2008-11-04

『興福寺』五重塔の初層を拝観しました!@奈良市

興福寺(国宝特別公開2008)

奈良に来てからというもの、何度も何度も前を通り、何枚も何枚も写真を撮ってきた『興福寺』の「五重塔(国宝)」。その内部に入ることなど、これまで考えたこともありませんでした。

しかし、「興福寺国宝特別公開-2008-」が開催され、五重塔の初層が一般公開されるだけではなく、南円堂の内陣の公開に、北円堂の公開まで重なるという、とっても魅力的なイベントが開催されていたため、喜んで出かけてきました!


あの五重塔の内部に入れるなんて!

このイベントは「興福寺国宝特別公開-2008-」といい、2008年10月18日-11月24日までの期間の開催となります。ちょうどお隣の奈良国立博物館では、信じられないほどの動員力を誇る「正倉院展」も行われていたため、平日だったにもかかわらず、ちょっとしたお祭り並みの賑わいでした。

何といっても、ここの初層の扉が開放されている姿を見るのも初めてなら、五重塔の近くに人がいる様子を見るのも初めてですからね。ちょっとした違和感を感じてしまうほどの光景です。

20名くらいずつに分けて、順番に入場していくのですが、アルバイトさんも多数雇われていたようで、ほとんど混乱も無く、かなり快適に拝観できました。

内部には、薬師三尊像・釈迦三尊像・阿弥陀三尊像・弥勒三尊像が四面に向いて安置されており、過去から未来までのお釈迦さまの四相を表しています。パンフレットによれば、「顕教における仏を曼荼羅風に配置したもの」だとか。計12体の仏像はどれも穏やかな印象で、いずれも鎌倉時代以降の作品だと思われます。

また、内部では、一部の板を外して五重塔の基礎部分が見られるようになっていたり、2階部分へ上がる簡素な階段が見られたりと、普段は決して出来ないような、とっても貴重な体験もさせてもらえました。

興福寺の五重塔は、730年に光明皇后によって建てられたものですが、5回の焼失・再建を繰り返し、現在のものは1426年に再建されたものだそうです。間近で見てみるとよく分かるのですが、遠目で見ていたのでは分からなかった傷みが目立って、意外とダメージを受けていることに気づきます。

そんなアラも目立ってしまうのも事実ですが、外に出てほぼ真下に立って五重塔を見上げた時には、かなりの感動がありますね。改めて言うことでもありませんが、やっぱりその大きさには圧倒されますし、シンメトリーが美しくて、空に吸い込まれそうな気持ちにさえなります。

こんなアングルから見ることはもう一生できないかもしれませんので、出来れば写真の一枚でも・・・と思うのですが、初層の内陣はもちろんのこと、敷地内では一切の写真撮影は禁止です。写真に関しては、結局、いつもと全く同じ距離から、同じようなアングルから撮影するしかありませんでした(笑)


興福寺(五重塔初層)-01

いつ行っても沢山の観光客で賑わっている『興福寺』。10月18日-11月24日の期間で、
五重塔の初層の内陣と南円堂内陣を特別公開する「興福寺国宝特別公開」が開催されていて、とにかくすごい人出でした!

興福寺(五重塔初層)-02
これが特別公開のチケット。五重塔初層・南円堂・東金堂がセットになって1,000円でした。この日は「北円堂(@300円)」も公開中だったため、国宝館も含めて、興福寺の全てが見られる貴重なチャンスでした

興福寺(五重塔初層)-03
平日なのにこの人出です。何名かずつを順番に入場させているため、意外とゆったりと、のんびりと拝観することができました。五重塔の初層が開放されている姿を見るのは初めての経験ですね

興福寺(五重塔初層)-04
初層の内部が撮影禁止なのはもちろんですが、敷地内での撮影も全て禁止です(この画像は敷地外から撮ってます)。間近から塔を見上げてのアングルなどを撮影したかったのですが、残念ですね・・・。至近距離からみた五重塔は迫力がありました!

興福寺(五重塔初層)-05
五重塔の組物。この写真でも分かりますが、軒の部分の板が破れたりしているのがよく見えました。内陣の公開は、以前は初層から上の階にも上がれたそうですが、老朽化が激しいため、現在では上ることはできません


「南円堂」の仏像はどれも魅力的!

