天橋立を股のぞきで一望『成相寺』@京都府宮津市
前日の舞鶴市の「松尾寺」に続いて、西国三十三所の秘仏巡りで、お隣の宮津市にある『成相寺』へ行ってきました。
ものすごい急斜面あり、立派な五重塔あり、左甚五郎あり、天橋立の展望台あり、初体験の「土器盃投げ」ありと、とにかく色々と楽しめるお寺でした!
『成相寺』の縁起とは
西国三十三所の第二十八番札所である『成相寺(なりあいじ)』。天橋立を望む成相山の一帯は、日本古来の山岳宗教の修験場として信仰を集めてきた土地でした。成相寺は、文武天皇の勅願所として、704年に真応上人が創建したと伝えられています。
以前は、今よりもさらに山の上部にお堂が建てられていましたが、1400年に大規模な山崩れにあい、現在地へと移りました。
「成相寺」という名前には、以下のような切ない逸話が伝えられているそうです。
一人の僧が雪深い山の草庵に篭って修業中深雪の為、里人の来住もなく食糧も絶え何一つ食べる物もなくなり、餓死寸前となった。
死を予感した憎は「今日一日生きる食物をお恵み下さい」と本尊に祈った。
すると夢ともうつつとも判らぬ中で堂の外に狼の為傷ついた鹿が倒れているのに気付いた。
僧として、肉食の禁戒を破る事に思い悩んだが命に変えられず、決心して鹿の腿をそいで鍋に入れて煮て食べた。
やがて雪も消え里人達が登って来て、堂内を見ると本尊の腿が切り取られ鍋の中に木屑が散って居た。
それを知らされた僧は観昔様が身代リとなって助けてくれた事を悟り、木屑を拾って腿につけると元の通りになった。此れよりこの寺を成合(相)と名付けた
「成相寺」ホームページより
この他にも、同寺には「撞かずの鐘」「身代わり観音」など、やや切ない逸話にあふれていているようです。
33年に1度のご開帳の最終日!
成相寺は、険しい山道を上った先にある山寺です。
本堂には、33年に一度しかご開帳されない、秘仏のご本尊「聖観音立像」が祀られており、この日はそのご開帳の最終日ということもあり、多数の参拝客が訪れていました。
京都府宮津市のある『成相寺』へ上る急坂。天橋立が見下ろせるような高台にあるため、坂を上るのは当然なんですが、かなりハードです。スキー場の緩斜面なみの上りでした
成相寺の「本堂」。1774年に再建されたもので、簡素で力強いタイプのお堂です
成相寺の本堂前。ご本尊の「聖観音立像」は、33年に一度しか公開されない秘仏で、先回のご開帳は2005年でした。今回の特別ご開帳を除けば、次にお会いできるのは「2038年」のことになるそうです!
雲をかたどった文様細工が見事ですね。江戸時代の建築物らしく、しっかりと装飾も施されています
左甚五郎作の「真向の龍」も必見!
ご本尊の「聖観音立像」自体は、像高74.8cm、平安期の一木造の仏様です。それほど大きな像ではなく、それほど仏師がテクニックを駆使した・・・というタイプでもなく、かなり落ち着いた穏やかな雰囲気の像でした。
また、興福寺にいるような「天燈鬼」「龍燈鬼」像が左右に立っているのですが、どちらも人間の等身大くらいの大きさで、真っ赤と真っ青の肌をしているんです。いかにも迫力のある鬼の風体で、かなり面白かったですね。
さらに、成相寺の名物と言えば、左甚五郎作の「真向の龍(まむきのりゅう)」でしょう。龍と目を合わせながら横に移動しても、ずっと視線は合ったまま・・・というものです。その真意のほどは、実際にお確かめください!
本堂の外陣の様子。連続する吊り灯篭と、外側にかけられている巨大な数珠が見事です。この日は、ご本尊のご開帳の最終日(ご閉帳というそうです)だったため、多数の参拝客で賑わっていました
ご本尊と結ばれて、ご縁を結べる五色の紐。見せ方がオシャレでいいですね
本堂にある、左甚五郎作の「真向の龍」。「龍と目を合わせながら、向かって左手から右手へ移動すると、あら不思議!ずっと目が合ったまま!」というものらしいのですが、それほどではないような・・・(笑)
かなり地味目な重文「鉄湯船」
成相寺の境内では、手水舎のおけ「鉄湯船(てつゆぶね)」が重要文化財として登録されているそうです。見たところ何の変哲も無い鉄製の釜にしか見えませんが、1290年、山川貞清という人物によって作られたものだと判明しているのだそうです。
面白いことに、同年に同じ作者が作ったものが、すぐ近くの「智恩寺」の境内でも見られました。他の地方では見られないものが、宮津市に2つも残されているなんて、何かしらの理由があったんでしょうね。
一願一言の地蔵さん。願い事を一言だけお願いすれば、どんなことでも叶えてくれるのだとか。安楽ポックリ往生の願いも叶うそうです
本堂脇の小さなお堂にいらっしゃった「孔雀明王」さん。まだ新しいものなのでしょう、色鮮やかです!
