2009-10-28

新本堂と新ご本尊が待つ『観音正寺』@滋賀県安土町

新本堂と新ご本尊が待つ『観音正寺』@滋賀県安土町

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、滋賀県蒲生郡安土町にある第三十二番札所『観音正寺』へ行ってきました。2004年に落慶法要が行われたばかりの真新しい本堂と御本尊は、歴史あるものとはまた違った不思議な魅力がありました。


聖徳太子ゆかりの古刹です

西国三十三所の第三十二番札所『繖山 観音正寺』(きぬがさやま かんのんしょうじ)は、標高432.9mの繖山の山中に建つお寺です。繖(きぬがさ)とは、貴族に差しかける丸い衣蓋のことで、ふんわりと整った山容からその名前が付けられました。麓からの参道は、西国三十三所の中でも一番の難所とされていますが、現在は山頂付近まで車で行くことができるようになっています。

観音正寺は、三十一番札所の「長命寺」と同様に、聖徳太子が開基となるお寺です。

寺伝によると、605年にこの地を訪れた聖徳太子のもとに人魚が現れ、「もとは漁師だったが、魚を殺生しすぎてこんな姿になってしまいました。太子さまがお堂を建てて、観音さまをお祀りしてくれれば、この苦しみから解放されます」と訴えたのだそうです。その願いを聞き入れた聖徳太子は、千手観音菩薩像を刻み、同地に観音正寺を興しました。

この伝説を裏付けるように、実際に観音正寺には「人魚のミイラ」が保存されていたのだそうです。

鎌倉時代から室町時代にかけては、近江の国の守護職にあった佐々木六角氏の庇護を受け、寺は順調に発展。しかし、応仁の乱のころに、佐々木六角氏が繖山に山城(観音寺城)を造ったため、戦略上の理由から堂宇が移転されられたり、兵火に巻き込まれてしまったために寺は衰退。山城も1568年に織田信長に攻められて落城してしまいました。現在の地には江戸時代に移転してきました。

1882年、彦根城の「欅御殿」という建物を移築して本堂としていましたが、1993年の原因不明の出火により本堂は全焼。本尊の室町時代作の「千手観音立像(重文)」も、人魚のミイラも、この時に焼失してしまいました。

しかし、2004年には本堂の落慶法要が行われ、インドから特別に輸入許可を得た23トンの白檀を使って新たに造像した、丈六の新本尊「千手千眼観音菩薩坐像」の開眼法要が営まれました。


難所の石段も、車なら途中からです

「西国三十三所随一の難所」とされる観音正寺の石段ですが、途中の駐車場までは車で行けますので、そこからは10分程度の上りとなります(道幅が狭いので運転注意)。決して楽な上りではありませんが、麓から400mを超す繖山を登ることを思えば、贅沢は言っていられませんからね。

手すりに吊るしてある、格言が書いたお札の文言を読みながら、ゆっくりゆっくりと進みましょう。


観音正寺@滋賀県安土町-01

滋賀県蒲生郡安土町にある『観音正寺』の駐車場。標高432.9mの繖山(きぬがさやま)に建つお寺のため、麓からの石段は果てしなく長いのですが、車で途中まで行くことができます。駐車場は2ヶ所あり、もう片方は石段上りをしなくてもいいのかもしれません(未確認です)

観音正寺@滋賀県安土町-02
石段の途中には、「人はあるものを粗末にし、ないものを欲しがる」といったような格言を書いた札が吊るされています。山頂に一番の札がありましたので、カウントダウンしながら上って行くと、つらい上り道も少しは気が紛れるでしょう

観音正寺@滋賀県安土町-03
車で途中までたどり着いたとしても、なかなかハードな石段でした。10分くらいは石段を上りますので、歩きやすい靴と服装で挑みましょう(タクシーで来た場合には、ここまでハードではないようです)


まずは露天に立つ仁王像がお出迎えです

石段のぼりを終えて観音正寺の境内にたどり着くと、まず山門ではなく、道の両脇に雨露にさらされながら立つ仁王像が見えてきます。露天の仁王像が立つ姿というのも珍しいものですが、背後に立てられた「南無千手千眼観世音菩薩」ののぼりとともに、勇壮な光景を形成していました。