そして、同時公開(?)となっているのが、西国三十三所の第九番札所にもなってる「南円堂(重文)」です。コチラは毎年、定期的に公開されていますので、その貴重さではやや劣るのですが、西国三十三所結縁ご開帳のキャンペーン中ということもあってか、ものすごい賑わいっぷりでした。

コチラは、藤原冬嗣が813年に建立したもので、現在は4代目で1789年の再建です。奈良の基準からいえば、まだまだ新しい建物ですので、色合いも華やかで装飾も華美。時代を下った感じは十分に見て取れます。しかし、日光東照宮などの江戸時代の代表的な建築物からすればかなり地味に見えるという、何となく中途半端な立ち位置のお堂になりますね(笑)

しかし、中に収められている仏像には圧倒されました!

ご本尊「不空羂索観音菩薩坐像(国宝)」は、運慶の父親「康慶」の1189年の作。像高3.3メートルの寄木造の大きな像で、目が3つ・手が8本の異形です。しかし、ドッシリと重厚で穏やかな印象で、間近から見えあげていると、自然と畏怖の感情が浮かんでくるようでした。それでいて親近感も感じられるのですから、不思議な感じです。

同じ不空羂索観音像でも、東大寺の法華堂(三月堂)のご本尊(こちらは立像です)とは全くタイプが異なっていて面白いですね。お堂の作りの違いも関係すると思いますが、法堂が「手が届かないような神々しさ」を感じるとすれば、南円堂では「近くに寄って諭されたいような近しさ」を感じます。

さらに、その周りを取り巻く「木像四天王立像(国宝)」もいいんですよ!
それぞれが2メートルほどの像高なんですが、いずれも力強く、劇画的なポージングが特徴的です。いずれも鎌倉期らしいパワフルさが感じられます。

中でも、「多聞天像」は、お馴染みの「宝塔」を左手に持っているのですが、それをわざわざ高く天に掲げているのです!宝塔をしっかりと守護するのが役割だと思っていたのですが、それを無防備にドラマチックに空に向かって差し出しているのがスゴイですね(笑)

いずれにしても、仏像好きな私にとって、かなり楽しめるお堂だったことは間違いありません。飽きずに何周も回って楽しめますので、機会があればぜひどうぞ!


興福寺(南円堂)-01

この日、特別にご開帳されていた「南円堂」。西国三十三所の第九番札所になっており、数多くの参拝客で賑わっていました

興福寺(南円堂)-02
興福寺「南円堂」前。普段はどちらかというとひっそりしたお堂なんですが、さすがにこの人だかりです。ここも向かって左側のテントから入場した先では、一切の撮影は厳禁。近くで撮影できると思っていたのに、さすがに残念ですね

興福寺(南円堂)-03
南円堂のご本尊は、鎌倉時代の仏師・康慶(運慶の父上)作の「不空羂索観音菩薩坐像」(国宝)。像高3.3メートルの寄木造の大きな像で、ものすごい迫力でした。その周囲を守護する四天王像(国宝)も、ポーズが劇画的でかなり魅力的でした

興福寺(南円堂)-04
普段は開いていない南円堂の扉も、この日は開け放たれています。ご本尊の手とは紐が繋がれていて、ご縁を結べるようになっています。なお上に注連縄(しめなわ)が見えるのは、神仏習合の時の名残なのだそうです

興福寺(南円堂)-05
南円堂のご朱印もいただいてきました。さすがに西国三十三所の札所だけあって、寺務所も大忙しです。英文のおみくじなどもあって、海外からの観光客の方たちも大喜びしてましたね


北円堂の方面から見た南円堂。お堂をグルリと一周して、靴を脱いで入ります。奈良国立博物館で「正倉院展」を開催していたこともあって、とにかくかなりの人ごみでした


それに比べて「北円堂」はやや地味で・・・

そして、同じ時期に特別開扉されていた「北円堂(国宝)」にも行ってきました。実は以前にも一度拝観したことがありましたが、全体の印象がかなり地味で、それほど記憶に残っていないのです。

