2009-09-28

国宝の美仏に会える小寺『宝菩提院願徳寺』@西京区

『宝菩提院願徳寺』@京都府西京区

京都市西京区大原野にある『宝菩提院 願徳寺』へ行ってきました。

あまり聞き慣れないお寺かもしれませんが、国宝の美仏「如意輪観世音菩薩半跏像」がいらっしゃるため、ぜひ一度行ってみたいと思っていました。やっとその念願が叶ったのですが、本当に凛とした素晴らしい仏様で感動しました!


「週刊 日本の仏像」で一目ぼれしました

2007年から50巻にわたって刊行されていた「週刊 日本の仏像」というシリーズがありました。価格も一冊500円とお手頃でしたし、毎回詳しい情報が掲載されていたため、見に行けそうな近場の仏像の回にはよく購入していました。

ある日、店頭で「週刊 原寸大 日本の仏像(31) 宝菩提院願徳寺 如意輪観音と西山」の回を偶然手に取ったのですが、あまりの美しさにお寺の名前も場所も知らなかったにも関わらず、即座に購入していました!そのくらい、圧倒的な美仏だったのです!

お寺の名前は『宝菩提院 願徳寺』。京都の西山に位置する小さなお寺で、国宝に指定されている「如意輪観世音菩薩半跏像」以外には、ほとんど書くべき内容が無い・・・というようなところのようです。

京都の中でも西山方面となると、あまり見どころが少ない地域となりますので、普段はなかなか行く機会がありません。今回、西国三十三所めぐりのため、近くにある『善峰寺』へお参りしてきたため、ようやく実際にお会いできることが出来ました!


宝菩提院願徳寺@京都府-12

必要な回だけを買い集めていた、講談社の「日本の仏像」シリーズ。しかし、この『宝菩提院 願徳寺』の回だけは、パラッと数ページめくってみただけでジャケ買い(?)してしまいました。そのくらい圧倒的な美仏なんです!

宝菩提院願徳寺@京都府-13
見開きページ。凛とした表情と、今にも軽やかに動き出しそうな躍動感のある造形!衣紋の表現も見事ですね。片足を上げた半跏像で、ここまで動きを感じる仏様はなかなかいらしゃらないでしょう


持統天皇勅願の大寺院でしたが・・・

『宝菩提院 願徳寺(ほうぼだいいん がんとくじ)』(山号:仏華林山)は、678年に持統天皇の勅願によって向日市寺戸に創建された、この辺りでも最古の寺院でした。南北800m、東西1,300mにおよぶ寺領を持ち、当時の本尊は薬師如来(現在は太秦の広隆寺に安置されています)だったそうです。

平安時代から鎌倉時代にかけては、穴太流・西山派を生みだした密教系の大寺院でしたが、応仁の乱と織田信長の兵火によって伽藍は焼失。長く荒廃した状態が続きました。

本尊の「如意輪観音(国宝)」などは、1962年に「勝持寺(花の寺)」に安置されていましたが、1973年に願徳寺が向日市寺戸から現在地へ移転、1996年になってご本尊も願徳寺へ戻ってきました。

近年、向日市寺戸の跡地から、奈良時代の古瓦や、日本最古となる中世以前の湯屋などが発見されています。


ようやく再建されたコンクリートの本堂

京都府西京区大原野にある『宝菩提院 願徳寺』は、鉄筋コンクリートの新しい本堂があるだけの、本当に小さなお寺です。「地図にない京都で一番小さな拝観寺院」と名乗っていることからも分かるように、地図にはその名前は載っていませんので、隣接している「勝持寺(花の寺)」を目印にするといいでしょう。

(さすがにGoogleMapには名前が載ってました!)


宝菩提院願徳寺@京都府-07

勝持寺のすぐ隣、こんな細い石段の先にあるのが「宝菩提院願徳寺」です。知らずに来たら素通りしてしまいそうなほどの目立たなさですね

宝菩提院願徳寺@京都府-08
宝菩提院願徳寺の門前。「地図にない京都で一番小さな拝観寺院」を名乗っているだけに、本当に小じんまりしています。拝観の際には、脇のインターホンを押して、許可をいただいてから勝手口っぽい扉をくぐって入っていきます


国宝「如意輪観音像」はとにかく見事!

