2013-07-26

連続する鳥居が厳しく美しい『立里荒神社』@野迫川村

連続する鳥居が厳しく美しい『立里荒神社』@野迫川村

吉野郡野迫川村にある、日本三大荒神社の一つ『立里荒神社(たてりこうじんじゃ)』へお詣りしてきました。高野山を開山する際に、弘法大師空海が勧請したと伝わる歴史ある神社で、今もたくさんの参詣者が訪れます。石段には木製の鳥居が連続して並び、拝殿の軒を円形に繰り抜いて杉の木を通すなど、ちょっと不思議な雰囲気のあるお社でした。


日本三大荒神社に数えられる空海ゆかりのお社

奈良県五條市と和歌山県高野町の間に位置する、人口500人未満の小さな山間の村「野迫川村(のせがわむら)」(Wikipedia)。この村に、奈良県桜井市「笠山荒神」と兵庫県宝塚市「清荒神」に並んで、「日本三大荒神社」(参考サイト)の一つとされる『立里荒神社(たてりこうじんじゃ)』があります。

立里荒神社は、高野山を開山する際に弘法大師空海が勧請したもので、高野山の奥社となります。

荒神社(こうじんじゃ)

祭神=火産霊神(ほむすびのかみ)、譽田別命(ほむだわけのみこと)

通称、立里荒神。海抜1260メートルの荒神岳北の峯山頂に鎮座する旧村社。火産霊神は阿弥陀如来が本地仏で、当社を三宝荒神とも称し、火の神、竃(かまど)の神として全国より参詣者があり、特に火を使う職業の人々の信仰を集めた。当社縁起では嵯峨天皇の弘仁7年(816)、弘法大師が高野山に大伽藍を開基するにあたって伽藍繁栄、密教守護を祈り、一枚の板に三宝荒神の御像を描いて本尊とし、17日の間荒神を祀り、檀上の鬼門に荒神の社を勧請して高野山の大伽藍が成ったという。以来高野山と結ぶ神仏習合の宮として明治初年まで宝積院と称していたが、明治の廃仏毀釈で宝積院を廃し、仏体など池津川へ移して荒神社と称して今日に至る。祭典の神饌にはいっさい魚介類を用いず、匂の少ない野菜と果物を供える。

『奈良まほろばソムリエ検定公式テキストブック』山と渓谷社より


現在でも参詣者は絶えること無く、境内の一角には食堂とともに、参籠所(宿泊施設)が設けられていました。高野山と吉野を結ぶルート上にありますから、古くから山伏の方々が行き来しているのでしょうね。


荒神社(立里荒神社)@野迫川村-01

奈良県吉野郡野迫川村にある『立里荒神社』の鳥居。広めの無料駐車場があり、売店や食堂も営業していました。山奥にあるため、山道をドライブするのは大変ですが、夏でも涼しく空気の清々しいところでした

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-02
拝殿の近くにあった「荒神ヶ岳鎮座 三宝大荒神略縁起」。荒神社の御宝物の写しとのことで、文章は読みづらいです。弘法大師空海がここに勧請したいわれが書かれています

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-03
鳥居をくぐったところに、食堂や参籠所の建物があります。山奥の静かな神社とは思えない設備ですね。それだけ参拝者が多いのでしょう

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-04
「雲海の見える荒神社で宿泊できます」という張り紙がありました。立里荒神社の参籠所では、1泊2食付き「7,000円」で宿泊できるとか。修験者だけではなく、おそらく一般客も宿泊可能でしょう。この辺りは気候条件によって見事な「雲海」が見られるそうですから、宿泊する価値はありますね

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-05
「荒神社より望む大和連山(大峰山系)」の案内。荒神社があるのは荒神ヶ岳で、向かって左手から、金剛山・大天井ヶ岳・山上ヶ岳・大日山・稲村ヶ岳・大普賢岳・弥山・八経ヶ岳などが見渡せるそうです

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-06
その看板の隣からの眺め。この日は薄曇りでよく見えませんでした。ちなみに、雲海は季節の変わり目(9月末~11月中旬、6月初め~7月)の早朝に発生しやすい(参考サイト)そうですので、狙ってみるといいですね


木製や金属製など、奉納された鳥居がずらり!

