2010-02-02

菩薩半跏思惟像と静かに向き合える『中宮寺』@斑鳩町

菩薩半跏思惟像と静かに向き合える『中宮寺』@斑鳩町

法隆寺に隣接する尼寺『中宮寺』へ行ってきました。久々にお会いする「菩薩半跏思惟像(国宝)」はやはり美しいですね。この日は、通常は非公開の「表御殿」の特別公開も行われていましたので、いつも以上にじっくりと楽しめました!


聖徳太子創建の大和三門跡尼寺の一つ

斑鳩町にある『中宮寺』は、聖徳太子の母親である穴穂部間人皇后の発願により、7世紀前半に創建されました。創建当初は「斑鳩尼寺」と呼ばれ、聖徳太子創建の七寺のうち「中宮尼寺」に比定されています。

現在は、法隆寺の東院伽藍(夢殿の辺り)の隣にありますが、創建当初は現在地から約500mほど東に位置しており(現在の「中宮寺跡」)、南に塔・北に金堂を配した四天王寺式伽藍を持つ大寺院でした。平安時代以降は衰退し、現在地に移ったのは室町時代とされています。

江戸時代からは、皇族・貴族などが住持する「門跡尼寺」となり、大和三門跡尼寺(中宮寺・円照寺・法華寺)の随一として今日に至っています。


東院伽藍(夢殿など)の裏手にあります

この日は、中宮寺で「平城遷都1300年祭/~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」の一環として、「表御殿(おもてごてん)」の特別公開が行われていました(※表御殿の特別公開は2010年2月末日まで)。

中宮寺は、法隆寺の夢殿の裏手にある小さなお寺ですので、車で行く方は、法隆寺前の駐車場を使うか、または法輪寺を拝観してから歩いてくるか(駐車場は無料。10分も掛かりません。もちろん長時間の駐車は厳禁です)するといいでしょう。


中宮寺@斑鳩町-00

法隆寺・南大門をくぐったところから。さすがの法隆寺も、2月の平日は修学旅行生の姿が見えるくらいで、静かなものでした

中宮寺@斑鳩町-01
『中宮寺』は、法隆寺・東院伽藍(夢殿があるところ)の裏手になります。拝観料は別途必要ですが、交通手段や駐車場などは法隆寺とほぼ共通です

中宮寺@斑鳩町-03
中宮寺の門。ここをくぐると拝観受付があります(拝観料@500円)。2010年2月中は、【~祈りの回廊~ 奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳】の一環として、通常は非公開の「表御殿」を特別公開していました


本堂は耐震耐火に優れた和風現代建築

中宮寺の本堂は、1968年建立の和風現代建築です。木造建築ではありませんので、耐震耐火性に優れていることは間違いありませんが、やや風情に欠ける印象があるのも確かですね。

お堂自体がそれほど大きなものでもありませんので、有名な御本尊「菩薩半跏思惟像」と、レプリカが置かれている「天寿国繍帳」、大きな見どころはこの2つのみとなります。

「天寿国繍帳」は、亡くなった聖徳太子を偲び、后の橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)が、太子が往生した天寿国の様子を描かせたもの。額に入ったレプリカですが、縦89cm、横83cmの刺繍です。

中世に法隆寺に所蔵していた時期もありましたが、1274年に中宮寺に戻りました。もとは1尺6寸四方で2枚ありましたが、現存するものは、その寄せ集めのため「残けつ」と呼ばれています。

その絵柄は、高松塚古墳の壁画や、玉虫厨子との類似性も認められているのだとか。この時代の染織品が今なお残っているだけでも驚くべきことです。複製品と分かりつつも、じっくりと眺めてみると、意外と顔の部分が荒っぽかったりして面白いものでした。


中宮寺@斑鳩町-05

中宮寺の「本堂」。高松宮妃の発願で1968年に建立した和風の現代建築で、吉田五十八氏の設計。周囲は池に囲まれていて、周りに山吹が植えられています。耐震耐火に優れた、今風のお堂ですね

中宮寺@斑鳩町-06
中宮寺の本堂内には、御本尊「菩薩半跏思惟像(国宝)」と、その周囲に薬師如来像・阿しゅく如来像・雨宝童子像、そして国宝の刺繍曼荼羅「天寿国繍帳」のレプリカが拝見できます。団体さんで混雑する時もありますが、素敵な仏さまと数メートルの距離でじっくりと向かい合うことができます


「菩薩半跏思惟像」と静かに向き合えます

御本尊は、有名な「菩薩半跏思惟像(国宝)」。寺伝によると如意輪観音さまとのことですが、登録では弥勒菩薩とされています。飛鳥時代後期の作で、像高は133cm。全身が約30のクスノキのパーツで構成されており、色合いは真っ黒です。

