2009-11-09

スケールの大きな京都の古刹『醍醐寺』@京都市伏見区

スケールの大きな京都の古刹『醍醐寺』@京都市伏見区

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、京都市伏見区にある大寺院『醍醐寺』へ行ってきました。

西国三十三所の札所となっている、山道が険しい難所の上醍醐「准胝堂」は火災にあってしまったため、現在は下醍醐の「金堂」が札所扱いとなっています。肉体的には楽をさせてもらいましたが、それ以外にも見どころの多いお寺ですので、とにかく慌しかったです!


豊臣秀吉の「醍醐の花見」が有名です

京都府京都市伏見区にある、西国三十三所の第十一番札所『醍醐寺』は、山号を「深雪山(または醍醐山)」といいます。

醍醐寺の創建は874年のこと。空海の孫弟子「理源大師聖宝」が准胝観音(じゅんていかんのん)、如意輪観音の両観音像を醍醐山の山頂に祀ったことから始まりました。

907年には、醍醐天皇の勅願による薬師堂が建立。五大堂も落成し、山頂部に位置する「上醍醐」の伽藍が完成します。それに引き続き、下醍醐の伽藍が建立され、926年には釈迦堂が、951年には五重塔が落成しました。

しかし、応仁の乱などの災禍のため、下醍醐は荒廃し、一時は五重塔が焼け残ったのみとなりました。その後、豊臣秀吉による有名な「醍醐の花見」をきっかけに、紀州などから建築物が移築されるなどして、現在の姿に近い形となりました。

西国三十三所の第十一番札所は、上醍醐にある「准胝堂(じゅんていどう)」ですが、2008年の火災により焼失。現在は再建作業が進められています。


下醍醐・上醍醐に分かれる広大な境内!

醍醐山一帯を境内とする、京都市伏見区の『醍醐寺』は、下醍醐・上醍醐に分かれ、今なお100余りの堂塔が散在する巨大寺院です。「下醍醐伽藍」「三宝院」「霊宝館」、そして山道を1時間ほどかけて上った先にある「上醍醐」に分かれており、拝観料はそれぞれ600円(共通券あり)となります。

秋の観光シーズンと秘仏の御開帳が重なったためか、この日も本当にたくさんの参拝客の姿であふれていました。


醍醐寺@京都市伏見区-01

京都市伏見区にある大寺院『醍醐寺』。境内の案内図を見ただけでも、その巨大さが伝わってきます。麓に広がる「下醍醐」と、約1時間ほど山道を上ってたどりつく「上醍醐」、大きく2つに分かれています

醍醐寺@京都市伏見区-02
いかにも京都のお寺らしい参道。薄っすらと紅葉も始まっていました

醍醐寺@京都市伏見区-03
醍醐寺の「西大門(または仁王門)」。1605年、豊臣秀頼によって再建されたものです。この門をくぐったところに伽藍への入山受付があります。京都の大きな観光寺院ですし、秘仏の御開帳と紅葉シーズンが重なって、ものすごい人出でした

醍醐寺@京都市伏見区-04
醍醐寺「西大門」の仁王像・阿形。この像は1134年、仏師の勢増・仁増の作だそうです。表面の塗りが剥がれてきたのかもしれませんが、まるで焼き物の釉薬のようなまだら模様になっていました

醍醐寺@京都市伏見区-06
西大門から金堂までの道。いかにも京都のお寺らしい通りですね。両脇には紅葉が植わっていますが、この辺りはまだ全く紅葉していませんでした


札所観音「准胝観音坐像」も金堂で公開中

醍醐寺の本堂にあたる「金堂(国宝)」は、和歌山県湯浅の満願寺から移築され、1600年に完成したものだそうです。お堂の作りはどちらかというと簡素で、内陣・外陣といった仕切りは無く、お堂内部が広々としているのが特徴的でした。

上醍醐の「准胝堂」が焼失してしまっているため、西国三十三所の札所観音の「准胝観音坐像」も、金堂のご本尊「薬師如来坐像(重文)」の前に祀られていました。

すぐ目の前まで近づいて拝見できましたが、「一面三眼十八臂」という変わったお姿の小さな像ですが、とても美しかったです。色彩が鮮やかで、まるで古いオルゴールを見ているかのようでした!

