2009-09-07

極楽浄土が甦る仏像空間『浄土寺』@兵庫県小野市

『浄土寺』@兵庫県小野市

西国三十三所巡りのため、兵庫県加東市の「播州清水寺」へ立ち寄った帰り、すぐ近くにあり、本堂が国宝に指定されている「朝光寺へ立ち寄ることも考えたのですが、兵庫のお寺で最も行ってみたいと思っていた、小野市の『浄土寺』へ向かいました。

途中で道を間違えたりしたため、到着したのは拝観時間が終了する30分ほど前になってしまいましたが、国宝の「浄土堂」と「阿弥陀如来三尊像」はとにかくスゴイの一言です!


東大寺復興に努めた重源上人のお寺です

兵庫県小野市に位置する『浄土寺』は、鎌倉時代に東大寺の大仏・大仏殿を復興させたことで知られている重源上人によって開かれたお寺です。

1180年、平重衡の南都焼き討ちのため、東大寺・興福寺などは壊滅的な被害を受けましたが、その復興のための拠点として、全国7ヶ所の「東大寺別所」を作った、その内の一つがこの浄土寺なのだそうです。

しかし、今ではそれほど大きなお寺ではお寺ではなく、境内は一目で見渡せてしまうくらいの規模になっています。


浄土寺@兵庫-01

兵庫県小野市にある『浄土寺』。境内は一目で見わたせるほどのサイズです。向かって右手にあるのが国宝「浄土堂」で、左手奥にあるのが本堂である「薬師堂」です


貴重な大仏様のお堂「浄土堂(国宝)」

浄土寺の本堂は「薬師堂」ですが、最も有名なのは国宝「浄土堂」でしょう。

奈良・東大寺の南大門と同じ「大仏様(または天竺様)」の建築で、もうこの2ヶ所しか遺されていない貴重なものなのだそうです。

外見だけを見ると、通常のお堂よりも柱間が広い(約6m)くらいで、それほど特別なものとは思えませんが、その内部は広々として、まさに「仏像を安置するための空間」となっています。

堂内では、天井板を張らず「化粧屋根裏」をそのまま見せているため、特に広々と感じます。その屋根に近いところにまで、巨像「阿弥陀如来像」が立っている姿は驚きですね。内部の貫・梁などの構造物がそのまま見えていて、頭上のすぐ近いところにキャットウォークのような梁が何本も渡っている様子は、本当にダイナミックです!

阿弥陀三尊像の背後の「蔀戸(しとみど)」を上げると、そこから西日が差し込んで堂内が朱色に輝き、西方からやってきた阿弥陀如来様の来迎のシーンを再現している・・・というのですから、ものすごい舞台演出ですね。


浄土寺@兵庫-02

国宝「浄土堂」の外観。パッと見、全く凄さが伝わってきませんが、この天井ギリギリまで快慶作の「阿弥陀三尊像」が立っていて、まさにジャストサイズのお堂なのです

浄土寺@兵庫-03
この扉をくぐると、巨大な国宝「阿弥陀三尊像」が中央に立っています。西日を背に立つ巨像は圧倒的な迫力で、仏像好きなら感動することは間違いありません!

浄土寺@兵庫-04
奈良・東大寺の南大門と、この浄土堂のみ現存する「大仏様(または天竺様)」という建築様式で作られています。お堂の内部は天井板を張らず、化粧屋根裏や内部の貫・梁などの構造物がそのまま見えるダイナミックなもの。南大門よりも間近に見えて、とにかくクールです!


快慶作「阿弥陀三尊像(国宝)」がスゴイ!

国宝に指定されている浄土寺「阿弥陀三尊像」は、快慶作の巨大な仏像です。

ご本尊の阿弥陀如来像は像高530cm(須弥壇を含めると750cm)。脇侍の観音菩薩・勢至菩薩は370cm。丈六の坐像は数多く遺されていますが、立像は珍しいですね。鎌倉時代初期に快慶の手によって造られて以来、特に大きな修復なども加えられていないというのですから、驚きです。

※「丈六(じょうろく)」とは、「一丈六尺(485cm)」のこと。お釈迦様の身長がこれだけあったとされています。仏像では、坐像の場合はその半分の八尺で作られるものも多く、これも丈六と呼ばれます。

日本は地震が多い国ですので、このような巨大な立像が長い間遺されるのも難しいように思えますが、この阿弥陀三尊像は、足元の須弥壇にしっかりと埋め込まれていて、ほぼお堂と一体化しているような造りとなっているため、安定感があるのだそうです。


浄土寺@兵庫-06

浄土寺のパンフレットに掲載されている「阿弥陀三尊像」の写真。ご本尊は530cmの巨像で、仏師・快慶の作。むき出しになったお堂内の構造物と、西日を背にたたずむ仏様。仏像を拝むための最高の舞台装置が用意されていました!


