2010-08-27

凛々しい薬師如来!矢田の古刹『東明寺』@大和郡山市

凛々しい薬師如来!矢田の古刹『東明寺』@大和郡山市

矢田丘陵の奥まった場所に立つ小さなお寺『東明寺』へ行ってきました。お寺へのアクセスが良くないためそれほど目立ちませんが、素敵なお薬師さんなど、3体の重要文化財の仏さまがいらっしゃる古刹です。ひっそりとした雰囲気も素晴らしかったです!


舎人親王が開基の小さな古刹です

矢田丘陵の中腹にある『東明寺』。通常は、拝観の際に事前予約が必要のため、これまでお参りしたことがありませんでしたが、Twitterでお付き合いのある @momococks さんが関東からいらっしゃるということで、同行させていただきました。

東明寺とは、693年、日本書紀の編纂に携わった「舎人親王」の開基と伝わるお寺です。持統天皇が眼病に苦しんでいたおり、白鬚明神からのお告げがあり、霊山に登って与えられた金鍋で霊泉をすくって眼を洗わせたところ、眼病が平癒したのだそうです。その感謝を表すため、同地に精舎を建てたのが、後の東明寺となりました。


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※2013年7月2日<追記>

東明寺さんの縁起のご説明には「舎人親王が母親である持統天皇の眼病平癒を祈って建立した」とありますが、「舎人親王の母親は新田部皇女であり、持統天皇の皇子は草壁皇子しかいない」というご指摘をいただきました。

お寺さんにお電話で確認したところ、対象が持統天皇であることは間違いないとのことでした。舎人親王にとって持統天皇は伯母であり、父・天武天皇の妻であり、吉野の盟約で団結を誓った間柄ですから、それが「母親」と表現されていたのでしょう。ちょっとややこしいですが、「持統天皇のために舎人親王が建てたお寺」という認識で間違いないようです。
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矢田丘陵の中腹に建てられた山岳寺院で、金剛山寺(矢田寺)などとは山中を抜ける遊歩道でつながっているため、ハイキングコースになっています。しかし、そんな土地に建つお寺ですから、最寄のバス停からは徒歩30分以上もかかるのだとか。交通量は多くないにしろ、車ですれ違いもできない細い道を進むことになりますので、十分に注意して向かってください。

普段はそれほど参拝客も多くないであろう、小じんまりとしたお寺ですが、そのひっそりとした感じもいい雰囲気でした。若いお坊さんからお話を伺いましたが、説明もお上手なんですよね。奈良の有名なお寺では味わえない親密さを感じました。


東明寺@大和郡山市-01

大和郡山市の矢田丘陵の奥にひっそりとたたずむ『東明寺』。通常は、拝観には事前予約が必要です。普段はとても静かなお寺ですが、2010年6月に行われた平城遷都1300年祭の特別公開では、驚くほどの参拝客が押し寄せたのだそうです

東明寺@大和郡山市-02
東明寺の案内看板。「鍋蔵山と号し、高野山真言宗。本尊は薬師如来。松尾寺、金剛山寺とともに矢田丘陵の高所に建てられた歴史の古い山岳寺院の一つです。矢田村の惣鎮守である矢田坐久志玉比古神社の神役を勤めていたことも知られています。寺宝には、重要文化財の木造薬師如来坐像、木造地蔵菩薩坐像、木造毘沙門天立像、木造吉祥天立像があります。いずれも平安時代の作です。なお、裏山には本多家の跡目相続をめぐる争いである「九六騒動」で活躍した郡山藩家老都筑惣左衛門の五輪塔があります」

東明寺@大和郡山市-03
東明寺は山深いところに建つため、車で細い急坂を登ります。最寄のバス停からだと、30分も山道を歩かなくてはいけないので、タクシーを利用する方がいいでしょう。また、近畿自然歩道が整備されているため、矢田寺など矢田丘陵を縦断するハイキングのつもりで歩くのもいいでしょう

東明寺@大和郡山市-04
東明寺の山門。山門前の石段はそれほど人も通らないためか、草に埋れていました。そんなところにも風情が感じられるほど、小さいながらも雰囲気のあるお寺さんでした

東明寺@大和郡山市-05
東明寺の山門付近から本堂を眺めたところ。拝観できるのは本堂のみ。山上に建つ小さなお寺さんです

東明寺@大和郡山市-07
東明寺の本堂。寺伝では、693年、舎人親王の開基と伝わるお寺ですが、本堂は何度か建てなおされていています。簡素ですが、江戸っぽい装飾が目を惹きます


スマートな薬師如来坐像が見事!

