2008-03-24

異形「五大明王像」と会える『不退寺』

不退寺

「佐保路の三観音巡り」のラストは『不退寺(ふたいじ)』です(別名:業平寺)。法華寺から数km離れて、国道24号線を挟んだ位置にありますが、同じ時期に秘仏「聖観音菩薩立像(重文)」を一般公開しているため、やはりセットで周っておきたいところでしょう。


六歌仙「在原業平」が建立しています

この不退寺は、あの六歌仙のひとり「在原業平」が建立したと伝えられているお寺で、非常に結びつきが強いそうです。

寺伝によれば、大同4年(809年)、平城天皇が譲位してのち隠棲し「萱の御所」と称したのが始まりとされ、その後平城天皇の皇子である阿保親王、更に阿保親王の5男である在原業平が暮らしたという。伊勢神宮参詣時に受けた神勅を機に、業平が自ら聖観音像を刻み、「不退転法輪寺」と号して阿保親王の菩提を弔ったのが、寺院としての始まりと伝えられている。

寺の近辺からは平安時代前期の古瓦が出土しており、創建がその頃までさかのぼることは認められるが、中世以前の沿革はあまり明らかでない。
Wikipedia「不退寺」より引用

在原業平の肖像画が残されていたり、境内に歌碑が残されているだけではなく、ご本尊の聖観音も在原業平の作だと伝えられているというのですから驚きですね。

不退寺-01
仁明天皇の勅願によって在原業平が建立したとされる『不退寺(ふたいじ)』。正式名称を「金龍山 不退転法輪寺」、別名を「業平寺」をいいます。佐保佐紀路のお寺とされていますが、法華寺などからは数km離れた場所にあります

不退寺-02
不退寺の由来を示した看板。創建は847年で、過去は「南都十五大寺」の一つとして数えられていたのだとか

不退寺-03
1317年建立の「南門(重文)」から本堂を見たところ。一目で全てが見渡せるほどの小さなお寺です

不退寺-04
寺務所の様子。縁側の奥の座敷に書き物机があって、そこでご朱印などを書いてもらいます。拝観料もここで支払います

不退寺-05
寺務所の奥にある「石棺」。近くにあるウワナベ古墳南側の「平塚古墳」で発掘されたもので、5世紀のもの。何でここに置かれるようになったのかは不明です


「五大明王像」が面白い!

不退寺の「本堂(重文)」は鎌倉時代のもので、どちらかというと簡素な作りだといえるでしょう。建物自体はそれほど面白いといえるようなものではないかもしれません。仏像もそれほど豊富というワケではありませんが、それでもなかなか楽しめました。

・秘仏「聖観音菩薩立像(重文)」 初めてお目にかかってきたのですが、なかなか個性的な観音さまでしたね。平安初期の「在原業平作」と伝えられているもので、像高2m弱の一木造り。極彩色の装飾が剥がれ落ちてきて、白い彩色と木肌が入り混じって見えます。ふくよかな感じの像ですが、最大の特徴は、頭の両脇の大きな「リボン」のような飾りです。まるで「セーラームーン(?)」のようでした!

・「五大明王像(重文)」 平安時代に流行した五大明王」が、全て揃って現存しているのは、奈良ではほぼ不退寺のみなのだそうです。そのどれもが異形で、多手多足のお不動さんもいらっしゃって、かなりの迫力ですね。


この五大明王像が面白かったため、もう少し詳しく書いておくと、

・剣と羂索を手にした「不動明王」
・8本の手と三面の顔を持つ「降三世明王(ごうざんぜみょうおう)」
・8本の手の一組で腕組みしている「軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)」
・水牛に乗り、6つの手足顔を持つ「大威徳明王(だいいとくみょうおう)」
・6本の手の戦勝の神「金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)」

というメンバーです。平安時代末期の仏像で、鎌倉仏ほどの迫力はありませんが、その造形の面白さは十分に楽しめました。

画像などはありませんが、日本で一番有名だと思われる「京都・東寺」の五大明王像のページがとてもよく出来ていますので、そこで雰囲気だけ味わってみてください。さすがに不退寺の像はここまで立派ではありませんが、面白い仏像があることだけは間違いありません。

東寺観光案内・講堂立体曼荼羅


不退寺-06

不退寺の「本堂(重文)」。鎌倉時代の建築で、過去に3回の大修理を経てきているそうです。ここに秘仏のご本尊「聖観音菩薩立像(重文)」と、珍しい「五大明王像(重文)」などが祀ってあります

不退寺-07
軒は二軒に伸びたものですが、斗きょうなどは特に目立つようなものではありません。本堂内部は三斗を組んだ華やかなものになっています


かなり小さなお寺ですので・・・

本堂の仏像以外に関しては、正直なところ、個人的にはそれほど触れるべき点が思い浮かびません・・・。それほど大きなお寺ではありませんので、ゆっくり見て周っても30分もかからないでしょう。

季節によっては、レンギョウやカキツバタなどが咲くそうですので、秘仏の公開時期か、お花の時期に立ち寄ってみてください。

不退寺-08
不退寺の「多宝塔(重文)」。以前は檜皮葺きの上層部があったのですが、廃仏毀釈の時期に取り払われてしまい、現在は第一層が残るのみです

不退寺-09
在原業平ゆかりのお寺らしく、伊勢物語の歌碑が建っていますこちらは百人一首から

不退寺-10
境内には小さな池があります。花の時期になったらなかなかキレイな眺めになるでしょう

不退寺-11
お庭から本堂を眺めたところ

不退寺-ご朱印
不退寺でいただいたご朱印です


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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。



大きな地図で見る


■不退寺

HP: なし
住所: 奈良県奈良市法蓮東垣内町517
電話: 0742-22-5278
宗派: 真言律宗
本尊: 聖観音菩薩立像(重要文化財)
創建: 847年
開基: 在原業平
拝観料: 400円(特別公開時500円)
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 数台分(かなり狭いです)
アクセス: JR大和路線奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バス(西大寺駅・航空自衛隊行き)「一条高校前不退寺口」下車、徒歩5分。または、近鉄新大宮駅から徒歩約15分。






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