2015-11-15

平安時代の阿弥陀仏がおわす『西方寺』@奈良市油阪町

平安時代の阿弥陀仏がおわす『西方寺』@奈良市油阪町

奈良市油阪町の『西方寺』は、行基菩薩が多聞山に創建し、室町時代に現在地へ移転してきた古刹。ご本尊の、国重文「阿弥陀如来坐像」はゆったりと穏やかな雰囲気で、とても美しいお像でした。体内から遺骨や歯が見つかった「祐全上人坐像」なども拝見できました。(※拝観には事前予約が必要です)


369号線沿い「みてござる観音」のお寺

奈良市油阪町の浄土宗寺院『西方寺(さいほうじ)』(山号「草鞋山(そうあいざん)」)は、行基菩薩によって、神亀年間(724年~729年)に創建されたと伝わる古刹です。

創建の地は、多聞山(現在の若草中学校付近)。室町時代に松永久秀が多聞山城を築くにあたり、1559年に現在の油阪町へ移転しました。その際に、正親町天皇から「南都総墓所」の綸旨も賜っているという、由緒あるお寺です。

ご本尊は、国の重要文化財に指定されている「阿弥陀如来坐像」。修行中の宮本武蔵が西方寺に逗留した際、朝夕この阿弥陀さまに祈ったという由来から「心経念仏の弥陀」とも呼ばれているとか。

観光寺院ではありませんので、本堂内の拝観希望の方は、必ず事前に電話予約をしておきましょう。拝観料金などの指定もなく、「志納(しのう。こころざしを納めること)」となっています。複数人で拝観するときには、代表者が封筒に入れてまとめてお渡しするとスマートですよ!


西方寺@奈良市油阪町-01

奈良市油阪町の『西方寺』。交通量の多い369号線に面していて、JR・近鉄奈良駅から5分ほどの距離です。観光の方は少ないエリアですが、すぐ西側の建物(まんだら坊)の屋上に「みてござる観音」という大きな観音さまが立っておられるので、見覚えのある方もいらっしゃるかも

西方寺@奈良市油阪町-02
西方寺の本堂です。多聞山から1559年にこの地へ移されましたが、当時の本堂は1740年に焼失。1757年に再建されたものです。向かって右手の庫裏から上がらせていただきます

西方寺@奈良市油阪町-03
西方寺の本堂内。信者さん用の椅子がずらりと並び、仏具などもぴかぴかに磨かれています。ほぼ1300年近く、ずっと篤く信仰されているお寺さんです


慈覚大師の作と伝わる「阿弥陀如来坐像」

西方寺@奈良市油阪町-04
本堂正面の須弥壇におわすのが阿弥陀三尊像。ご本尊の「阿弥陀如来坐像」(国重文)は、平安時代の高僧・慈覚大師(第3代天台座主の円仁)が、一刀三礼(いっとうさんらい。一削りするごとに三返礼をするほど心を込めること)して彫ったとされています。まさに荘厳という雰囲気です

西方寺@奈良市油阪町-06
阿弥陀如来坐像は、平安時代の初期らしいゆったりと穏やかなお姿です。両手先をゆったりと組んだ「上品上生」の印相で、古式ゆかしいおおらかさが感じられます。優しく包み込まれそう。座している蓮弁の上部だけ鮮やかに塗りなおしてあるのが面白いですね

西方寺@奈良市油阪町-05
角度を変えて。脇侍の観音菩薩像・勢至菩薩像の製作年代は不明ですが、どちらもとても美しいお姿でした(※すべて写真撮影のご許可をいただいています)


遺骨や歯が入れられた「祐全上人坐像」

西方寺@奈良市油阪町-07
2階の納骨堂にいらっしゃる仏さまも拝見させていただきました。御厨子の中におわすのは「祐全上人坐像」(市指定文化財)。西方寺の中興の祖とされる方の姿を写した像で、1556年、宿院仏師の源次の作と判明しているそうです。像高は79cmとほぼ等身大で、像内から祐全上人のものとみられる骨や歯が見つかった、珍しい「墓がわりの像」なのだとか

西方寺@奈良市油阪町-08

西方寺@奈良市油阪町-09
納骨堂の中央には「地蔵菩薩立像」がおわします。太い梁や華やかな仏具、背後の曼荼羅図など、雰囲気あります

西方寺@奈良市油阪町-10
製作年代などは分かりませんが、このお地蔵さまはお顔も立ち姿も本当に美しい方でした!左手には宝珠を持ち、右の手のひらには小さな跡がありましたから、おそらく当初は錫杖(しゃくじょう)を持っていたのでしょう

西方寺@奈良市油阪町-11

西方寺@奈良市油阪町-12
ふと頭上を見上げると、両脇に「南無阿彌陀佛」と書かれた回転式サインのようなものが設置してありました!気になってあとから伺ってみたところ、先代のご住職が珍しいものがお好きな方だったのだとか。「今でも動くと思います」とおっしゃってました(笑)


美しいお庭、樹齢400年の銀杏の大木

西方寺@奈良市油阪町-13
庫裏の様子。新しく直してあるところと、古くからそのまま使用されている部分が上手く調和していて、とても美しい建物でした

西方寺@奈良市油阪町-14
お参りの後、こんなお庭が見えるお座敷でお茶などをいただきました。立派な蓮池があり、季節になるととても見事なのだとか。何気なく配置された踏み石や石灯籠なども、歴史あるお寺さんらしい風情がありました

西方寺@奈良市油阪町-15
表門を入ってすぐ右手にある大きなイチョウの木。祐全上人のお手植えで、樹齢400年をこす立派な大樹です。なった実は「厄除ギンナン」として檀家さんに配られているそうです



■西方寺

HP: 参考サイト(iタウンページ)
住所: 奈良県奈良市油阪町434
電話: 0742-23-3755
宗派: 浄土宗
本尊: 阿弥陀如来座像(重要文化財)
創建: 8世紀初(神亀年間)
開基: 行基菩薩
拝観料: 志納
駐車場: あり
アクセス: JR奈良駅、近鉄奈良駅ともに徒歩5分

※拝観をご希望の方は、事前に電話予約が必要です
※実際にお参りしたのは「2015年10月10日」でした
※この日の拝観予約などは、すべて友人である地方仏マスター「元三大師ファン(@Gan3daishi)さん」が手配してくれました。感謝!


■参考にさせていただきました

奈良の寺社: 西方寺(油阪)






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