右足を軽く左膝の乗せ、右手を頬に近づけて静かに微笑む姿は、日本でも有数の人気の仏さまでしょう。私も大好きな仏さまですので、いつも目に見える場所に写真を貼っているくらいです。しかし、他の拝観客の方も少なかったため、立ったり座ったり、少しだけ横に移動してみたりしながらじっくりと拝見すると、また全く印象が違って見えるんですよね。

頭頂で髪を結んだと思われるお団子が二つついていたり、両肩に沿って髪が垂れ下がっていたり、右足のつま先がやや窮屈そうに上に向いていたり、その右足の下は細い足置き台のようなものが立っていたり、表情は穏やかなのに不自然なほど鼻筋が通っていたり。

中宮寺のホームページでは大きな画像も見られますので、ぜひ改めてじっくりとご覧ください。


中宮寺@斑鳩町-04

入り口部分にあったボードには、中宮寺の御本尊「菩薩半跏思惟像(国宝)」のお写真も。穏やかな表情をなさってますね


特別公開の「表御殿」はきらびやか

中宮寺の本堂の裏手にある、国指定の有形文化財の「表御殿」。普段は立ち入ることができませんが、特別公開期間ということで初めて拝見しました。

この表御殿とは、皇室との縁が深い尼寺・中宮寺だけに、宮様がお越しになる際に使われる専用の書院造りの建物です。1696年の建築で、これまでに3度の大修理を行ってきたのだそうです。「謁見の間」「控えの間」など、計6部屋あるのだとか。

内装は、目を見張るほど豪華というものではありませんが、上座にはまるで百人一首に描かれているような分厚い畳が敷かれ、金箔が貼られた床の間は、鳳凰と30種類以上の草花が描かれています。また、襖絵もどことなく大陸の雰囲気を感じさせる面白い絵柄でした。宮家への献上品のため署名も見当たらず、作者などは不明とのことですが、じっくりと拝見させていただきました。有栖川宮熾仁親王の書なども飾られていました。

いつもはすぐ横を通り過ぎていた建物でしたが、その内部にこんな部屋があるとは想像していませんでした。ボランティアの観光ガイドの方もいらっしゃいますので、そのご説明を伺ったり、質問したりしながら拝見すると、色んな発見がありますね。ぜひ特別公開の期間中に見に行ってみてください!


中宮寺@斑鳩町-07

通常は立ち入ることができない、本堂脇の回廊を通って、特別公開中の「表御殿」へと向かいます

中宮寺@斑鳩町-09
中宮寺・本堂の裏手は、木造建築になります。こんな短めの渡り廊下の先に表御殿があります

中宮寺@斑鳩町-10
渡り廊下の脇の小庭。普段は立ち入ることが出来ないエリアのため、いつでも見られるものではありません

中宮寺@斑鳩町-08
特別公開された「表御殿」の外観。中宮寺を拝観する際には、誰もがその脇を通りますが、宮家の方たちをお迎えするための建物だとは知りませんでした

中宮寺@斑鳩町-15
看板より。「表御殿」内部の写真が見えます。内部は、もちろん撮影不可。豪華な書院造りで、不思議な雰囲気の障壁画がありました。外観はやや地味な印象を受けますが、さすがに内部は重厚でした

中宮寺@斑鳩町-13
拝観窓口のすぐ脇にあるグッズ販売コーナー。とにかく菩薩半跏思惟像さんのグッズが豊富で、絵葉書(@300円)はもちろん、A4サイズのパネル(@500円)やポスター(@1,000円)など、ついつい散財したくなる品揃えです!

中宮寺-ご朱印
中宮寺でいただいたご朱印です。柔らかで美しい、素晴らしい書ですね!



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■中宮寺(法興山)

HP: http://www.chuguji.jp/index.html
住所: 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北1-1-2
電話: 0745-75-2106
宗派: 聖徳宗
本尊: 如意輪観音(国宝)
創建: 7世紀前半
開基: 穴穂部間人皇后 発願
拝観料: 500円
拝観時間: 9:00 - 16:30 (10/1から3/20は16:00まで)
駐車場: 有料駐車場あり(500円程度)
アクセス: JR「法隆寺駅」下車、徒歩20分


中宮寺「表御殿」の特別公開は、2010年2月1日~2月28日までとなります
※2010年5月20日~6月10日まで、「天寿国繍帳」の実物と、木造「摂政太子坐像」が特別公開されます。また、それと入れ替わりに、御本尊の「菩薩半跏思惟像」は、新潟市美術館で開催される「平城遷都1300年記念 奈良の古寺と仏像展 會津八一のうたにのせて」へ出陳されます。拝観の際には、事前に中宮寺ホームページをご確認ください。






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