『宮滝遺跡』で離宮「吉野宮」を体感してきました @吉野町
飛鳥~奈良時代にかけて天皇が幾度も行幸した離宮「吉野宮」の有力候補地である、吉野町『宮滝遺跡』。大規模な掘っ立て柱建物跡が見つかるなどしていますが、発掘現場はすでに埋め戻されており、一見したところ何もない原っぱです。しかし、発表されている航空写真などを手に現地に立ってみると、かつての離宮の配置などが体感できてかなり楽しいです!
航空写真などから当時の様子を体感!
飛鳥~奈良時代にかけて天皇がたびたび行幸した離宮「吉野宮」跡と目される、吉野町『宮滝遺跡(みやたきいせき)』(Wikipedia)。
2018年には、奈良時代前半(8世紀前半ごろ)の大規模な掘っ立て柱建物跡が見つかりました。東西23.7m×南北9.6m。四方に庇(ひさし)がついた格式高い建物で、これが吉野宮の中心となる「正殿」だったと考えられています。
また2019年7月には、これらの大型建物跡の周辺に、「後殿」や「脇殿」と見られる同時期の建物群、そして離宮を囲った61mもの塀が整然と並んでいたことが判明し、大きな話題となりました。
すでに発掘現場は埋め戻されており、ぱっと見では痕跡はありませんが、発表されている図や画像などを頼りに、想像を膨らませてきました!
吉野町宮滝に位置する『宮滝遺跡』。斉明天皇に始まり、天武天皇や聖武天皇、そして持統天皇が30回以上も訪れるなど、飛鳥~奈良時代の天皇たちが幾度も行幸した離宮「吉野宮」があった場所と考えられています。
場所的には、蛇行する吉野川と国道169号線の間、「吉野宮滝野外学校」(旧中荘小学校)のすぐ西側になります。専用の駐車場などはありませんが、すぐ近くの「宮滝河川交流センター」の駐車場などが利用できます。
現在の宮滝遺跡の様子。吉野川のほとり、数件の民家との間のわずかな土地です。何かの広場にしか見えません
現地には「史跡 宮滝遺跡」という石碑とともに、「吉野離宮の遺構出土地」という説明書きもあります。とはいえ、内容が1985~86年に行われた「第36次発掘調査」のものなので、やや古めです
そこに結んであったのが、2017~18年の「第69次発掘調査」で見つかって大きな話題となった「大型掘立柱建物」を示した案内です。現地の説明板も、頻繁に作り変えることもできませんので、こうした努力はありがたいですね
画像は「宮滝遺跡第70次発掘調査記者発表資料(PDF)」より。宮滝遺跡の全域を収めた航空写真が掲載されていますので、どこにどんな建物があったのかが把握できます
最新の第70次発掘調査の範囲を示した図なども(「宮滝遺跡第70次発掘調査記者発表資料(PDF)」より)。現地へ行く前に簡単に目を通しておくとより楽しめます!
何もないように見えますが、地面にはビニールのテープが張ってあります。これは発掘調査で建物などが見つかった場所を示しています。ちなみにこの場所は……
奈良時代前半に建てられた「掘っ立て柱建物跡」が見つかっています!吉野宮の中心「正殿」と考えられる大型建物だそうですが、その規模は「東西23.7m×南北9.6m」と、意外と小さく感じます。現地で体感してみると印象が変わりますね。
(画像は「宮滝遺跡の調査歴と最近の成果 | 吉野町公式ホームページ」より)
宮滝遺跡では、スマホを駆使してそんな画像や資料を見ながら歩くと、かなり楽しめます。
この場所に飛鳥~奈良時代の天皇が訪れ、万葉歌人たちがその美しさを讃えた歌を詠み、そしていつしか忘れられていったことなど。轟々と音を立てながら足元を時間が流れていくような不思議な気分になりました!
吉野歴史資料館では特別展が開催中
この日は時間の関係で拝見できませんでしたが、宮滝遺跡の近くにある「吉野歴史資料館」において、橿原考古学研究所附属博物館の出張企画展「発掘 古代の宮滝遺跡」が開催されています(7/20~9/16)。
約90年前に実施された第1次調査の資料や、近年の調査成果と出土品などが一堂に展示されていますので、ぜひ合わせてご覧ください!
■出張企画展「発掘 古代の宮滝遺跡」
・会期:7月20日(土曜日)~9月16日(月曜日・祝日)
・会場:吉野歴史資料館(吉野郡吉野町宮滝348番地)
・休館日:木曜日
・入館料:一般 200円、高校生以下 100円、幼児以下 無料
近くに万葉歌人に詠まれたスポットも
宮滝遺跡の周辺には、かつて万葉の歌人たちが歌に詠んだゆかりの土地がたくさん残っています。夢のわだ・象の小川・象山・桜木神社・三船山など、ぜひあわせて巡ってみてください。
■宮滝遺跡
HP: http://www.town.yoshino.nara.jp/about/miyataki-menu.html
住所: 奈良県吉野郡吉野町宮滝地内
駐車場: なし(※近くの宮滝河川交流センターの駐車場が利用できます)
アクセス: 近鉄吉野線「大和上市駅」からバスで約10分です。
■参考にさせていただきました
宮滝遺跡の調査歴と最近の成果 | 吉野町公式ホームページ
宮滝遺跡 - Wikipedia
宮滝遺跡で大規模建物跡 飛鳥時代の離宮「吉野宮」正殿か(1/2ページ) - 産経ニュース(2018.5.15)
聖武天皇「吉野宮」確実に 奈良・宮滝遺跡、新たに建物群 - 産経ニュース(2019.7.19)
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