断崖絶壁に建つ国宝建築物『三佛寺投入堂』@鳥取県
鳥取県三朝町にある三佛寺の『投入堂(なげいれどう)』を見てきました!個人的にずっと憧れていた国宝建築物で、「死ぬまでに一度は見たい絶景」だと思っていましたので、感動もひとしおでした。
ただし、投入堂を間近で見るためには、急斜面を約1時間ほどかけて登らなくてはいけません。注意点などをまとめておきます。
一人では登山禁止。服装も要注意です
国宝の「投入堂」は、鳥取県東伯郡三朝町にある天台宗寺院「三徳山三佛寺」の奥の院のこと。
役行者が開いたとされる行場ですので、険しい山道を1時間近く登ってようやく辿り着く難所に建っています。全国にある国宝建築物の中でも、実際に見ることが難しいものの一つだと言えるかもしれません。
どこの寺院でも「奥の院」への道のりは厳しいものですが、それとは明らかにレベルが違います。「所要時間は往復90分ほど」(登りの時間は1時間ほど)とのことですが、その行程は、両手も使って樹の根や岩肌をよじ登るような難所の連続ですので、かなり体力を消耗するでしょう。
また、参拝登山中の条件も厳しく、事故を防ぐため一人きりの登拝は禁止。二人以上でなければ入山させてもらえないという厳戒態勢です。しかも、雨の日には完全に閉山されますので、投入堂を見られるかどうかは、天候にも左右されます。
●投入堂参拝受付時間は、8時から15時までです。参拝時間外は閉門致します。●雨や雪などにより、当山が危険と判断した場合は入山禁止になります。(例年ですと冬の間、12月~3月ぐらいまでは積雪の為入山禁止になっております)
●投入堂へ参拝をされる際には、必ず二人以上、また両手が使えて運動のしやすい格好でおこしください。
スカート・かかとの高い靴・革靴・サンダル・スリッパ・滑りやすい靴、また底にスパイクや金具の付いた靴などの登山用シューズや・ピッケル・ストックや杖(山道、木の根を傷める為)、 そのほか参拝や修行に適していない格好の方は投入堂参拝受付ができません。幼児は登山できません。
「三徳山三佛寺」HPより一部抜粋
特に気をつけなくてはいけないのは「服装」でしょう。スカートやハイヒールで来るような方は論外としても、足を露出したハーフパンツ姿は(危険性の面でも、修行場に立ち入る心構えの面でも)入山を断られるようです。
また、履いていく靴はトレッキングシューズなどが最適です。スニーカーであっても、ソール部分が滑りやすそうなものは不可ですし、逆にスパイクなどがついた登山靴だと、樹の根を傷めてしまうためこれも不可。受付で販売している草鞋(@500円)に履き替えて登らなくてはいけません。
ただし、修行場に立ち入っても問題ない服装さえしていれば、草鞋・手袋・タオル・ドリンク類など、必要なものは全て三佛寺境内で購入できますので、体調さえしっかりと整っていれば、後から何とかなります。
鳥取県東伯郡三朝町にある『三徳山三佛寺』。三佛寺の奥の院に当たる「投入堂(国宝)」が有名なお寺ですが、その道のりは険しく、厳しい条件が設けられています
三佛寺の「受付案内所」。まずはここで本堂の拝観料を支払います(400円。宝物館の拝観料も含みます)。ここで最初の服装チェックがあり、適した衣服を身につけていない方に対しては、本堂から先にある奥の院(投入堂)には入山できないことが告げられます
本堂までの続く道の両脇には、塔頭が並んでいます。飲み物や軍手などの入山の必需品は、本堂の奥の「登山受付」でも販売していましたし、トイレもありました。軽い食事をいただくことも出来るようですが、出来れば他所で済ませておいた方がいいでしょう
境内にあった「入山心得」。重要な点は「2人以上で入山すること」「靴の確認を受けてから入山すること」の2点です。また、三徳山は修行の地でもあり、ハードな登りもありますので、短パンでの入山などは認められませんのでご注意ください
登山受付所(正確には「三徳山入峰修行受付所」)の様子。ここで氏名と人数を記入し、「六根清浄」と書かれた輪袈裟を身につけます。入山料は600円。履いている靴の最終チェックがあり、適していないと判断された場合には、ここで草鞋を購入して履き替える必要があります
三徳山の案内図。入山受付から山頂にある奥の院(投入堂)までは、往復で90分ほどの所要時間になるとのことでした。登りは約1時間くらいでしょうか。ハードな山道が続きます
登山受付所で販売されていた、草鞋・タオル・手袋など。私はトレッキングシューズを履いていったので草鞋は購入しませんでしたが、意外と草鞋着用の方も多かったです。滅多にできない経験ですので、草鞋で投入堂を目指すのもいいかもしれません。特に雨の日とその翌日には、草鞋の方が安全に登れるようです。なお、スパイクや金具の付いた登山靴も木の根などを傷めるため禁止になっています
三徳山の急斜面を全身を使って登ります
受付を済ませて入山すると、さすがにハードなルートの連続です!
