2008-10-20

江戸時代の建築と庭園が見事な『粉河寺』@和歌山県

粉河寺

西国三十三所結縁ご開帳」を開催中の現在、第三番札所『粉河寺(風猛山)』では、絶対秘仏の「千手観音」さまが、何と「217年ぶり(!)」のご開帳中(2008年10月末まで)ということで、早速お参りしてきました。

仏像も美しかったのですが、庭園といい建物といい、かなり見どころ満載でしたね!かなり楽しめました!


江戸時代から再建された「粉河寺」

粉河寺は、和歌山県紀の川市に位置する、奈良時代末(770年)創建のお寺です。西国三十三所の第三番札所として、今でも多数の参拝客が訪れる名刹で、規模も大きく、さすがに素晴らしいお寺でした。

 草創時この方、粉河寺は多くの人達の信仰をうけて繁栄し、鎌倉時代には七堂伽藍、五百五十ヶ坊、東西南北各々四キロ余の広大な境内地と寺領四万余石を有していたが、天正十三年(1585)豊臣秀吉の兵乱に遭遇し、偉容を誇った堂塔伽藍と多くの寺宝を焼失した。その後、紀州徳川家の庇護と信徒の寄進によって、江戸時代中期から後期に現存の諸堂が完成した。 「粉河寺」ホームページより引用


戦国時代の豊臣秀吉の紀州攻めの際には、根来寺や雑賀衆とともにそれに抵抗したため、ほとんどの建物は焼失させられてしまいました。その分だけ、奈良や京都のお寺と比べると新しく、江戸時代の建物らしい特徴が随所に見られますので、いつも奈良近辺のお寺を見て回っている私にとっては、とても新鮮でした。


大門をくぐって参道を歩くと

粉河寺は、参拝客を迎え入れる「大門(重文)」をくぐると、参道は右にカーブしながら続き、その左手に諸堂が立ち並んでいます。

ご本尊の千手千眼観世音の化身とされる童男大士を祀る「童男堂」などありますが、まだそれほど見どころというほどでもありません。ちょっと線が薄れてきている仏足石、ちょっと珍しい蓮型の手水舎、奉納された小さな身代わり地蔵の姿などを眺めながら、先に進みます。

粉河寺(大門)-01
西国三十三箇所霊場の第三番札所「粉河寺」。入り口部分にある「大門(重文)」は、1707年の建立の、2階建て楼門です。建物のほとんどは江戸時代のもので、かなり大規模なものが多いです

粉河寺(仁王像)-02
粉河寺「大門」の吽形(うんぎょう)。金網があるため、なかなか上手く撮影できません。仁王像は仏師春日の作とされる力強いもの。正統的な仁王像という印象でした

粉河寺-03
粉河寺の境内案内図。入口の大門から本堂まで、かなり長めの参道です。小さめのお堂などがズラリと並んでいました

粉河寺-04
粉河寺の参道。川沿いに数百メートル歩きます

粉河寺-05
1679年の建築とされている「童男堂」。童男大士とは、ご本尊の千手千眼観世音が姿を変えたもの。正堂の中央に一間の礼堂がある、やや変わった形の建物です

粉河寺(念仏堂)-06
「出現池」に隣接して建っている「念仏堂」。江戸時代後期の建築で、総欅造の落ち着いた建物です

粉河寺(手水舎)-07
粉河寺の手水舎。これもかなり渋いタイプで、水の出口部分は「蓮」をかたどった、ちょっと珍しいタイプでした

粉河寺(身代わり地蔵)-08
粉河寺の身代わり地蔵さんたち。小さな地蔵さんたちが沢山集まっている様子が、かなりいいですね!

粉河寺-09
向かって右手から、「中門」「手水舎」「本堂」。かなり広々として、落ち着く光景です


かなり豪華な「中門」がいい!