立里荒神社にお詣りして驚いたのが、長い石段にそって奉納された鳥居がずらりと連なっていることです。

鳥居が連続する光景は、京都・伏見稲荷大社のもの赤い鳥居が有名ですが、立里荒神社のものは、木そのままの色合いだったり、古そうな銅製だったり、新しいピカピカの金属製だったりと、あちらとはだいぶ様子が違います。決して華やかではありませんが、高野山と縁が深いお社らしい雰囲気でした。

石段は、ゆっくり登って10分ほどだったでしょうか。きれいに整備されていますし、ちゃんとした手すりもありますので、登りやすいでしょう。そんな石段に、最後までずっと途切れずに鳥居が連なっているんですから、いかに篤く信仰されているかが分かります。


荒神社(立里荒神社)@野迫川村-08

本殿への石段脇の狛犬。つづら折りの石段は、10分ほど登るでしょうか。ゆっくりと進んでください

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-09
石段全体に、鳥居がずらりと並んでいます。木製のもの、金属製のものなど、素材も奉納された時代もさまざまで、ずっと信仰され続けてきたことが伝わってくるようです

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-10
鳥居の連続!鳥居が並ぶ光景というと、やはり京都・伏見稲荷大社が有名ですが、あちらは赤で、こちらはシンプルな木の風合いですから、だいぶ雰囲気が違いますね。高野山の奥社らしい、厳しく引き締まった雰囲気が感じられます

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-11
斜面が急なため、石段脇には荷物などを運搬するトロッコが設置されています

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-12
つづら折りの石段を上から見たところ

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-13
拝殿近くから見下ろしたところ。それなりに長い石段ですが、奉納された鳥居はずっと途切れず続いていました。すごい!


拝殿の軒を円形に繰り抜き杉を通しています

立里荒神社の社殿は、以前からあった杉の木を切ることなく、軒の部分を丸く繰り抜いて貫通させていました。なかなか他では見られない作りで、神木を大事に扱っていることが伝わってくる、とても素敵な光景でした。

なお、荒神社が祀る「三宝荒神」(Wikipedia)とは、神道・密教・山岳信仰などの要素が合わさって生まれた神で、三面六臂(顔が三つ、手が六本)などの明王像風の像として表されることが多いです。不浄を除くため「火とかまどの神」とされており、調理人や旅館など、火を使う職業の方たちから篤く信仰されています。

御祭神の「火産霊神」は、古事記では「火之迦具土神」(ひのかぐつち)のこと。イザナミがこの神を産んだ際に大火傷して命を落とし、怒ったイザナギに斬られてしまいます。
「譽田別命」は応神天皇のことです。

母神を亡くし、父神から斬られてしまった火の神が、こうして祀られているというのも面白いですね。お料理の安全と上達を祈って、ぜひお詣りしてみてください!


荒神社(立里荒神社)@野迫川村-14

立里荒神社の「拝殿」。昭和の初めに建てられたものだそうです。背後の本殿は見えません。足元には大きめの黒い玉砂利が敷き詰めてありますが、足が埋もれるような感覚があって、ちょっと面白かったですね

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-15
拝殿を別角度から。軒を杉の木が貫通しているのが分かります

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-16
唐破風の部分を丸く繰り抜いて、杉の木を切ることなく、自然と共存しています。この社殿が建てられたのが今から80年ほど前ですが、素晴らしいですね!

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-17
社殿が建っているスペース自体が、斜面から高く持ち上がった懸造り(かけづくり)風になっています。その一角も木を切らないで済むよう、こんな凝った作りになっていました

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-20
拝殿より少し手前にある摂社「五社神社」。ここでは天照皇大神、大山柢命、保食命、市杵島姫命、素盞雄命が祀られています

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-18
立里荒神社の拝殿前の狛犬・吽形。まえかけが大きくて可愛らしいですね

荒神社(立里荒神社)@野迫川村-19
こちらは阿形。ファニーフェイスです!



大きな地図で見る


■荒神社(立里荒神社)

住所: 奈良県吉野郡野迫川村池津川
電話: 0747-37-2001
主祭神: 火産霊神、誉田別命
創建: 9世紀前半(伝)
拝観料: 境内無料
駐車場: 無料
アクセス: 南海高野山ケーブル「高野山駅」から、車で75分ほど


■参考にさせていただきました

立里荒神(野迫川村 荒神社) - tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」
野迫川村観光名所 ぶらり旅 - tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」
日本三大荒神社(プラス 三荒神)
奈良の寺社: 荒神社「立里荒神」






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