2013-06-10

内山永久寺伝来の『愛染明王坐像』@東京国立博物館

内山永久寺伝来の『愛染明王坐像』@東京国立博物館

廃仏毀釈によって廃絶した「内山永久寺」の名残りを探すシリーズ。最後に内山永久寺から流出し、現在は「東京国立博物館」が所蔵している、『愛染明王坐像』と『厨子』(ともに重文)をご紹介します。光背も装飾品も造像当時のものが残っていて、寺勢が華やかだった頃を偲ばせる美仏です!


内山永久寺旧蔵の寺宝の一つは東博へ

「西の日光」とまで呼ばれるほどの大寺院でありながら、明治時代の廃仏毀釈によって廃絶してしまった寺院『内山永久寺』(Wikipedia)の名残りを探すシリーズです。

内山永久寺の創建は1114年のこと。石上神宮の神宮寺として、また興福寺大乗院の末寺として繁栄し、近世には大和国内でも東大寺・興福寺・法隆寺に次ぐ規模でした。しかし、廃仏毀釈によって寺領を没収され、僧侶は石上神宮の神官となり、堂宇は焼き払われたり、寺宝は切り売りされるなどして散逸しました。

そんな内山永久寺旧蔵の寺宝の一つ、「愛染明王坐像」と「厨子」(ともに重文)が現存しています。

現在の所有者は、東京の上野公園内にある、日本最古の博物館『東京国立博物館』(Wikipedia)。収蔵点数11万件を超える、巨大博物館ですね。


内山永久寺から伝来した愛染明王坐像は、東博でも常に展示されているわけではありませんので、私たちが昨年行った時には拝見できませんでした。

そこで、今回この記事を書くにあたって、以前素晴らしい画像をアップしていらっしゃった、友人の「@nekomarunage」さんが撮影なさった写真をお借りしています。ありがとうございます!


圧倒的な美しさ!永久寺伝来「愛染明王坐像」

内山永久寺より伝来した「愛染明王坐像」(重要文化財)は、鎌倉時代に作られた美しい像です。

奈良の愛染明王像というと、西大寺で秘仏とされている尊像(画像検索)が有名です。こちらは1247年の作と、内山永久寺像よりもやや早めに制作されているようですが、とても力強く、密教の仏さまらしい迫力を感じます。

その一方で、内山永久寺旧蔵のものは、力強さでも引けを取りませんし、台座や厨子、無くなりやすい装飾品にいたるまで、ほぼ作られた鎌倉時代のまま残っているのも素晴らしいですね。華やかな装飾品を身にまとっていて、ちょっと雰囲気も柔らかに見えます。

愛染明王坐像(重要文化財)

木造、彩色・截金、玉眼。鎌倉時代・13~14世紀

奈良にあった内山永久寺(廃絶)に伝来した像。光背、台座、厨子、銅およびガラス製の装飾など、ほぼ作られた当時のまま残っている点が貴重である。厨子の内扉には海中の岩の上に八菩薩と二明王が描かれており、中央の彫像と合わせて愛染曼荼羅を構成する。

館内説明より

これほどの仏さまが、これほどの状態で祀られていたのですから、内山永久寺がどれだけ力のあったお寺なのか伝わってくるようです。戦火も及ばず、ずっと続いてきた大寺院が、跡形もなくなってしまうのですから、廃仏毀釈の怖さを感じますね。


愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-01

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-02

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-03

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-04

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-05

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-06

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-07

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-08

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-09

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-10


「厨子」の書き込みも見事!華やかです

「厨子(愛染明王坐像付属)」(重要文化財)もそのまま残されています。

先ほどの説明にあったように、厨子の内扉には、岩の上におわす八菩薩と二明王が描かれた見事なもの。中央に愛染明王坐像を祀ることで「愛染曼荼羅」となるのだとか(東博の「名品ギャラリー」ページで厨子に入ったお姿が拝見できます)。素晴らしい状態で残っていることが伝わってきます。


厨子(愛染明王坐像付属)(重要文化財)

木製、漆塗り・彩色・截金・漆箔。鎌倉時代・13~14世紀

厨子の後壁には水牛に乗る焔魔天(えんまてん)を中心に、焔魔天曼荼羅が描かれる。天井には、天蓋の内外に、金銀メッキをほどこした銅板で梵字を作って貼り、仏眼(ぶつげん)曼荼羅を表す。多くの曼荼羅を重層的に表現しており、さまざまな祈りが捧げられたものと考えられる。

館内説明より


なお、内山永久寺から流出した仏像などについては、Wikipedia「内山永久寺にまとめられています。東大寺へ移り、現在は奈良国立博物館に寄託されている「木造持国天・多聞天立像」(重要文化財)なども内山永久寺伝来ですから、これらもまた拝見したいですね。


愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-11

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-12

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-13

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-14

愛染明王坐像(内山永久寺伝来)@東京国立博物館-15



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■東京国立博物館

HP: http://www.tnm.jp/
住所: 東京都台東区上野公園13-9
電話: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
休館日: 月曜日(祝休日の場合は翌火曜日)
開館時間: 9:30 - 17:00(時期によって変動あり。入館は閉館30分前まで)
入館料: 一般600円、大学生500円、高校生以下は無料
アクセス: JR上野駅・鶯谷駅から徒歩10分。 東京メトロ 銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分

※開館時間・料金などやや複雑ですので、詳細は「東京国立博物館 - 来館案内 交通・料金・開館時間」をご参照ください。

※今回ご紹介した画像は、すべて「@nekomarunage」さんからお借りしました。ありがとうございました!


■参考にさせていただきました

内山永久寺 - Wikipedia
東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 愛染明王坐像(あいぜんみょうおうざぞう)


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