特別公開『正倉院正倉』工事現場を見学してきました
現在改修工事を行なっている『正倉院』。その現場を一般公開する「正倉院正倉整備工事現場公開」に当選したため、有名な校倉造りを間近で見てきました。競争率の高い難関のようですが、当選して良かったです。感動的でした!
第2回目見学会は正倉の瓦を下ろした状態で
聖武天皇・光明皇后ゆかりの品など、天平時代の美術工芸品を収蔵していた、高床の「校倉造(あぜくらづくり)」倉庫『正倉院』(Wikipedia)。正倉院の建物は正式には「正倉院正倉」といい、国宝に登録されています。毎年秋に正倉院に収められていた宝物が奈良国立博物館で公開される「正倉院展」は、奈良の秋の風物詩ともなっています。
正倉院では現在、大正2年(1913年)以来の大規模な修復工事を行なっています。雨漏りが懸念される状態となったことから、屋根の葺き替え工事が中心。100年前の修復では、正倉の建物ほぼ全体を解体修理しているため、今回は屋根部分だけで済むのだそうです。
そんな修復工事の様子は、文化財建造物の保存修理への理解を深めることを目的として、「正倉院正倉整備工事現場公開」として、計5回の一般公開が予定されています。
今回は第2回の公開となりますが、これは誰でも見学できるのではありません。申し込みは往復はがきのみ(締切は7月18日でした)。9月21日~23日の3日間の見学のためにそんな早くから応募を行なっているのもすごいことです。
さらに驚きなのが、この3日間で4,200人(!)もの方が見学したと報道されていますが、私の周辺には申し込んだものの落選したという方が多数いらっしゃるのです。いったいどれだけの方が応募したのかと思うと、気が遠くなりますね(ネットで応募を受け付けないのも仕方ないことなのかもしれません)。
私たちは、最初の見学会にも応募していましたが、残念ながらその際はハズレました。しかし、諦めずに第2回にも応募したところ、8月半ばに当選通知が届き、間近で見学できることになったのです!
計5回の一般公開が予定されていますので、ご希望の方は「正倉院正倉整備工事現場公開 - 宮内庁」のページをしっかりチェックしておくようにしてください。申し込みは「1通で6人まで」「代理人による申し込みは不可」などの条件があります。
抽選に当たると「正倉院現場見学通知書」が送られてきました。見学時間は入場から1時間以内と指定がありますが、何人かまとまって見学するのではなく、自由に見て歩けるスタイルです。なお、受付の際に身分証明書の提示を求められますので、身代わりでの見学は不可。写真撮影は可能ですが、三脚の使用不可などの注意事項があります
正倉院の敷地脇に真っ白いテントが。ここで見学の受付をします。当選者のみとはいえ、3日間で4千人以上の方が押し寄せるのですから大変ですね
正倉院前の門から。普段は門の前から正倉院正倉の外観が見られるのですが、すっかり鉄骨の足場に覆われています
正門の脇には、記念スタンプが押せるスペースなども。また、正倉院展の時のように正倉院グッズの小さな売り場が設けられていました
間近から。正倉院の建物は、仰々しい鉄骨ですっぽりと覆われています。貴重な国宝建築物の修理ともなると、このくらいのスケールになるんでしょうね
1階部分-井桁に組み上げた校木が目の前に
敷地に足を踏み入れると、いきなり休憩所があります。100円バック式のコインロッカーや、熱中症対策なのかウォータークーラーなども置いてありました。そのわずか20mほど向こうには正倉院正倉が!贅沢なほどの近さです!
あの正倉院が目の前です!ものすごい近さですね。正倉院の下の地面部分はコンクリートで固められていたんですね。何となく土のままか敷石なのかと思っていました
正面に出っ張っている「台輪(だいわ)」が目の前に。昔はここに板を渡して、北倉・中倉・南倉を移動したりしたそうです
正倉院といえば、大きな三角材・校木(あぜき)を井桁に組み上げた「校倉(あぜくら)造り」ですね。向かって左手の木組みが「南倉」で、右手の板張りになっているのが「中倉」です(こちらは「板倉造り」というそうです)。3つの倉を繋げた特異な形のため、中倉は後の時代に追加されたという説もありますが、現在では当初からほぼ現在の形だったとする説が有力になっているとか
2階部分-扉の勅封も北倉内部も見えました
2階部分は、各倉と同じ高さになっています。南倉・中倉の入り口は封鎖されていますが、北倉の扉は開けられていて、中には入れませんが、奥まで見渡せるようになっています
鍵の部分が特殊な縄で縛られています。天皇の許可(勅許)が無ければ開けられない「勅封倉(ちょくふうそう)」です
扉の前に展示してあった、正倉院の鍵。実際に使用されるもののようです。各所に係の方が立っていて、詳しい解説が聞けます
一部に新しい材が使われているのが分かります。なお、いわゆる正倉院宝物はすでにこの建物に置かれておらず、同じ敷地内にある近代的な西宝庫・東宝庫にあります
3階展示場-充実の展示。天平時代の瓦も!
