2009-11-09

空海開基の小さなお寺『今熊野観音寺』@京都市東山区

空海開基の小さなお寺『今熊野観音寺』@京都市東山区

西国三十三所の秘仏ご開帳巡りのため、京都市東山区にある『今熊野観音寺(観音寺)』へ行ってきました。

西国三十三所の札所としては小さ目の静かなお寺ですが、秘仏の「十一面観音立像」を間近で拝ませていただくという、貴重な体験をさせていただきました!


正式名「観音寺」、山号「新那智山」

京都府京都市東山区にある、西国三十三所の第十五番札所『今熊野観音寺』は、正式名称を「観音寺」、山号を「新那智山」といいます。隣接した「泉涌寺」の塔頭(別院のようなもの)の一つです。

寺伝によると、今熊野観音寺は「弘法大師空海」が開基とされています。空海が唐から帰国して間もなく、まだ東寺にいた頃に、東山の山中に光明が差したのを目撃。その光に導かれて山中に入っていくと、白髪の翁が姿を現し、一寸八分の十一面観世音菩薩像と宝印を与えました。その老人の正体は「熊野権現」だったのだそうです。

弘法大師はお告げに従って一堂を建立。授かった一寸八分の像は、自ら刻んだ一尺八寸の十一面観世音菩薩像の胎内に納めて安置したことから、今熊野観音寺の始まりとしています。

後に、左大臣・藤原緒嗣が伽藍を寄進し、平安時代の「熊野信仰」の大流行の際には、「新熊野神社」の本地仏を祀る寺(本地堂)とされ大いに繁栄。泉涌寺をも凌ぐ大寺となりましたが、応仁の乱の戦禍でほとんどの堂宇を失ってしまいました。


東山区「泉涌寺」の塔頭の一つです

泉涌寺に隣接して建つ『今熊野観音寺』。それほど規模の大きなお寺ではなく、西国三十三所の札所となっている寺院の中でも、小さな部類となるでしょう。周囲には、泉涌寺や東福寺などの大きなお寺がある中で、静かにひっそりと佇んでいるかのような、落ち着いた雰囲気がありました。

お寺らしい山門などもなく、ちょっとした坂道を下って朱塗りの「鳥居橋」を渡るとすぐに境内・・・というシンプルさです。


今熊野観音寺@京都市東山区-01

京都市東山区にある、西国三十三所の第十五番札所『今熊野観音寺』(正式な名前は「観音寺」)。泉涌寺の塔頭の一つで、境内は隣接しています。駐車場なども泉涌寺と共通になります

今熊野観音寺@京都市東山区-02
今熊野観音寺には、他のお寺のような山門はありません。「今熊野観音寺」と書かれた石碑と、「鳥居橋」という朱塗りの橋をわたると、そこからが境内となります

今熊野観音寺@京都市東山区-03
今熊野観音寺の縁起を記した看板。嵯峨天皇の勅願により、開運厄除の寺として開かれ、後白河法皇の頭痛を平癒したことから、ご本尊の十一面観音さまは「頭の観音さん」として信仰を集めるようになりました

今熊野観音寺@京都市東山区-04
「鳥居橋」を渡って真っ先に目に入ってくるのは、足元に子供たちがまとわりついた「子まもり大師」さんの像です。学業成就などの願いを叶えてくれるのだとか。弘法大師さんと子供たち、ちょっと珍しい像ですね


重厚な本堂には、秘仏の十一面観音さまが!

今熊野観音寺の「本堂」は、二層になった瓦葺の屋根が重厚な印象を与える、堂々とした建物です。もう日没近くなって薄暗い中でしたが、見事な紅葉と相まって、とても美しい姿を見せてくれました。

今熊野観音寺のご本尊は、秘仏の「十一面観音立像」です。後白河上皇の持病だった頭痛を平癒したことから、頭痛封じ・智恵授かり・ぼけ封じなどの霊験新たかとされ、今でも篤い信仰を集めています。

今回の特別御開帳では、内陣にまで立ち入らせていただいて、間近にご本尊を拝見できました。お堂は薄暗く、内側が真っ赤に塗られた厨子の中にいらっしゃる仏さまは、とても穏やかな表情です。室町時代の木造仏で、像高は68.2cm。胎内には、弘法大師自らが刻んだとされる一寸八分の胎内仏がいらっしゃるのだとか。

ご本尊の右手には、三井寺の円珍作と伝わる不動明王像が。そして左手には、何と運慶作と伝わる毘沙門天像がいらっしゃいました!