今回のパートナーはウチの奥さんではなく(山道が厳し過ぎると判断したため)、普段から登山へ行っている @benniekei さんにお願いしましたが、この人が早いの何の・・・。私も普段からそれなりに足腰を鍛えている方ですが(ジョギング10kmくらいなら難なくこなします)、そのスピードに全くついていけませんでした(笑)
樹の根が張った「かずら坂」など、両手も使って全身で登っていくのですが、それほど気温が高くない日だったにも関わらず、登山開始10分くらいからもう汗ダクダクです。必ずペットボトル飲料などは準備しておくべきですね。
途中の写真を何枚か並べていますが、その急角度っぷりは全く伝わらないと思います。どれも画像で見るよりもはるかに厳しい急坂ですので、安全に気をつけながら、焦らずのんびりと登りましょう。
受付を済ませて、この門をくぐると投入堂への登山が始まります。ここから先は修行の地ですし、自然保護の目的もあり、火気類禁止・食事禁止・枝やストックの使用禁止となっています
参拝登山道の脇にいらっしゃる役行者像。参拝の安全を祈ってお参りしておきましょう!
このくらいはまだ序の口。今回の同行者は、登山で鍛えた健脚を披露してくれたため、私は全く追いつけないスピードでグイグイと登っていきます・・・
投入堂への参拝登山道の最初の難関「カズラ坂」。樹の根が縦横に伸びていて、両手を使って登っていく全身運動ですね。この日も前日も晴れていたため、まだ難易度は低めでしたが、雨が降ったりすると滑って怖い思いをするでしょう
カズラ坂の前後も、こんな樹の根だらけの道が続きます。画像では分かりづらいですが、かなりの急坂です!
足元は岩場。45度とまではいきませんが、かなり見上げる角度で撮影しています。名前も付けられていない普通の道もハード!
まるで当然のように、倒木が行く手を塞いでいました。これを乗り越えて進みます
高所恐怖症の方は注意!懸造りの「文殊堂」
投入堂への中間地点手前くらいには、垂直の岩が立ちふさがる一角が連続し、鎖をつかんで登る「くさり坂」などが登場します。
その脇に立つのが、巨大な舞台造り(懸造り)になった三佛寺の「文殊堂(重文)」の巨大な建物です。標高440m地点の岩場に絶妙なバランスで建てられていて、こんな険しい場所にどうやって建てたのか・・・と、不思議な気持ちになりますね。
周囲の廊下を歩くこともできますが、これは雨を落とすために外側がやや下がっていて、怖さ倍増です!落下防止の柵などは一切なく、私のような高所恐怖症の人間には、とても下を覗き込めるようなものではありませんでした。
その先の程近い場所に「地蔵堂(重文)」「鐘楼堂」があります。3トンもの重量の鐘楼をどうやってここまで持ってきたのか、今でも不明なのだとか。三佛寺は不思議がいっぱいありますね。
最初の大きな建築物「文殊堂」の手前の岩場。垂直に近い角度で巨大な岩がそそり立っています。両手を使って、岩のちょっとした凹みに足を乗せて、ゆっくりと進みます。行きも十分に怖いですが、帰り道は恐怖感が倍増でした!
巨大な舞台造りになった三佛寺の「文殊堂(重文)」。また投入堂への道のりの中間地点の手前くらいです。1567年に建造が始まったものだとか。ここの標高は440mで崖の上の岩場に絶妙なバランスで建てられています。こんな険しいところに、よくこんな巨大な建物を作ったものだ・・・と感心しますね
文殊堂の脇にある「くさり坂」。この鎖を伝って登りますが、距離は短く、難易度はそれほど高くありません。無理そうな方は脇に迂回路がありますので、そこを通るといいでしょう
くさり坂の帰り道の様子。下から見た写真では大したことがないように思えますが、ほぼ垂直なんです(笑)
三佛寺「文殊堂(重文)」。靴を脱いでお堂をぐるりと回れます。しかし、足元は断崖絶壁で、転落防止の柵などもなく、私のような高所恐怖症の人間にとっては恐怖です!
文殊堂からの眺め。どこまでも山が続きます。真下を見下ろすアングルで撮影する勇気はありませんでした・・・
これは「地蔵堂(重文)」です。文殊堂よりもひと回り小さく、室町時代の建築だとか。ここもお堂の周りを一周できます
文殊堂もそうでしたが、この地蔵堂も、廊下部分は少しだけ外に向かって傾斜しています(雨を流すためだそうです)。これが恐怖感を倍増してます!
三徳山の「鐘楼堂」。重さ約3トンという巨大な鐘を、この高所までどうやって運んだのか、未だに不明なのだとか。鐘をつくことも出来ますが、いびつな岩の上で踏ん張らなくてはいけないので、かなり難しそうでした
こんな馬の背状の岩場が続く、その名も「馬ノ背」「牛ノ背」。滑って脇に落ちたらアウト!