3階部分には、広々とした展示場が設けられていました。楽しい模型や、正倉院の屋根から下ろされたばかりの天平時代に作られた瓦など、なかなかの充実ぶりでした
正倉院の屋根は、平瓦と丸瓦が交互に並べられた「本瓦葺」でした。瓦の枚数は、約36,000枚!瓦の下に土を葺いて乗せられているため、とんでもない重量になります。瓦は天平時代のものから、その以降の時代のものが大事に使用されていて、今回もまだ使えるものはそのまま使用するそうです
表面に見えているのが「土居葺(どいぶき)」、その下の板が「野地板」「裏板」で、それを支える木材は「地垂木」「野垂木」といいます。ここは屋根板が剥がされていますが(室内の採光などの理由もあるとか)、ほんの一部だけでした
正倉院の構造が理解できる、詳細な模型。室内の写真や図面など、パネル展示も充実していました
屋根から下ろされたばかりの鬼瓦と鳥衾。近くで見ると迫力がありますね。大正2年の改修工事の時の写真パネルが展示してあり、比較できるようになっていました
こちらも屋根から下ろされた平瓦と丸瓦。年代によって製造方法も変わってきます。古代の瓦制作に用いたという、樽のような器具も復元展示されていました
実際に使用していた、天平時代に作られた平瓦も。この時代のものは、表面に布目、裏面に縄目がつくそうです。説明によると、今でも遺っている天平時代の瓦は特に出来がいいもので、悪いものはとっくに破損して捨てられているとか。指で弾けば今でも美しく澄んだ音がするそうです
3階通路-屋根の高さでぐるりと一周できます
正倉院の屋根部分は、ぐるりと一周できるようになっています。軒先が目線にあるので、ものすごい迫力でした!
屋根の途中に見えるやじろべえのような金具は、後の時代に取り付けられた作業用のものだとか。ロープなどを固定するんでしょうね。瓦が撤去された状態だとかなり目立ちますが、普段はほとんど見えないそうです
周りに聖語蔵・東宝庫・西宝庫などがあります
正倉院の屋根ごしの東大寺大仏殿。普段はまず見られないアングルですね
東大寺大仏殿の手前に見えるのが、「聖語蔵(しょうごぞう)」。お経を収める経庫で、明治時代に現在の鼓阪小学校の敷地から移築されたそうです。その左手にあるのは「東宝庫」。1953年築の鉄骨鉄筋コンクリート造りで、染織物や未整理の宝物の一部、調査・修理を要する宝物などが収められています
西側に目を転じると、「西宝庫」が見えます。1962年築の鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物で、正倉に変わって正倉院宝物が収められ、勅封されています。庫内は、北中南の三倉が、それぞれ独立した上下2層の6室に分かれていて、かつての正倉と同じ配置で宝物が収納されているとか。その隣には「宮内庁正倉院事務所庁舎」があるようです
見学会は計5回開催。ご応募お忘れなく!
間近で拝見した正倉院正倉は、本当に感動的でした。改修工事中とはいえ、普段は数十メートルの距離から眺めるしかできない貴重な国宝建築物ですから、こんな機会でも無ければ近づけませんからね。こんな素晴らしい企画を実現してくださった関係者の方々に御礼を言いたいと思います。
私たちは運良く2回目の応募で当選しましたが、相当な高競争率になっているようです。同様の見学会は計5回(あと3回)予定されているそうですから、「正倉院正倉整備工事現場公開 - 宮内庁」のページをしっかりチェックして、見逃さないようにしてください!
以前に拝見した正倉院正倉の様子。このような姿が見られるまで、あと数年間の辛抱ですね
■正倉院正倉整備工事現場公開
HP: http://www.kunaicho.go.jp/event/genbakokai/genbakokai.html
■参考にさせていただきました!
正倉院 - 宮内庁
正倉院 - Wikipedia
奈良国立博物館
瓦下ろした正倉院公開 約4200人が見学 - MSN産経ニュース
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