本堂脇に建っている「成相寺鎮守堂」。屋根にトタンが張られているのはどーかと思いますが、こじんまりと可愛らしいお堂です
この手水舎は、何と重要文化財です!工芸品として指定を受けているのは「鉄湯船(てつゆぶね)」。1290年の作で、もとは湯船として使われていたものを転用したのだそうです。こんな重文も珍しいですね
悲しい伝説が残る「撞かずの鐘」。新しい鐘を鋳造するため寄進を募ったところ、裕福な家の奥さんが激しく断りました。鋳造当日、奥さんが誤って煮え立った銅の中に乳飲み子を落としてしまい、鐘の音は子供の泣き声に聞こえる・・・という救われないお話です
新しい五重塔も美しい眺めです
成相寺には、1998年に完成したばかりの新しい「五重塔」があります。天橋立を一望できる展望台「弁天山展望台」へ上って行くと、「五重塔の背後に海が見える」という景色も見られますので、ぜひ上ってみてください。上りはちょっとつらいですが、5分も掛からずに頂上へ出られます。
成相寺の「五重塔」。1998年に完成したまだ新しい塔ですが、古式に則って作られているそうです。ちなみに、手前の池の名前は「底なしの池」・・・
成相寺では、天橋立まで見渡せる展望台が2ヶ所あります。その片方を自力で上って行くと、五重塔を見下ろせる位置まで上がれます
五重塔と丹後の海。海と五重塔が一望できる場所なんて、なかなかありません!
2つの展望台から天橋立を股のぞき!
成相寺には、徒歩で上る「弁天山展望台」と、車で上れる「成相寺パノラマ展望台」の2ヶ所から、天橋立を見ることができます。
両方ともキレイに天橋立が見えますし、どちらからでも願いを込めて焼き物のお皿を投げる「土器盃(かわらけ)投げ」が出来ますので、それほど変わりはないような気もしました。
看板にあったように「傘松公園以上の展望台です」という言葉が正しいかどうかは分かりませんが、成相寺へお参りに来た方であれば、もうここで十分満足できるだけの眺めだと思います。ケーブルカー料金を支払う必要もないですし、天橋立を見るために最初からここを目指して来る、そんな選択肢もアリかもしれませんね。
成相寺境内にある「弁天山展望台」。看板には「傘松公園以上の展望台です」という刺激的なフレーズが。頂上まで歩いて5分もかかりませんので、ぜひ行ってみてください
これが「弁天山展望台」。想像以上にしっかりと作ってありますね
弁天山展望台から眺める天橋立。これが傘松公園以上かどうかは分かりませんが、思った以上にキレイに見えました!
せっかくですから、ここでも股のぞきをしてみました。でも・・・、逆さに見たからってそれほど面白いものでは・・・
成相寺さんの展望台では、「土器盃(かわらけ)投げ」が出来ます。こんな風習があるとは聞いてましたが、私は初めて見ました。2枚100円と意外とリーズナブルですね
カワラケ投げとは、日頃捨てたいと思っている悩みを投げ捨てて心機一転!というもの。天橋立に向かって思いっきり投げてみましたが、思ったよりも飛ばないものです(笑)
そして、こちらが2つ目の展望台となる「成相寺パノラマ展望台」。すぐ近くまで車で移動できるので楽でした
「成相寺パノラマ展望台」からの天橋立の眺め。2つの展望台、どちらもそれほど変わらないような・・・
文句を言いながらも、ここでも股のぞきをしています。「ここに足を置いて股のぞきすべし」といわんばかりの印が岩に書いてありますので、それに従ってやってみましょう!
ここでも「かわらけ投げ」が出来ますが、コチラは何と的が設置してありました!難易度は高くなさそうですが、意外と難しいのかもしれませんね
成相寺でいただいたご朱印です。何て書いてあるんでしょう・・・?
■成相寺
HP: http://www.nariaiji.jp/index.htm
住所: 京都府宮津市成相寺339
電話: 0772-27-0018
宗派: 真言宗単立
本尊: 聖観世音菩薩
創建: 704年
開基: 真応上人
拝観料: 入山料として500円
拝観時間: 8:00-17:00
駐車場: 無料(入山料に含む)
アクセス: 北近畿タンゴ鉄道「天橋立駅」から、タクシーで25分
※西国三十三所の第28番札所