醍醐寺・金堂の他の仏さまたちの感想も簡単に記しておきます。

●薬師如来坐像(重文)-薬壷を持った正統的な薬師さんで、木目が美しかったです。顔立ちがはっきりしているため、奈良の「新薬師寺」のご本尊を思い出しました。
●脇侍の「日光・月光菩薩」は、「法華寺」の十一面観音さまのような穏やかな雰囲気で、小さいながらもとてもバランスのとれた仏像でした。

さらに、袂をギュッと縛って、力強くしなやかな「四天王像」もいらっしゃいました。


醍醐寺@京都市伏見区-07

醍醐寺の「金堂(国宝)」。ここが醍醐寺の本堂に当たります。926年創建の建物でしたが、これまでに二度焼失。現在の金堂は、豊臣秀吉の命によって、和歌山県湯浅から移築が計画され、1600年、秀頼の代になって完成したものです

醍醐寺@京都市伏見区-08
醍醐寺・金堂は入母屋造りで、建物内部は内陣・外陣の区別がなく、広々としています。ご本尊は、「薬師如来坐像(重文)」。像高132.1cmで鎌倉時代のもの。上醍醐の「准胝堂」が焼け落ちてしまったため、札所観音の「准胝観音坐像」もこちらにいらっしゃいました

醍醐寺@京都市伏見区-09
醍醐寺の開山「聖宝理源大師一千百年御遠忌」のポスター。ここに写っているのが、西国三十三所の札所観音さま「准胝観音坐像」です。その姿は「一面三眼十八臂」。異形の小さな仏さまですが、どことなく可憐な雰囲気がありました


京都府最古の「五重塔(国宝)」も

醍醐寺・金堂の前には、応仁の乱の被害も免れた、見事な「五重塔(国宝)」が建っています。他の塔よりも相輪の部分が長いとのことで、五重塔でありながら、まるで三重塔のような安定感があります。

しかし、金堂との間は100m近くも離れているんですよね。奈良のお寺のような塔とお堂が一体になった伽藍を見慣れている人間にとっては、ちょっと間延びしたような印象を受けてしまいました。

また、金堂の周辺には、見事な五大明王像が祀られた「不動堂」や、弘法大師と醍醐寺の開基となった理源大師・聖宝が祀られている「祖師堂」など、小さ目のお堂がいくつかあります。


醍醐寺@京都市伏見区-20

金堂の東側に建つ「五重塔(国宝)」。951年のもので、応仁の乱の被害も免れた、京都府下最古の建造物なのだそうです。醍醐天皇の冥福を祈って朱雀天皇が起工したものです。遠目に見ても、近づいて見ても、本当に美しい五重塔でした!

醍醐寺@京都市伏見区-21
醍醐寺「五重塔」の軒周りと相輪。総高38mで、そのうちの12.8mを相輪の部分が占めています。後世のものと比べると、相輪の比率が大きく、塔部分はややずんぐりとしたバランスになっています

醍醐寺@京都市伏見区-10
醍醐寺の金堂の脇にある小さなお堂「不動堂」。お堂の前には護摩道場があり、修験道祈願が行われるそうです

醍醐寺@京都市伏見区-11
醍醐寺「不動堂」の内部。完全な姿の五大明王像が安置されていました。上醍醐の「五大堂」、そして「霊宝館」にも五大明王がいらっしゃいますので、一つのお寺で3チームが睨みをきかせていることになりますね

醍醐寺@京都市伏見区-12
不動堂のお隣にある「真如三昧耶堂」。949年に朱雀天皇の勅願により「法華三昧堂」として創建されましたが、現在のお堂は1997年に再建されたもの。中には真新しい金色の寝仏さんがいらっしゃいました

醍醐寺@京都市伏見区-14
弘法大師・空海と、その孫弟子にあたり、醍醐寺を開いた理源大師・聖宝が祀られている「祖師堂」。弘法さまをお祀りしたお堂だけに、西国三十三所巡礼の方の姿がたくさん見られました

醍醐寺@京都市伏見区-15
醍醐寺の金堂から少し奥に進んだところに建つ「伝法学院」。少し場所を移動しただけで、これだけ紅葉していました!


「弁天堂」周辺では紅葉が見事でした

金堂から少し奥へ進むと、阿弥陀如来坐像をお祀りした「大講堂」や、水面に映る姿も美しい「弁天堂」などが見えてきます。かなり紅葉が進んでいて見事な光景でした。


醍醐寺@京都市伏見区-16

紅葉と、醍醐寺「大講堂」。境内が広いため、このお堂だけポツリと建っているようにも見えますが、かなり巨大なお堂です

醍醐寺@京都市伏見区-17
醍醐寺「大講堂」の内部の様子。薄暗くてよく見えませんが、パンフレットによると、平安時代ごろ製作された醍醐寺最大の丈六の木造「阿弥陀如来坐像」や、深沙大将・大黒天・地蔵菩薩などがいらっしゃるそうです(ピカピカの仏さまはお前立ちです)

醍醐寺@京都市伏見区-18
下醍醐の最も奥まったところにある「弁天堂」。まだ紅葉のピークには早めでしたし、お天気もイマイチでしたが、なかなかいい眺めでした。水面に映る姿も見事でした!