境内はかなり標高が高くなっていますので、ぜひ眼下の風景も見下ろしてみてください。琵琶湖は見えませんが、すぐ近くを走る東海道新幹線が見えたりします。


観音正寺@滋賀県安土町-04

ようやく観音正寺に到着!山門などは無く、仁王像がすぐに飛び出せる体制で守護しています。ちなみに、仁王像はブロンズのような素材で作られていました

観音正寺@滋賀県安土町-17
ご本尊の千手観音のご開帳日だけに、大きなのぼりが何本も立てられていました。青空を背景に白いのぼりがはためく姿は、どことなく勇壮な雰囲気すら感じられます

観音正寺@滋賀県安土町-07
標高432.9mの繖山からの眺め。戦国時代には佐々木六角氏によって「観音寺城」が建てられたほどの場所のため、辺りを見渡せるようになっています


「白檀」を23トン使用した新御本尊!

観音正寺の旧本堂は、1993年の火災の際に、室町時代作の旧本尊「千手観音立像(重文)」や、人魚のミイラなどとともに焼失してしまいました。現在の本堂は、2004年に再建されたばかりで、本当に木の香りが漂ってくるような真新しさです。

同じく、2004年に開眼法要が営まれた新しいご本尊「千手千眼観音菩薩坐像」は、丈六(約5m)の白檀の坐像という珍しいもの。白檀という木材は、材質が硬く高価なため、これほどの巨像に使用されることも珍しいのだとか。ご住職がインド政府と交渉を続け、特別な許可を得て輸入した、23トンもの大量の白檀が使用されています。

この日は特別御開帳期間だったため、お寺の方の説明をお聞きしながら、内陣まで入ることができただけではなく、いただいた和紙でご本尊の膝の部分を「お身拭い」までさせていただけました!いくらまだ新しい仏像とはいえ、ご本尊に触れる機会なんてなかなかありませんからね。いい経験をさせていただきました。

間近で見た千手千眼観音は、さすがに新しいだけに今風な雰囲気です。右手に月(うさぎ入り)、左手に太陽(ヤタガラス入り)などをかざしていて、光背には無数の手が円形に広がっています。近くに寄ると白檀の香りがかすかに漂ってきて、ちょっと不思議な雰囲気でした。

その他には、旧本尊の胎内仏や、聖徳太子が入った珍しい「三十三所観音曼荼羅」など、火災を免れた貴重な文化財の数々も拝見させていただけました。


観音正寺@滋賀県安土町-08

観音正寺の本堂。1993年に原因不明の出火により旧本堂は全焼してしまったため、2004年に再建された、まだ真新しいお堂です。背後に見える岩の景観も迫力でした!

観音正寺@滋賀県安土町-09
本堂内部の様子。奥手に見える節の多い柱は「抱きつき柱」。台風で倒れたヒノキの木を調べてみたら、節がちょうど33ヶ所あるということで、本堂再建の際に使用されたのだそうです。これに抱きついて祈れば、33ヶ所分の功徳があるのだとか

観音正寺@滋賀県安土町-10
観音正寺の本堂脇にある、見事な石積み。大きな岩の上に観音像が置かれていたりしますが、とにかく長く続く石の連なりは壮観ですね。どうやって積み上げたのかと考えると、気が遠くなります!

観音正寺@滋賀県安土町-27
観音正寺でいただいたパンフレットなど。2004年に開眼法要が営まれたご本尊「千手観音坐像」は、白檀を使った丈六の坐像という珍しいもの。いただいた白い和紙で、ご本尊の膝の部分を、いわゆる「お身拭い」をさせていただきました!


参拝にはそれほど時間はかかりません

観音正寺の境内はそれほど広くなく、仁王像から本堂までの100mほどの間に、小さなお堂などが並んでいるだけです。お参りにもそれほど時間はかからないでしょう。

本堂が落慶したばかりの観音正寺ですが、境内には「無畏堂(六角堂)の建立を発願しました」というような案内看板も見られましたし、また数年後には全く違った姿が見られるのかもしれません。


観音正寺@滋賀県安土町-11

仁王像の手前に立つ「鐘楼」。かなり簡素なタイプでした。手前にある看板は、滋賀県東近江市にある馬の寺「石馬寺(いしばじ)」のもの。観音正寺とはどんな関係なんでしょうか?