本堂へ入ると、正面に簡素な厨子があり、その中に「如意輪観世音菩薩半跏像(国宝)」(登録名は菩薩半跏像)がいらっしゃいます。まず最初に、住職から5分ほどの説明がありますが、お堂内部の照明を低めに落とされてしまうので、肝心の仏様がよく見えません。

まずはお寺の縁起や、脇立ちの薬師如来立像・聖徳太子立像などのご説明が始まります。そして、如意輪観音像の説明に入ると、パッとライトが点灯して、鮮やかにその姿が浮かび上がるのです!心憎い演出ですね(笑)

実際に目前でお目にかかった仏様は、本当にきれいでした!

仏様の前に座ってやや見上げるようにしてみると、正面から見るよりもさらに凛々しさが増し、その美しさが引き立ちます。平安時代初期の作で、像高88.2cm、台座まで針葉樹の一木から掘り出されているそうです。

とそれほど大きな仏像ではありませんが、フッと大きく見えるのです。蓮華座の上からゆったりと右足を垂らし、その足先や指先、身にまとった衣文のうねるような流れなど、本当に軽やかな印象がある仏さまでした。十分に見に行っただけの価値はあったと思います!

なお、この像は、寺伝では「如意輪観音」となっていますが、左足を上げた半跏像であることから「三尊像の右脇侍」や「虚空蔵菩薩」などではないかという意見もあるそうです。仏様を目の前に見ながら、そんなことを色々と考えてみるのもいいかもしれません。


宝菩提院願徳寺@京都府-09

宝菩提院願徳寺の「本堂」。コンクリート作りの宝物館風の建物です。本堂と寺務所があるだけの、本当に小さなお寺ですが、ここにいらっしゃる「如意輪観世音菩薩半跏像(国宝)」が、驚くほどの美しさなんです!かなり不便な場所ですが、やって来ただけの価値はありました!

宝菩提院願徳寺@京都府-10
宝菩提院願徳寺の小さなお庭。本当にこれだけしかありません!

宝菩提院願徳寺@京都府-11
寺務所前に貼ってあった、「如意輪観世音菩薩半跏像」の絵はがき(1枚200円)。凛とした表情もいいですが、軽やかな動きを感じさせる全身像が特に素晴らしいんですよね。私が今まで見てきた仏様の中で、間違いなくトップクラスの美しさでした!

宝菩提院願徳寺-ご朱印
宝菩提院願徳寺でいただいたご朱印です


道順がややこしいのでご注意を

なお、宝菩提院願徳寺・勝持寺への道順はちょっとややこしくなっています。

私たちも間違えて正法寺・大原野神社前の道に出てしまったのですが、ここからでは有料駐車場(400円)を利用することになってしまいます。勝持寺の前まで行けば無料駐車場がありますので、間違えずにこちらを利用してください。

勝持寺の山門をくぐって進む道も、なかなか雰囲気があるのですが、それなりに距離がありますので、時間がない時は特にお気をつけください!


宝菩提院願徳寺@京都府-00

途中で道に迷った時に撮影した近隣マップ。一番左上に切れかかっているのが西国三十三所の20番札所「善峰寺」。宝菩提院願徳寺・勝持寺には無料駐車場がありますが、間違って大原野神社の方へ入ってしまうと、駐車代が有料(400円)になりますのでご注意を!

宝菩提院願徳寺@京都府-01
間違って大原野神社方面へ行ってしまうと、「花の寺(勝持寺)」の山門前に出ます。風情のある小道なんですが、それなりに距離がありますのでご注意ください

宝菩提院願徳寺@京都府-02
この山門は「花の寺(勝持寺)」のもの。役小角によって679年に創建されたと伝わっており、あの西行法師がここで出家した寺と伝えられています。桜の花が有名なほか、様々な文化財も所有しているそうです

宝菩提院願徳寺@京都府-04
いかにも京都らしい、竹林の脇の小道を歩きます

宝菩提院願徳寺@京都府-05
「花の寺(勝持寺)」前もこんな雰囲気。今回は時間の関係で立ち寄ることができませんでした



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■宝菩提院 願徳寺

HP: http://www.gantoku.or.jp/
住所: 京都府京都市西京区大原野南春日町1223-2
電話: 075-331-3823
宗派: 向日市寺戸
本尊: 如意輪観音(国宝)
創建: 678年
開基: 持統天皇勅願
拝観料: 400円(毎年2月は事前予約が必要)
拝観時間: 9:30-16:30
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: JR「東向日町駅」、または阪急「東向日駅」から、阪急バス「南春日町」下車、徒歩25分

※かなり交通の便が悪いため、駅からタクシーに乗って「勝持寺(しょうじじ。別名:花の寺)まで」と告げるのが手っ取り早いでしょう






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