2011-10-19

力強い鎌倉仏!『南円堂』年に一度の特別開扉@興福寺

力強い鎌倉仏!『南円堂』年に一度の特別開扉@興福寺

興福寺の『南円堂(重文)』の特別公開を拝見してきました。南円堂に安置されている御本尊「不空羂索観音菩薩坐像(国宝)」と、その周りを守護する「四天王像(国宝)」と、年に一度、この日だけは素晴らしい鎌倉時代の仏さまたちとお会いできます。


北家・藤原冬嗣が父の冥福を願って建立

世界遺産『興福寺』では、毎年10月17日に「大般若経転読会」が営まれ、年に一度だけ『南円堂(重文)』が特別公開されます。

南円堂とは、813年、時の権力者・藤原冬嗣が、父・内麻呂の冥福を願って建立した八角円堂です。現在の建物は、1789年に再建された4代目。八角の一面は6.4mあります。現在も西国三十三所観音霊場の第九番札所として、篤い信仰を集めています。

興福寺は藤原氏の氏寺ですが、当時、最も反映していた「北家」の内麻呂・冬嗣親子ゆかりの南円堂は、特別な信仰を集めました。建立の際には、和同開珎や隆平永宝をまきながら基壇を築造し、この儀式には弘法大師空海もかかわっていたそうです。

毎年「10月17日」は、年に一度の南円堂の特別開扉の日(大般若経転読会)のため、堂内の拝観はこの日にしかできません。2008年に特別公開などもありましたが、基本的に祀られている仏さまには一年に一度しかお会いできない、とても貴重な機会なのです。


興福寺『南円堂』特別開扉-02

毎年10月17日は、興福寺・南円堂で「大般若経転読会」が催される、年に一度のご開帳日となります。この日は平日でしたし、夕方に近い時間帯だったため比較的空いていました。9時から開扉されますが、法要が行われている間は堂内へは入れないようですので、お気をつけください

興福寺『南円堂』特別開扉-03
南円堂の前には美しい「幡(はた)」が。特別な法要の日にだけ見られます

興福寺『南円堂』特別開扉-01
この日は『興福寺国宝特別公開2011(三重塔初層・北円堂内陣)』も行われており、平日ながらたくさんの参拝客の姿が見られました


10月17日は南円堂「大般若経転読会」です

南円堂は長い間、僧侶ですら立ち入ることを禁じられ、ずっと開扉されていませんでしたが、1973年に「大般若経転読会」が再興され、これと同時に一般の参拝も受け入れてくれるようになったのだそうです。

「大般若経転読会」とは、玄奘三蔵が晩年に訳した経典「大般若経」六百巻を読み上げるもの。奈良時代より国家鎮護を願って大般若会が営まれてきました。



 「大般若経」(正しくは『大般若波羅蜜多経』)は、全六百巻という大部の経典で、五十巻ずつ十二箱に納められ、法要では一箱を一人の僧侶が受け持ちます。一巻を読み上げるのに約一時間はかかりますので、五十巻となると二日間飲まず食わずでようやく完了というしろものです。

 しかし、そこは良くしたもので、最初から最後まで一字一句を読み上げる「真読」に加えて、経題と御真言を唱える「転読」という方法が奈良時代よりなされてきました。「転読」の名称は、もともとは巻物の経典を転がして御真言を唱えたことに因みます。経典の流布にしたがい、木版印刷が盛んに行われるようになると、経典は巻物から折本へと変わっていきました。

今に伝わる転読法要は、導師の「大般若―」の発声とともに、それぞれが大声で唱えながら折本経典を空中に乱舞させ、読み終わるとスッと元の状態に収められる様は、見ていても飽きさせません。(中略)

 興福寺の「大般若転読会」も、皆様のおかげで年をおうごとに盛んになってまいりました。南円堂の御本尊・不空羂索観音像(国宝)は鎌倉復興時代の代表的仏師で運慶の父、康慶一門作による堂々たる菩薩様です。また、ご尊像の背後には、天井までの高さの「不空羂索観音画像」を奉掛します。


興福寺『南円堂』特別開扉-07

一段低くなった「三重塔(国宝)」側からの眺め。南円堂が開扉されているだけで嬉しいですね!

