2008-09-08

美しい銅造仏と「あおによし」のお寺『薬師寺』

薬師寺@大池越し

午後から時間が空いたこの日、久しぶりに「秋篠寺」に向かったのですが、途中でとんでもない渋滞に巻き込まれてしまったため、急きょ『薬師寺』へ行き先を変更。半年振りにお参りしてきました。

半年前にお邪魔した時には、ちょうど日光・月光菩薩像が、東京国立博物館での「薬師寺展」へ出発する前日で、じっくりと見ることが出来ませんでしたので、そのリベンジです。


薬師寺の歴史を簡単に

薬師寺は、西ノ京にある「法相宗」の大本山です。天武天皇の勅願(680年)により建立され、当初は飛鳥(現在の橿原市城殿町。「本薬師寺跡」という史跡になっています)の地にあったものを、平城遷都にともない、718年に現在の地に移されてきました。

しかし、973年の大火災と、1528年の筒井順興の戦禍のため、ほとんどの建物を失い、創建当初のものは「東塔(国宝)」を残すのみ。昭和期までは、元の伽藍の様子すら分からないほど寂しい姿となっていたそうです。

しかし、今から半世紀ほど前から、名物管長として知られた「高田好胤師」らによって、写経勧進による白鳳伽藍復興事業がスタート。1976年には「金堂」が、1981年に「西塔」、1984年に「中門」、2003年に「大講堂」と、続々と往事の華やかな大伽藍が復興してきました。1998年には世界遺産にも登録されています。


このような歴史を持つ薬師寺ですが、やはり再建された建物が多いため、長年の風雨に耐えてきた、木目が美しい奈良らしい建築物は東塔と東院堂しかありません。他は全て「丹色(にいろ。朱色)」の壁と「青色(ほぼ緑)」の連子窓のコントラストが美しい、まさに「あおによし」の語源どおりの姿が見られます。渋さには欠けますが、これはこれでとても美しい姿であることは間違いありません。

また、現在はすぐ隣にある『唐招提寺』が平成の大修理中です。これが完了する頃には、またとんでもない数の観光客が押し寄せてくることになると思いますので、のんびりと薬師寺を楽しみたい方は、今がチャンスなのかもしれません。


気持ちいい秋晴れの一日でした

この日は、涼しい風も吹いていて、お寺の拝観には最高の秋晴れの一日でした。平日の昼下がりでしたので、観光客の姿もほとんどなく、ゆったりと仏像なども見て周ることができました。

薬師寺-01
秋晴れで爽やかな風が吹き抜けていた『薬師寺』。「あおによし」の語源にもなった、「丹(に)色」=朱色の塗りがとても美しかったです

薬師寺-02
風にたなびく幕と仁王像。この日差しと風の気持ち良さは、かなりのもの。拝観料が500円必要ですが、もっと沢山の人がお散歩に来ていてもいいと思います


薬師三尊像が美しい「金堂」

先回はよく見ることが出来なかった、金堂のご本尊「薬師三尊像(国宝)」も、今回はじっくりと見ることができました。

コチラは奈良時代の作で、薬師如来像を中心に、脇侍の日光菩薩・月光菩薩を配しています。薬師寺は金銅仏が多いお寺ですが、この薬師三尊像はまさに最高傑作というべき仏様だと思います。やや体をひねった様子が艶かしい、均等の取れた美しいプロポーション。黒っぽく鈍く輝いている銅の素材感がいいんですよね。

このような仏像は、奈良では薬師寺以外ではなかなか見られないものですので、何度見ても新鮮な感じがします。

また、全国からの納経(@2,000円)を募ることで、金堂の再建費用を賄ったということです。今でも随時、写経を受け付けていますし、何とネットで申し込みができる「ご自宅でお写経」というサービスもありますので、興味のある方はぜひ!

薬師寺-03
薬師寺の「金堂」。今回はここ若いお坊さんのお話を伺いました。基本は納経(@2,000円)の御願いなんですが、さすがに場数を踏んでいるだけあって、トークが上手いんですよね

薬師寺-04
写経したものを納めると、この金堂の2階部分に奉納してもらえます。この金堂自体が、国からの援助などに頼らず、全て納経の御代だけで再建されたそうですから、スゴイことですよね!

