2015-11-22

中将姫が育った地に建つ、子安観音のお寺『徳融寺』@奈良市

中将姫が育った地に建つ、子安観音のお寺『徳融寺』@奈良市

奈良市鳴川町の『徳融寺(とくゆうじ)』は、中将姫の父である右大臣・藤原豊成の邸宅跡に建つお寺です。境内には親子の宝篋印塔や、継母から折檻された場所とされる「虚空塚」「雪責松」などが残っています。観音堂には、赤子を胸の前に抱き上げた「子安観音像」が祀られています。聖母像のようなお姿を拝見できて感激しました!(※拝観には事前予約が必要です)


藤原豊成の邸宅跡。中将姫が育った場所

奈良市鳴川町の融通念仏宗寺院『徳融寺(とくゆうじ)』(Wikipedia)。もとは元興寺の境内にあった観音堂(もしくは念仏道場)でしたが、室町時代の土一揆を機に現在地へ移転。1590年(天正18年)に現在地へ移転しました。

この一帯は、藤原氏の祖・鎌足の曾孫にあたり、阿倍仲麻呂(恵美押勝)の兄にあたる、右大臣・藤原豊成の邸宅があった場所です。このため山号を「豊成山」と号しています。

藤原豊成は、當麻寺に伝わる「当麻曼荼羅」を織ったとされ、後の時代に戯曲などの題となった女性「中将姫(ちゅうじょうひめ)」(Wikipedia)の父として知られ、中将姫はこの地で生まれ育ったと伝わっており、継母により折檻された場所とされる「虚空塚」「雪責松」などが残っています。

近隣には、藤原豊成の邸跡の一部とされる尼寺「高林寺」や、中将姫が誕生したとされる尼寺「誕生寺」などもあり(いずれも拝観には事前予約が必要です)、中将姫伝説の中心となるエリアです。


徳融寺@奈良市-01

奈良市鳴川町の『徳融寺』。中将姫の父・藤原豊成の邸宅跡に建つ寺院です。キリスト教の聖母像のように、子供を抱いた「子安観音像」を祀っています。講師を招いてお話を聞ける「おとなの寺子屋」を定期的に開催するなど、地域の中心的な寺院となっています

徳融寺@奈良市-02
境内にある「徳融寺略案内」

徳融寺@奈良市-03
徳融寺の本堂前。境内には毘沙門堂・観音堂・地蔵堂・方丈・庫裏などが立ち並び、中将姫にまつわる跡が多数見られます。観音堂の拝観は事前予約が必要ですが、開門中であれば境内は自由に拝見できます

徳融寺@奈良市-04
観音堂の裏手にある石塔。向かって右が藤原豊成、左が中将姫の宝篋印塔。中将姫の墓所とする説もあるそうですが、石塔自体は鎌倉時代のものです。戦国時代に松永久秀が多聞城を築いた際に、この石塔も徴発されそうになったことがあったとか。連歌師・心前上人が「曳残す花や秋咲く石の竹」と詠んで久秀に送ったところ、その心が伝わり徴発を免れたそうです

徳融寺@奈良市-06
中将姫の宝篋印塔。歌舞伎「中将姫雪責」などが公演される際には。役者がここを参り、舞台の成功を祈願した記録も残っています

徳融寺@奈良市-07
親子の宝篋印塔の間に建つのは、四方が石仏の石塔。正面から薬師仏・阿弥陀仏・釈迦仏・弥勒仏が刻んであるとか。鎌倉中期のもので珍しい作例なのだとか


赤子を抱え慈悲深い表情の「子安観音像」

徳融寺@奈良市-09
この日は、徳融寺・観音堂を拝観させていただけました。拝観には事前予約が必要で、拝観料金などの指定はなく「志納(しのう。こころざしを納めること)」となっています(※すべて写真撮影のご許可をいただいています)

徳融寺@奈良市-10
観音堂のご本尊は、赤子を胸の前に抱き上げた珍しいお姿から「子安観音像」と呼ばれています。像高189cm、檜の一木造り。平安時代初期の作。ただし、手先の部分は後世(室町時代)に付け加えられたもので、本来は聖観音像だったと考えられるとか

徳融寺@奈良市-11
別角度から。宝髪を高く結っていて、表情はとてお穏やか。天平時代の仏さまに近いイメージです。赤子を抱きかかえる姿は、キリスト教のマリア像のよう。母親のように抱きしめるのではなく、御手の先で大事に捧げもち、優しい表情で赤子を見つめています。不思議なお姿ですが、慈悲深さが伝わってきます

徳融寺@奈良市-12

徳融寺@奈良市-13


観音堂「薬師如来坐像」も見事でした!

徳融寺@奈良市-14
同じ観音堂に祀られている「薬師如来坐像」。詳しい説明はありませんが、平安時代の作と伝わる古像です

徳融寺@奈良市-15
台座もふくめて50cmほどだと思いますが、御厨子の中に収まっていても、堂々とした体躯は大きく見えます。素晴らしいお像です!

徳融寺@奈良市-16

徳融寺@奈良市-17


偉人か奇人か?吉村長慶の石像や墓所も

徳融寺@奈良市-18
徳融寺の山門をくぐると、すぐに男性の奇妙な石像が目に入ります。これは幕末の奈良に生まれた豪商であり政治家だった「吉村長慶」の像。関西の多くの寺院に特異な石造物を奉納した、かなり風変わりな人物として知られています(参考サイト「吉村長慶(1)小年譜【その1498】安達正興のハード@コラム」)

徳融寺@奈良市-19
徳融寺は吉村家の菩提寺だっため、吉村長慶の墓所もあります

徳融寺@奈良市-20
こちらは、自らの寺・長慶寺の開基を記念して奉納した石碑。かなり不思議な雰囲気を醸し出していますね



■徳融寺

HP: 参考サイト(Wikipedia)
住所: 奈良県奈良市鳴川町25
電話: 0742-22-3881
宗派: 融通念仏宗
本尊: 阿弥陀如来立像
創建: 不明
拝観料: 志納
拝観時間: 10:00 - 16:00
駐車場: あり
アクセス: 近鉄奈良駅より約20分ほど

※拝観をご希望の方は、事前に電話予約が必要です
※実際にお参りしたのは「2015年10月10日」でした
※この日の拝観予約などは、すべて友人である地方仏マスター「元三大師ファン(@Gan3daishi)さん」が手配してくれました。感謝!


■参考にさせていただきました

大和路アーカイブ [徳融寺]
徳融寺〔奈良市鳴川町〕 中将姫信仰息づくならまちの寺 : IL PELLEGRINAGGIO 古社寺巡拝記






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