憧れの阿弥陀三尊像!令和記念『興福院』特別拝観 @奈良市
佐保路の尼寺『興福院(こんぶいん)』で、約20年ぶりという「令和記念 興福院特別拝観」が開催されています(2019年11月6日~8日、22日~24日)。なかなか拝観予約が取れなかったお寺のため、憧れていたご本尊「阿弥陀三尊像」(天平時代、国重文)に初めてお会いできて感動しました!
閑静な佐保山に位置する由緒ある尼寺
佐保路の尼寺『興福院(こんぶいん。山号:法蓮山)』は、奈良時代の創建と伝わる古刹です。当初は平城京右京四条ニ坊の菅原伏見の里(現在の近鉄尼ヶ辻駅のすぐ東)にありましたが、1665年(寛文5年)に現在地へ移りました。中世以前の歴史は判然としませんが、中世以降、豊臣秀吉や徳川家の寄進を受けながら再興を重ね、由緒ある尼寺として法灯を保っています。
興福院のご本尊「阿弥陀三尊像」(天平時代、国重文)は、とても美しいお像で、仏像本などでその姿を拝見するたびに「ぜひお会いしたい」と願ってきました。
しかし、先代の御住職がご高齢のため、お電話で拝観予約をお願いしても受け付けていただけない時期が長く続き、私にとってずっと拝観がかなわない“幻のお寺”だったのです。
ところが、2019年秋、「令和記念 興福院特別拝観」と題し、約20年ぶりの特別拝観が開催に(期間:11月6日~8日、22日~24日)。ワクワクしながら、初日にお邪魔してきました。
佐保路の『興福院』の参道。奈良市法蓮町の閑静な土地にあり(鴻ノ池運動公園の西側)、奈良の古刹の風情が感じられます。木々が紅葉に色づき始めていました
興福院の「大門」。江戸時代の建築の四脚門です。駐車場はこの脇に8台分あります
さらに中門をくぐると、長い石段の先に「本堂」が見えます。書籍などで何度も拝見してきただけに、この時点で感動モノでした!
端正な建築物「客殿」と美しい「打敷」
特別拝観は、左手の「客殿」(国重文)で受付を行います。江戸時代の建築で、入母屋造・檜皮葺。ぴしっと屋根の先が反っているのが美しいです
客殿に入ると、美しいしつらえが目に飛び込んできます。襖絵などは、狩野派や大和絵、琳派などの流れをくむ渡辺始興の筆。障子の襖絵は狩野派の絵師・鶴沢探索のものだとか
興福院・書院の内部の様子
広間中央には、仏前へのお供え物の下に敷く「打敷(うちしき)」が展示されています。渡辺始興の襖絵も素朴で美しい!
「打敷」をアップで。こちらは1838年(天保9年)、尾張藩11代藩主・徳川斉温公の正妻・俊恭院から寄進されたものだとか。美しい!
また、興福院には31点の「刺繍袱紗(江戸掛袱紗)」(国重文)が伝わっています(京都国立博物館寄託)。5代将軍・徳川綱吉公が愛妾の瑞春院へ贈った贈り物に掛けられていたものだったとか。会場ではそのうちの12点が写真で紹介されていました
客殿の奥の間。床や違い棚などが見事です
客殿をL字型に囲む「庭園」。かつては1636年(寛永13年)に3代将軍・徳川家光公の寄進を受けて、茶人や作庭家としてマルチな才能を発揮した「小堀遠州(こぼりえんしゅう)」が手掛けたものでした。1665年(寛文5年)に現在地へ移った際に、いわゆる“遠州ごのみ”で新しく作庭されたそうです
斜面の高いところから庭園と客殿を見下ろしたところ。佐保山の緑に囲まれて、風情ある景色です。これから紅葉に色づいていくでしょう。春はサツキ、初夏にはクチナシなどが咲くとか
さらに角度を変えて。手前に飛び出している玄関部分は、ここへ移築した後に増築されたものだとか
客殿から渡り廊下をわたって本堂へ向かいます
優美で高貴!ご本尊「阿弥陀三尊像」
興福院の「本堂」(奈良県指定文化財)。1642年(寛永19年)の本瓦葺の建築です
本堂を正面から。桁行5間、正面向拝3間の堂々たるお堂です。本堂の扁額は、小堀遠州が揮毫したもの。正面からカメラを向けるのを避けたら一枚も写っていませんでした……。ぜひ現地でじっくりとご覧ください!
※写真は「週刊 日本の仏像 No.32 法華寺・十一面観音」(講談社)より
興福院のご本尊は「阿弥陀三尊像」(国重文)です。天平時代の木心乾漆造で、左右対称に片足を踏み下げた観音菩薩像・勢至菩薩像が脇侍として従っています。興福院が再興された際に寺に迎えられましたが、それ以前の来歴は不明のようです。
中尊の阿弥陀如来坐像は、親指と薬指で輪を作る下品中生(げぼんちゅうしょう)の印相を結ぶ珍しいお姿です。その印象は高貴であり、やわらかく穏やかであり。衣紋の表現も豊かで、本当に優美なお像でした!
ちなみに、御本尊に向かって左手には、お地蔵さまなどとともに、アフロヘアーのようなユニークなお姿の五劫思惟阿弥陀仏の小さなお像もいらっしゃいました。お見逃し無く!
興福院でいただいた御朱印と、特別拝観の記念品「重文 江戸掛袱紗」柄クリアファイル(500名限定)です。拝観料などは文化財の保存・修復に充てられるそうです。貴重な機会ですのでぜひお詣りください!
今回は非公開だった「御霊屋」や「茶室」
この他の興福院の建築物などを簡単に。大門をくぐってすぐ右手にある「薬師堂」
本堂の西側に建つ「御霊屋」(今回は非公開)。徳川家の位牌を安置し、ここにも渡辺始興の襖絵があったとか(京博へ寄託)
本堂前の石段の右手に建つ「茶室」と「長闇堂」(今回は非公開)
本堂の東南に位置する「鐘楼」
境内の宝篋印塔。そのはるか先には、興福寺・五重塔と東大寺・大仏殿が見えます
■興福院(こんぶいん)
HP: 参考サイト(巡る奈良)
住所: 奈良県奈良市法蓮町881
電話: 0742-22-2890
宗派: 浄土宗
本尊: 阿弥陀三尊像(国重文)
創建: 奈良時代
拝観: ※電話にて要予約
※7月~8月、12月~2月は拝観を受け付けていないようです。
駐車場: 8台分あり(無料)
■令和記念 興福院特別拝観
HP: 参考サイト(巡る奈良)
期間:2019年11月6日(水)~8日(金)、11月22日(金)~24日(日)※計6日間
時間:9:00~16:00
拝観料:大人1,000円、中高生500円、小学生以下は無料
記念品:令和特別拝観記念「重文 江戸掛袱紗」柄クリアファイル(500名限定)
■参考にさせていただきました