洞穴のサイズに合わせて建つ建物たち
またしばらく登って、「納経堂(重文)」と「観音堂」「元結掛堂」が見えてきたら、投入堂は間近です!
この二つの建物は、それぞれが岩の狭間にすっぽりとはまっていて、岩の形に合わせて作られたことがはっきりと分かります。こんなものを間近で見られるだけで十分に感動的ですが、そのすぐ先にはいよいよ投入堂の姿が見られます!
手前が「納経堂(重文)」、その奥が「観音堂」。これが見えてきたら投入堂はもうすぐです!
三佛寺の「納経堂(重文)」。鎌倉時代の建築物で、投入堂と同じく706年の創建と伝えられているとか。春日造ですが、屋根の部分は突き出した岩の形に合わせてあります。中には、法華経などの写経が収められています
三佛寺「観音堂」。江戸時代前期に再建されたものです。岩の間にすっぽりと収まっている姿がすごいですね。先へ進むには、この観音堂の背後を通りますが、真っ暗で怖かったです
観音堂を別角度から。手前にある小さなお堂は「元結掛堂(もとゆいかけどう)」です
断崖絶壁に建つ「投入堂」はまさに絶景!
約45分ほどの登りの末、ようやく「投入堂(国宝)」へ到着しました!
ここの標高は520mほど。岩肌がやや前に突き出した下に、断崖絶壁に貼りつくように建つ姿が見られます。手前に柵があり、投入堂の中に入ることはできませんが、数十メートルの距離から眺めることができて、本当に感動的でした。
今から約1300年前、麓でこの建物を作った役行者(役小角)が、法力によってこの場所へ投げ入れたという伝承が残っていることから、いつしか「投入堂」と呼ばれるようになったのだそうです。以前は「蔵王殿」と呼ばれており、実際には平安時代後期の建築であることが判明しています。
確かに、こんな険しい場所まで資材を運び込むだけでも大変な労力ですし、こんな岩肌に寄り添うように建てるためにはどんな工事を行ったのか、全く想像がつきません。「法力で投げ入れた」という言い伝えが生まれるのも、決して不思議とは思えません。
これまでも投入堂の写真はよく見ていましたが、実際にその場へ行ってみると、いかに厳しい環境に建てられたものなのかが実感できました。
ようやく「投入堂(国宝)」へ到着!写真を撮りながら登って、約45分ほどのハードな登山でした。手前にある小さなお堂は、江戸時代後期に建てられた「不動堂」です
三佛寺「投入堂(国宝)」に近づけるのは、黒いフェンスの手前まで。足場も組めないような断崖絶壁の中に、まさに何者かに投げ入れられたようにすっぽりと収まっています。向かって左奥には、小さな「愛染堂」も隣接して建っています
投入堂の建築年代は平安時代後期。2006年には屋根の葺き替えなども行われています。間近で見る投入堂は、とにかく感動的でした。何故こんなところに、どうやってこんなところに・・・と、不思議で仕方ありません
投入堂へ登拝への注意点など
念願だった投入堂を見てきた感想ですが、
●道は険しいですが、普通レベルの体力がある方がゆっくりと登りさえすれば、十分に登拝は可能でしょう。この日も、中高年のグループや、運動とは無縁そうな若者のグループなども見かけました。
●この日は、(帰り際に小雨が降ってきましたが)前日もお天気だったようで、かなり状態は良かったそうです。それでも岩や樹の根は滑りやすくなっていましたので、雨の翌日は特に注意が必要です。トレッキングシューズよりも草鞋の方がグリップが良さそうですので、草鞋を購入しておくのもいいかもしれません。
●私は普段から少しだけジョギングをしているため、翌日は下半身にだるさは残りましたが、足の筋肉痛はありませんでした。しかし、いつもあまり使っていない上半身が軽い筋肉痛になりましたので、やはり相当な全身運動だったようです。
1時間登れば、あの素晴らしい「投入堂」が見られると思えば、それだけ頑張れるものです。ぜひ体調を整えて、そして天気予報とにらめっこして、三徳山への入峰修行に臨むようにしましょう!
■三徳山三佛寺(投入堂)
HP: http://www5d.biglobe.ne.jp/~mitoku/
住所: 鳥取県東伯郡三朝町三徳1010
電話: 0858-43-2666
宗派: 天台宗
本尊: 釈迦如来、阿弥陀如来、大日如来
創建: 849年(伝)
開基: 慈覚大師(伝)
拝観料: 本堂 400円、投入堂(奥の院)600円
拝観時間: 8:00 - 15:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR山陰本線「倉吉駅」より、バス「上吉原」方面行きで40分「三徳山寺前」下車
■関連記事
『三徳山三佛寺』と『三朝温泉』あれこれ@鳥取県
■参考にさせていただきました!
三徳山投入堂 | いい旅、湯めぐり 三朝観光ガイド
三徳山三佛寺・投入堂/鳥取県観光情報
三仏寺 - Wikipedia