今回の特別御開帳では、内陣からじっくりと拝見できましたが、本堂の仏さまは秘仏となっているため、毎年9月21日~23日に行われる「四国八十八ヶ所お砂踏法要」の時にしか開扉されず、しかもその際にも内陣まで立ち入ることは許されないのだとか。

また、この日はお寺の方のお話を色々と伺えたのですが、「西国三十三所結縁ご開帳」でご本尊を参拝客にお見せするために、傷んでいた欄間を1年間かけて修復したり、300年前の仏壇を分解・修理したり(どちらも金箔でピカピカでした!)と、準備も大変だったそうです。本当に貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました!


今熊野観音寺@京都市東山区-06

今熊野観音寺の「本堂」。二層の堂々とした建物です。現在の本堂の位置は、空海が熊野権現の化身に出会った神聖な場所とされ、かつての奥の院巡礼堂にあたるといわれています。紅葉の間から見える多宝塔は、医界に貢献した方々を祀った「医聖堂」です

今熊野観音寺@京都市東山区-07
秘仏のご本尊「十一面観音立像」の御開帳日だったため、本堂は五色の幕が張られていました。この特別御開帳に間に合わせるように、内陣の欄間と仏壇を修復したとのことで、シックな本堂の中の一部分だけがピカピカに輝いていました!

今熊野観音寺@京都市東山区-08
本堂前からの眺め。特別な日らしい赤い絨毯と、紅葉のコントラストが美しいですね


小さく落ち着いた雰囲気のお寺でした

今熊野観音寺は、西国三十三所の札所ではありますが、京都などに多い、いわゆる「観光寺院」ではありません。今回の特別開扉のような時以外には、拝観料なども不要です。その分だけ、お寺の規模はそれほど大きくはありません。

この日は時間が足りなかったため、医界に貢献した方々を祀った多宝塔「医聖堂」などは見ることができませんでしたが、それを差し引いても、参拝にはそれほど時間はかからないでしょう。西国三十三所巡礼の札所らしくない、とても落ち着いたお寺ですので、心静かにお参りしましょう!


今熊野観音寺@京都市東山区-10

本堂に向かって右手に建つ「大師堂」。弘法大師さんを祀るお堂で、普段は護摩行なども行われているそうです。お堂の前には「ぼけ封じ観音」さんが立っています

今熊野観音寺@京都市東山区-11
今熊野観音寺の「大師堂」の様子。開基の弘法大師さんをお祀りしており、不動明王、愛染明王、そして伽藍を寄進した左大臣・藤原緒嗣の像も祀られているそうです。実際には、お堂の中はハッキリとは見えませんでした

今熊野観音寺@京都市東山区-05
今熊野観音寺の手水舎。極めてシンプルなタイプです

今熊野観音寺@京都市東山区-12
本堂前にある「五智水」。弘法大師さんが、錫杖で岩をうがったところ、霊泉が湧き出し、現在までこんこんと清水が湧き続けているのだそうです

今熊野観音寺@京都市東山区-13
今熊野観音寺の「鐘楼」。古い時代に鋳造された梵鐘で、太平洋戦争の際に供出されましたが、そのままの姿で戻ってきたのだそうです

今熊野観音寺@京都市東山区-15
今熊野観音寺の、近代的な「大講堂」。法要などに使われる施設で、お寺の古さと規模からすると、意外なほど大きな建物でした

今熊野観音寺@京都市東山区-16
大講堂前に立つ銅像。お寺の境内に立っているのが場違いに感じられるほど、ビシッとダブルのスーツを着こなしてますね!

今熊野観音寺-ご朱印
今熊野観音寺でいただいたご朱印です。書かれている文字は「本殿」でしょうか。達筆です!



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■新那智山 観音寺(今熊野観音寺)

HP: http://www.kannon.jp/
住所: 京都府京都市東山区泉涌寺山内町32
電話: 075-561-5511
宗派: 真言宗泉涌寺派
本尊: 十一面観音
創建: 平安時代
開基: 弘法大師空海
拝観料: 無料
拝観時間: 8:00 - 17:00
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR奈良線「東福寺駅」から徒歩20分。またはJR「京都駅」から208系統のバス「泉涌寺道」下車、徒歩10分

※西国三十三所の第15番札所
※秘仏の御本尊「十一面観音立像」の特別御開帳は「2009年11月末」まで






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