参道を進んでいくと、かなり立派な「中門(重文)」が見えてきます。これは1832年の建築の、かなり豪華な装飾を施したもの。普通の中門のイメージでは、入り口部分の門よりもかなり見劣りするようなものだと思いがちですが、とんでもありません。

特に面白いのが、門番として「四天王像」を配していることでしょうか。基本的に、諸仏の東西南北を守るもののはずなんですが、もちろん本尊にあたるものはいません。中門の四隅を守るという、やや地味な役割を与えられているのです。

中門自体も、細かな彫刻が彫られていて、いかにも江戸時代のものらしい美しいものです。本堂には、左甚五郎作(伝)の「野荒らしの虎」という作品が置かれたりしていますので、奈良では決して味わえない江戸時代の雰囲気が感じられます。

粉河寺(中門)-10
粉河寺の「中門(重文)」。1832年の建築で、四天王を祀っています。扁額は「風猛山」とあり、紀州十代藩主の徳川治宝の筆だとか。中門としては他のお寺では見られないほど大規模なものだと思います

粉河寺(中門)-11
中門の組物。江戸時代の作らしい細工で、奈良のお寺ではなかなか見られない凝りようです。美しいですね

粉河寺(中門)-12
同じく中門にあった像の彫り物。飛び出した木の部分に細かな装飾を施してあるあたりが、時代の新しさを感じます

粉河寺(中門)-13
ご本尊もいない中門を守っている四天王さん。コチラは巻物を持っていることから、西を守る「広目天」さんでしょう

粉河寺(中門)-14
左手に宝塔を掲げている、北方を守る「多聞天」さん


ソテツと巨石の見事な枯山水「粉河寺庭園」

本堂の前には、国指定の名勝「粉河寺庭園」が広がっています。これは、本堂の前庭とその下の広場の段差を埋めるために作られた変わった庭園です。高低差を活かしながら、巨石とソテツ・サツキ、ほぼこれだけで構成されているのですが、枯山水らしい渋い姿がとても凛々しく、本当に素晴らしいお庭になっています。

このような形のものはもっと他のお寺でも見られても良さそうなものですが、他に類を見ない作風なのだとか。とても面白いものでした。

また、境内の中には巨大なソテツの植栽が各所にありますので、それもどこか和歌山のお寺らしくていい雰囲気です。

粉河寺(粉河寺庭園)-15
国指定の名勝「粉河寺庭園」。桃山時代の枯山水の石庭で、本堂の前庭とその下の広場との高低差を処理する目的で作られたもの。石組みと植栽を組み合わせた、他に例を見ない特殊な様式なのだとか

粉河寺(粉河寺庭園)-16
粉河寺庭園を別角度から。巨石と巨大なソテツやサツキなどの組み合わせがとにかく見事。それほど広いものではありませんが、一見の価値アリですね


変わった形の巨大「本堂」は見どころ満載!

粉河寺の「本堂(重文)」は、西国三十三所の各お寺の中でも、最も大きいものなのだそうです。遠めに見てもその大きさは歴然ですが、何よりも建物の作りが面白いんですよね。屋根が複雑に重なり合っていて、どんな構成になっているのか判別できません。

後で調べたところによると、一重屋根の「礼堂」と二重屋根の「正堂」が結合した形ということでしたが、とにかく立派です。

本堂の内陣を拝観すると(拝観料@300円)、絶対秘仏の本尊「千手観音」を収めた厨子を中心として、その両脇を二十八部衆が固めている、かなり見事な眺めでした。その前に座ってじっくりと見ていると、現在も信仰の対象として手厚く祀られていることがちゃんと伝わってきて、とても落ち着く雰囲気です。

中央には、本堂が変わった形となった最大の要因である「正堂」があり、その中にご本尊の千手観音像が祀られているのですが、話によると大きさはわずか1寸(数センチ)ほどの、とても小さな姿なんだそうです。絶対秘仏ですので、ほぼ誰も見たことが無いのですから確かめようもないのですが、その小ささと本堂の大きさのギャップを考えると、ちょっと面白いですね。

また、本堂の向かって左側に安置されている「鬼子母神像」も、子供を抱いて微笑む、吉祥天のような華やかさをもつ、とても素敵な仏像さんです。さらに、本堂では「粉河寺縁起絵巻(国宝。京都国立博物館へ寄託中)」のレプリカの展示や、左甚五郎作(伝)の「野荒らしの虎」の展示などもあり、かなり見どころ満載です。