観音正寺@滋賀県安土町-25
鐘楼脇にあるトイレには、不浄を浄化する「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」のお札が貼ってありました。しかも、それだけではなく・・・

観音正寺@滋賀県安土町-26
トイレの建物の側面には、こんな烏枢沙摩明王の仏像までいらっしゃるという徹底ぶり!トイレに置かれる仏像としては、かなり手の込んだものだと思います!

観音正寺@滋賀県安土町-12
仁王像のすぐ後ろ側には、小さな池がありました。紅葉も少しだけ色づいていて、美しい眺めでした

観音正寺@滋賀県安土町-13
赤く染まった紅葉。今年最初のハッキリとした紅葉でした

観音正寺@滋賀県安土町-14
この寺務所のような建物では、筆を使わない画家「高辻賢一」という方の個展が開催されていました。時間の関係で拝見できませんでしたが、お寺でも色々な文化事業に取り組まれているんですね

観音正寺@滋賀県安土町-15
古い樽を改造した「北向地蔵」さんの小さなお堂です。内部に記された真言を七回唱えることで、一つだけ願い事を叶えてくださるのだとか。小さな小さなお地蔵さまが祀られていました

観音正寺@滋賀県安土町-16
観音正寺の「茶園」。開基の聖徳太子・ご本尊の千手観音への献茶用として、この一角にだけお茶が植えられているのだそうです

観音正寺@滋賀県安土町-18
観音正寺の手水舎。ここの「観音水」は飲むこともできます。山の上に建つため、本堂の火災の際にも消火活動すら出来なかったのですが、住職が祈り続けたところ、2001年に祈願成就。この「観音水」が湧き出したのだとか!まるで昔話のようなエピソードですね。観音水はスッキリとして美味しいお水でした!

観音正寺@滋賀県安土町-19
観音正寺の境内にいらっしゃる「釈迦如来坐像(濡仏)」。江戸時代に安置されたものは、太平洋戦争の際に供出されてしまったのだとか。1983年に再建されたものです

観音正寺@滋賀県安土町-23
お釈迦さまの前には、小さな焼き物の可愛いお地蔵さんが。最初はキノコかと思いました(笑)

観音正寺@滋賀県安土町-20
奥手にあるのが「護摩堂」ですが、この日は特別御開帳期間ということもあってか、特別に「納経所」として使用されていました(近くからは撮影禁止)。しっかりと仏様が祀られている様子が見えました

観音正寺@滋賀県安土町-22
護摩堂の隣に建つ「太子堂」。観音正寺の開基である、小さな聖徳太子像が祀られていました

観音正寺@滋賀県安土町-24
観音正寺の境内からは、「観音寺城跡」へ続く小道がありました。その先には三角点もあるようですので、お時間と体力がある方は、こちらも歩いてみるといいかもしれません

観音正寺-ご朱印
観音正寺でいただいたご朱印です



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■繖山 観音正寺

HP: http://www.kannon.or.jp
住所: 滋賀県蒲生郡安土町石寺2番地
電話: 0748-46-2549
宗派: 天台宗(単立:繖宗)
本尊: 千手千眼観音
創建: 605年(伝)
開基: 聖徳太子
拝観料: 無料
拝観時間: 8:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり(表・裏林道を合わせて25台程度)
アクセス: JR「能登川駅」下車、近江バス八日市行にて「観音寺口」下車、徒歩50分

※西国三十三所の第32番札所






 【新本堂と新ご本尊が待つ『観音正寺』@滋賀県安土町】へのコメント
たぬき  09-11-06 0:24

滋賀は気温が低いから、紅葉も早いのでしょうね。奈良も吉野の方では、だいぶ紅葉がすすんでそうですね。いくつか今年も巡りたいです。

naka  09-11-06 22:29

>たぬきさん

まだ一部だけでしたけど、ちゃんと紅葉してましたねー。吉野方面だと、もう今週末くらいから色づいてくる頃でしょうか?私たちは今月は西国三十三所巡りで京都方面へ行く予定ですので、今年の紅葉は半分諦め気味です(笑)





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