2010-06-28

凛々しい大黒天と迫力の役行者『松尾寺』@大和郡山市

凛々しい大黒天と迫力の役行者『松尾寺』@大和郡山市

大和郡山市にある『松尾寺』へ行ってきました。「日本最古の厄除霊場」として有名なお寺ですが、凛々しい表情の大黒天立像、そして特別公開されていた像高2mの役行者像など、興味深い仏さまもいらっしゃって、思っていた以上に楽しめました!


舎人親王創建の「日本最古の厄除霊場」

大和郡山市の松尾山に建つ『松尾寺(まつおでら)』は、718年、天武天皇の皇子で、「日本書紀」の編纂に関わった舎人親王(とねりしんのう)によって創建されました。編纂が始まった時の年齢がちょうど42歳の厄年だったため、日本書紀の完成と厄除を祈願して、松尾寺を創建したことから「日本最古の厄除霊場」と名乗っています。

松尾寺は山寺だけに、駐車場から「百八の石段」を登ります。真っ直ぐ美しく伸びる石段は、それだけで凛々しい印象でした。途中には、霊水がいただける「松尾寺霊泉」もありますので、ここで口を清めてから参拝しましょう。

松尾寺では、通常拝観できるのは「七福神堂」のみ(拝観料300円)。この日は、平城遷都1300年祭に関連して、通常非公開の「行者堂」の役行者像の特別公開を行っていました。

しかし、「本堂(重文)」にいらっしゃる秘仏の「千手観音立像(厄除け観音)」は、通常通り非公開。毎年11月3日のみの公開となっていますので、またの機会にお会いしたいと思います。


松尾寺@大和郡山市-01

大和郡山市にある『松尾寺』。718年に、天武天皇の皇子・舎人親王によって創建されたと伝わる古刹ですが、その時の年齢が42歳(厄年)であったため、編纂を始めた日本書紀の完成と厄除の願いをこめて建立された、「日本最古の厄除け霊場」と名乗っています

松尾寺@大和郡山市-03
松尾寺の「百八の石段」と名付けられた石段を上から眺めたところ。矢田丘陵の高台に立つ山寺のため、いくらか登り道もあります。真っ直ぐに伸びた美しい石段でした

松尾寺@大和郡山市-04
百八の石段の途中にある「閼伽井屋」。厄除観音さまにお供えする霊水で、不老長寿のご利益があるとか。すぐ近くに、霊水がいただける「松尾寺霊泉」もありましたので、石段の途中で喉を潤しておきましょう

松尾寺@大和郡山市-05
この日は、平城遷都1300年祭「祈りの回廊」の一環として、通常は非公開の「役行者像」が特別公開されていました(2010年6月末まで)

松尾寺@大和郡山市-06
百八の石段を登り切ったところに建つ「本堂(重文)」。1337年に再建されたもので、数少ない中世の大型仏堂の遺構です。和様の中に天竺様も取り入れられた独特の建築様式となっているのだとか

松尾寺@大和郡山市-07
厄除けのお寺らしく、本堂前には絵馬がたくさん吊るされていました。松尾寺の御本尊は千手観音立像(厄除け観音)ですが、毎年11月3日のみ公開の秘仏です。室町時代の作で、42手と光背に千本の小さな手を持つ仏さまなのだそうです

松尾寺@大和郡山市-09
松尾寺の手水舎。龍をあしらったシンプルなタイプです


凛々しいイケメン仏像「大黒天立像」

松尾寺の「七福神堂」は、その名前のとおり七福神を祀るお堂ですが、御本尊はキリリとした表情の「大黒天立像(重文)」です。以前はお堂の名前も「大黒堂」と呼ばれていたのだそうです。

この大黒天さんは、現在のところ福岡・観世音寺のものに次いで古い、日本最古クラスの大黒天像で、笑顔・ふくよか・打ち出の小槌といった特徴は無く、袋は背負っていますが中は空っぽに近いのだそうです。一般的な大黒さんのイメージは主に江戸時代に形作られたもので、それ以前の作例にはそのような特徴は見られないのだとか。

お顔はキリッと引き締まっていて、怒りの表情に見えるほど。某所の「イケメン仏像ランキング」の上位に入っていた、というお話もお聞きしましたが、それも納得の凛々しさでした。

また、七福神は勢ぞろいしている中でも、大黒天さんが御本尊としてセンターにいるのは当然ですが、その両脇にいらっしゃるのは、金剛界・胎蔵界の大日如来像2体という、かなり珍しい配置です。

お寺の方のご説明によると、荼吉尼天(だきにてん)信仰の中で、大日如来さんが大黒天さんに化身して姿を表した…という逸話もあり、大黒天さんと大日さんは無関係ではないとのこと。この関連性は面白いですね。


松尾寺@大和郡山市-10

松尾寺の小堂が並ぶ一角。手前から、「行者堂」「阿弥陀堂」「七福神堂」と続きます。七福神堂は通常拝観可能(300円)で、行者堂は特別御開帳でした

松尾寺@大和郡山市-11
松尾寺「七福神堂」。像高99cmの、キリッとした表情の大黒天立像が御本尊です。大黒天さんの脇侍に、金剛界・胎蔵界の両大日如来像がいらっしゃる、とても珍しい配置でした。七福神の勢ぞろいしていますが、それぞれ制作年代がバラバラのため、統一感はありません

松尾寺@大和郡山市-12
七福神堂の案内看板の前では、お寺の方が薄くなった文字を墨で書きなおしてました。こんな風にメンテナンスしてるんですね!