興福寺『南円堂』特別開扉-04
扉が開いている南円堂が見られるのも、一年でこの日だけ。須弥壇の真ん中には、巨大なご本尊「不空羂索観音菩薩坐像(国宝)」が、その周りを「四天王立像(国宝)」が守護しています。ご本尊の背後には、天井までの高さがある「不空羂索観音画像」を掛けられます

興福寺『南円堂』特別開扉-05
普段は南円堂の敷地内には立ち入れませんので、こんなに近くで組物が見られるのもこの日だけ。1789年の再建ですが、作りはシンプルです


鎌倉時代の素晴らしい仏像が拝見できます

興福寺・南円堂は、堂内中央に須弥壇があり、真ん中にご本尊「不空羂索観音菩薩坐像(国宝)」が、その周りを「四天王像(国宝)」が囲んでいます。

●不空羂索観音菩薩坐像は、1189年、有名な南都の仏師・運慶の父親「康慶」が、弟子たちとともに15ヶ月間もかけて作ったとされています。像高3.3mという巨像で、三眼八臂(目が3つ・手が8本)。ずっと開扉されていなかったお堂のご本尊だけに、全身の金箔が美しく残っていますし、透かし彫りの光背(二重円相)や、化仏をいだいた宝冠も見事。平安時代末期らしい、重厚感のあるどっしりした仏さまです。

●後から調べて知ったことですが、ご本尊の不空羂索観音菩薩像は、上半身に斜めに「鹿皮」をまとっているのだとか。鹿は、春日大社で神の使いとされているように、藤原氏にとっても重要なものだっただけに、特別な意味が込められていたのでしょう。

●ご本尊の周りには、躍動感あふれる鎌倉仏「四天王立像(国宝)」が取り囲んでいます。像高はいずれも2m前後で、力強く、劇画的なポージングが特徴的です。宝塔を高く捧げ持つ「多聞天立像」、剣先を斜め下に向けたニヒルな「持国天立像」、戟を片手に遠くを見つめる「広目天立像」、吠えるような表情で斜め下の見下ろす「増長天立像」。いずれも素晴らしいですね。いずれもシンプルで荒々しい岩座に立ち、鎧風の衣装も細部まで作りこまれていて、見ていて全く飽きることはありません。

●中央の須弥壇の天井部分(天蓋)も見事です。日輪をかたどった金色の円から放射状に線が伸びていて、仏さまを見上げるとちょうど眼に入るようになっています(このページに画像あり)。周りをグルッとまわって全ての角度から拝見できるのもいいですね。何周でもできますから、年に一度の機会にじっくりと拝見したいですね。

奈良は仏像の宝庫ですが、これだけ美しい鎌倉時代の仏さまにお会いできるお堂は、まず他には見当たりません。年に一度「10月17日のみ」とチャンスは少ないですが、ぜひ予定を合わせてお詣りしてみてください!


興福寺『南円堂』特別開扉-15

興福寺・南円堂の御本尊「不空羂索観音菩薩坐像(国宝)」(図録より)

興福寺『南円堂』特別開扉-16
興福寺・南円堂の「四天王立像(国宝)」(図録より)


再建中の「中金堂」の御朱印もいただけます

また、東金堂の前に「中金堂勧進所」というプレハブ小屋が建っていました。こちらで、まだ再建中の中金堂の御朱印がいただけました。

中金堂再建勧進のお願い」のページに詳しいですが、現在、興福寺では中金堂の再建事業に取り組んでいて、総費用は60億円と見積もられていえるそうです。御朱印はわずか300円ですが、それも再建費用に当てられますから、御朱印をいただいたり、軒瓦などのご浄財を行ったりして、少しでも協力してあげてください。


興福寺『南円堂』特別開扉-11

興福寺・東金堂の真向かいに「中金堂勧進所」というプレハブ小屋ができていました(背後に見えるのが建設中の「中金堂」)

興福寺『南円堂』特別開扉-12
まだ再建中の中金堂ですが、すでに御朱印がいただけます。ストレートに「中金堂」と書かれたものと、「令興福力(りょうこうふくりき)」と書かれたものの2種類があります。令興福力とは、興福寺の寺名の由来にもなった「維摩経」の一説「福力を興さしむ」からとっているそうです

興福寺『中金堂』ご朱印
この日、いただいてきた興福寺・中金堂のご朱印です。中央に中金堂ご本尊の釈迦如来さまのご宝印があります。300円というわずかな金額ですが、それも中金堂再建のための利用されますので、皆さんもぜひいただいてみてください

興福寺『南円堂』特別開扉-08
南円堂前の売店で販売されていた、興福寺オリジナル御朱印帳。南円堂と五重塔がデザインされています。次回はここで購入します!

興福寺『南円堂』特別開扉-09
興福寺の法被の背中には、藤原氏の家紋の「下り藤」が大きく描かれています。スタッフの方にお願いして撮影させていただきました(笑)

興福寺『南円堂』特別開扉-13
暮れゆく五重塔

興福寺『南円堂』特別開扉-14



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■興福寺

HP: http://www.kohfukuji.com/
住所: 奈良県奈良市登大路町48
電話: 0742-22-7755
宗派: 法相宗大本山
本尊: 釈迦如来(国宝)
創建: 669年
開基: 藤原不比等
拝観料: 境内-無料、国宝館-600円、東金堂-300円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良線-近鉄奈良駅 徒歩7分

※西国三十三所の第九番札所(南円堂)
※南都七大寺の一つ

※実際にお参りしたのは「2011年10月17日」でした。


■参考にさせていただきました!

興福寺 - Wikipedia
興福寺 中金堂再建勧進のお願い


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