薬師寺-08
「金堂」を正面から。1528年の戦禍で焼け落ちたものを、高田好胤師の「百万巻写経勧進」で資金を集め、1976年に再建されました。緑と朱のコントラストは、本当に美しいですね!

薬師寺-09
金堂のご本尊「薬師三尊像(国宝)」。銅造の薬師如来像と脇侍の日光・月光菩薩は、いずれも息を呑むような優雅さがあります。以前来た時は、日光・月光さんが東京の博覧会への出張前日で、布にくるまれていたため、久々にしっかりと拝めました


金銅仏が立ち並ぶ「大講堂」

金堂の裏手にあるのは、広々とした「大講堂」です。コチラは2003年の再建で、ご本尊は「弥勒三尊像(重文)」。中尊の弥勒菩薩像に、右には「法苑林菩薩像(ほうおんりんぼさつ)」、左には「大妙相菩薩像(だいみょうそうぼさつ)」が並びます。

とても美しい金銅仏ですが、やはり有名な薬師三尊像と比べると、(失礼な言い方ですが)やや劣るような気がしてしまいます。この仏像が他のお寺にあったとすれば、そんなことを気にせずに無邪気に見られるのですが、人間は勝手なものですね(笑)

また、大講堂の裏手にある「東僧坊」では、金堂のご本尊の台座(国宝)・東塔の水煙のレプリカなどが展示してあります。かなり立派な売店もありますので、お土産物はこちらでどうぞ。

薬師寺-05
薬師寺の「大講堂」。2003年に再建された新しいものです。ご本尊の「弥勒三尊像(重文)」も銅造の美しい仏様ですが、薬師三尊像の日光・月光さんと比べると、やや優雅さに欠ける印象もあります

薬師寺-06
金堂の本尊の「台座(国宝)」のレプリカ。これは実際に金堂で見ることができる「玄武」の面です。じっくり見ると、色んな文化の色んな文様が混在していて、かなり面白いですね

薬師寺-07
「鐘楼」越しに眺めた境内。信じられないほどのひと気の無さ!


奈良らしい、落ち着くいお堂「東院堂」

遅い時間になってしまったため、「東院堂(国宝)」に行った時には、もう閉まる寸前で、大急ぎで中をお参りさせていただいきました。境内の東側、廻廊の外側にありますので、やや見落とされやすい建物です。

元明天皇の冥福を祈り、8世紀前半の養老年間に、吉備内親王(きびないしんのう)が建立したもの。973年の火災で焼失したため、現在の建物は1285年の再建です。正面が7間の入母屋造本瓦葺で、まさに奈良のお堂らしいお堂ですね。

ご本尊は、白鳳時代の作「聖観世音菩薩像(国宝)」。コチラもとても美しい金銅仏ですね。また、その四方を守る鎌倉時代の作の「四天王像」も、かなり凛々しい仏像です。檜の寄木造ですから、それほど珍しいものではないのかもしれませんが、薬師寺の中ではやや異質に見えますね。

薬師寺-10
廻廊の外にある「東院堂(国宝)」。もう閉まる寸前です。駆け足で内部を見せていただきましたが、格子窓から西日が差し込んで、赤い敷物に反射する様子がとてもきれいでした。国宝の聖観音さんもいいですが、四天王像も凛々しくていいですね!

薬師寺-11
東院堂の鬼瓦。和の美しさを存分に感じさせてくれる風景です


対照的な魅力のある東塔・西塔

そして、薬師寺の象徴である東西の双塔です。

1981年に再建された色鮮やかな「西塔」は、朱色と緑色のコントラストが美しい、当初の姿を偲ばれる塔。一方の「東塔(国宝)」は、薬師寺の創建当初から残る唯一の建造物で、いかにも歴史を感じさせる渋い木目の塔です。フェノロサがこの東塔を見て「凍れる音楽」と称したというのも、よく分かる気がします。

薬師寺の伽藍は「薬師寺式」という独自のものですが、この双塔はその中心となるものです。じっくりと見てみると、対比が楽しめて面白いですね。

薬師寺-12
1981年に再建された「西塔」。連子窓の「青」と、柱などの「丹色」が、奈良の都のイメージなんでしょう。渋い東塔もいいですが、この色合いもとても奈良っぽくていいですね

