築百年を超えた洋風近代建築『黒滝村民俗資料館』@黒滝村
黒滝村「黒滝・森物語村」の敷地に建つ『黒滝村民俗資料館』(県指定文化財)。1910年に建てられた、レトロで雰囲気のある近代建築で、外壁はライトブルー、1階の天井はグリーンに塗られているという、とても華やかなモダンデザインです。この山間にこんなハイカラな建物が建てられ、それがずっと残されてきたことに感動します!
「黒滝・森物語村」内に建っています
黒滝村粟飯谷にあるリゾートビレッジ『黒滝・森物語村』は、黒滝川で川遊びやバーベキュー(有料)ができたり、長さ約115mの「黒滝吊橋」があったりと、親子で楽しめるのどかなスポットです。
この敷地内には、レトロで雰囲気のある近代建築を利用した『黒滝村民俗資料館』(県指定文化財)があります。
『黒滝村民俗資料館』の建物。明治43年(1910)、吉野材木黒滝郷組合の事務所として「総工費8,000円」で建設され、後に村役場庁舎として使用されていました。入ってすぐが玄関と階段スペースで、正方形の建物にその部分が飛び出した形になっています
さらに、洋館の背後には、和風の平屋部分が付随しています。これも和洋折衷というのか、なかなか不思議なバランスです
窓枠も外壁も美しいですね。1995年に現在地へ移築した際に、細部まで丁寧に修理されたのでしょう。築100年を超えた建物とは思えません
『黒滝村民俗資料館』は、拝観料などは無料です。普段は鍵がかけられていますので、拝観希望の方は、隣の「黒滝森物語村事務所」に伝えて開けてもらってください
館内に展示してあった、建設直後(1910年)の写真。玄関の位置がずらされたように見えますが、ほぼ当時のままのようです
1910年の建築で「総工費8,000円」!
奈良県指定文化財 黒滝村旧役場庁舎
この建物は明治43年(1910)吉野材木黒滝郷組合の事務所として総工費8,000円で建設されたもので、洋風2階建ての本館に和風の平家建てが取付く当時にしては大変モダンな建築でした。
大正2年(1913)4月からは村役場庁舎として使用されるに及び、本館の1階は大部屋に改造されましたが、そのほかは殆んど建設当初のまま残されてまいりました。
昭和53年(1978)9月に新庁舎が完成し、建設以来約70年に及んだこの建物はその役目を閉じることになりました。(後略)
説明文より
明治時代の斬新なデザインの建築物が、これだけ山間の地域に遺されていること自体が素晴らしいですね。
参考にさせていただいた「グラフ|【やまと建築詩】黒滝村旧役場庁舎(黒滝村)」さんによると、建築当時の大工さんの日給が70銭だったとか。仮に、現在の大工さんの日給が7,000円だとすると、単純計算で今の8000万円くらいの工事費用だったことになります。
また、材木組合の事務所ですから、材料費は格安だったことは間違いありませんから、それを加味するとより豪華な印象だったことでしょう。当時の黒滝村の人々から見れば、とんでもなく豪華でモダンな建物だったんでしょうね。
この建物が現在地へ移築されたのは、1995年(平成7年)。バブル経済の崩壊が目に見え始めたころです。1階部分は村役場の物置のような使い方をしていた名残があり、決して上手く活用しているとはいえません。また、維持費もかかり大変だと思いますが、貴重で美しい近代建築ですから、ぜひしっかりと受け継いでいって欲しいですね。
建物脇に建つ説明文
その近くに建っていた「貯木場建立記念の碑」。明治34年(1901)から、黒滝郷が他の地域と共有で貯木場を造成した際の記念碑だとか。1998年、和歌山市湊地区からここへ移築されたそうです
天井はグリーン!華やかで雰囲気あります
1階部分に入ると、鮮やかなグリーンの天井に目を見張ります!1978年までは村役場の庁舎として使用されていて、その時もこの色合だったのかもしれません。現在は特に使用されておらず、物置的なもったいない使われ方になっていました
奥から見たところ。中央の二股の柱が特徴的な形で目を引きます。ブルーシートがやや残念ですが、色合いとしては悪くありません(笑)
レトロな窓とシャンデリア、そして緑に塗られた天井。魅力的ですね!
1階の奥には、平屋の和の家屋へ続く扉があります(鍵が閉まっています)。また、その隣にそびえ立つのは、見たこともないような急角度の階段です!垂直に近いほどの急さで、実際に使用したら怖いでしょうね!
何気ない窓枠もいい雰囲気です。古い学校の校舎のような佇まいですね
急な螺旋状の階段をあがって、2階の展示室へ向かいます
階段途中から見た玄関ホール。もともと川のほとりの狭い土地に建っていたためか、かなりいびつな形になっています
2階の展示室前のホール部分。美しい白壁で、天井は木の板になっています
2階に民俗資料。山の生活が学べます
『黒滝村民俗資料館』の内部。林業の町だけに、木材を切り出したり、それを運んだり加工したり、木とともに生活してきたことがわかる展示内容でした
吉野杉を使った「樽丸(たるまる)」づくりにまつわる展示。さまざまなのこぎり類、焼き印などがみられます
この地方独特の袴なども
そうかと思えば、突然たくさんの狛犬が並ぶコーナーなども!
どういういわれなのかはわかりませんが、どの狛犬さんたちも愛らしい表情でした!
龍吐水(ポンプ)など
荷物を背負う「背負子(しょいこ)」など
山へ入って作業する際に使用した道具たち。それぞれ違いがあって面白いですね
パネルなどで黒滝村の歴史や産業も紹介されています。無料で拝見できますので、山の生活に思いを馳せながら見学してみてください!
■黒滝村民俗資料館
HP: http://www.morimonogatari.com/kurotakimorimonogatari/minzokusiryou/
住所: 奈良県吉野郡黒滝村粟飯谷1番地 黒滝・森物語村内
電話: 0747-62-2770
開館時間: 11:00 - 16:00
入館料金: 無料
駐車場: 無料(バーベキュー料金の場合は有料)
アクセス: 近鉄吉野線「下市口」からバスで約50分。「黒滝案内センター」下車、徒歩15分
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