ここのご本尊は「弥勒如来坐像(国宝)」ですが、やはり最も有名なのは、法相宗の高僧を運慶が写実的に彫り上げた「無著・世親菩薩立像(国宝)」でしょう。

やはり実在する人物の肖像彫刻ですから、目が多かったり手が多かったりするはずはありません。失礼を承知で言えば、正直「普通のおじいちゃん」に見えたりするのです・・・。私には理解しづらいものではあるのですが、帰り際に後姿を見たときに、その背中の大きさに神々しさを感じました。私も、あと何年かすれば、この仏像の良さも理解できるようになるのかもしれませんね。


興福寺(北円堂)-01

コチラも秋の特別公開中だった「北円堂(国宝)」。ただし、建物といい、収められている仏像といい、他と比べてやや地味な印象があるためか、人気が無くガランとしています

興福寺(北円堂)-02
北円堂は三手先の斗キョウですが、簡素な印象のある造り。721年に建てられましたが、現在の建物は13世紀初頭の再建です。色合いのくすみ方が渋いですね

興福寺(北円堂)-03
人気(ひとけ)がないと言っても、このくらいの観光客は来ています。メインは慶派が作り上げたご本尊「弥勒如来坐像(国宝)」。そして、やはり「無著・世親立像(国宝)」でしょう。正面から見ると普通のお爺さんに見えますが、背中が大きくて神々しいんです!

興福寺(北円堂)-04
北円堂の水煙。遠目には分かりにくいですが、秋の空に映えて、とても風情がありました

2009年春には「阿修羅像」が東京出張!

その後、「東金堂(国宝)」などにも立ち寄りましたし、境内のほとんどを見て回りました(国宝館だけは時間切れでした)。現在、再建中の「中金堂」も、基壇部分がほぼ完成していて、次第に形になってきているのが分かって面白いものです。

(※興福寺に関しては、以前のエントリでも色々と書いていますので、詳しくは省きます)


また、トピックとしては、来春に東京国立博物館で「阿修羅展」が開催される告知もされていました。

これは「興福寺創建1300年記念」イベントとして、2009年3月31日-6月7日までの期間行われるそうで、タイトルどおり「阿修羅像(国宝)」が出張するのはもちろんのことですが、その仲間たち「八部衆像」と、さらに「十大弟子像」までもが勢ぞろいするんだそうです!

あの八部衆像がどんな姿で陳列されるのか、楽しみですね。どれも本当に愛嬌があり、それでいてカッコイイ仏像ですから、出来れば私も見に行きたいくらいですが・・・。

首都圏在住の方はお楽しみに。そして、奈良近郊にお住まいの方は、阿修羅像が長い出張に出かけてしまう前に、拝観しておいた方がいいかもしれませんね。


興福寺(東金堂)

特別公開のセットになっていた「東金堂(国宝)」も拝観してきました。一木造の四天王立像や、小ぶりな十二神将像など、見どころも多いのですが、仏様の数が多すぎてやや見づらいのです。何とも贅沢な悩みですけどね(笑)

興福寺(境内)-01
興福寺の五重塔と東金堂の眺め。白いテントが建てられていて、そこでチケットの販売が行われていました

興福寺(境内)-02
2010年に向けて再建中の「中金堂」。コンクリートの基壇部分が完成していました。見るたびに工事は進んでいますね。私たちが支払った拝観料も、その一部になるかと思えば文句は言えません!

興福寺(境内)-03
南円堂前にはグッズ販売の特設テントも登場。あの「せんとくん」の作者としてお馴染みの薮内先生のカレンダーまで登場!申し訳ないですが、面白いとは思いましたが買いませんでした(笑)

興福寺(境内)-04
特設販売コーナーの一角。背後に飾られた風呂敷(または暖簾か?)が、かなり渋くていいですね。しかし、なぜナマズなんだろうか・・・

興福寺(南円堂)-ご朱印
興福寺の南円堂でいただいてきたご朱印です。うーん、全体的なバランスといい、どーもイマイチですね・・・



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■興福寺

HP: http://www.kohfukuji.com/
住所: 奈良県奈良市登大路町48
電話: 0742-22-7755
宗派: 法相宗大本山
本尊: 釈迦如来(国宝)
創建: 669年
開基: 藤原不比等
拝観料: 境内-無料、国宝館-500円、東金堂-300円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料駐車場アリ
アクセス: 近鉄奈良線-近鉄奈良駅 徒歩7分

※西国三十三箇所霊場の第九番札所(南円堂)
※南都七大寺の一つ






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