建物の構造も面白いですし、雰囲気も静かで落ち着いていて、見ていて全く飽きないですね。何度でも行きたくなるような、とてもいいお堂です。

粉河寺(本堂)-17
粉河寺の「本堂(重文)」。現在の建物は1720年の再建で、三十三箇所のお寺の中で最も大規模な本堂なのだとか。この日も秘仏公開中ということもあって、かなりの賑わいぶりでした

粉河寺(本堂)-18
本堂を横から見た図。一重屋根の「礼堂」と二重屋根の「正堂」が結合した、かなり変わった作りの建物です。中もお参りしましたが、どんな構造になっているのか、中からも外からもサッパリ分かりませんでした!

粉河寺(本堂)-19
粉河寺の本堂前。味のあるルックスになってますね

粉河寺(本堂)-20
粉河寺・本堂の軒下部分。垂木の連続する姿がとても美しいですね!彫り物も精密で美しいもので、古びていながらもどこか華やかさを感じさせますね


217年ぶりのご開帳!秘仏「千手観音像」

そして、この日のメインは、「217年ぶり」のご開帳になっていた「千手堂(重文)」のご本尊で秘仏の「千手観音像」です。

こちらも像高数十センチの小ぶりな観音様で、彩色の残り方などはとても美しいものでした。やや遠めにしか眺められないのが残念ですが、正面に組んだ手には紐が結ばれていて、参拝者が紐の一端を持ちながらお祈りできるシステムを採用。しっかりとご縁を結べた気分になれます。

2008年10月の1ヶ月間のみの公開ですので、この日も本当に沢山の参拝客が押し寄せてきていました。千手堂の建物自体が、1760年の建築の需要文化財なのですが、この日は回廊部分に新しい木で補強してあったりして、コチラは全く印象に残りませんでした(笑)

粉河寺(千手堂)-21
1760年の建築の「千手堂(重文)」。秘仏のご本尊「千手観音」さまが、何と217年ぶりのご開帳中でした!参拝客が押し寄せるために建物を補強したりと、色々と準備も大変みたいですね

粉河寺(千手堂)-22
「千手堂」を横から覗き見したところ。あのお厨子の中に217年間も秘仏だった「千手観音」さんがいらっしゃいます。数十センチの小ぶりな像ですが、かなりの神々しさでした


境内はかなり広め。散策してください

この他にも、六角堂や薬師堂などの諸堂に、産土神社などもありますが、正直なところ、それほど興味を惹かれるようなものではないかもしれません。境内もそれなりに広いですし、全体的にブラリと歩いてみるだけでいい時間になりますので、のんびりと散策を楽しむのもいいかもしれませんね。

粉河寺-23
本堂前に建っている「六角堂」と、その前に植えられている「湯浅桜」

粉河寺-24
粉河寺の境内にある巨大な楠。隣に駐車されているバイクと比べると、その巨大さが分かります

粉河寺-25
粉河寺の「鐘楼」。「割れているので強く突くな」という注意書きがありました

粉河寺-26
粉河寺の奥にある「産土神社」。特にそれほど特徴があるワケでは・・・

粉河寺-ご朱印
粉河寺でいただいたご朱印です。力強くてとても美しい字ですね。どことなく、粉河寺のイメージと合致しているような気がします


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■画像の一覧は【Flickr】でどうぞ。



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■粉河寺(風猛山)

HP: http://www.kokawadera.org/
住所: 和歌山県紀の川市粉河2787
電話: 0736-73-4830・3255
宗派: 粉河観音宗(天台宗)
本尊: 千手千眼観音菩薩(絶対秘仏)
創建: 770年
開基: 大伴孔子古(おおとものくじこ)
拝観料: 境内無料、本堂内陣・千手堂は300円
拝観時間: 8:00 - 17:00
駐車場: 100台あり(@500円)
アクセス: JR和歌山線粉河駅下車 門前町徒歩15分

※西国三十三箇所霊場の第三番札所






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