西日が重要ですが、時間は意外と早め

浄土時の関係者の方のお話によると、9月ごろの拝観であれば、16時ごろがベストタイミングなのだそうです(季節によって前後するので、時間に余裕を持って向かった方が安全かもしれません)。

「西日を背にして・・・」と聞くと、なるべく遅い時間帯の方が良さそうに思ってしまいますが、日差しが一度床板に反射してから仏様を照らすと、直接西日に向かい合うほど眩しさも感じないのだとか。しかし、少し遅い時間であっても、目の下をパンフレットなどで西日を遮ってから見ると、ベストコンディションに近い状態で拝めるのだそうです。

やはりこの西日を受けた状態で見るためには日差しが強い夏場の晴れた日の方が良さそうですね。この日は、あと1時間ほど早く到着していたらベストだったのですが、惜しいことをしました・・・。

私たちはわずか30分ほどしか堂内にいる時間はありませんでしたが、巨大な阿弥陀三尊像の周囲をグルリと周って見てみたり、正面に置いてある椅子に座ってじっくりと眺めたりと、日差しの角度によって見え方も変わっていく様子を楽しめました。

浄土寺自体はそれほど大きなお寺ではありませんが、ぜひお天気になることを祈りながら、ゆったりと仏様を見上げてみてください。古の人たちが思い描いた「極楽浄土」の姿を感じられるかもしれません!


浄土寺@兵庫-05

浄土堂を裏側(西側)から見たところ(拝観時間が終わって閉まってます)。この西日がお堂に入り、床に一度反射した光から浮き上がるように見える仏様を拝むのがベストなのだそうです。この日のベストな時間帯は16時ごろということでしたので、ちょっとだけ遅かったのが残念・・・


浄土堂は見ておく価値があります!

浄土寺では、この浄土堂以外にも、本堂の「薬師堂(重文)」や「開山堂」などのお堂、そして浄土寺を開山した「重源上人像(重文)」などの文化財があります。

この日はとにかく時間が無かったため、あまり詳しくは見て周れませんでしたが、いずれにしてもグルリと一周してもそれほど時間は掛からないほどの広さですので、簡単にでも見ておいてください。

とにかく、やはり「浄土堂」と「阿弥陀三尊像」は見ておくだけの価値のあるお堂だと思いますので、ぜひこのためだけにでも浄土寺へ行ってみてください。本当に感動できますよ!


浄土寺@兵庫-10

浄土寺の本堂「薬師堂(重文)」。もとは浄土堂と同様に天竺様の建物でしたが、室町時代に焼失。1517年に再建された際に、その特徴は薄まってしまったのだそうです

浄土寺@兵庫-11
薬師堂に隣接している「開山堂」。こちらも1520年に再建されたものです

浄土寺@兵庫-07
境内に入ってすぐのところに建つ「鐘楼堂」。現在のものは1632年に建てられたそうです

浄土寺@兵庫-08
境内の北側に立つのが「八幡神社」。鎌倉時代の後期1235年に建てられました。拝殿は他のお堂と同じくらいのサイズがあります

浄土寺@兵庫-09
「八幡神社」の本殿。本殿と拝殿は、ともに国の重要文化財に指定されています

浄土寺@兵庫-12
浄土寺の裏山はハイキングコースになっていて、四国八十八ヶ所とアジサイ巡りができるのだとか。1周1.5km、30分ほどとのことですので、お時間のある方はどうぞ

浄土寺@兵庫-13
浄土堂の目の前には「水向石(みずむけいし)」という、石棺のフタを利用した水盤がありました。蓮が植わった池もありますが、どれもやや小ぶりな印象です

浄土寺-ご朱印
浄土寺でいただいたご朱印です。滑らかな達筆です!



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■浄土寺(極楽山)

HP: 参考サイト(Wikipedia)
住所: 兵庫県小野市浄谷町2094
電話: 0794-62-2651
宗派: 高野山真言宗
本尊: 薬師如来、阿弥陀如来(国宝)
創建: 12世紀末
開基: 重源上人
拝観料: 境内無料(浄土堂-500円)
拝観時間: 9:00-12:00、13:00-17:00(10月-3月は16:00まで)
駐車場: 無料
アクセス: 神戸電鉄粟生線「小野駅」下車、神姫バス天神行きで「浄土寺」下車すぐ






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