南円堂・北円堂が同時公開「興福寺 国宝特別公開2019」@奈良市
興福寺の南円堂・北円堂が同時公開される「国宝特別公開2019」を拝見してきました(2019年10月17日~11月10日)。藤原冬嗣が父の冥福を祈って建立した「南円堂」には、仏師集団・慶派の礎を築いた康慶の諸仏が、藤原不比等の一周忌に、元明太上天皇と元正天皇が建立した「北円堂」には、その息子の天才仏師・運慶の傑作が安置されています。どちらも本当に素晴らしい空間でした!
6年ぶりの同時公開。貴重な機会です
奈良市の世界遺産寺院『興福寺』で、南円堂・北円堂が同時公開される「国宝特別公開2019」が開催されています。
●毎年10月17日に営まれる「大般若経転読会」の日のみ、年に一度しか公開されない「南円堂(なんえんどう)」(重文)。鎌倉時代の仏師集団「慶派」の礎を築いた康慶(Wikipedia)作の仏像群が祀られています。
●毎年、春と秋に特別公開が行われている「北円堂(ほくえんどう)」。康慶の息子であり、天才仏師と呼ばれる運慶(Wikipedia)作の仏像たちが祀られています。
いずれも通常は非公開ですし、今回のように同時に拝見できるのは6年ぶりのこと。とても貴重な機会です。
興福寺・南円堂の前にテントがあり、ここで拝観チケットを購入します。最近は海外からの旅行客の姿が目立つ奈良市街ですが、奈良国立博物館で「御即位記念 第71回 正倉院展」が開催中ということもあり、日本人の中高年のが多くいらっしゃいました
北円堂・南円堂の特別公開の拝観料は、一般 1,000円、中高生 700円、小学生 300円など
拝観料をお支払いすると、記念品としてエコバッグ(南円堂は靴を脱いで入堂するため、その際の靴入れ用です)と、興福寺といろんなコラボを行っている三島食品さんの「ゆかり」スペシャルパッケージがいただけます
こちらは特別公開のチラシです。力強いデザインがいいですね。大仏師・康慶とその子の天才仏師・運慶。まさに“慶派の頂”というべき素晴らしい仏像がまとめて拝見できて、本当に幸せな時間でした!
「南円堂」には康慶作の仏像が集結
この日は、まずは「南円堂」(重文)から拝見しました。
毎年10月17日のみの公開で、私たちは以前にも拝見していますが、実はその時とは祀られている仏さまが入れ替わっています。
●御本尊は康慶作、像高336cmの大きなお像「木造不空羂索観音像菩薩坐像」(国宝)です。三目八臂(目が3つ、腕が8本)という異形のお姿ながら、どっしりと美しいお姿です。
●その四方を護るのが「木造四天王立像」(国宝)です。こちらも康慶がその弟子たちと制作したもので、以前は中金堂(仮金堂)に安置されていましたが、調査で本来は南円堂に安置されていたものと判明したため、平成29年に南円堂へ遷られました。以前に南円堂に祀られていた四天王立像は、平成30年10月に落慶した中金堂へ遷っています。
●さらに、その間には「木造法相六祖坐像」(国宝)が安置されています。法相宗の興隆に尽力した学僧の肖像彫刻で、こちらも康慶とその弟子たちの作。まさに康慶が手掛けたお像が一同に会した空間になっています。
●余談ですが、御本尊の背後に小さめの厨子があります。小さめの仏さまが祀ってありそうな雰囲気ですが、現場にいた関係者の方に聞いてみると、「開扉したことがないので、誰もわからない」のだとか。ひょっとしたら空っぽの可能性もあるそうです。面白いですね!
興福寺・南円堂は、813年、藤原冬嗣が父・内麻呂の冥福を願って建立した八角円堂で、建立には弘法大師空海も関わっていたと伝わっています。西国三十三所観音霊場の第九番札所として、今なお篤い信仰を集めています。特別公開中のこの日もたくさんの参拝客が訪れていました
南円堂の内部はもちろん撮影禁止ですが、普段は立ち入ることができない基壇まで上がれますので、普段とは違ったアングルで五重塔なども眺められます
南円堂から眺める中金堂。再建されるまでこんな景色は見られなかったのですから、感激しますね
三重塔(国宝)も、南円堂の基壇上から、いつもよりも少しだけ高い位置から見られます
運慶の傑作が安置された「北円堂」
一方の「北円堂」は、康慶の息子の天才仏師「運慶」作の仏像たちを中心に安置されています。
●御本尊は、像高141.9cmの「木造弥勒如来坐像」(国宝)で、大仏師・運慶の晩年の傑作です。静かな佇まいですが、しっかりと力感が伝わってくるよう。南円堂のご本尊と比較して「小さい」と感想を延べている方もいらっしゃったように、同時公開だからこその気づきもありました。ちなみに、脇侍の法苑林菩薩坐像と大妙相菩薩坐像は、ともに後の室町時代の作。
●四方を守護するのは「木心乾漆造四天王立像」(国宝)。791年の制作で、もとは大安寺に伝来したお像だとか。運慶の時代の木のパーツを組み合わせて作る「寄木造」とは違い、木の芯に木くずと漆を混ぜたものを盛り上げて整形する「木心乾漆造」という古い技術が用いられています。どことなくユーモラスで柔らかな印象です。
●御本尊の背後に立つのは、運慶の代表作であり、肖像彫刻の最高峰ともいえる「木造 無著菩薩立像・世親菩薩立像」(国宝)です。ともに190cmを超える大きさで、量感たっぷりで迫力があります。正面から見る姿はもちろん、広い背中に圧倒されます。拝見するたびにその素晴らしさに圧倒されます!
秋の空と北円堂。いいお天気に恵まれて気持ちよくお参りできました
721年、興福寺を創建した藤原不比等の一周忌に、元明太上天皇と元正天皇が建立しました。現在の建物は、1210年頃に再建されたものです。公式ページに「日本に現存する八角円堂のうち最も美しいと賞賛される」とあるように、本当に美しいですね。堂内に入ると息を呑むような濃密な仏像空間が待っています(もちろん撮影禁止です)
興福寺五重塔の前でくつろぐ鹿さん。こんな平和な時代がいつまでも続きますように!
■興福寺 国宝特別公開2019
HP: http://www.kohfukuji.com/event/detail.cgi?event_seq=00000034
期間:2019年10月17日(木)~11月10日(日)
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:大人 1,000円、中高生 700円、小学生 300円 (二ヶ所共通記念品付き)
■参考にさせていただきました
【朝日新聞デジタル】奈良・興福寺の特別公開始まる 運慶親子の国宝が同時に
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