい部分まで美しく遺されていて、ずっと変わりない信仰心によって護られてきたことが伝わってくるようでした。


『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-11

「理源大師廟塔」の周辺。新しい五輪塔が建てられていたり、人の手で護られていることが伝わってきます

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-13
昭和50年に設置された説明書きには「國寶廟塔」とありました。廟塔の銘も書き写されていますが、文字が薄れてたいぶ読みづらくなっています

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-14
「理源大師廟塔」(または「石の廟塔」)。木の覆屋に、さらに鉄製の柵がつけられています。正面には菊と桐の御紋があり、身分の高い方を祀ったものだということが伝わってきます

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-15
理源大師廟塔の正面、柵の上からカメラを向けたところ。南北朝時代の作で、全体的にとても優美ですね。細部まで繊細で、とてもバランスがいいです。特徴的なのは、台座の上部分、丸い顔のようなものが作られている点です

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-18
角度を変えて。正面のみ、亀の頭と前脚の部分が彫り出されているのだとか。「亀が宝塔を乗せている」という表現で、この時代の大きな石塔には珍しいそうです。亀に乗った宝塔というと、唐招提寺の国宝「金亀舎利塔」(鎌倉時代)が有名で、このデザインに影響を受けた可能性もあるとか

『鳳閣寺』と『理源大師廟塔』@黒滝村-17
背面から。塔の先端部分から欠けたりもせず、垂木なども表現された屋根、やや細くなった首部には勾欄(こうらん)が描かれています。その下の胴体部分は、窓のようなものが描かれており、この下に請花(蓮座)があるのはとても珍しいのだとか。じっくりと拝見すると、その美しさに引き込まれるようでした!



■鳳閣寺

住所: 奈良県吉野郡黒滝村鳥住90
宗派: 真言宗鳳閣寺派
本尊: 如意輪観音像
創建: 678年(伝)
開基: 役小角(伝)
拝観料: 境内無料
アクセス: 黒滝村役場から車で22分ほど

※実際にお詣りしたのは「2015年7月12日」でした


■参考にさせていただきました

文化財 | 暮らしのガイド ― 黒滝村WEBサイト
鳳閣寺 - Wikipedia
聖宝 - Wikipedia
鳳閣寺、役行者や理源大師の精神が息づいている聖域。 - 土曜日は古寺を歩こう。


■参考文献

供養をかたちに―歴史的石造物を訪ねて (「月刊石材」別冊シリーズ)紹介記事






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