2015-01-18

蘇我入鹿の墓?小山田遺跡に近接する『菖蒲池古墳』@橿原市

蘇我入鹿の墓?小山田遺跡に近接する『菖蒲池古墳』@橿原市

50mを超える巨大方墳らしきものが発見された、明日香村川原の「小山田(こやまだ)遺跡」。それに並ぶように築かれているのが、一辺約30mの方墳『菖蒲池(しょうぶいけ)古墳』です。この2つの古墳を、蘇我蝦夷が自分自身と息子・入鹿のために生前に築いたとされる「双墓」ではないかという説も出てきて、注目を集めています。


菖蒲池古墳は蘇我入鹿の「小陵」か?

2015年1月、「県立明日香養護学校」の校舎建て替え工事に伴う調査によって、明日香村川原の「小山田(こやまだ)遺跡」から、約50mにわたる掘り割りが見つかりました。私たちも現地説明会へ参加しましたが、その巨大さに驚きました!


菖蒲池古墳@橿原市-11


この古墳(らしきもの)の正体は何かと話題になっていますが、現在のところ、「舒明天皇が最初に葬られた初葬墓(改葬前の墓)『滑谷岡(なめはざまのおか)』である」という意見が主のようです。

それに対し、「蘇我蝦夷が生前に築いた、蝦夷入鹿親子の「双墓」のうち、蝦夷の『大陵(おおみささぎ)』である」とする意見も出されているとか。

この「双墓」は、日本書紀に記述があり、「蘇我蝦夷が全国から大勢の人夫を徴発し、自分のための『大陵(おおみささぎ)』と、息子・入鹿のための『小陵』の「双墓」を今来(いまき)に造営した」とされています。

この「大陵」を、今回発見された一辺約50mの小山田遺跡とし、「小陵」を隣接する一辺約30mの方墳「菖蒲池(しょうぶいけ)古墳」(Wikipedia)とするものです。

蘇我氏が邸宅を構えていた甘樫丘のふもとに、大小ふたつの古墳が並んで築かれていて、しかもどちらも7世紀中ごろのものである。これが「双墓」に相応しいとする説です。

双墓は、御所市古瀬の「水泥(みどろ)古墳」(水泥北古墳と水泥南古墳)という説がありますが、これから変わっていくこともあるかもしれません。


菖蒲池古墳@橿原市-10

赤い部分が、今回発掘された部分です。「掘り割り」とあるラインが北端のため、下側へ約50mの墳丘があったとされます。隣の菖蒲池古墳が約30mで、ともに7世紀中ごろに築かれた巨大な方墳です。方角の軸を東西南北から少しずらしている(時計でいうと11時くらいの角度)ことも共通しており、「双墓」と考えたくなるような配置ですね


墳丘は消滅。不思議な形の家形石棺2基

菖蒲池古墳@橿原市-01
国指定史跡「菖蒲池古墳」は、明日香村・小山田遺跡に隣接していますが、所在地は橿原市菖蒲町となります。県立明日香養護学校と道路を挟んですぐです

菖蒲池古墳@橿原市-02
西日を受けた先に、案内板などが設置されています。「飛鳥・奈良の宮都とその関連資産群」の構成要素の一つとして、世界遺産暫定リストに記載されています

菖蒲池古墳@橿原市-04
菖蒲池古墳の前。石碑と説明書きがあります。石室が露出していましたが、現在は小さな小屋で覆われています。普段は静かな場所だと思いますが、この日は小山田遺跡の現地説明会だったため、たくさんの方が見学していました

菖蒲池古墳@橿原市-03
西側から見たところ。墳丘の土が流出したり、後世に大きく改変されたりしているため、ほとんど古墳には見えません。一辺約30m、二段築盛の方墳だったなんて、なかなか気づかないでしょう

菖蒲池古墳@橿原市-05
現地の説明書き。墳丘の形など、かなり曖昧な記述になっていますが、2010年の調査で「二段築盛の方墳」と判明してます(詳しくはこちら→ 菖蒲池古墳 現地説明会資料(PDF)

菖蒲池古墳@橿原市-06
横穴式石室を覆う小屋。この中に2つの石棺が並べて収められています

菖蒲池古墳@橿原市-07
小屋の中をのぞき込むと、奥に向かって2基の家形石棺が並んでいるのが見えます。天井部分が棟飾り風に仕上げられている、とても珍しい形なんだとか。この石室は、飛鳥駅近くの「岩屋山古墳」(紹介記事)に似ているという指摘もあるとか


「聖なるライン」上にある謎の多い古墳

最後に付け加えておくと、菖蒲池古墳はいわゆる「(藤原京の)聖なるライン」の線上にあるのだとか。

「聖なるライン」とは、藤原京の南北の中軸線上に、天武持統陵、中尾山古墳(文武天皇陵)、高松塚古墳、キトラ古墳など、天武朝の皇族に関係する7~8世紀の古墳が点在しているため、何らかの意図があったとする説です。7世紀中ごろに築かれた菖蒲池古墳もこのラインに乗っています。

また、2010年の調査では、墳丘が改変され始めたのは、築造から1世紀も経たない藤原宮の頃だったことが判明しています。通常であれば、記憶が定かなうちに貴人の墓を崩したりしないため、ここにも何らかの秘密があるのかもしれませんね。


菖蒲池古墳@橿原市-08

菖蒲池古墳から。小さな丘のようになっているので、眺めがいいですね。冬の夕暮れで、美しい雲が出ていました

菖蒲池古墳@橿原市-09
遠くに二上山も見えます



■菖蒲池古墳

HP: http://www.city.kashihara.nara.jp/kankou/own_bunkazai/bunkazai/hakkutsu/hakkutsu_2.html
所在: 奈良県橿原市菖蒲町
駐車場: なし
アクセス: 近鉄吉野線「岡寺駅」から徒歩20分ほど


■参考にさせていただきました

橿原市/菖蒲池古墳の発掘調査
菖蒲池古墳 現地説明会資料(PDF)
菖蒲池古墳 - Wikipedia
菖蒲池古墳の被葬者


■関連する記事






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