醍醐寺@京都市伏見区-19
大講堂の隣に建つ、堂々とした「鐘楼堂」。しっかりとした作りの立派なものでした


お庭が有名な「三宝院」は立ち寄れず

醍醐寺の西大門をくぐってすぐの左手にあるのが、国宝・重要文化財の建造物と、特別史跡・特別名勝に指定されたお庭が有名な「三宝院」(拝観料:600円)があります。

この日は、紅葉が始まっていたことですし、とても美しい景色が眺められたと思いますが、時間が無かったことと、三宝院の内部は完全に写真撮影が禁止となっているため、この日は遠慮しておきました(上醍醐にも行きませんでした)。

ちなみに、以前、私たちが醍醐寺に来た際には、三宝院と上醍醐だけ行っています。もう記憶は定かではありませんが、三宝院は京都らしい美しいお庭が印象的でしたし、上醍醐は想像以上の難コースでした。上醍醐へ行かれる方は、くれぐれも準備万端で挑んでください!


醍醐寺@京都市伏見区-22

1115年創建の、醍醐寺「三宝院」(拝観料は別途600円)。建造物の大半が国宝・重文クラスで、豊臣秀吉が設計したとされる桃山時代を代表する庭園は、特別史跡・特別名勝に指定されています

醍醐寺@京都市伏見区-23
三宝院の門から中を眺めたところ。ここは以前にも入場していますし、この日は時間が無かったし、この門の内側は一切の写真撮影が禁止だし・・・、ということで、この日は立ち寄りませんでした。見事な建物とお庭ですので、お時間がある方はぜひ!


充実の「霊宝館」は仏像好きにオススメ!

そして、この日「聖宝理源大師一千百年御遠忌」記念の特別公開が行われていた「霊宝館」(入館料:600円)に立ち寄ってきました。ここに入るのは初めてでしたが、宝物館のような施設としては、かなりの大規模ですね。高野山のものに匹敵するような広さでした。

弘法大師の直筆の書があったり、山口雪渓の見事な屏風があったりと、並みの博物館をはるかに超える充実振りでした。

特に仏像関連は充実していて、全部で26体の仏さまが展示してあり、快慶作の「不動明王坐像(重文)」、漫画チックな顔立ちとポーズの「五大明王像(重文)」、美しい如意輪観音像や十一面観音像など、仏像好きにはたまらないラインナップでした。

醍醐寺というと、やはりお庭や大規模な伽藍が有名ですので、優先順位は低めになってしまいますが、お時間がある方はぜひこの「霊宝館」にも立ち寄ってみてください。意外と楽しめますよ!


醍醐寺@京都市伏見区-25

醍醐寺「霊宝館」(入館料は別途600円)。とにかく巨大な建物で、掛け軸や屏風、歴代の座主などの像、そして仏像と、3つのフロアに分かれています。この日は「聖宝理源大師一千百年御遠忌」記念の特別公開「醍醐寺の名宝」展が行われており、26体もの貴重な仏さまが陳列してありました!

醍醐寺@京都市伏見区-26
霊宝館の壁面の紋様。TV見仏記でここを訪れたみうらじゅん氏が「干菓子みたいだな」と言っていたのを思い出しました(笑)

醍醐寺-ご朱印
醍醐寺でいただいたご朱印です。日付が曲がっているのはご愛嬌!



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■醍醐寺(深雪山)

HP: http://www.daigoji.or.jp/
住所: 京都府京都市伏見区醍醐東大路町22
電話: 075-571-0029
宗派: 真言宗醍醐派 総本山
本尊: 薬師如来(重要文化財)
創建: 874年
開基: 聖宝
拝観料: 下醍醐伽藍・三宝院・霊宝館などそれぞれ600円(2施設なら1,000円、3施設なら1,500円の共通券あり)。上醍醐も600円
拝観時間: 9:00 - 17:00(12月~2月の間は16:00まで)
駐車場: 有料駐車場あり(700円)
アクセス: 京都市市営地下鉄東西線「醍醐駅」下車、徒歩20分

※西国三十三所の第11番札所
※西国三十三所の札所は、本来は約1時間の山道を上った先にある、上醍醐の「准胝堂」ですが、2008年8月に落雷による火災のため焼失。現在はご本尊の「准胝観音坐像」は下醍醐の「金堂」で公開されています(2009年11月末まで)






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