大きく若々しい!珍しい「役行者像」も

今回、特別公開されていた「行者堂」ですが、お堂に足を踏み入れた瞬間に、あまりの大きさに驚きました!お堂自体はとても小さなものですが、その中央に像高2mという、巨大な「役行者像」がいらっしゃるのです!

役行者像というと、やはり仙人っぽい老人の姿にされることが多いのですが、松尾寺のものは、足に血管が浮き出ているほど、力強く若々しいイメージです。様々な法力を使ったとされる方ですが、自分の足でもしっかり歩きそうなほど、とても健康的な印象でした(笑)

その前には、リアルな前鬼・後鬼が、磐座には「葛城七大童子」と呼ばれる方々が配されているという、役行者像とは思えないような賑やかさです。さらに、向かって左奥には、何と役行者のお母さんの像までいらっしゃるんです!色んな意味で圧倒されました!

松尾寺の行者堂は、毎年9月1日から1週間行われる「行者祭」の期間のみ御開帳されるそうです。仏像好きな方はぜひお会いしてみてください!


松尾寺@大和郡山市-13

「阿弥陀堂(非公開)」の隣に建つ「行者堂」。特別公開されていた御本尊「役行者像」は、室町時代の作で、何と像高2m!これまで数多くの役行者像を見てきましたが、最も迫力があり、まさに異色の像でした

松尾寺@大和郡山市-14
松尾寺の「厄除の鐘」。一人ひとつきですので、厄除けの願いを込めながら突きましょう

松尾寺@大和郡山市-15
厄除の鐘の裏手、本坊前には、こんなバラ園があります。バラ園の公開は「5月15日~6月5日」まで。同じころに境内でサツキの群生も見られるそうです


三重塔周辺の小路もいい雰囲気でした

松尾寺の本堂裏手には、護摩壇・三重塔などがあります。

三重塔の脇の小路には、西国三十三観音の石仏などがあり、とても雰囲気がいいところでした。その先にある「松尾山神社」へは、ほんの数分でつきますので、こちらのお参りもお忘れなく!


松尾寺@大和郡山市-16

本堂の裏手(西側)には、護摩壇が設けられています。その背後には、巨大な岩と三重塔が

松尾寺@大和郡山市-17
岩場に護摩壇を見下ろすように立つ石仏たち。役行者さんに前鬼・後鬼、そして不動明王像だと思われます

松尾寺@大和郡山市-18
本堂から一段高いところに建てられた「三重塔」。創建は835年と伝えられ、現在の塔は明治時代に再建されたもの。後水尾天皇の持仏だった如意輪観音像が祀られているそうです

松尾寺@大和郡山市-19
松尾寺「三重塔」。組物などはシンプルですが、重厚で美しい塔でした

松尾寺@大和郡山市-20
三重塔の裏手の道を数分登ると「松尾山神社」があります。道の脇には、西国三十三観音霊場の石仏が置かれていて、とてもいい雰囲気でした

松尾寺@大和郡山市-22
中腹に建つ「十三重石塔」。鎌倉時代のもので、舎人親王の毛骨を納めたものと伝えられています。3mを超える美しい石塔で、よく何百年も残ったものだと感心してしまいますね

松尾寺@大和郡山市-23
お地蔵さま風に飾られた石仏もいらっしゃいました

松尾寺@大和郡山市-24
「松尾山神社」前の様子。松尾寺の上方に鎮座していて、厄除け祈願の方も必ずお参りされるそうです

松尾寺@大和郡山市-26
松尾山神社の拝殿。松尾大明神・清滝権現・牛頭天王の三社が祀られています

松尾寺-ご朱印
松尾寺でいただいた御朱印です。力強いですね!



より大きな地図で 松尾寺@大和郡山市 を表示


■松尾寺

HP: http://matsuodera.com/
住所: 奈良県大和郡山市山田町683
電話: 0743-53-5023
宗派: 真言宗醍醐派
本尊: 千手観音像
創建: 718年
開基: 舎人親王
拝観料: 境内無料(七福神堂 300円)
拝観時間: 9:00 - 16:00
駐車場: 無料
アクセス: JR大和路線「大和小泉駅」下車。近鉄郡山駅行きバス「松尾寺口」から徒歩30分

※バラ園の公開は「5月15日~6月5日」まで






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