東明寺の御本尊は「薬師如来坐像(重文)」。平安時代の作で、像高94cm、桜の一木造です。一般的な薬師如来像は、いかにも健康的な、お腹がぷっくりとしたふくよかな方が多いものですが、東明寺のお薬師さんはとてもスマートです。肩幅は広いのに対してウエストが引き締まっていて、とても若々しい印象でした。上半身がやや向かって左側に傾いているのも特徴的です。

また、光背は一枚板の簡素なものですが、当初は墨で「唐草文様」が描かれていたのだとか。お顔立ちといい体格といい、どことなくインド風のガンダーラ美術を見ているような印象も受けました。御厨子は徳川家5代将軍綱吉の生母「桂昌院」が寄進した素晴らしいもの。全体的な雰囲気も素晴らしいものでした!

その両脇には、吉祥天さんと毘沙門天さん(ともに重文)のご夫婦がいらっしゃいます。

●毘沙門天立像(重文) 木造・平安時代作・像高160.5cm
●吉祥天立像(重文) 木造・平安時代作・像高91.4cm

毘沙門天さんは、もとは四天王像の一体だったそうですが、他のお三方は離散してしまい、毘沙門天さんだけが残されたのだとか。夫婦の絆を感じますね!奥さまの吉祥天さんは、ふっくらとしたお方です。木肌が見えて、とても素朴で朴訥とした表情が印象的でした。

また、東明寺の寺宝「雷様のヘソ」も拝見しました。言い伝えによると、東明寺の境内に降りてきた雷様が昼寝をしている間に、お坊さんがイタズラでヘソを取ってしまった・・・というものなのだとか。直径数センチの石のようなもので、この雷様のヘソがあるお陰で、東明寺境内にはカミナリが落ちなくなったのだそうです!何ともおおらかなエピソードですね(笑)


東明寺@大和郡山市-08

本堂の外陣の様子(許可をいただいて撮影しています)。絨毯やソファーが目立ちますが、天井は折り上げ格天井になっていて、かなり格式が高い造りでした。御本尊が収められている御厨子は、徳川家5代将軍綱吉の生母である「桂昌院」の寄進で、日光東照宮風の見事なものでした!

東明寺@大和郡山市-09
東明寺の御本尊「薬師如来坐像(重文)」。御本尊は撮影禁止ですので、パネルを撮影させていただきました。平安時代の作で、像高94cm、桜の一木造です。体がやや向かって左側に傾いているのが特徴的です。また、お薬師さんにはふくよかな方が多いのですが、ウエストが引き締まってスマート。独特の雰囲気を持つ仏さまでした

東明寺@大和郡山市-10
御本尊の光背のパネル。肉眼ではほぼ見えませんが、一枚板の光背に墨で唐草文様が描かれていたのだそうです。仏さまも、やや肩が張って腰がくびれていますし、インドのガンダーラ文化との共通点を指摘される方もいらっしゃるのだとか


崩れかけの土塀など、雰囲気があります

東明寺は、ほぼ山門と本堂のみのため、それほど見どころが多いわけではありません。しかし、境内のあちらこちらで古刹らしい雰囲気が感じられました。お寺へのアクセスはよくありませんが、行ってみるだけの価値のあるお寺さんですね。


東明寺@大和郡山市-11

本堂脇に建つ七重の石塔。かなり古いもので、各段の大きさが一定でないことから、元は十三重の石塔だったのではないかとも考えられているそうです

東明寺@大和郡山市-12
境内の片隅にあった石碑と泉。石碑には「白龍弁財天」とあり、しめ縄がかけられていました

東明寺@大和郡山市-13
脇の石段から本堂を眺めたところ

東明寺@大和郡山市-14
崩れかけの土塀と石段。それほど大きくありませんが、しっかりとした石垣なども残されていました。雰囲気がありますね

東明寺-ご朱印
東明寺でいただいたご朱印です



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■東明寺(鍋蔵山)

HP: 参考サイト(平城遷都1300年祭)
住所: 奈良県大和郡山市矢田町2230
電話: 0743-52-7320
宗派: 高野山真言宗
本尊: 薬師如来坐像(重要文化財)
創建: 693年
開基: 舎人親王
拝観料: 300円
拝観時間: 9:00 - 17:00(11月~2月は4:00まで)
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 近鉄橿原線「近鉄郡山駅」から、奈良交通バス矢田寺前行き「横山口」下車(13分)、徒歩30分以上

※拝観には事前予約が必要。毎月21・28日は拝観不可。






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