薬師寺-13
薬師寺の創建当初から現存している唯一の建物「東塔(国宝)」。1300年の時を経て、ますます味わい深いものになったのかもしれません。以前はこちらも連子窓があったのですが、修復で白壁になったそうです

薬師寺-14
東塔の組物。裳階の部分は小さく、通常の屋根部分は二手先で。ジッと眺めていると、クラクラと眩暈がしてきそうな、不思議な魅力があるんですよね

薬師寺-15
廻廊の軒先。丸と角の垂木には、それぞれ薬師寺の紋章が。近年になって再建されたものだけに、細部が本当にきれいですね


観光客が少ないお寺は、どこかシュール!

この日は、本当に他の観光客の姿が少ない日だったため、誰も写りこんでいない、かなり本格的に見える(?)写真が撮れました。まとめてアップしておきます。

薬師寺-16
大講堂前から眺めた金堂と東塔。これだけいいお天気の日に、これだけ人が居ないと、どことなくシュールな絵に見えますね

薬師寺-17
金堂と東塔。お天気の良さが際立ちますね

薬師寺-18
金堂と燈籠と東塔

薬師寺-19
西塔側から眺めた金堂。もう閉門時間寸前のため、ほぼ誰も居ません!独り占め気分が味わえました

薬師寺-20
金堂の扉も閉められました。よく考えてみたら、この姿もそうそうは見られないかもしれません

薬師寺-21
帰り際に「南門」から撮影した図。門は閉められています。東塔・西塔を一枚に収めようとすると、どうしても電線が邪魔で・・・。何よりも先に電線を地中に埋める工事をやって欲しいものですね

薬師寺-22
孫太郎稲荷神社の向かいあたりに居たネコたち。人が立ち入らないところなので、のんびりとくつろいでました

薬師寺-御朱印
薬師寺でいただいたご朱印です。数パターンある中から、ご本尊の「薬師如来」をお願いしました。これまでいただいてきた中でも、かなり美しい書ですね!


池越しの薬師寺を見るためには・・・

薬師寺をお参りした帰り、西ノ京駅を挟んで反対側(車で5分ほど)のところにある「大池(または勝間田池)」に行って、有名な池越しの薬師寺の写真を撮影してきました。

ここは故入江泰吉さんも愛したアングルで、色んなところで見かけます。しかし、我が家のカメラは一応「光学3倍ズーム」までついているのですが、さすがに距離がありますので、そのくらいじゃ太刀打ちできませんね(笑)

いつもWeb用には縮小した画像を使っているので、何とか使い物になりましたが、大きなサイズで迫力のある画像を撮ろうと思ったら、大きなレンズが必要になりますね。

また、薬師寺の背後には若草山も見えますので、山焼きの日にはここにカメラマンの行列が出来るのだそうです。腕自慢のカメラマンの方は、ぜひここで陣取るのもいいかもしれませんよ!

薬師寺@大池越し-01
帰りにちょっと足を伸ばして(車で5分くらいですが)、「池越しの薬師寺」の撮影ポイントに行ってみました。池の名前は「大池(西ノ京大池・勝間田池とも)」。このアングルの写真はよく見かけますよね

薬師寺@大池越し-02
飛行機雲と薬師寺の双塔。ズームを使わないとこんな感じですので、それなりのカメラをお持ちの方向けです。少なくとも携帯電話のカメラでは歯が立ちませんよ!

薬師寺@大池越し-03
小さく写っていたものを、必要なところを切り出したら、意外とまともに写ってました。東塔・西塔・金堂が見えて、背後には特徴的な若草山も。かなり満足です!



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■薬師寺

HP: http://www.nara-yakushiji.com
住所: 奈良県奈良市西ノ京町457
電話: 0742-33-6001
宗派: 法相宗大本山
本尊: 薬師三尊像(国宝)
創建: 680年(天武天皇9年)
開基: 天武天皇
拝観料: 500円(「玄奘三蔵院伽藍」公開時は800円)
拝観時間: 8:30 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり(普通車500円)
アクセス: 近鉄「西ノ京駅」下車すぐ






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